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スーパーフォーミュラ第2戦富士「サタデーミーティング」

競争と環境という2つの相反する命題を両立した新車両規定は成功しつつある

2014年5月17日~18日開催

 全日本選手権スーパーフォーミュラは、5月17日~18日の日程で富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)において第2戦を開催。その予選日となる5月17日は、スーパーフォーミュラを運営するJRP(日本レースプロモーション)が記者会見「サタデーミーティング」を開催し、JRP社長 白井裕氏、トヨタ自動車 モータースポーツユニット開発部 永井洋治氏、本田技術研究所 MS開発室 佐伯昌浩氏の3人が出席して、スーパーフォーミュラの現状について説明した。

写真左から、トヨタ自動車 モータースポーツユニット開発部 永井洋治氏、JRP社長 白井裕氏、本田技術研究所 MS開発室 佐伯昌浩氏

新車両規定はよいスタートを切れた

──開幕戦を振り返ってどうか?
トヨタ自動車 モータースポーツユニット開発部 永井洋治氏(以下永井氏):まず、今日(5月17日)の午前中のフリー走行でトヨタエンジン搭載車で止まる車が続出したのは、ECUのバージョンアップをしたため。バージョンアップしたECUとセンサーのキャリブレーションに問題があって、止まってしまったが、問題はすでに解決済みでその後は順調に走れているので問題はない。

 開幕戦を振り返ると、もちろんトヨタエンジンを搭載した車両が優勝したのでそれは嬉しいが、それによりも嬉しかったのは、新しい車のコンセプトが成功したこと。競争と環境を両立するという難しい命題に取り組み、それを実現できたことに感動したし、それが関係者全員の思いだ。

本田技術研究所 MS開発室 佐伯昌浩氏(以下佐伯氏):開幕戦に関しては永井氏と同じで、いいカテゴリーが始まったと思っている。我々のエンジンに関しては、開幕前の合同テストでトラブルがでてしまって、開幕に向けていろいろとその対策をしたが、全車リタイアを避けたかったので、マージンを広く取った。ただ、基本同じエンジンを使っているもう1つのカテゴリーでも問題が起きており、置かれている環境が違うので発生していると切り分けられる部分もあるのだが、そうとも言い切れない項目もあり、開幕戦ではかなり安全性を優先した。

──第2戦に向けての見通しは?
永井氏:鈴鹿で基本的なコンセプトが間違っていないということは確認ができた。では、最高速がでる富士ではどうかというのが今回のテーマ。環境技術とスピードは両立できるんだということが表現できたらいいと考えている。第1戦で課題は見えてきたので、それを解決して第1戦と同じようによい結果を出したいと思う。

佐伯氏:この1カ月の間に、開幕戦のものを含めてすべてのデータを見直して、マッピングなどをすべてやり直している。そうした調整を行っての第2戦なので、ちょっとだけ追いつけるようになっていると考えている。

永井氏:ホンダさんはドキドキマップ(筆者注:ギリギリに攻めたエンジン設定のこと、エンジニアがドキドキするような設定という意味)があって、それをONにできるんじゃないですか?(会場から笑)。エンジニアはそうしたギリギリの設定を常に持ってるんですよ(笑)。

JRP社長 白井裕氏

──JRPの観点から開幕戦を終えた評価は?また両社の対決については?
白井氏:お二人もおっしゃっていたとおりで、競争と環境の両立という我々の目指していたことを、実際に開幕戦でかなり実現できてスタートラインに立てたというのは嬉しいことだった。もちろん、まだまだスピードは十分ではなくて、秋の鈴鹿(筆者注:最終戦)では1分35秒台というものすごいタイムも実現することができるのではないかと考えている。両メーカーの現状については、ホンダさんにもっと頑張ってねというしかない。ただ、午前中のフリー走行でもホンダ勢も徐々に上の方に進出できるようになってきており、期待したい。

ホンダ 佐伯氏

──金曜日(5月16日)に行われた占有走行では、エンジンが火を噴いた車両もあったが、その原因は?また、ホンダエンジン車の方が黒煙の出方が多いように見えたが?
佐伯氏:現時点では原因は分かっていないが、タービンが壊れてしまった。ただエンジン本体は無事だったので、タービンまわりだけを交換してそのまま使えている。黒煙に関しては新しいマップがよくないのかもしれない。今回持ち込んだエンジンマップは初めて試すものだったため、難しかった。

──ツインリンクもてぎでテストを行ったと聞いているが、どのようなテストだったのか?
永井氏:もてぎのテストはブレーキが厳しいサーキットなので、この車でレースを行う上で、何か問題はあるか、あるいはその対策があるのかを確認する場として活用した。有益なデータもとれたので、JRP、シャシーコンストラクターなどと協力して分析を進めている。

佐伯氏:基本同じで、ブレーキに関するテストを進めた。現在ブレーキ屋さんも含めて解析をしている。

──オートポリスと菅生での燃料流入量に関しては後日発表とされていたが、それは決定されたのか?
永井氏:燃料流入量を2段階絞る。なぜ絞るのかと言えば、菅生は昨年型のSF13でもすでに十分速すぎるということもあり、燃料を10%絞って走るようにする。オートポリスに関しては、NAだと性能は黙ってても下がるんですが、今年はターボだと加給できてしまうので性能がアップしてしまう。そこで、ここでも10%絞って走るということをエンジンメーカー2社とJRPで話し合って決めた。

トヨタ 永井氏

──:オーバーテイクボタンに関してはどうですか? 5%の燃料流入量のアップということにしましたが、将来的にそれを上げていく可能性があるんでしょうか?
永井氏:いい案配だったと感じている。単独走行して5%アップだとあまり感じないというドライバーもいたが、フォーミュラカーは前車のスリップストリームに入ることができれば、後はドライバーの能力次第で追い越すことができるようになる。このオーバーテイクボタンの5%というのは、スリップストリームに入ることを助けるためのものであり、それが最大の効き目となる。その意味で5%というのはいい案配だったと思っている。

白井氏:オーバーテイクというよりも、スリップに確実に入れるレベルということでよかったと評価している。

佐伯氏:同じ評価。ただエンジン側からすればいろいろあるので、できればこれ以上あげないでほしい(笑)

──ECUのバージョンアップでキャリブレーションに問題があったというのは、それは直噴エンジンのデリケートさが影響しているのか?
永井氏:SF14ではアクセルにバイワイヤーを利用している。エンジニアにとって最も恐いのはそれが勝手に開きっぱなしになってしまったり、逆に閉じなくなってしまうこと。そこで、これに関しては厳しくフェールセーフをかけており、ちょっと何か問題が起きたときにはすぐに閉じるようになっている。もちろん緩くても走らせることもできるのだが、安全第一ということでそういう設定にしている。その結果として今回の問題が発生した。

(笠原一輝/Photo:安田 剛)