インプレッション
オーテック「ノート e-POWER モード・プレミア」(クローズドコース)
2016年11月29日 06:00
モード・プレミアに用意されるTouring Packageに注目
エンジンで発電した電気を利用して、100%モーター駆動とする日産自動車「ノート e-POWER」の走りはかなり斬新に感じた。モーターのスムーズな加速感に加え、ほぼアクセルオフのみで完全停止できるエネルギー回生制御などはこのクルマの真骨頂だ。新たな世界を見せてくれるクルマが誕生したことは、久々に心躍るものがあった。
けれども、これまでのクルマとはちょっと違う乗り味に戸惑ったことも事実。モーターのみで走行中、バッテリー残量が減少したり、ブレーキブースターの負圧が減少しすぎたりした場合、突然エンジンが2400rpmまで吹け上がり発電を始めることもまた違和感があった。タウンスピードでそれが始まると、モーターだけで走っていた静寂が一瞬にしてなくなることも物足りない。エンジンを始動する時は、できるだけ燃焼効率がよいポイントで回してやろうという考え、そしてモーター駆動時間をできるだけ長くしたいという思いがそうしているらしいが、昨今の1000rpm以下のアイドリングに慣れ切った身体には少々違和感を感じる。
一方で、ボディが軟弱で特に足まわりの動き出しにシブさを感じるなど、1台のクルマとしてノート e-POWERを見ると、まだまだ先を求めたくなるポイントがあった。もちろん、実用車としては十分なレベルにあるのだが……。
そんな思いを解消してくれるのが、今回話題にするオーテックジャパンの「ノート モード・プレミア」である。このクルマは上質さをウリにしたグレードの1つで、エクステリアからインテリアまで洗練された造り込みが行なわれていることは一目瞭然。ノーマルとはひと味違う世界観は、写真を通じて十分に伝わるのではないだろうか。
ただ、注目は何もそんな見た目だけの話ではない。モード・プレミアに用意された「Touring Package」がなかなかイイ味を出していることである。専用の16インチホイールにはじまり、専用セッティングのサスペンション、電動パワステ、そしてボディにも補強(フロントクロスバー、フロント&リアメンバーステー、センタートンネルステー、テールクロスバー)が加わるのだ。
さらにはファインレスポンスVCMを与えることで、パワートレーンの制御も変更。ECOモードはノーマルと変わらないアクセルだけのワンペダル走行が可能だが、ノーマルやSモードでは独自のセッティングを行なっているのだ。ちなみにこれらは12月に登場すると言われているノート e-POWERのNISMO仕様にも同様のものが与えられる。
リニアさが増した印象のパワートレーン制御
今回は街乗りから高速道路、そしてワインディングを想定したクローズドコースを走ってみたが、そこで一般的なレベルで動かしてみても違いは明らかだった。ステアリングの切りはじめから程よい反力が感じられると同時に、素直にクルマ全体がロールしていく過程はとても自然。足がしなやかに動いているのも伝わってくる。荒れた路面でもこれなら上質にこなすことができるだろう。タイヤや足まわりだけでなく、ボディにも手を加えた効果はハッキリと感じられる。
パワートレーンの制御はリニアさが増した印象だ。回生制御は車速が高い領域から一定した感覚であり、低速でアクセルオフした時にノーマル車で感じられたグッと引き止められるような回生は感じられない。だから完全停止するならブレーキペダルで止まる必要がある。加速方向もまたモーターのトルク変動が少なく、ジワリと速度を重ねていく。発電制御もいきなりエンジンが吹け上がることもなく、ジワリと車速に応じてエンジンが回転を上昇させていくところが心地いい。Sレンジについてはそこからアクセルレスポンスを向上させたイメージ。ちょっと元気よく応答してくれる感覚はなかなかだ。
すなわち、基準車のようにこれまでの世界とはまったく異なる感覚は薄れたものの、今まで通りのクルマとして乗ることができる環境を整えているわけだ。それでいて燃費は変わらずだというから問題ナシ。いざとなればノーマルとは変わらないECOモードがあるわけだし、Touring Packageのネガは目新しさがないこと以外に見当たらない。
あと求めるなら、メダリストグレードに準備されていた厚いウィンドウとドア内部に与えられた吸音材。これらが装着されないことで、石はね音が車室内にやや入ってきている。より上質にというのであれば、次なる対策として視野に入れるべきかもしれない。とはいえ、モード・プレミアに与えられたTouring Packageの見どころはかなりのものがあった。同様の仕様が与えられるというNISMOグレードも含めて、これからノート e-POWERの魅力がより一層深まることは確実である。