インプレッション
ボルボ「XC60 T5 AWD クラシック」(公道試乗)
2017年1月31日 00:00
XC60に「クラシック」設定
モデルライフの末期を迎えると「クラシック」を設定するのがボルボのお決まりである。装備を充実させながらも価格が抑えられており、品質的に完熟の域に達していることから「クラシック」が出るのを待って購入するというユーザーも少なくないらしい。そして2008年のデビュー以来、グローバルでもっとも売れているボルボ車となっている「XC60」も、いよいよそのときを迎えた。
ご参考まで、2016年モデルの「T5 AWD SE」の車両価格は599万円で、レザーパッケージの36万円、モダンウッドパネルの4万7000円、サンルーフの20万6000円、19インチアルミホイールの10万円を合計すると670万3000円となる。これに対し、今回の2017年モデルの「XC60 T5 AWD クラシック」はすべて付いて629万円。差額は41万3000円と小さくない。
同時に、これまでもXC60の「T5」(2WD)には搭載されていたことはあったが、4WD(AWD)との組み合わせはまだなかったところ、評判のよいDrive-Eパワートレーンがようやく与えられたことにも注目だ。なお、この機に日本に導入されるXC60のラインアップ体系が3モデルに整理され、「クラシック」がクリーンディーゼルの「D4」の2WDでも選べるようになったほか、スーパーチャージャー付きの「T6」のR-Designが残された。
「クラシック」は内外装にも見どころがある。外観では、「D4」は18インチ仕様となるが、「T5」には写真のスタイリッシュな19インチアルミホイールが標準装備となるのがポイントだ。一方、インテリアでは「T5」と「D4」ともに標準装備される「モダンウッドパネル」が新しい。インテリアのムードづくりでは「XC90」でも驚かされたばかりだが、そのエッセンスが今回の「クラシック」にも盛り込まれているようだ。
Drive-EとAWDの組み合わせ
XC60にはこれまでもしばしば触れる機会があり、今回は約半年ぶりとなったが、「クラシック」が出たことを感慨深く思いつつ、あらためて古さを感じさせないスタイリングであることを再確認。新世代のボルボ・デザインに移行した90シリーズは、旧世代とはだいぶテイストが変わり、よりエレガントさをアピールするものとなっているが、現行60シリーズのこのダイナミックで躍動的なデザインも当面は色あせることはないだろう。
2.5リッターの5気筒から2.0リッター4気筒になったターボエンジンは、245PS/350Nmを発生し、ATは6速から8速になり、燃費の公表値も大幅に向上している。ドライブすると、やはりDrive-Eパワートレーンは期待を裏切ることはない。いたって乗りやすく、上質なドライバビリティを備えている。いかにもディーゼルらしいトルクフルな加速を身上とする「D4」に対し、ガソリンの「T5」はレスポンスのよさとスムーズで伸びやかな回転フィールが持ち味だ。むろん「D4」ほどではないにせよ、低回転域から十分に力強い。また、同じパワートレーンを搭載するボルボの下位モデルと比べても、XC60は静粛性等がより高いレベルに仕上がっているように思えた。このドライブフィールが4WDでも味わえるようになったことを歓迎したい。
軽量なDrive-EパワートレーンとAWDという組み合わせのせいか、フットワークの仕上がりも非常にバランスよくまとまっている。最新モデルと比べるとステアリングはやや重めながら、ロールは小さく、応答遅れが気になることもなく、このサイズの車体をいたって軽快に走らせることができている。それはいささかフロントヘビーな印象のある「D4」に対する「T5」のアドバンテージでもある。
2017年モデルとしての進化も
乗り心地もいたって快適だ。ファイナルモデルだからこれほどよく仕上がっているのか、T5とAWDの組み合わせがよいのか、その両方とも当てはまるとは思うが、これで終わらせてしまうのはもったいない、まとまりのよさを大いに感じさせる仕上がりだった。
XC60の次期モデルの登場を待っている人も少なくないことだろうが、実は現行モデルでも新しいXC90をディーラーに見に来た人が「思ったよりも大きい」「価格が高い」とか、納期がだいぶ先になることを知って、XC60に流れているケースが少なくないそうだ。
いろいろな理由はあるだろうが、最終的にこの完熟の域に達したXC60をこのタイミングで選ぶというのも決してわるくない選択肢だと思う。
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