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2014年7月23日

2014年7月22日

2014年7月20日

【インプレッション・リポート】
BMW「i3」「i8」リポート

Text by 日下部保雄


i3(左)とi8

 過日、BMWから新しいブランド「BMW i」が発表された。このブランドは従来のBMWの車種ラインアップにとらわれないもので、フランクフルトショーでその全貌が一般に公表される。

 サスティナビリティ(持続可能性社会)におけるモビリティについてBMWは、これまでとは一変した考え方が必要であるとして、BMW iを提案した。新しい画期的なブランドを提案するためには、既存のデザインやボディを使うのではなく、よりインプレッシブでプレミアム感の高いものを提供しようというもので、既存のモデルと共用しているのは「クルマ」という言葉であるということぐらいだろうか。

 具体的には「ビジョン エフィシエント ダイナミクス」コンセプトカーがそれであり、こちらはBMW「i8」に進化する。これから分かるように、BMW iはこれまで先の未来だったと思っていたものを、すぐ近くまで引き寄せる存在でもある。

MINI E

 そしてすでにBMW iの先行モデルは走り出している。それはEVの「MINI E」が600台の実証実験車として世界で走り、EVに関して大きなフィードバックを得ており、さらに1000台を超えるBMW Active Eが北米、欧州、中国で走り出し、今年の末よりデータ収集に入る。これらの膨大なデータが2年後にデビューを目指すBMW「i3」に注ぎ込まれることになる。

 EVならばすでに三菱がi-MiEV、日産がリーフで量産EVとして先行しているが、BMWも電気が次世代モビリティにとってキーになることを確信して、EVに莫大な先行投資をして周到にEVをBMWの強力なブランドに育てて一気にリーダーになろうとしている。

 このように、EVという理由だけなら偉大な先駆者たちがいる。BMWはiブランドでどのような戦略を描いているのか。

 

i3

モジュール構造の都市向けEV「i3」
 まず2つのモデルを開発中だ。最初に登場するのはi3。こちらは完全なEVになり、市街地での使用を想定している。

 これまでと同じ作り方をすれば、抜きんでた革新性は期待できない。ドライブ・モジュールとライフ・モジュール、つまり動力部と居住空間を分離して、それを組み合わせて自動車とする発想だ。したがって2つのモジュールは別々に作られていると考えてよい。

 まずドライブ・モジュールは従来のガソリン車をEVにコンバージョン化すると生産上、デザイン上の制約が多くなり、様々な妥協が必要となる可能性が大きい。ドライブ・モジュールは、バッテリー、モーターを始めとした駆動システム、サスペンションを軽量なアルミで構築されたシャシーに組み込んでいる。このシャシーは耐衝撃構造も受け持っている。

 このモジュールの上に乗せるセルがライフ・モジュールで、こちらは軽量なカーボンコンポジットで作られる。カーボンコンポジットはF1や航空機で安全性と軽量化が実証されているが、i3のライフ・モジュールも極めて強固で軽量に仕上がっている。前面衝突はもちろん、オフセット衝突、側面衝突はじめ、北米で実施されているポールの側面衝突や横転に対しても強力な耐性がある。スチールでこれだけの強度を持たせようとすると大きなエネルギー吸収ゾーンが必用になるが、カーボンコンポジットならより狭い構造材で衝撃を吸収できる。

i3のドライブ・モジュール(左)の上にカーボンコンポジットのライフ・モジュールが載る

 ドライブ・モジュールでは、大型のリチウムバッテリーをアンダーフロアに搭載し、低重心化を図っていることはリーフと同様な考え方だ。またアルミの構造材でバッテリーが守られており、側面衝突にも衝撃吸収能力がある。このバッテリーはまだ詳細は公表されていないが、通常の運転サイクルで130〜160kmの航続距離があるだけの容量を積んでいる。

 ちなみにフル充電までカラの状態から普通充電で6時間、急速充電で80%まで1時間とされている。ただリーフよりも軽量部材を多用しているのでバッテリー容量は約半分ぐらいだと思われる。

 いうまでもなく電動モーター自体は内燃機よりもかなり軽量コンパクトで、収まりはよい。このユニットはリアアクスルの上に配置され、後輪を駆動する。この部分には効率的にモーター、ギアアッセンブリー、駆動系のコントロールユニットが全て収められている。

ドライブ・モジュール ドライブ・モジュール内に収められるバッテリーとモーター

 駆動力から解放された前輪は切れ角を大きく取ることができ、電動パワーステアリングで軽く小回りの効く市街地走行には、うってつけのレイアウトを作り上げている。

 モーターの出力は125kW/250Nmで、最高速度は150Km/hとなっているが、EVの特性で高速の連続走行はバッテリーを著しく消耗させ、航続距離が極端に短くなるのは言うまでもない。加速力はEVらしく俊敏で、0-100Km/hまで僅か7.9秒で走りきる。

軽さですべてが向上
 一方のライフ・モジュールはすべての駆動系、すなわちドライブ・モジュールを床下に収めたために、フラットなフロアで広い室内を得ている。

 ちなみにドライブ・モジュールとライフ・モジュールはボルト4本で固定されて、ライフ・モジュールのパーツの結合は接着剤で行われる。

 全長3845oとコンパクトなボディに、ホイールベースは2570oと比較的長く取っているが、フルに居住空間に振り分けたことで、室内はこのサイズのクルマとしてはかなり広いキャビンを持っている。コンセプトカーの段階ではBピラーは省かれており、観音開きのドアを採用している。ピラーレスの開口部で乗降性に限りのない自由度が生まれることは、日本のユーザーなら「タント」や「アイシス」で知っている。

 さらに4人がゆったりと座れるキャビンは、通常の大きな窓の下に透明素材の窓があるので、室内は非常に開放的だ。もっとも実車になる時は、コンセプトカーのようなシースルーのキャビンは敬遠されるかもしれない。

 トランクは200Lの容量があり、観音開きドアによる後席も荷室と考えると、かなり嵩張るものも積みやすそうだ。フロントボンネットの下にもちょっとしたラッゲージルームが用意される。

 シートがベンチタイプで左右への移動が自由なのも、シティーモビリティらしいところだ。コンセプトモデルでの全幅はミラー込みで2011oとワイドだが、実車では当然現実的な数字になるだろう。

前後ドアは観音開き。シートはベンチタイプ。パワートレーンが室内に突き出していないので、フロアはフラットだ
容量200Lのラゲッジスペース

 このパッケージで重量は1250s! カーボンコンポジットとアルミによってこのサイズとしては驚異的な軽量化で、少ないバッテリー容量でも航続距離を稼いでいる。i3のポイントはこの軽量化技術でもある。これによってドライバビリティ、パフォーマンス、航続距離などあらゆるものが向上する。日本でもダイハツ「e:Sテクノロジー」の、材料置換などによらない既存技術を積み上げた軽量化技術に注目が集まるが、BMWはこれを思い切った方法で実現している。

 ちなみにタイヤは大径だが幅の狭い特殊なサイズを使っている。またi3はEVだけでなく、オプションでレンジエクステンダーも用意されており、より長距離を目指すドライバーにとっては安心材料が増える。この場合は当然ラゲージスペースは狭くなる。

 

i8

プラグイン・ハイブリッド・スーパーカー「i8」
 さて、すでに各地のモーターショーでビジョン エフィシエント ダイナミクスとして注目を集めている「i8」は、プラグイン・ハイブリットの新世代のスーパーカーだ。この空力の申し子のような、全高1280oのクーペはいたるところにエアインテークとアウトレットが設けられ、空気の流れを最適化し、空気抵抗とダウンフォースを適切な値にバランスさせている。

 i8は2+2のクーペで、小さなリアシートを持っている。ライフ・モジュールという言い方をするならば、i3のような水平に置いたものではなく、ドライブ・トレインの配置の仕方によって垂直にもとれるような構成となっている。

 極端に寝かされたAピラーに取り付けられたドアはウイング状に開閉するのが特徴で、インテリアもこれまでのどのBMWよりも先鋭的で、徹底的に未来感のあるデザインだ。インテリアのハイライトはi3同様に「コネクテッド・ドライブ」、すなわちスマートフォンから自車の位置を知ったり、ライトやエアコンの遠隔操作したり、リモートで充電したりできる機能などを備えている。ドライバーインターフェイスは大型の3Dディスプレイによって情報を操作できる。

i8のパワートレーン。左がモーター駆動のフロント。リアにエンジンを積む

 駆動系は、フロントのアクスルにモーター駆動のモジュールを、リアアクスルには内燃機による駆動システムを持っており、前後のモーター/内燃機は機械的には結合されていない。

 後輪を駆動するエンジンは164kW/300Nmの3気筒1.5リッターターボエンジンとなっており、前輪はi3で使われているモーターのモデファイ版である96kW/250Nmのモーターとなる。システムとしてすべてが稼働した時の出力は260kW/550Nmとなるが、通常は後輪駆動を中心として、フロントのモーターは常に走行条件を監視して作動することでお互いの出力源のメリットを出しながら、駆動ロスのないドライブができるとしている。

 0-100Km/h加速は5秒以下で走り抜け、最高速度はリミッターが作動する250Km/hに達する。しかも燃費はEUテストモードでは3L/100qという、3リッターカーを実現している。これらの燃費は電気の使い方でかなり向上することが予想されており、これが実現できればi8は未来のスーパーカーの姿を実現することができると言えるだろう。

 後輪を駆動するガソリンエンジンは、内蔵したジェネレーターで前輪を駆動するエネルギー源のバッテリーにも充電でき、航続距離を伸ばす役割も担っている。ちなみにi8はi3よりも搭載バッテリーが小さいため、バッテリーだけで走行できる距離は35qとなる。

 駆動システムは場面に応じて動力源が異なると前述したが、後輪駆動、前輪駆動、そして4輪駆動を使い分けることで安全で楽しいドライブシーンを演出できるとしている。きっと雪上のドライビングは楽しいに違いない。

 MINI Eでは強烈な減速時の回生エネルギーが特徴で、ブレーキを踏まなくても停止できるほど強く回生していたが、i8でも大きな回生力を発生し、アクセルOFFで前輪荷重にした時に一層のドライビングプレジャーがあるはずで、本来のブレーキは強い制動力が必要になった時にのみ作動する。

 基本的なモジュールの考え方はi3と共通で、ドライブ・モジュールはアルミ、ライフ・モジュールはカーボンコンポジットで形成される。

 重量はわずか1480s。これだけのシステムを搭載している割には驚異的な軽さだ。そして前後重量配分50:50はこのi8でも踏襲され、BMWのフィロソフィーは未来にも受け継がれる。ちなみにホイールベースは2800o、全長4632o、全幅1955oというのが現在のi8のスペックである。

 登場までにはまだ数年を要するがi8は新しいBMW iのブランドイメージを引っ張るモデルになるだろう。

 そしていずれのモデルもリサイクル材で構成されるか、あるいはリサイクル可能な素材で作られていることもBMWの心意気を示している。


インプレッション・リポート バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/

2011年 9月 26日