特別企画

【特別企画】岡本幸一郎が「VOLVO Drive-E ECOドライブチャレンジ」でXC60の燃費性能をチェック

ACC任せの快適ロングランでも東京→神戸を15.4km/Lで走破!

新しい「Drive-E」を積むXC60の実力を試す

 先日の試乗インプレッション(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20140220_636099.html)に続いて、新しいT5エンジンと8速ATを搭載した新型「XC60」の環境性能を実感してもらおうという趣旨で、ボルボ・カー・ジャパンが主催したエコラン大会「VOLVO Drive-E ECOドライブチャレンジ」に参加したので、その模様をリポートしよう。

 このエコラン大会は、東京~神戸間の往路と復路のどちらかを走行して燃費を競うというもので、Car Watchチームは往路のほうに参加。大会当日の朝、スタート地点となる東京・芝公園のボルボ芝公園オフィスのあるビルに集合。この日、参加するのはCar Watchを含む6媒体のチーム。まず、広報担当の相良氏から簡単なブリーフィングを実施。エアコンを切ったりせず、ぜひ快適に走ってほしいことや、それでも予想を超える燃費が出るであろうと伝えられた。また、ボルボ初の省燃費走行モードとしてDrive-Eモデルに追加された「ECO+(エコプラス)モード」を選択すると、5%ほど燃費が向上するという。

 今回、Car Watchチームにはくじ引きの結果で「XC60 T5 SE」が割り振られた。車両はこのT5 SEと「XC60 T5 R-DESIGN」が各3台ずつ用意されており、どちらもJC08モード燃費は同じ13.6km/L。しかし、タイヤサイズがSEは235/55 R19、R-DESIGNは255/45 R20で、当日も「SEのほうがわずかに有利かも!?」なんて話題が出ていた。それだけに、このクルマのJC08モード燃費値の13.6km/Lを超えるのは当然として、最低でも15.0km/L台、あわよくば16.0km/L台に乗せたいところだ。

新パワートレーン「Drive-E」を採用した「XC60 T5 SE」。ボディーカラーはXCシリーズ専用色の「トワイライトブロンズメタリック」

 と、意気込んではみたが、実はCar Watchチームには「成績重視の超エコランではなく、より現実的な燃費データを得るように」との指令が編集長から下されており、今回はボルボ自慢の装備である「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」などをフル活用し、クルマ任せでお気楽に走ることになっていた。ちなみに、上位3チームはボルボからお食事会に招待されるとのことだったので、頑張ってゲットしたい気もしたのだが……。

東京タワーを背にしたスタート前の様子
20インチのワイドタイヤを装着するR-DESIGNより、Car Watchチームが乗るSEのほうが燃費では有利なはず

 目的地は純正ナビにセットされており、このカーナビが選ぶ道が推奨ルートながら、それ以外のルートを走ってもOKとのルールだったが、「クルマ任せ」という独自ルールのCar Watchチームはカーナビの指示通りに走る。走り出す前に、前述のECO+モードを選択してオートエアコンの温度設定を23℃に設定。天気がよかったのでシートヒーターやステアリングヒーターはOFFのままとした。

 オンボードコンピュータの平均車速と平均燃費をリセットし、7時40分にいざスタート! まずはすぐ近くにある芝公園ランプから首都高速に乗り、3号線を経由して東名高速を目指す。

 首都高速のこの区間は制限速度が60km/hなので、ステアリングのスイッチを操作してACCを60km/hに設定。まだ渋滞はあまりなく流れは順調で、走り始めてしばらくは平均燃費の数値がどんどん伸びていく。ちょっと話が逸れるが、それにしても60km/hという制限速度は、実際にその速度で走ってみるといかに非現実的であるかよく分かる。60km/hで走っていると周囲のクルマと速度差が大きくて、かえって危ないように感じるのだ。1日も早く制限速度が実態に即したものに見直されることを切に願う。

センターコンソールに追加された「ECO+モード」のスイッチ。これを押すだけで、トランスミッションのシフトポイントやエンジンレスポンス、エンジンの「Start/Stop機能」を最適化。さらに走行中にエンジンとトランスミッションを自動的に切り離し、車両の慣性エネルギーを効率よく利用する「ECO COAST(エコ・コースト)機能」が働くようになる
スタート前にACC操作を予行演習。欧州市場で育ったXC60は、速度設定の上限を200km/hまで用意しているが、今回の走行では100km/hまでしか使わない。新東名高速が100km/h設定に落ち着いているのが惜しい
今回のエコラン大会ではオンボードコンピュータの平均燃費で競われるため、走り出す前に平均車速と平均燃費の両方をリセット
カーナビの指示に従って芝公園入り口から首都高速に入る
合流などで瞬間的に渋滞することはあるものの、朝の下り車線はストップ アンド ゴーが連続するような混み方にはならない。全車速追従機能付きのACCが真価を発揮するシチュエーションだ
スタートから20分ほどで東名高速の東京IC(インターチェンジ)に到達

巧みなACCの制御とATのスムーズな加速

 首都高速から東名高速への接続道に入り、料金所を通過したのが8時ごろ。平均燃費は早くも13.9km/Lに達した。これは期待できそうだ。ACCを制限速度の100km/hに設定。交通量はすでにそこそこ多くなってきて、第1走行車線と第2走行車線は80~100km/h、追越車線はもう少しペースが早いという感じ。

 平均燃費は、ほどなく14.0km/Lを超えたのだが、この日は予報どおり風が相当に強くて、路肩の雑木林の木々がすごい揺れ方をしているのが見える。これは燃費に影響しそうだ……。また、ACC任せのこの走り方だと基本的には追い抜かれるばかりだが、第1走行車線にはたまに低速走行する大型車がいるので、筆者も第1走行車線をひたすら走るのではなく、できるだけACCで設定した速度を維持できるように車線を選ぶ。

 車線変更するときにはBLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)があるととても助かる。ついでに述べると、他メーカーの同様の装備では、警報を発するランプがドアミラーの鏡面に内蔵されている車種も存在するが、それでは点灯したときに重要な情報を隠してしまう可能性があるので、筆者としてはXC60のようにピラー部分に仕込まれているほうがよいと考えている。

都市部周辺の交通量が多い状況でドライブの疲労を軽減してくれるBLIS。検知エリア内に移動する物体がある場合にランプを光らせ、さらにその状態でウインカーを作動させると警告音が鳴ってドライバーに危険を知らせてくれる
運転席/助手席側の両サイドにランプを設定

 スタート地点から30kmあまり、東名高速に入って20kmぐらい走ったあたりで、平均燃費は15km/L程度まで伸びた。まだ積算走行距離が短いため、ちょっとした走り方の変化や路面の微妙な上り下りの勾配による影響で数値が上下しやすい。

 小田原厚木道路への分岐点あたりで、15km/L台半ばまで向上。このあたりで燃費の伸びが鈍化してきたが、同時に交通量も減って景色が一気に開けて、ようやく100km/hキープで走行できるようになった。ACCはウインカーを出して車線変更すると、「ドライバーは追い越し加速をしたがっている」と判断するようで、少しエンジンを吹かし気味にする制御を行うようだ。また、減速時の制御もいたって自然。ACCの加減速の制御も、だんだん改良されていることが分かる。

 秦野中井ICを通過すると制限速度が80km/hとなるため、ACCの設定も変更する。右ルートを走るつもりだったが、カーナビが左ルートを指示したので左ルートを選択。燃費は相変わらず15km/L台半ばを指しており、さすがにこのあたりで伸びが止まった感じだ。また、車内の空気をリフレッシュしようとエアコンを内気循環から外気導入に切り替えたのだが、XC60には「アクティブ・キャビン・フィルター」が搭載されているので、臭いなども気にならず快適性は損なわれない。

ACCに加減速を任せて淡々と走る。制限速度が80km/hの区間は第1走行車線がほぼ指定席だ
カーナビの指示に素直に従って左ルートを走行
フロントウインドー上部の赤外線レーザーは50km/h以下の速度域で先行車を検知して追突回避やダメージ軽減を図る「シティ・セーフティ」で利用される。車両に加えて歩行者や自転車も検知してブレーキを作動させる「ヒューマン・セーフティ」では、さらにデジタルカメラ、フロントグリル内のミリ波レーダーも組み合わせて使用

 大井松田ICから御殿場ICまでの区間は、きつめのカーブとアップダウンが続くため、平均燃費は14.6km/Lまで落ちてしまった。その先の御殿場ICから少し走ったところで、いよいよ新東名に乗る。この時点までの走行距離は102kmで平均燃費は14.9km/L。ACCの設定を再び80km/hから100km/hに戻す。このあたりは平坦なので、10kmあまり走ると平均燃費が15.7km/Lまで伸びている。

 その後しばらくは道路の勾配に応じて15km/L台で上下するという感じ。燃料計はスタート地点から150kmほど走ったところで、ようやくひと目盛り下がった。

 それにしても風が強い。さすがにときおり影響を受けて修正舵を要するが、車高の高いSUVとしては、あまりステアリングを取られないように感じたのは、クーペフォルムのXC60ならではだろう。目線が適度に高いので見晴らしがよいおかげか、疲労感も小さい。

 ときおりSA(サービスエリア)に立ち寄って休憩を取る。1度エンジンを止めると標準モードに戻るので、再出発の際にECO+のスイッチを押さなければならない。できればずっとECO+で走りたい人のために、常時ECO+になるようなモードが用意されるとなおよいかなと思う。

右手に富士山を仰ぎながら新東名を走る。できるだけ直線的に、アップダウンがないようデザインされた新東名は、走りやすいのでロングランの負担軽減にも効果がある
「NEOPASA(ネオパーサ)浜松」(下り)で最初の休憩。ピアノの鍵盤に見立てた施設外壁、内部に用意された楽器の展示ブースなどを楽しみつつ、トイレ休憩とドリンク購入などを済ませる
再出発のときにはECO+モードのスイッチを押し忘れないよう気をつけたい
新東名の100km/h巡航で平均燃費もグングンと上昇。平均燃費の「15.7」という数字の上にあるグリーンのゲージが「ECO guide(エコガイド)」。左の三角形が平均値(現在は15.7)で右の長い指針が瞬間値。それぞれ上に行くほど良好な状態

 島田金谷というICのあたりで、これまでのベストとなる15.8km/Lをマーク。平均速度は83km/hで、外気温は8℃だ。アイシンAWとの共同開発による8速ATは加減速が本当にスムーズで、8速ギヤで100km/h走行時のエンジン回転数は1500rpm(タコメーターでは1600rpmに見えたが……)と低い設定。ECO+モードでは補機類の作動の最適化が行われるし、走行状態によってエンジンとミッションの接続を自動的に切り離す「エココースト機能」も備えている。

527.4kmを走ってトータル15.4km/Lをマーク

 三ケ日JCT(ジャンクション)で新東名から東名高速に合流すると、道幅がいきなり狭くなった感じで交通量が一気に増える。カーナビによると、少し先の宇利トンネルというあたりが今回の行程のほぼ中間点となるようだ。燃費は少し下がって15.4km/Lとなった。

 そして東名高速から伊勢湾岸道に乗り継いだりしているうちに、気がつくと燃料計の2目盛り目が減っていた。上り坂が多く交通量も多いため、ACCが車間距離が縮まったことを検知してブレーキを効かせ、また再加速するという状況も多かったことから燃費は低下傾向だ。また、「名港トリトン」という海上に3つの大きな橋が並ぶ区間では強烈な向かい風を味わった。

 東名阪道を通り、新名神高速へ。速度規制の表示に従い80km/hで巡航したが、極端なアップダウンはないものの、燃費はちょっとずつ落ちてついに15.0km/Lを切ってしまった。ドライバーにとっては走りが安定していたので問題なかったが、少なからず風の影響を受けていたようだ。

 そこから先の草津JCTから名神高速に入る手前で15.2km/Lに燃費回復。気温は先ほどより下がって5℃。なにやら雪が降っていることを知らせる注意表示が出ていて、たしかにちらちらと雪が舞っている場所もあったが、とくに走行に支障はない。平均燃費の表示は京滋バイパスという道路のあたりで15.4km/Lからほとんど動かなくなってきた。

 名神高速最西のSAとなる吹田SA(下り)でちょっと遅めの昼食。一番人気として案内されていた「京阪ランチ」を食して再出発。燃費は15.4km/Lのまま、阪神高速の3号線へ。芦屋ICを通過したあたりは雪がちらついている。あたり一面が曇っていて、六甲山が見えない。

長時間連続して走っていると、LDWの作動や急なステアリング操作に反応して「DAC(ドライバー・アラート・コントロール)」が警告音とメーター内の表示で休憩するよう呼びかける。コーヒーカップの表現は古典的だが分かりやすい
焼肉専門店なども入っている吹田SA(下り)のフードコート。「京阪ランチ」はカリサクのエビフライとデミグラスソースたっぷりのハンバーグがメインとなる“洋食屋さん”テイストの人気メニュー
テスト車はコンチネンタルのエコタイヤ「ContiEcoContact 5(コンチ・エコ・コンタクト・ファイブ)」を装着。タイヤサイズは235/60 R18。空気圧は多人数乗車やエコ仕様に対応する270kPaに設定されていた

 燃費表示は15.4km/Lからほぼ動くことはないが、まれに15.5km/Lになるのが目に入る。できれば15.5km/Lで切りよくゴールを迎えたいところだが、それは難しそうだ。いよいよ目的地である神戸空港の最寄りの生田川ICが近づいてきたあたりでは、雪がかなりの勢いで舞うようになって驚いた。積もるほどではなかったとはいえ、いったい今年の気候はどうなっているのだろう……。

 一般道に下りてからは目的地まであとわずか。平均燃費計は15.4km/Lを表示しているが、赤信号で止まるたびに15.3km/Lに落ちないかドキドキする。ついに神戸空港が見えてきた。燃費の表示が15.4km/Lのまま、なんとかゴール! 燃料計も、ちょうど神戸空港に着いたところで半分(8目盛り中の4目盛り)になった。XC60の燃料タンク容量は70Lなので、ざっくりと35L使ったといったところか。500km以上走っても燃料が半分残っていたわけで、計算上は無給油で東京~神戸を往復できるということなのだからたいしたものだ。

ゴールに設定された神戸空港の駐車場に到着すると、天気はすっかり雪模様! スタートの東京はあれほど青空だったのに、500km以上という距離の長さを実感させられる光景だ
東京・芝公園から527.4km走った平均燃費は15.4km/L。都市部でそれほど渋滞に悩まされることもなかったおかげで平均速度は80km/hとなっており、極めて快適で効率的な長距離ドライブだったことを物語っている

 ひとまず、JC08モード燃費を大きく超えたのはもちろん、目標と思っていた15.0km/Lを超えられてよかった。この日のトップは16.3km/Lとのこと。ご参考までだが、翌日行われた復路では、上位3チームが17km/L台をマークしたという報告をボルボから受けた。

「VOLVO Drive-E ECOドライブチャレンジ」リザルト

媒体名使用車両燃費記録参加コース総走行距離
優勝CAR GRAPHICXC60 T5 R-DESIGN17.6km/L復路539.0km
2位Motor MagazineXC60 T5 R-DESIGN17.3km/L復路537.9km
オートックワンXC60 T5 SE17.3km/L復路527.5km
4位web CGXC60 T5 SE16.3km/L往路530.0km
5位ベストカーXC60 T5 R-DESIGN16.1km/L往路541.9km
6位@DIMEXC60 T5 SE16.0km/L復路530.5km
7位BRUTUSXC60 T5 SE15.7km/L復路571.8km
8位ENGINEXC60 T5 R-DESIGN15.5km/L往路555.0km
9位Car WatchXC60 T5 SE15.4km/L往路527.4km
10位週刊SPA!XC60 T5 SE14.5km/L往路539.5km
11位AUTOCAR JAPANXC60 T5 R-DESIGN14.0km/L往路525.4km
12位Le VOLANTXC60 T5 R-DESIGN計測ミスにより記録なし復路-

 ただし、本州の地形は関西から関東にかけてなだらかに下っているので、これまでの経験からして、だいたいどのルートを走っても関東→関西より関西→関東のほうが燃費はよくなる傾向にあると認識している。とくに今回は往路が強風に見舞われたのに対し、復路は穏やかな天候だったらしいので、このような結果になったのは不思議ではない。けっして負け惜しみではなく……(笑)

 いずれにしても、両日ともおそらく上位チームは相当にがんばってエコランしたであろうことを考えると、ほぼまるっきりACC頼りで走ったCar Watchチームの燃費が、往復11台の平均値である16.0km/Lからわずか0.6km/Lの落ち込みにとどまったのは立派だと思う。いかに「Drive-E」による新T5エンジンと8速ATの組み合わせの効率がよく、制御が巧みであるかの表れといえそうだ。

 このように、新しいパワートレーンを採用したXC60は燃費が良好で、いたって快適にロングツーリングをこなせるクルマであることが確認できた次第である。

全高は1715mmと高めなXC60だが、スタイリッシュなクーペフォルムで横風の影響はそれほど感じることなく、ロングツーリングをそれほど疲労感なくこなしてくれた
2.0リッター直列4気筒の直噴ターボの「B420」型エンジン。最高出力180kW(245PS)/5500rpm、最大トルク350Nm(35.7kgm)/1500-4800rpmを発生する

【お詫びと訂正】記事初出時、ボディーカラーと写真解説内の「シティ・セーフティ」「ヒューマン・セーフティ」に関する記述に一部間違いがありました。テスト車のボディーカラーは「リッチジャバメタリック」ではなく「トワイライトブロンズメタリック」です。「シティ・セーフティ」で使うのは赤外線レーザーになります。お詫びして訂正させていただきます。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。