インプレッション

2015ワークスチューニンググループ合同試乗会(その1、TRD/STI編)

 メーカー直系のモータースポーツ専門会社であるワークスチューニングブランドは、日ごろのレースシーンではライバルとしてしのぎを削っているが、アフターマーケットではそれほど競合することはない。

 そこで、力を合わせてお互いのレベルアップを図っていこうということで、1993年の初会合を皮切りに、メーカーの垣根を越えた合同での活動がスタート。以降、モータースポーツとスポーツドライビングの振興を主たる目的として、オートサロンへの出展や試乗会などの活動を行ってきた。

 メディア向けの合同試乗会については、諸事情によりしばらく中断していたところ、今回は実に9年ぶりの開催となった。ベース車のことを知り尽くしたワークスチューニングブランドが手がけるデモカーの走りはいかなるものか? まずは前半として「TRD」と「STI」についてリポートする。

TRD(トヨタテクノクラフト)

「レクサス RC F CCSコンセプト」

 レクサス(トヨタ自動車)の「IS F」にもあった「CCS(サーキット クラブ スポーツ)」のコンセプトを受け継ぎ、「RC F」でも展開することを視野に入れたスタディモデルがこの「RC F CCSコンセプト」だ。

 RC Fのカーボンエクステリアパッケージをベースに、SUPER GTで活躍するレースマシンのノウハウを採り入れたCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製パーツを各部に配しているのが特徴で、フロア下をフルにフラット化して剛性と空力の向上を図るなど、恐ろしく手間とコストのかかることをやっている。

 さらにはエンジンルームやリアバルクヘッドにもブレースを配しているが、一方でGTウイングのように外側に大きく出るタイプの空力付加物は装着していない。その理由は、上に付けると感度が高まり、横風など外乱の影響を受けやすくなることを嫌ってのこと。スポーツ走行はもとより、高速道路を快適に長距離走ることもこのクルマの目標性能の1つとしているからだ。

今回の試乗車で唯一市販を前提としないスタディモデルの「RC F CCSコンセプト」
ベースとなるカーボンエクステリアパッケージで装着するカーボン製のボンネットやルーフのほか、GTマシンで培ったノウハウが生きるカーボンリップスポイラーなどを追加
車両後方のアクティブリアウイング、ディフューザー、4連マフラーなどはベース車同様の装備内容
通常はTRDパーツとしてもRC Fに設定のない20インチのタイヤ&ホイールを採用。タイヤはコンチネンタルの255/30 R20を使用
フロア下に設置されたカーボンパネルは、整流効果に加えて剛性アップにも寄与する
エンジンルームにブレースを追加。エンジンカバーもカーボン製に変更されている

 RC Fに設定されている特徴的な装備の「TVD(Torque Vectoring Differential)」ではなく、あえて機械式LSDを装着しているのもポイント。これはドライビング操作に対して基本に忠実な動きをさせるため。TVDだとステアリングを切っていても、アクセルを踏めば少々無理があっても曲がってくれるなど不自然な動きも見受けられるので、敢えてそうしたのだ。

 また、スタビライザーについても、前後ともに効きを弱めてストローク感を確保している。それもあってか、ドライブすると突き上げ感のない、見た目とは裏腹のしなやかなフットワークが印象的。ベース車ではやや気になっていたフロントヘビーな感覚やリアのトラクション抜けも改善されていて、持ち前の豪快なサウンドとともに、圧倒的なエンジンパフォーマンスを意のままに操ることができる。

「ヴェルファイア TRD for AERO BODY」

「ヴェルファイア」はノーマルのままでもかなり押し出しが強いところ、さらに迫力を増したスタイリングは前後のリフトバランスも考慮して製作されたエアロパーツによるもの。ドライブすると、大柄なミニバンでもターンパイクのようなワインディングを“攻めようと思えば攻められる”ようにしたクルマというのが第一印象。

「ヴェルファイア TRD for AERO BODY」。19インチの「TF6」アルミホイールを装着している。タイヤはミシュラン「Pilot Sport 3」(245/40 ZR19)
LEDデイタイムランプ内蔵型のフロントスポイラーやフロントフードエクステンション、サイドスカート、リアクォーターガーニッシュ、リアバンパースポイラーなどのエアロパーツは、しっかりと前後のリフトバランスまで考えて製作されている

 よけいな動きが出ないようサスペンションを強化し、コーナリング性能を高めたのと引き替えにやや突き上げ感は見受けられるが、「運転席と2列目のシートに交互に乗ってセッティングした」と開発関係者が述べているだけあって、後席の乗り心地も大きな不満がない程度に巧くまとめられている。また、車体の各部に装着した補強パーツに加えて、前後に配されたパフォーマンスバーもかなり効いているようだ。フロアの微振動は抑えられているし、操舵に対するリニアリティもある。

 そして、V型6気筒エンジンの響きをより深く味わるエキゾーストサウンドも印象的だ。ちなみに、試乗車に装着されていた4本出しリアルマフラー仕様の「ハイレスポンスマフラー」よりもさらに見た目が派手な“6本出しマフラー風ガーニッシュ仕様”のリアバンパースポイラーもTRDは用意しているが、こちらは純正マフラーとの組み合わせとなり、ルックスだけの変更となる。

「86 14R-60/86 14R」
「86 14R」

 トヨタ自動車の「86」ベースの2台については、「14R-60」(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20141017_671939.html)はすでにCar Watchでもリポート済みだが、まるでレーシングカーのような乗り味はインパクト満点だ。「スリックタイヤを履いて筑波サーキットで最速タイムを出す」という明快な目標に向けて開発された「86 TRD Griffon Concept」からエッセンスを受け継ぐクルマらしく、極めてスパルタンでありながら、とても乗りやすいことが印象的。これまでいろいろな86のチューニングカーに乗る機会があったが、ほかのクルマとは一線を画す印象で、86もいじればこうなることに驚かされた。

台数を限定しないコンプリートカーである「86 14R」。6速MT車の価格は376万7237円
鍛造仕上げの18インチアルミホイールを装着。225/40 R18サイズのブリヂストン ポテンザ S001を組み合わせる
試乗車には“スワンネックタイプ”と呼ばれる吊り下げ型のGTウイング(38万8800円高)をオプション装着
専用の「センター出しデュアルマフラー」と対応型の「リアバンパー&リアディフューザー」を標準装備

 一方の「14R」は、見た目は「14R-60」との共通性は高いが、中身はずっと身近で、ストリートからちょっとしたサーキット走行まで対応。100台限定の14R-60より、多くのユーザーにとって現実的な内容となっている。セッティングの自由度が大きいなかで、この日は回頭性重視の味付けとされていたが、実際にもターンインが楽しくて乗り心地もそれほどわるくなく、誰でも気軽にワインディングを走って楽しめるような乗り味に仕上がっていた。

STI(スバルテクニカインターナショナル)

「レヴォーグ STIパフォーマンスパッケージ」

 レヴォーグの「STIパフォーマンスパッケージ」装着車は、見た目は今回用意された車両のなかでは控えめなほうで、チューニング内容も「フレキシブルドロースティフナー」と「フレキシブルタワーバー」などプラスアルファのパーツ装着にとどまり、なんと足まわりはノーマルのまま。それでいて、走りはそうとは思えないほど印象が変わっていた。

 ハンドリングは、中立から切り始めのインフォメーションにノーマルでは曖昧な部分があるところ、同車ではそこがリニアになっている。正確性が増して修正舵をあまり要しなくなり、全体的な走りの質感も向上していた。足まわりを変えずに、上記2点のパーツ追加だけでこれほど大きく変化するとは驚きである。今後、現在開発中という足まわりパーツを追加するとさらによくなることが期待できる。

「レヴォーグ STIパフォーマンスパッケージ」。ベース車は1.6GT-S EyeSight
タイヤサイズは純正品と同じ225/45 R18だが、リムにスピニング工法が用いられた軽量な鍛造アルミホイールを装着
STIフロントアンダースポイラーとSTIスカートリップを装備
エンジンルームに「STIフレキシブルタワーバー」を追加し、通常は見えないフロア下には「STIフレキシブルドロースティフナー」も設定されている
STIスタイルパッケージの「STIリヤアンダースポイラー」(単品価格は4万6440円)、「STIサイドアンダースポイラー」(単品価格は6万8040円)
CVT車用の「STIシフトノブ」は2万4840円

 それにも関連するが、現状は突き上げ感は抑えられているものの、このプラットフォームのクルマは総じてピッチングが出る傾向にあり、まだやや気になるのは否めない。前述の足まわりともども、今後の改善に期待したい。

 また、STIといえばコンプリートモデルの存在感も大きい。いずれは登場するであろうレヴォーグをベースとするモデルにも大いに期待したいところだ。

「BRZ tS」

 先だって河口湖周辺での試乗記(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20150630_709044.html)をリポートして間もないBRZ tSは、河口湖界隈と比べてだいぶ路面のコンディションのよいターンパイクでドライブすると、走りの一体感がより際だって感じられた。

 この操舵に対して応答遅れを感じさせないハンドリングというのは、量産車ベースの車両ではちょっと思い当らないというレベル。まさしくイメージどおりに操れるハンドリングを実現していることをあらためて実感した。

「BRZ tS」

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一