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BASFジャパン、横浜に開設する複合材料の試作製造施設「アジア・コンポジット・センター」を公開
設計から製造まで自動車向け軽量化部材の開発を支援
(2015/3/18 00:00)
- 2015年3月17日 発表
BASFジャパンは3月17日、熱可塑性複合材料を用いた自動車用部品の試作製造施設「アジア・コンポジット・センター」を、横浜市緑区のエンジニアプラスチック・イノベーションセンター内に開設することを発表。開設に先立ち、報道関係者向けに同施設を公開した。
同社は、横浜イノベーションセンターに、エンジニアリングプラスチック技術開発センター、エンジニアリングプラスチックイノベーションセンター(EPIC)などを開設済み。BASFジャパン 副社長 執行役員 機能性材料統括本部 瀬畑一茂氏は、「EPICが持つ機能と相乗効果を生み、主に自動車の軽量化を促進することを目的に開設した。熱可塑性複合材料を利用して、自動車部品を始めとする新しいアプリケーションや試作品をお客様とともに開発、“共創”していきたい」と意気込む。
BASFジャパン 機能性材料統括本部 パフォーマンスマテリアルズ事業部 執行役員 マシュー・ストルトン氏は、同施設について、「熱可塑性複合材料のノウハウを皆さん(顧客)に近いところで提供できる。日本にこうした施設を作ることは当たり前で、日本であることに意味がある。アジアの自動車業界のイノベーションのハブで、世界最大の自動車産業がある。1960年代以降はドイツを追い越して、自動車製造の中心になっており、自動車用部材の世界の3分の1は日本で消費されている」と説明。
同社が手がける複合材料は、CAE解析を行なえるシミュレーションツール「Ultrasim」や、材料の工法、試作品の試験までを含めて、「Ultracom」というサービスパッケージとして提供可能なことを特徴にしている。ストルトン氏は「BASFはアジアにおいて初めて、パッケージとして複合材料を提供できる会社だ。開発スピードを加速でき、システムコストの最適化も行なう。小規模製造に対応することで、コスト効率の高い形で大量生産へ移行していける」とアピールする。
自動車の軽量化については、燃料消費、CO2排出量削減のために欠かせないものであり、現在のヨーロッパのミドルクラスの自動車では部材の15~20%にエンジニアリングプラスチックを使用。2014年4月に発表された「BMW i3」では、同社の材料によりボディーやシートにプラスチックを採用している。
現在、複合材料としては短繊維材料が多く使われているが、金属材料からの移行を進めるには、強化された連続繊維を用いた材料が必要になると指摘。そこで同社が提供するのが、連続繊維を用いたシートと、短繊維強化ポリアミドを組み合わせた材料だ。
製造について解説したBASF 東南アジア統括本部 アジア太平洋地域 パフォーマンスマテリアルズ事業本部 マーティン・バウマット氏は、「昨今のクルマのエアインテークマニホールドなどで使われている短繊維強化ポリアミドは厳しい要件も満たせる熱機械特性を持った素晴らしい材料。加えて、射出成形という、コスト効率がよく、分かりやすい工程によって、システムやコストが最適化された。高性能の材料、効率のよい工程の両方を作ることでパーツのコストを最適化していけると考えている」と述べる。
Ultracomでは、射出成形を行なう樹脂材料のペレット「UltramidCOM」「UltradurCOM」と、熱可塑性を持つ連続繊維強化プリプレグ(シート)の「Ultralaminate」「Ultratape」を組み合わせて使う。前者は剛性は低いが射出成形のため形状の自由度が高く、後者は剛性が高いがデザインの自由度が低い。これを組み合わせることで両立させるという考え方だ。
そして、工程については、2つの材料を組み合わせて一体化するオーバーモールディングと、熱成形、立体裁断(ドレーピング)を1つのステップで行なうようにした。
4月開設のアジア・コンポジット・センターでは、実際にそのプロセスで試作品(プロトタイプ)を製造できる。報道関係者向けにも、その製造の模様が公開された。
センター内には、多軸のアーム型ロボット、赤外線ヒーター、射出成形機が置かれ、これらの機械と材料を搬送するための特殊な型枠を組み合わせて作業が行なわれる。
まず、ロボットは連続炭素強化材料のシートが取り付けられた型枠を掴み、それを赤外線ヒーターへ運ぶ。ヒーターでは240℃で30秒間熱せられる。熱せられたシートは次に射出成形機へ運ばれる。ここで型を閉め、リブなどを樹脂でオーバーモールド。約1分プレスしたあと、冷却して固まったところで、ロボットが型から外し、完成となる。