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トヨタとセブン-イレブン、配送用冷蔵・冷凍車両に日本初のFC小型トラックを導入。次世代型コンビニ店舗説明会

「水素社会の実現に向けた歩みを加速させることを期待」と、トヨタ 友山茂樹副社長

2018年6月6日 実施

トヨタ自動車とセブン-イレブン・ジャパンが次世代型コンビニ店舗の共同プロジェクトに関する説明会を開催

 トヨタ自動車とセブン-イレブン・ジャパンは6月6日、2019年秋に開始するCO2排出削減を目指した次世代型コンビニ店舗の共同プロジェクトに関する説明会をメガウェブ(東京都江東区)で開催した。

 このプロジェクトは、セブン-イレブンの店舗と物流にトヨタが培ってきた技術やシステムを導入してCO2削減を目指すもの。具体的には店舗に定置式の「FC発電機」(燃料電池発電機)と「リユース蓄電池」を導入するとともに、それらを店舗エネルギーマネジメントシステム「BEMS」で統合的に管理して店舗で使用する再生可能エネルギーや水素由来の電力の比率を高めるほか、新開発した「FC(燃料電池)小型トラック」を導入してCO2排出削減を目指していく。

FC小型トラック開発ムービー

 説明会では、トヨタ自動車 副社長 友山茂樹氏が共同プロジェクトの詳細を説明。今回の共同プロジェクトでは、再生可能エネルギーと水素を有効活用することによって、店舗や物流における省エネ、CO2の低減を目指し、実際のコンビニ店舗へ蓄電池や定置式のFC発電機、物流においてはFC小型トラックを導入して再生可能エネルギーを最大限に活用できる手法を検証・評価。各アイテムのCO2削減効果について検討すると同時に、市販化を視野に入れて導入に必要な性能耐久性、コストを検証。将来に向けて再生可能エネルギーそのものや低炭素水素の調達方法についても検討するとした。

トヨタ自動車株式会社 副社長 友山茂樹氏

 友山氏は「持続可能な社会の実現に向けて水素の活用は非常に重要だと考えている」として、水素ステーションの水素を上手く活用するため、店舗へ商品を配送するトラックをFC化して水素ステーションを活用することにより、水素需要の底上げや、液体水素から発生する“ボイルオフ水素”を店舗で消費できるようにすると説明。

 トヨタが開発したFC発電機は、出力密度の高いFCV(燃料電池車)「MIRAI」のセルを活用してコンパクト化され、定格出力は約10kW。使用する水素は水素ステーションのタンクからボイルオフされる従来使われていなかった水素を活用して、発電した電気を店舗へ供給可能とした。

 店舗エネルギーマネジメントについては、太陽光パネルで発電した電気を有効活用するために、トヨタエナジーソリューションズが製品化して販売している蓄電池を利用。この蓄電池はハイブリッド車10台分の使用済みバッテリーをリユースしており、BEMSで各機能の最適な制御を実施。昼間に余った電力を蓄電池に溜めて夜間に消費する、もしくは、FC発電機の電力を活用することで店舗エネルギーの多様化につなげることを可能とした。

FC発電機(左)と、リユース蓄電池
FC発電機とリユース蓄電池について
BEMSについて
屋上・カーポート太陽光発電について

 災害時における給電については、給電機能付き充電器を設置することで従来のPHVやEVへの充電機能に加え、PHV、EV、FCVから店舗に電力を供給。停電時や災害時には電動車両の電力を店舗に有効活用可能として、充電器と蓄電器を組み合わせることにより、災害時には店舗に電力を長時間供給することを可能にした。さらに、FC小型トラックを使って避難所へ物資を輸送すると同時に、FCトラックから電力を供給することもでき、「平時に活用される発電・蓄電装置やFC車両を組み合わせることで災害に強い店舗作りに貢献したい」と考えを述べた。

給電機能付き充電器
給電機能付き充電器について

 物流に関する取り組みについては、配送用冷蔵・冷凍車両として国内で初めてFC小型トラックを導入。燃料電池は動力になるモーターだけではなく、荷室内を冷やす冷蔵ユニットへの電力も供給。これにより停車時にアイドリングがストップしても荷室内を最適な温度に保つことができ、「環境と食への安全を両立することができる」とした。

 また、「FC小型トラックはEVと比べて航続距離が長く、充填時間が短いことが特徴」として、1日のルート配送で走行する約200kmを1回の水素充填でカバーできるよう、タンク容量を7kgに設定。さらに、「ドライバーだけでなく、子供たちが将来『乗ってみたい』と思ってもらえることを目標にした」とデザインにもこだわったことについて言及した。

FC小型トラック
FC小型トラックについて

 今後の計画については、「CO2の大幅な削減、最終的にはCO2排出ゼロを目指して開発を進める」と話し、2019年秋ごろに各アイテムを次世代店舗に導入して稼働させる計画を説明。性能だけでなく、実際の導入効果も検証する予定という。

 最後に友山氏は「水素需要を活性化させ、水素の生成から消費までのサプライチェーンを構築して、水素の安定供給と安定利用を実現することが持続可能な水素社会を実現する上で不可欠であると考えております。今回のセブン-イレブン・ジャパンさまとの共同プロジェクトで、水素社会の実現に向けた歩みを加速させることを期待しています。課題は多くございますが、業界を超えて多様なステイクホルダーさまと交流して知恵をしぼり、計画の達成に向けて努力してまいりたいと考えております」と話し、説明を終えた。

メガウェブのライドワン内に設置されたセブン-イレブン店舗のモックアップ

 なお、セブン-イレブン・ジャパン 代表取締役社長 古屋一樹氏は、トヨタと共同で取り組む店舗や物流で取り組む省エネ・CO2削減の概要について説明した。

株式会社セブン-イレブン・ジャパン 代表取締役社長 古屋一樹氏

 セブン&アイグループとして、2030年に向けて再生可能エネルギー比率を20%引き上げ、CO2排出量を2013年対比で約27%削減に向けて取り組みを行なっていることに触れ、グループ内で大きな分母となる2万380店を抱えるセブン-イレブンとして、6年前から環境プロジェクトという専門チームを立ち上げて力を入れて取り組んでいると説明。

 商品では、年間10億杯を販売する「セブンカフェ」のカップやストローなどに間伐材やリサイクル原料、バイオマス原料を使用しており、セブン-イレブンオリジナル商品約1800アイテムについて、2019年度末までに全て環境配慮型の商品にすべく取り組みを実施。

 店舗については10年前から取り組みを進めており、太陽光発電パネルを約8000店で設置して1店舗あたり年間約4tのCO2を削減。また、店内LED照明をほぼ全店に設置して、1店舗当たり年間約3.5tのCO2を削減していると紹介した。

 また、駐車場の路面太陽光パネルと屋上・カーポート太陽光パネルに加え、蓄電した電力を夜間に利用できるようにプリウス20台分の中古蓄電池を再利用した蓄電池システムを採用し、再生可能エネルギー比率を46%まで高めた「環境と人に優しい」というテーマの店舗を5月22日に神奈川県相模原市にオープンしたことを紹介。

 さらに、配送に使われる約6000台の車両のうち、構成比として15.5%、924台のEVトラックやHVトラックを導入していることに触れ、2019年春にはトヨタが開発した2台のFC小型トラックを羽田空港周辺エリアとお台場・有明周辺エリアにそれぞれ1台ずつ導入して、性能や乗り心地などについての検証を開始すると発表。「2020年には環境配慮トラック比率を20%まで引き上げる」「将来的には水素ステーションをハブにしたエリア物流網を構築し、1つの地域を水素シティとして極めて環境に優しい街づくりをしていきたい」と今後の展開を示した。

FC小型トラックがライドワン内でデモンストレーション走行を実施
左から株式会社セブン-イレブン・ジャパン 執行役員 青山誠一氏、同 取締役 執行役員 大橋尚司氏、同 代表取締役社長 古屋一樹氏、トヨタ自動車株式会社 副社長 友山茂樹氏、同 専務役員 小木曽聡氏