インプレッション

レクサス「IS」(先行試作車)

 2012年に入ってレクサスの攻勢が続いている。「GS」のフルモデルチェンジ、「LS」のビッグマイナー、そして「RX」のスピンドルグリル装着によりレクサスモデルのイメージ統一を進め、いよいよレクサスが第2世代に入ったことを強く感じさせる。

 そしてデビューがGSと同時期だった「IS」のフルモデルチェンジの声も聞えてくる。そんな中で新型IS量産モデルの先行試作車に乗る機会があった。新型ISのワールドプレミアは2013年のデトロイトショーと言われているが、いずれにしても発売はかなり先になると思われるので、かなり早い段階の試作車であり、貴重な体験だ。

ハイブリッドをラインアップ、ドライビング・ダイナミクスに注力

 新型ISの概略を簡単に解説すると、プラットフォームは新世代のGS用を、ホイールベースの短いIS用にアレンジして使う。

 エンジンは3種類。従来と同じ3.5リッターと2.5リッターのGR系のV型6気筒、そして欧州向け等にあったディーゼルの代わりに、2.5リッター直列4気筒+モーターのハイブリットが投入される。これは当然、日本でもメイン車種となるはずで、大いに注目されるラインアップだ。

 さらにトランスミッションは、3.5リッターモデルには待望の8速ATが搭載される。これはLSにも使われているもので、「IS F」にもアレンジして採用されている実績のあるものだ。2.5リッターは6速ATになり、ハイブリットは当然遊星歯車によるCVTとなる。

 今回もっとも力が入っているのはドライビング・ダイナミクス。気持よく運転できることを実現するために、ボディー剛性の大幅アップを図っている。サスペンションがいくら頑張っても土台がふらついては元も子もない。現行のISもボディーはしっかりして一体感があるが、それをさらに高めようというものだ。

 剛性アップのために、従来のスポット溶接の個所を大幅に増やすと同時に、打点の間隔を狭くしている。同時にレーザー溶接をLSと同じスクリュー方式とし、長さも増やしている。

 さらに、レクサス初となる接着溶接を取り入れたことが新しい。接着溶接は欧州車では取り入れられているが、ドアまわりやリアのホイールアーチ付近などの開口部に集中的に使われており、ボディー剛性の大幅アップにつながっている。

 生産技術は重要なポイントだ。レクサス/トヨタはこれまで培ってきた信頼性のい生産技術を改善して採用し、新しい技術には慎重な傾向にある。しかし信頼性と効果が確認されると、積極的に取り入れる。今回も慎重に検討され、生産現場もその効果を確認して一気に採用に踏み切ったとされる。

 サスペンションは形式こそ現行型と同じ4輪ダブルウィッシュボーンとなるが、フロントはアライメントを見直し、さらに現行型からスタビライザーの取りつけ点を外にずらすことでスタビライザーの剛性が約20%アップしたとされている。

 リアサスペンションは、GSのプラットフォームを使っている関係で大幅に見直された。具体的なポイントしては、トーコントロールアームをフロントからリアに移し、一体型だったバネ/ダンパーを分離型にしている。これによって接地性もさることながら、サスペンションタワーを小さくすることができてトランクルームの拡大に貢献している。

 新ISが目指したドライバーとのコミュニケーションのために、ステアリング系も一新された。ギヤ比の変更に始まり、ボールねじの構造変更、支持剛性のアップなどで、滑らかなステアリングフィールを実現して気持ちのよいドライブフィールを実現したという。

 グレード展開は未定だが、試乗したのはすべてスポーツグレードの「F-SPORT」で、バネ、ダンパーなどがコンベンショナルモデルとは異なっている。

ボディーサイズ拡大で居住性改善

 テストコースとなったのは北米ロスアンジェルス郊外にある駐車場に設営されたジムカーナコース。そしてフリーウェイと39号線上にあるワインディングロードである。

 テストコースで待っていたISは、例の渦巻模様でカモフラージュされており、デザインの詳細は不明だが、一見して分かるのは現行型ISを継承した筋肉質のイメージで、各部に新世代のレクサスを強調するように個性的なアクセントが入ることだ。ボディーサイドのリア部分に入るウェッジラインはかなり強烈で、フロントはスピンドルグリルがさらに大きくなり、それに合わせるようにした稲妻型のヘッドランプ形状も印象的だ。

 サイズは全長が75mm伸ばされた4660mmで、これに合わせるようにホイールベースも70mm伸びた2800mm。

 全長の75mmの延長分のうち、5mm分はフロントのオーバーハングにあてられている。ホイールベースの延長分70mmのうち、リアシートのレッグルームに50mmが分け与えられており、さらに後席はシートバックの形状を薄くして95mmの拡大をひねり出し、後席の住環境が大幅に改善された。

 ちなみにプラットフォームの変更でラゲッジルームも横幅がひろがり、容積が増えている。ハイブリット用のニッケル水素バッテリーはトランク下に埋め込まれているので、ハイブリットでも奥行きのあるトランクルームを確保している。全幅は僅かに12mm拡大されて1812mmとなった。

 インテリアもテープがいたる所に貼られてカモフラージュされているが、ドライバーと一体感のあるコックピットは変わらない。ドライバーズシートが現行型から20mm下げられ、ステアリング角度が3度起こされたために、タイトでいながら肩まわりがゆったりとしたドライビングポジションを取れるようになった。シートはサイズを拡大。凹面形状が強くなってホールド感があり、しかも乗降性はよい。

 メーターはLFA譲りだ。F-SPORTではスライド式のタコメーターになっており、ちょっと心憎い演出だ。レッドゾーンは6500rpmから始まる。ハイブリットではECOインジケーターが配置されているが、SPORTモードをセレクトするとタコメーターに切り替わる。

しなやかになったドライブフィール

 ジムカーナコースでは大きな操作となるので、繊細なところは公道でのインプレッションに委ねて、ここでは運転を楽しもう。

 最初は、現行型のIS250で足慣らしをして、新型「250」のコクピットに乗り込む。クイックに曲がりつつ、時としてリアが振り出されそうになる現行型から乗り換えると、俄然しっとりしたステアリングフィールの違いを感じる。ステアリングを切った時にクイックですっとノーズを変える雰囲気がかなり現行型と異なり、しなやかだ。

 タイトなコーナーでアクセルワークによってはリアが暴れる時がある現行型に対して、リアのグリップは俄然高い。大きくフロントがロールするような場面では、4輪の対角線上のイン側の後輪が突っ張るような感じを受けるが、それ以外は素直でスポーティだ。ライントレース性能も格段に向上している。

 現行型と同じパワートレーンのため、加速力の面では変わらないはずだが、サウンドジェネレーターを備えているので、ドライバーには心地よい吸気音が入り、パワフルな雰囲気が強い。サウンドの面でも心地よい。これは350でも同様の、気持ちよい音を発する。うまいサウンドチューニングだ。

 ブレーキはコントロール性に優れているのが特徴だ。制動力は安定していると同時にリアの姿勢変化が少ないので安心感がある。

 「350」はさすがにパワーがあって面白い。加速力ではエンジンは共通だが8速ATのために結果的にクロスレシオになり、素早い加速が可能だ。

 「CT」から採用になった「ドライブモードセレクト」の「SPORT」モードを選ぶ。VGRS(Variable Gear Ratio Steering:ギア比可変ステアリング)はよりクイックになり、切れがシャープになる。さらにAVS(Adaptive Variable Suspension system)のイニシャルが高めの状態に保たれるので、ステアリングを切った時のロールが少なく、姿勢安定性は上がる。AVSは姿勢変化に応じて減衰力を自動的に調整するので、ベースとしては常に安定した姿勢が保たれることになる。

 ためしにVDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management)をすべてカットしてテールスライドを誘発させるようなドリフトをしてみたが、リアのグリップはタイヤの接地形状がよく保たれているのか、アクセルターンを試みても安定したスライドコントロールが楽しめた。現行型の素早いスライドではなく、アクセルのコントロールとステアリングワークで余裕のドライビングが可能なところが印象的だ。通常はこのような使い方をしないが、シャシーの基本的なポテンシャルを見るには丁度よい。

 ステア特性はアンダーステアが強めの設定で、もう少しニュートラルに近い方がドライビングしやすい。フロントのグリップは決して低くはないのだが、プロトタイプではリアが強すぎる感じがある。前後のロール特性はよく取れている。

プロトタイプと考えるとポテンシャルは高い

 ハイブリットは「300h」と呼ばれ、前述のようにパワートレーンは2.5リッター直列4気筒+ハイブリットだ。350に乗った後だと、CVT特有の連続的な加速はパンチがないが、するするとスピードが伸びていく。エンジンはアトキンソンサイクルのD4S直噴で、大容量のクールEGRを採用している。こちらは最近のトヨタハイブリットの定番だ。低フリクション化、クランクシャフトの軽量化など燃費志向のエンジンだが、いつの間にか速度が乗っている感じはわるくない。

 コーナーで意外な実力を発揮した。重量配分は250/350が53:47でFR車としては平均的な値になっているのに対し、ハイブリットはリアのトランク内にニッケル水素のハイブリットバッテリーを積んでいるために、50:50になっている。このためターンインはアクセルワークに素直に反応し、中速域のコーナリング安定性は高くて気持ちがよい。

 ジムカーナ場を後にして、市街地からフリーウェイ、ワインディングロードに向かう。残念ながら時折雨が降る天候で、カルフォルニアらしい乾いた空気の中ではなかったが、新しいクルマで乗り出すのは新鮮だ。

 フリーウェイではプロトタイプならではのレクサスらしい静粛性と、中立付近が締まりすぎていないステアリングの舵保感を楽しみつつ、クルージングする。フリーウェイ特有の溝や路面の強い継ぎ目でも、サスペンションは硬めではあるものの軽くいなしてくれ、ショックは小さく、ハンドル取られもほとんど感じないのは好ましい。

 また乗心地で言えば、バネ上の動きが一定しており、ピッチングが少ないのが好ましい。リアから突き上げられる、ひょこひょこした動きが規制される。バネ下の動きも滑らかなので、跳ねないのだ。上質な乗り味はこんな機能から生まれる。

 ワインディングは緩いコーナーからタイトコーナーまで1車線のコースだが、ライントレース性はすぐれており、またハンドルの切り初めに肩に力が入らないのがよい。運転が楽しくなる。

 シフトをマニュアルモードにセレクトすると、350では2速以上、250では4速以上をロックアップして、減速時はブリッピングを行いエンジンの回転数を合わせる。コーナーの手前でシフトダウンすると、エンジンブレーキを使いつつコーナーリング中の変速を制御するので、ドライビングしやすい。

 特に350ではSPORTモード時に横Gを検知して、コーナリング時の変速制御などを細かく行う「8 SPEED SPDI(SPORT DIRECT SHIFT)」を装備しているので、さらにスポーティなドライビングに向いている。コーナリング中に安定した駆動力が得られるために姿勢も安定する。

 総括すると、上質な乗り心地と静粛性、そして滑らかなステアリングなど、プロトタイプとは言えなかなかのポテンシャルを持っていたISだった。

 個人的にはタイトなコーナーではアンダーステアが少し強めなのをもう少し緩めたいところと、ハイブリットモデルのフロアのビビりなどが気になった点だが、プロタイプと考えるとかなりポテンシャルは高いと思う。

 渦巻き模様のないモデルでの試乗が楽しみだ。

(日下部保雄)