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SUPER GT第1戦岡山、GT500の優勝は1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)

3連覇へ好スタート。GT300は65号車 LEON CVSTOS AMG-GT(黒澤治樹/蒲生尚弥組)

2016年4月9日~10日 開催

SUPER GT開幕戦で優勝した1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)

 SUPER GT開幕戦「OKAYAMA GT 300km RACE」の決勝レースが4月10日、岡山国際サーキット(岡山県美作市)において開催された。成績に応じたウエイトハンデ制度があるSUPER GTのレースで、ハンデなしのレースはこの開幕戦と最終戦のみ。それぞれの車両の本当のパフォーマンスが分かるレースとして、最も大事なレースの1つと言ってよい。結論から言えば、今回のレースはそうした“どの車両が強いのか?”、それがレースの結果に反映されたレースとなった。

決勝レーススタートのようす

 GT500のレースを制したのは、3位スタートから中盤でトップに立った1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)。レースの序盤に、2位スタートの6号車 WAKO'S 4CR RC F(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ組)を抜いた1号車 MOTUL AUTECH GT-Rは、ピットインのタイミングで、ポールからスタートした37号車 KeePer TOM'S RC F(ジェームス・ロシター/平川亮組)を抜くと、そのままトップを独走し嬉しい開幕戦優勝を果たした。2位は37号車 KeePer TOM'S RC F、3位は後半追い上げた46号車 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山哲/千代勝正組)。

GT300クラスの決勝レーススタート

 GT300はポールからスタートした25号車 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)がピットイン時にタイヤを一部だけ交換するという作戦が失敗し、ずるずると後退していく中トップに立ったのは65号車 LEON CVSTOS AMG-GT(黒澤治樹/蒲生尚弥組)。2位に15秒以上の大差をつけてLEON RACINGは初優勝を達成した。2位はピット作業で順位を上げた4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)、3位は予選3位からスタートした7号車 Studie BMW M6(ヨルグ・ミューラー/荒聖治組)。4位は11号車 GAINER TANAX AMG GT3(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム組)が入り、Mercedes-Benz AMG GT3強しを印象づけた。

GT500

 82周で争われたレースで勝負を分けたのは、35~40周前後に行なわれたピットストップだった。ポールポジションから快調にレースをスタートした37号車 KeePer TOM'S RC Fは、ジェームス・ロシター選手のドライブでトップをキープしたまま36周目にピットイン。この時点で予選3位から2位に上がっていたロニー・クインタレッリ選手のドライブする1号車 MOTUL AUTECH GT-Rに1秒程度の差をつけており、レクサスとニッサンのマッチレースという展開になっていた。

 ところが、37号車 KeePer TOM'S RC Fは、36周目に行なったタイヤ交換、給油、平川亮選手へのドライバーチェンジに約48秒と、ほかのチームよりも6~8秒近く余計にピットストップの時間がかかった。その4周後に1号車 MOTUL AUTECH GT-Rが松田次生選手に交代するなどのピット作業にかかった時間は約41秒で、37号車を逆転。この時点でピットストップを終えた車両の中ではトップの位置に戻り、2位の37号車 KeePer TOM'S RC Fとの差は約8秒。まさにピットストップの差が両車の差となってしまったのだ。

 この後、1位1号車 MOTUL AUTECH GT-Rと2位 37号車 KeePer TOM'S RC Fの差は開く一方で、2位以下との差をコントロールした1号車 MOTUL AUTECH GT-Rがそのまま優勝した。

 レース後半のヒーローは、このレースがGT500デビューレースとなる46号車 S Road CRAFTSPORTS GT-Rをドライブする千代勝正選手。4位で本山哲選手からバトンを受け取った千代選手は、前を行く6号車 WAKO'S 4CR RC Fとの差をどんどん詰めていき、53周目にバックストレート終わりのコーナー2つをアウト、アウトで回って豪快にオーバーテイク、3位に浮上する。

GT500クラス2位:37号車 KeePer TOM'S RC F

 さらにその時点で10秒以上あった37号車 KeePer TOM'S RC Fとの差をぐんぐんと詰めていく。残り10周となった段階でほぼテールツーノーズとなり、37号車をドライブする平川亮選手との熱いバトルが展開された。GT500のレースではこれまで見なかったようなドライビングでクルマを振り回しながら平川選手を追い回すというテンションの高いレースはそのままチェッカーまで続き、千代選手の猛攻をしのぎきった平川選手の37号車が2位、千代選手46号車は3位でゴールした。

GT500クラス3位:46号車 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山哲/千代勝正組)

 今回のレースの結果を見る限り、ニッサン GT-R勢は、ミシュランを履いた1号車と46号車が1位と3位、ブリヂストンを履いた12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)が5位と上位を占めており、車両としての優位性は今シーズンも続いているように見て取れる。37号車が2位、6号車が4位に入ったレクサス RC F勢がそれに対抗できるかどうかが今シーズンの焦点となりそうだ。

 それに対してホンダ NSX CONCEPT-GT勢は、100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)が10位になるのがやっとという状態で、レース中のベストラップもニッサン、レクサス勢よりも1秒以上遅い状況だ。コーナリングマシンと言われるNSX CONCEPT-GTが、コーナーが連続する岡山でこの結果ということを考えると、何かを大きく変えない限りはニッサン、レクサスに追いつくのは難しい状況だろう。ホンダがどのように巻き返すのか、第2戦以降で注目したいところだ。

SUPER GT第1戦岡山 GT500決勝レース結果(暫定/編集部集計)
GT500クラス表彰台
順位号車車両ドライバータイヤ周回数
1位1MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリMI82
2位37KeePer TOM'S RC Fジェームス・ロシター/平川亮BS82
3位46S Road CRAFTSPORTS GT-R本山哲/千代勝正MI82
4位6WAKO'S 4CR RC F大嶋和也/アンドレア・カルダレッリBS82
5位12カルソニック IMPUL GT-R安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラBS82
6位38ZENT CERUMO RC F立川祐路/石浦宏明BS82
7位39DENSO KOBELCO SARD RC Fヘイキ・コバライネン/平手晃平BS82
8位36au TOM'S RC F伊藤大輔/ニック・キャシディBS82
9位19WedsSport ADVAN RC F関口雄飛/国本雄資YH81
10位100RAYBRIG NSX CONCEPT-GT山本尚貴/伊沢拓也BS81
11位17KEIHIN NSX CONCEPT-GT塚越広大/小暮卓史BS81
12位15ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT武藤英紀/オリバー・ターベイBS81
13位24フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R佐々木大樹/柳田真孝YH80
14位64Epson NSX CONCEPT-GT中嶋大祐/ベルトラン・バゲットDL80
15位8ARTA NSX CONCEPT-GT松浦孝亮/野尻智紀BS23

GT300

GT300クラス優勝:65号車 LEON CVSTOS AMG-GT(黒澤治樹/蒲生尚弥組)

 GT300も、ピット作業が勝負を分けたレースとなった。序盤トップを快走したのはポールポジションからスタートした25号車 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)。2位の65号車 LEON CVSTOS AMG-GT(黒澤治樹/蒲生尚弥組)を徐々に引き離していく展開に。だが、それもレース序盤だけで、中盤以降は1位と2位の差が詰まる緊迫のレースが展開された。

 そのレースが動いたのは34周目(GT500周回、以下同)。まず65号車 LEON CVSTOS AMG-GTがピットイン。このピット作業で、チームは右回りのコーナーが連続する岡山サーキットの特性から負荷のかかる左側のタイヤだけを交換することを決断し、ピット作業にかかる時間を短縮して送り出す作戦にでる。その1周後にトップだった25号車 VivaC 86 MCもピットに入り、同じように左側だけを交換する作戦にでて、65号車よりも短い時間で送り出すことに成功し、ピットストップを終えた車両の中ではトップを維持したままレースに復帰した。

 ところが、25号車のタイヤの摩耗は思っていたよりも進んでいたようで、後半を担当した松井孝允選手は苦戦し、65号車 LEON CVSTOS AMG-GTに抜かれ、ズルズルと後退していき、結局6位でゴールすることになった。一方、トップに立った65号車 LEON CVSTOS AMG-GTは、そのままトップを守りきり優勝した。チームとして、そして後半スティントを担当した蒲生尚弥選手にとって嬉しい初優勝となった。

 一方このレースでは、優勝した65号車 LEON CVSTOS AMG-GTだけでなく、2016年にFIA GT3の新車として投入されたMercedes-Benz AMG GT3の強さが光るレースとなった。2位には予選8位から徐々に追い上げ、素早いピットストップで大きく順位を上げることに成功した4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)、4位にも11号車 GAINER TANAX AMG GT3(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム組)が入り、Mercedes-Benz AMG GT3が力強いパフォーマンスを持っていることを印象づけた。

GT300クラス2位:4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)

 なお、残る表彰台の一角となる3位には7号車 Studie BMW M6(ヨルグ・ミューラー/荒聖治組)が入り、表彰台はドイツ車勢が独占するという結果になった。

GT300クラス3位:7号車 Studie BMW M6(ヨルグ・ミューラー/荒聖治組)
SUPER GT第1戦岡山 GT300決勝レース結果(暫定/編集部集計)
GT300クラス表彰台
順位号車車両ドライバータイヤ周回数
1位65LEON CVSTOS AMG-GT黒澤治樹/蒲生尚弥YH76
2位4グッドスマイル 初音ミク AMG谷口信輝/片岡龍也YH76
3位7Studie BMW M6ヨルグ・ミューラー/荒聖治YH76
4位11GAINER TANAX AMG GT3平中克幸/ビヨン・ビルドハイムDL76
5位51JMS LMcorsa 488 GT3都筑晶裕/新田守男YH76
6位25VivaC 86 MC土屋武士/松井孝允YH76
7位21Hitotsuyama Audi R8 LMSリチャード・ライアン/藤井誠暢DL76
8位0GAINER TANAX GT-Rアンドレ・クート/富田竜一郎DL76
9位88マネパ ランボルギーニ GT3織戸学/平峰一貴YH75
10位3B-MAX NDDP GT-R星野一樹/ヤン・マーデンボローYH75
11位55ARTA BMW M6 GT3高木真一/小林崇志BS75
12位31TOYOTA PRIUS apr GT嵯峨宏紀/中山雄一BS75
13位87triple a ランボルギーニ GT3細川慎弥/佐藤公哉YH75
14位30TOYOTA PRIUS apr GT永井宏明/佐々木孝太YH75
15位18UPGARAGE BANDOH 86中山友貴/山田真之亮YH75
16位108DIRECTION 108 HURACAN峰尾恭輔/ケイ・コッツォリーノYH75
17位2シンティアム・アップル・ロータス高橋一穂/加藤寛規YH75
18位50ODYSSEY SLS安岡秀徒/久保凜太郎YH75
19位22アールキューズ SLS AMG GT3和田久/城内政樹YH75
20位26AUDI R8 LMS密山祥吾/元嶋佑弥YH75
21位63DIRECTION 108 HURACANエイドリアン・ザウグ/横溝直輝YH75
22位33Excellence Porsche山野直也/ヨルグ・ベルグマイスターYH74
23位61SUBARU BRZ R&D SPORT井口卓人/山内英輝DL74
24位111エヴァRT初号機 Rn-s AMG GT植田正幸/鶴田和弥YH74
25位60SYNTIUM LMcorsa RC F GT3飯田章/吉本大樹YH74
26位360RUNUP Group&DOES GT-R柴田優作/田中篤YH73
27位48DIJON Racing GT-R高森博士/田中勝輝YH73
28位5マッハ車検 MC86玉中哲二/山下潤一郎YH出走せず
29位9GULF NAC PORSCHE 911阪口良平/吉田広樹YH出走せず

決勝レース終了後の記者会見

 決勝レース終了後、GT500クラスで優勝した1号車 MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリ選手と松田次生選手、GT300クラスで優勝した65号車 LEON CVSTOS AMG-GTの黒澤治樹選手と蒲生尚弥選手が記者会見に参加。優勝した感想などを話した。

──昨日の予選結果を含めて、今回優勝した感想をお願いします

クインタレッリ選手:(テスト結果がよくなかったので)優勝の実感はできていない。個人的には開幕戦の初優勝、岡山で初優勝なので嬉しい。ロードテストと違って、いつもどおりのパフォーマンスで、路面がよくなると私達のタイヤがリードしてくれた。Q2の3位が大事だった、そのおかげで今日のレース展開ができ、自分の好きな走りができた。

松田選手:岡山と富士でテストを行なって、見ていた皆さんも“1号車大丈夫か?”と思ったかもしれないが、ブリヂストンとレクサス、ホンダでも速いんだろうなと感じて、その不安の中で開幕戦を迎えた。

フリー走行からメカニックもミシュランもみんな頑張ってくれて、Q1を突破でき、決勝では最終的に2位とのギャップを20秒近く開くことができた。自分との戦いで2位とどれだけ差を広げられるか目一杯走った。この1勝は僕にとって、立川選手や本山選手の(優勝回数の)記録を抜いて単独で1位になることができた。

SUPER GTはここで勝つと(ウェイトで)辛いというのはあるので、この苦しいところを乗り越えることができたら、たぶんうまく僕らも3連覇いけそう、なんかいけそうな雰囲気もある。このままウェイトが重いですが、次戦以降も頑張っていきたい。

黒澤選手:予選は順調に見えたかもしれませんが、新車を使っているうえでの微調整が必要な部分があり、最後に蒲生選手が素晴らしいアタックを決めてくれて、2番手スタートすることができた。

スタートは自分でできる限りのことを頑張るしかないと走った。離されちゃうかと思ったがトップについていくことができ、抜くまではいかなかったので蒲生選手にバトンタッチした。蒲生選手がピットアウト後に素晴らしい走りをして、デビュー戦で優勝することができた。

蒲生選手:予選では自分でも納得いく走りができた。僕らはタイヤの左側だけ交換するということで、後半右側のタイヤが持つのか分からない状況だったが、タイヤをいたわりながら最後まで安定したラップで走ることができた。

──今日勝てた1番の勝因は?

クインタレッリ選手:テストの結果がわるくても冷静にタイヤの判断ができたこと。我々は雨上がりとかでは(パフォーマンスが)ちょっとものたりない。決勝では最初からドライ路面で走れたし、後から路面温度がそこそこ高い状況になってきたので、タイヤとの相性、路面コンディションがよかったこと。

松田選手:
1番はレースの展開。ロニー選手が言ったようにタイヤの戦略もありますが、それがうまくいっても勝つのは難しい。Q2で上位にいけたことや、粘りのあるレースができたことがすごくよかった。ロニー選手の追い上げがなかったら勝つことが難しかった。いい流れで予選を終えて、決勝もいいペースで走れたこと。

黒澤選手:自社チームを立ち上げて、レオンチームとともにやってきた。スタッフがメンテナンス等一生懸命やってくれたし、いろいろオーナーにも尽力してもらい、蒲生選手も頑張ってくれて、みんなの力が1つになったのが勝因。ここにくる1日前に娘が生まれて、それが天使として微笑んでくれたのもあるかな。

蒲生選手:勝因はクルマとタイヤとブレーキがよかったからです、はい。

──次戦以降への意気込みについて話してください

クインタレッリ選手:クルマが重くてもいつもどおりやればポイントが取れると思うので、頑張ります。

松田選手:(開幕戦を勝つとシリーズチャンピオンが取れないというAUTO SPORTS誌の分析に対して)AUTO SPORTSさんの記事を覆すように、そうじゃないぞと見せつけるようにやっていきたい。(前に)開幕戦で勝った時はチャンピオンを取れなかったので、不安といえば不安。ロニーが言ったようにテストと違ってすごくタイヤとクルマがポジティブなので、今後も気を緩めずにネジを巻いて頑張りたい。

黒澤選手:開幕戦を勝つと辛いというのは今知ったので、今更言われても……。でも勝っちゃったのはしょうがない。尚弥選手の地元で勝てたのもよかったし、これから邁進して最後の最後でチャンピオンを取れるようチャンピオンシップを戦っていきたい。

蒲生選手:今週、すべてのセッションでよくて、それで開幕戦を勝ててよかった。この長いシーズンも今回のレースのように1戦1戦こなしていけば、結果的にチャンピオン争いができると思うので、頑張りたい。

(笠原一輝/Photo:高橋 学)