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トヨタ、新型燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を12月15日に正式発売、723万6000円

3分程度の水素充填で航続距離約650kmを実現。1都1府9県での販売が中心に

2014年12月15日発売

723万6000円

4名乗車仕様の新型燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」

 トヨタ自動車は、セダンタイプの新型燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を12月15日に発売する。1グレードのみの展開で、価格は723万6000円(北海道地域は725万3280円)、生産は愛知県豊田市の元町工場が担う。

 全国のトヨタ店およびトヨペット店で取り扱われるが、まずは水素ステーションの整備が予定されている地域(およびその周辺)での販売が中心となる。次世代自動車振興センターの燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業における、2013年度と2014年度で交付決定されている都道府県は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、愛知県、滋賀県、大阪府、兵庫県、山口県、福岡県の1都1府9県。

 2014年度中に国内販売を開始することが予告されていた新型FCVのミライだが、正式に12月15日に発売することが決定。日本での発売に続いて2015年夏ごろから米国、欧州でも発売するとアナウンスされている。

ミライの走行シーンのイメージ。まず空気(酸素)と水素をFCスタックに送り、FCスタックで酸素と水素を化学反応させて電気(および水)を発生させる。その電気が駆動用バッテリーを介して駆動用モーターを動かす仕組み

 ミライは水素と酸素を化学反応させて電気を作る燃料電池を搭載し、その燃料電池で作られた電気でモーター(最高出力113kW[154PS]、最大トルク335Nm[34.2kgm])を駆動させる燃料電池車。車載の燃料電池は容量を必要とするため、複数の燃料電池セルを積層して電池容量を高めた燃料電池スタック(FCスタック)を搭載している。燃料の水素は70MPa(約700気圧)の高圧水素タンクに充填され、酸素は大気中の空気から取り入れる。

 ガソリンなどを動力源とする内燃機関に比べてエネルギー効率に優れるといい、走行中にCO2など環境負荷物質を排出しないで走行できることがミライの大きな特徴の1つ。また、3分程度の水素の充填により航続距離約650km(JC08モード)を実現し、「ガソリン車と同等の利便性を実現した」という。

ボンネットフード下にパワーコントロールユニット(発生した電気の直流をモーター駆動用の交流に変換するインバーターと、FCスタックで発電した電気を650Vに昇圧する大容量コンバーターなどで構成)とモーターを、前席下にFCスタックを配置。高圧水素タンクは2本搭載され、1本は後席下付近に、もう1本は後席とトランクスペース間の下側に設置。FCスタックは2008年に発売した「トヨタFCHV-adv」に比べ2.2倍の出力密度となる3.1kW/Lを実現した
フロア下はフルカバー化され、空力性能を高めている
ミライのシャシーフレーム
高圧水素タンクは2本搭載
トヨタフューエルセルシステム(TFCS)主要諸元

FCスタック名称トヨタFCスタック
型式FCA110
種類固体高分子型
接続方式直列
最高出力[kW(PS)]114(155)
燃料・高圧水素タンク燃料種類圧縮水素
本数2
タンク容量(L)122.4(前方60.0/後方62.4)
公称使用圧力(Mpa)70(約700気圧)
駆動用モーター型式4JM
種類交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター)
最高出力[kW(PS)]113(154)
最大トルク[Nm(kgm)]335(34.2)
駆動用バッテリー種類ニッケル水素電池
個数34
接続方法直列
容量[Ah]6.5
水素を充填しているところ。約3分の充填で航続距離約650km(JC08モード)を実現する

 車両設計は、「水素を漏らさない」「万が一漏れても直ちに水素の漏れを検知して水素を止める」といった思想のもとに開発が進められた。衝突時の衝撃を多くの部材に効率よく分散させる構造とし、前面、側面、後面それぞれの衝突に対して優れた乗員保護性能を持たせるとともに、FCスタックや高圧水素タンクを保護する高い衝突安全性能を実現したという。

 加えて先進の安全装備としてミリ波レーダーを搭載し、衝突の可能性がある場合に衝突回避・被害軽減を支援するプリクラッシュセーフティシステム、隣の車線を走る車両をレーダーで検知して、車線変更時の後方確認をアシストするブラインドスポットモニター機能などを標準装備。道路の白線/黄線をカメラで認識し、車線逸脱を警告するレーンディパーチャーアラート機能なども備わっている。

 ボディーサイズは4890×1815×1535mm(全長×全幅×全高)と、全長と全幅は「クラウン アスリート」(4895×1800×1450mm[同])に近く、全高も85mm高くなるなど迫力あるサイズ。車両重量は1850kgと、ハイブリッドのクラウン アスリート(1640kg)から200kg以上重くなる数値となっている。

 エクステリアは一目でミライと分かるデザインが与えられ、フロントでは大気中の空気を取り入れることとFCスタック冷却を目的とした左右の大型グリル、サイドではボディーとキャビンをウォータードロップ(水滴)をイメージした形状とし、FCユニットを内包したアンダー部が支える立体構成により、空気を取り込んで水を生成するFCVならではの特徴を表現した。

 また、リアまわりではライセンスガーニッシュからバンパーコーナー下端までタイヤに向かうように台形形状を構成する造形を採用するとともに、ワイド感を強調するバンパー上面により力強く安定感のあるスタンスを表現した。FCスタックや高圧水素タンクなどはフロア下に配置され、低重心化と優れた前後重量バランスを実現。さらにフロア下のフルカバー化や、リアコンビネーションランプのエアロスタビライジングフィン装着などによって空力性能や直進安定性が高められている。

 そのほか4灯のLEDを一列に配列した超薄型ヘッドランプ、アルミホイールを軽量化するためのエングレ加工を施した17インチアルミホイール(タイヤサイズ:215/55 R17)などを装備。ボディーカラーはピュアブルーメタリック、ホワイトパールクリスタルシャイン(3万2400円高)、プレシャスシルバー(5万4000円高)、プレシャスブラックパール(5万4000円高)、ダークレッドマイカメタリック、ダークブルーマイカの6色を設定し、いずれもルーフとフェンダーガーニッシュがブラックとなるツートーンカラー仕様となっている。

ボディーカラーは6色を設定。写真はピュアブルーメタリック
ホワイトパールクリスタルシャイン
プレシャスシルバー
プレシャスブラックパール
ダークレッドマイカメタリック
ダークブルーマイカ

 インテリアでは、インストルメントパネル中央上段に4.2インチTFT液晶を採用したスピードメーターとマルチインフォメーションディスプレイを配置。ドアトリムなどには柔らかい質感のソフトパッドを採用するとともに、随所に高輝度シルバー加飾を配して洗練性を高めた。また、フロントシートは金型にセットしたシートカバーの中にウレタンの原料を注入し、発泡させて形成するという表皮一体発泡工法を採用。フィット感とホールド性を向上させている。フロントシートには8ウェイパワーシート&電動ランバーサポートを標準装備している。

 加えて、即暖性に優れながら消費電力を抑えられるステアリングヒーター&シートヒーター(2段階温度調整式)を全席に設定するとともに、エコ空調モードスイッチ付きの左右独立温度コントロールフルオートエアコンなどを装備。後席とトランクルームの間に駆動用のニッケル水素バッテリーが配置されるが、レイアウトの工夫によって9.5インチゴルフバッグを3個収納できるスペースを確保した。インテリアカラーはウォームホワイト、ブルーホワイト、ブルーブラックの3色を設定する。

インテリアカラーは3色を用意。写真はウォームホワイト
ブルーホワイト
ブルーブラック
ミライのインテリア
フロントシートは金型にセットしたシートカバーの中にウレタンの原料を注入し、発泡させて形成するという表皮一体発泡工法を採用
ドアトリムなどには柔らかい質感のソフトパッドを採用
エコ空調モードスイッチ付きの左右独立温度コントロールフルオートエアコンの操作パネル
トランク内にCHAdeMO仕様のコンセントを設置し、別売りの給電器に接続することで住宅や家電の電源として利用することができる
カーナビ画面で自車位置付近の水素ステーションの店舗情報などを確認できる。FCスタックにトラブルが発生した場合、カーナビ画面に警告が表示される
手持ちのスマートフォンに専用アプリ「Pocket MIRAI」をダウンロードすると、全国の水素ステーションの店舗情報、水素残量、走行可能範囲、外部電源供給可能時間などを確認できる。また水素充填記録機能や、運転を楽しむコンテンツ「フォレスト機能」を設定する

主要諸元


ミライ
乗車定員(名)4
車両形式ZBA-JPD10-CEDSS
駆動方式前輪駆動方式
車両重量[kg]1850
最高速[km/h]175
最小回転半径[m]5.7
全長×全幅×全高[mm]4890×1815×1535
ホイールベース[mm]2780
前/後トレッド[mm]1535/1545
最低地上高[mm]130
室内長×室内幅×室内高[mm]2040×1465×1185
前後サスペンションストラット式コイルスプリング/トーションビーム式コイルスプリング
前/後ブレーキベンチレーテッドディスク/ディスク
前/後タイヤ215/55 R17
ミライのイメージ動画

(編集部:小林 隆)