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【インタビュー】新パワートレーン「Drive-E」担当マネージャーが語るボルボの将来像とは

“アーキテクチャ集約”による生産効率アップでユーザーに貢献

新パワートレーン「Drive-E」がボルボ 60シリーズに搭載
2014年2月20日発表

 ボルボは今後、ラインアップしている全モデルに、大部分を共通化したパワートレーンの「Drive-E」を採用すると発表。2014年モデルで新たに追加されることになるS60&V60シリーズのT5モデルと、刷新となるXC60のT5モデルからこの新パワートレーンを搭載することになった。

 新たなパワートレーンを発表するにあたり、ボルボ・カー・グループからDrive-Eパワートレーンを担当しているエンジンプログラムマネージャーのヨルゲン・ブリンネ氏が来日して新パワートレーンの特徴を解説。新技術が説明されたあとで個別インタビューにも対応してもらった。

 Drive-Eパワートレーンのエンジンは、スウェーデンのシュブデ工場に新たなラインを作り、そこで生産を行うという。ガソリン、ディーゼルともに、これまでに搭載されていた直列4気筒、直列5気筒、V型8気筒などのエンジンラインアップから、今後は直列4気筒ターボに集約することとなる。

 生産ラインは、ガソリン、ディーゼルともに同じ工程で組み立られる。2つのエンジンの25%は共通の部品を使い、50%は類似した部品を使う。これは「アーキテクチャの共有化」という表現で紹介され、集約化で生産効率がアップし、パーツを共有することでサービスの向上につながるという。つまり、結果的に価格面でユーザーに貢献することになる。

高出力化にはターボ+スーパーチャージャーで対応

新たなパワートレーン「Drive-E」の解説を行なうボルボ・カー・グループ Drive-Eパワートレーン エンジンプラグラムマネージャーのヨルゲン・ブリンネ氏

 ブリンネ氏が「ガソリンとディーゼルエンジンは、アルミ素材を使った同じエンジンブロックを使い、ボアピッチも同様となります。エンジン本体に強度が求められるディーゼルエンジンは、鋳鉄のライニングを組み込むことや、熱処理を施すことによって強度を確保しています。ボア、ストロークは、両モデルとも同様ですが、ディーゼルモデルはピストン、コンロッドともに強度を増したものを採用しています。どのモデルもターボチャージャーをセットしていて、ハイパフォーマンスタイプはスーパーチャージャーを合わせたツインチャージャー仕様です。省燃費性や耐ノッキング対策のために直噴化を行っていて、従来エンジンよりも燃費を向上させています」と語るように、新たなエンジンはガソリン、ディーゼルとも直列4気筒となるが、求められる出力に合わせてターボとスーパーチャージャーを組み合わせている。

 このように、すべてのモデルに対して、出力は異なるが同じ直列4気筒エンジンを搭載していくとのことだったが、V40のようなコンパクトなモデルにはダウンサイジングしたパワートレーンも用意する考えを持っているようだ。

「まだ生産は行っていませんが、直列4気筒のエンジンブロックなどは共有する1.5リッターのガソリンエンジンもラインアップする予定です。クランクシャフトとコンロッドを変更することで排気量をダウンサイジングさせ、より省燃費性を高めたモデルになります」とブリンネ氏は解説する。

 直列4気筒の新たなエンジンに組み合わせられるトランスミッションは8速ATで、ベースモデルのほかにT6エンジンやD5(ディーゼル)エンジンにはハイトルク対応モデルが採用されることになり、2タイプのトランスミッションが用意される。

燃焼室の中央に直噴インジェクターとスパークプラグを配置する独自のレイアウトを採用。エンジン始動時に混合気の成層化などを実現できる環境性能に優れた直噴技術となっている
デンソー独自のニードル弁構造を採用することで、高燃圧かつ高精度の噴霧を可能としている

 Drive-Eのパワートレーンには日本国内のサプライヤーの技術も大いに役立てられていて、8速ATのトランスミッションはアイシン製、エンジンの直噴技術や燃焼システム、燃料ポンプ、コンピュータなどはデンソー製が採用されている。

 日系のメーカーを選択した理由としては「ボルボでは、もちろん欧州のサプライヤーからもパーツの供給を受けていますが、日系のサプライヤーとの取引もありました。デンソーには1998年からパーツを供給してもらっていて、長い関係があります。今回のDrive-Eでは、多くのパーツを取り入れているのですが、採用することになった理由としては、技術力と商業的なコスト面のバランスが高く、ボルボが考えていることと多くの面で合致した結果となります」と、デンソーとアイシンの技術力とコストパフォーマンスの高さが採用した要因になっているそうだ。

世界トップレベルの高圧化技術を採用したデンソーの燃料ポンプ。ディーゼルエンジンの高圧化に欠かせないパーツで、高圧化と同時に小型化も実現している
磁気回路の最適化により、従来モデルよりも大幅に出力エネルギーを向上させている点火プラグ
シリンダーごとの空燃比制御や直噴技術を司るのに重要なコンピュータ。世界トップクラスの高性能マイコンとなる

プラグインハイブリッド車での採用も想定した「SPAプラットフォーム」

 また、新たなパワートレーンに加えて、プラットフォームも共有化したSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ)を導入するという。Drive-EとSPAは、アーキテクチャの集約という同じコンセプトのもとで開発されていて、コンパクトモデルから大型SUVまで同じプラットフォームを使うことになる。

 Drive-EはSPAプラットフォームに搭載されることを前提に開発しているそうで、2つのアーキテクチャを組み合わせることで、より生産ラインなどの効率化、パフォーマンスの向上が可能になる。

 SPAはプラグインハイブリッド車に採用することも想定していて、重量物となるバッテリーをフロア下にフラットに搭載できるスペースを設けているそうだ。フラットに搭載することが可能になるので前後の重量バランスが崩れることもなく、優れたハンドリング特性を生み出すことができる。

 Drive-Eという新たなパワートレーンとSPAプラットフォームという2つのアーキテクチャによって、今後は小型モデルから大型SUVまで主要な部分を共有化し、生産効率を向上させていくのがボルボの新たな展開となる。

トランスミッションはアイシン製の8速ATとなる
エンジンのトルク伝達を最適化するためにダンパーを改良。これによりロックアップ領域が拡大し、省燃費性をアップさせている
オイルポンプは電動タイプから電磁タイプに変更。電磁ポンプを使うことで大幅な小型化と軽量化を実現している
8速ATはクイックなシフトアップ&ダウンが可能で、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のような優れたシフトフィーリングが得られる

(真鍋裕行)