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【インタビュー】メルセデス・ベンツ「G 550 4×4 スクエアード」の責任者、グンナー・グーテンケ氏に聞く

“毎日使えるモデルが欲しい”とのユーザーの要望に応えた特別仕様車

2016年4月4日 開催

 メルセデス・ベンツ日本は、4月4日~5月31日の期間限定でGクラスの特別仕様車「G 550 4×42(フォー・バイ・フォー スクエアード)」の受注を受け付けている。価格は3510万円。

 このモデルの概要については発表会の記事などで既報のとおりだが、「G 550」をベースに6輪モデル「G 63 AMG 6×6(シックス バイ シックス)」と同等の足まわり、カーボンファイバー製のオーバーフェンダーなどが与えられ、ボディサイズは4520×2100×2240mm(全長×全幅×全高)と圧巻の体躯を持つ。

 その特徴的な足まわりでは、各ホイールに平行する2本のスプリング/ダンパーストラットを搭載し、片方のスプリング/ダンパーストラットは固定された減衰特性で通常どおりに動作。もう一方のストラットには電子制御可変ダンパーを採用し、走行状況に応じて減衰特性全体を変更することが可能になっている。

 4月4日に行なわれた発表会には、独ダイムラーAGでGクラス統括責任者を務めるグンナー・グーテンケ氏が出席。発表会ののち、グーテンケ氏を囲んでのグループインタビューが行なわれたので、本稿ではその模様をリポートしたい。


G 550 4×42のプレゼンテーションを行なうグンナー・グーテンケ氏

──なぜこのタイミングでこの豪華な足まわりを持つG 550 4×42を発表したのでしょうか?

グーテンケ氏:G 63 AMG 6×6ではユーザーからとてもよいフィードバックをいただき、「このクルマはとても素晴らしいが、毎日使えるモデルも欲しい」との声があった。そこでアイディアがひらめき、今回のモデルの開発に至っています。

──G 550 4×42の開発期間はどのくらいですか?

グーテンケ氏:G 550 4×42の開発にはだいたい12カ月ほどかかっています。G 63 AMG 6×6から短いスパンでG 550 4×42を発表できたのは、Gクラスのさまざまなポートフォリオがあったから。Gクラスは歴史があるので、市場向けに使用しているもの以外にも使えるものがあるのです。

G 550 4×42のボディサイズは4520×2100×2240mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2850mm。エクステリアではステンレス製アンダーガード、カーボンファイバー製オーバーフェンダー、カーボンファイバー製フロントルーフスポイラー(LEDライト付)に加え、ハイグロスブラックペイント22インチ5ツインスポークアルミホイール(タイヤサイズ:325/55 R22)を特別装備

──G 63 AMG 6×6とG 550 4×42の足まわりはまったく同じですか?

グーテンケ氏:まったく同じではないですが、リアアクスルに関してはまったく同じ。フロントアクスルはやや異なります。

──G 63 AMG 6×6のテクノロジーをG 550 4×42に移植するにあたって苦労した点、これだけは外せなかった技術というのがあれば教えてください。

グーテンケ氏:開発時に難しかったのは最高速を伸ばすことでした。G 63 AMG 6×6の最高速は160km/hですが、G 550 4×42は210km/hまで引き上げたかった。ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)などを含め、オンロード・オフロードの両方で使える適正な設定を考えるのが重要だったのです。なのでESPはG 63 AMG 6×6よりも新しいものが使われています。

──今回のG 550 4×42はAMGモデルではなくスタンダードラインアップですが、それはなぜでしょう? 今後AMGモデルを展開することも考えているのでしょうか。

グーテンケ氏:世界を見渡すと、Gクラスのうち2台に1台がAMGモデルになっています。なのでAMGとは緊密に開発を行なっておりますが、このクルマはメルセデスブランドで出すのがタイミングとしてよかったのです。また、現状ではG 550 4×42にほかのエンジンを搭載することは考えていません。

──エンジンはベースのG 550と同じものですか? またファイナルギヤについてもいかがでしょうか。

グーテンケ氏:はい、まったく同じエンジンです。ポータルアクスルに合致するようエンジン系の電子デバイスは変更しています。ファイナルギヤも同じです。

各ホイールに2本ずつ装着されるスプリング/ダンパーストラットと可変ダンパーシステムから構成されるラリー強化仕様ツインサスペンションを装備し、車高はG 550と比べ270mmも高い。最低地上高と渡河深度は460mm/1000mmとなっている

──足まわりについて、モードは何種類あるのでしょうか?

グーテンケ氏:クルマ自体の車高は一定で、エアサスは装備していません。オフロードを走行する際、ベローズが破けるなどの危険性があるのでエアサスは不要でした。460mmという最低地上高によりかなりの路面をカバーできると思っています。G 550 4×42ではダンパーのスティフネスを変更することができ、安定性と硬さが変わります。モードは「スポーツモード」と「コンフォートモード」の2パターンを用意しています。

──G 550 4×42ではリアゲートのスペアタイヤがありません。これはなぜですか?

グーテンケ氏:Gクラスでこういうのも面白いかなと思いやってみました(笑)。お客様が望めば装着することもできますが、こういう姿も新しいですよね。このように車高の高いクルマですから、スペアタイヤがない方がいかにも“箱型”を強調してよいのではないかと思い採用しました。

G 550 4×42専用カラーの「エレクトリックビーム」は270万円高のオプション設定

──ボディカラーに専用カラーとなる「エレクトリックビーム」が用意されていますが、日本円で270万円という価格設定です。特徴を教えてください。

グーテンケ氏:この美しい色を出すのがとても大変でした。手作業で何層にも塗装しているのです。条件付けも厳しく設定しています。黄色を選んだのは美しいからです!

G 550 4×42のインテリア。本革巻きステアリング&シフトノブ、ダイヤモンドステッチ入りのレザーシート(ブラック)などが専用装備となっている

──改めてメルセデス・ベンツにおけるGクラスの存在意義と、将来に向けての発展性について教えてください。

グーテンケ氏:Gクラスは37年の歴史を持ち、ずっとアイコンであり続けてきました。こういうアイコンがあることを会社も誇りに思ってくれています。私どもの将来の戦略は、このクルマのユニークなところを強調していこうということ。オフロードの能力、インテリアのラグジュアリー性など、ドライバーのための技術でまったく妥協なくやっていきます。どのようなクルマでも、生産に最初と最後があるわけですが、メルセデス・ベンツにとってGクラスの生産終了はないのです。

──Gクラスの責任者として、日本市場をどのように見られていますか。

グーテンケ氏:日本のお客様はクルマがお好きだという印象を持っており、Gクラスを好んで愛して下さっているので、私たちもベストを尽くさないと、という気持ちです。Gクラス、ひいてはメルセデス・ベンツ全体に対して前向きでよい方向の感情を抱いて下さっているのではないでしょうか。

──Gクラスは2017年にモデルチェンジするとのうわさがあります。それは本当ですか? また全幅が広がるというのは本当でしょうか。

グーテンケ氏:私もインターネットで見ました(笑)。37年間、Gクラスはクルマの性格を変えないで慎重に開発し、発展してきました。可能性は色々ありますが、細かい話は控えさせてください!

(編集部:小林 隆)