写真で見るメルセデス・ベンツ「E350 BlueTEC ステーションワゴン アヴァンギャルド」


 日本でのエコカーというとハイブリット車が先行しているが、欧州ではディーゼル車の人気が高い。メルセデス・ベンツは日本でも長くディーゼル車を発売していたが、2010年2月、Eクラスステーションワゴンのフルモデルチェンジに合わせて「尿素SCR」を搭載した本格的なクリーンディーゼル車の販売を開始した。それが「E350 BlueTEC アヴァンギャルド」とワゴンボディーの「E350 BlueTEC ステーションワゴン アヴァンギャルド」である。

 エコカー減税により、ハイブリット同様、クリーンディーゼル車も100%減税となるが、クリーンディーゼルの適合第1号となったのは日産「エクストレイル」。しかしMT車しか発売されていない。E350 BlueTECはAT車として初めてグリーン減税に適合した。また、E350 BlueTECのステーションワゴンは、日本向けが世界初登場モデルでもある。

 E350 BlueTECに搭載されるエンジンは、2986ccのV型6気筒ディーゼル。電子制御式の可変ターボチャージャーを組み合わせ、最高出力155kW(211PS)/3400rpm、最大トルク540Nm(55.1kgm)を得ている。トランスミッションは7速AT。10・15モード燃費はセダンで13.2km/L、ステーションワゴンで13.4km/Lを実現した。メルセデス・ベンツは「5リッタークラスのガソリンエンジンに匹敵する力強い動力性能と、2リッタークラスガソリンエンジン並みの燃費経済性」としている。

 環境性能については、高圧で燃料を噴出するピエゾインジェクター、DPF(粒子状物質除去フィルター)を装備。排出ガス中のPM(粒子状物質)が一定量以上溜まるとエンジン制御により600度まで温度を上昇させ、堆積したPMを燃焼、除去する。さらに後処理装置としてAdBlue(尿素水溶液)噴射とSCR触媒コンバーターによる排出ガス浄化装置「尿素SCR」を搭載。有害な窒素酸化物の80%以上を無害な窒素と水に還元するという。

 AdBlueは1000kmで約1Lを消費する。E350 BlueTECは24.5LのAdBlueタンクを装備しているので、満タンで約2.5万kmの走行が可能であり、一般的なユーザーなら1~2年に1度程度の充填となる。充填はディーラーで行い、AdBlueの価格は10Lあたり2000円とのこと。AdBlueがなくなるとエンジンが始動できないが、残量2Lから警告が表示される。なお、E350 BlueTECは通常スペアタイヤが収まる空間にAdBlueタンクを装備するため、スペアタイヤは搭載していない。そのためパンクしてもある程度の距離を走行できるランフラットタイヤを装着している。

 ちなみに、メルセデス車は歴代モデルを区別するために、型番で呼ばれることがある。現行のEクラスのセダンとステーションワゴンは「W212」、2003~2009年のモデルが「W211」、1996~2002年モデルが「W210」となる。

 今回撮影した「E350 BlueTEC ステーションワゴン アヴァンギャルド」の車両本体価格は833万円だが、オプションで夜間視認装置の「ナイトビューアシストプラス」、走行車線の逸脱を警告する「レーンキーピングアシスト」、プライバシーガラスやメモリー付きパワーシートをセットにした「プラスパッケージ」、本革シート、キーレスゴーなどを装備しており、合計では934万円となる。ボディーカラーはインディゴライトブルー、インテリアカラーはアルパカグレー。

Eクラスボディーのステーションワゴンであり、十分に大きく、室内空間も広い。ボディーサイズは4900×1855×1500mm(全長×全幅×全高)。デザイン的には下方へ向けて徐々に細くなるDピラーが特徴で、ステーションワゴンとしての機能性とスタイリッシュさを融合させたとのこと

 

フロント。グリルは伝統的なメルセデスデザイン。ハイビームとロービームが完全に分かれたヘッドライトが新鮮「BlueEFFICIENCY」(ブルーエフィシェンシー)は、メルセデス・ベンツの環境技術の総称。BlueTECもそのうちの1つ当然だが、燃料はディーゼル(軽油)が指定されている
フロントグリル。Eクラスのアバンギャルドは横方向のフィンが3本になる。そのほかは4本ヘッドランプは外側がロービーム、内側がハイビーム。下のダクト部にフォグランプを装備ロービーム、フォグランプ、方向指示灯を点灯した状態
ドアミラーにはLED方向指示灯を内蔵。後退時に助手席側ドアミラーが下を向く機構を装備している撮影車はキーを携帯しているだけでドアの解錠・施錠、エンジンの始動ができる「キーレスゴー」を装備しているアバンギャルドはホイールのデザインもアグレッシブなものになる
ナイトビューアシストプラスの赤外線カメラ。歩行者や自転車、障害物などを赤外線でとらえ、安全確認をサポートするルーフ部。ルーフレールを標準装備する小型のフィン型のアンテナ
LEDのハイマウントストップランプリアコンビネーションランプ。ブレーキランプ、方向指示灯はLED急ブレーキを踏むとブレーキランプが点滅する「アダプティブブレーキライト」を装備
リアまわり。テールゲートはバンパーまでいっぱいに開くマフラーは左右2本出しナンバープレートの近くにリアビューカメラを装備する

 

V型6気筒エンジン。パネルに被われており、一見しただけではディーゼルと分からない広大な荷室。日本向けは5人乗りだが、欧州ではここにシートを備えた7人乗り仕様もあるゲートクローザー。ボタンを押すだけでリアゲートが自動で閉まる
リアシートは2:1の分割可倒式。これは5人乗りの状態左側だけ倒すと3人乗りに。長尺物も積載できる左右とも倒した2人乗りの状態。ワゴンらしく、非常に広い荷室になる
荷室右側には小物を入れられるネットやアクセサリーソケットを装備カバーの中には緊急用の三角停止板やファーストエイドキットが収まっている三角停止板とファーストエイドキットを取り出したところ
荷室左側のネット。こちらはくぼみが作られており、少し大きめの荷物も入れられる荷室には軽量な荷物が掛けられるフックを装備。ワンタッチで出し入れ可能荷室のフロアボードを外すと、スペアタイヤではなく、AdBlueのタンクが現われる

 

インストゥルメントパネル。エッジの効いたデザイン。カーナビは最上段に置かれる撮影車はイージーエントリーを備え、イグニッションキーを抜くと、ステアリングホイールが自動的に上方へと移動するペダルまわり。ブレーキはホールド機能やヒルスタートアシストを装備する
キーレスゴーを装備しているため、エンジンの始動・停止はボタンで行うライトスイッチパーキングブレーキはペダルで操作するが、解除はレバーを使用
ステアリングホイールのスポーク部にパドルシフトを装備する車両の情報表示などを操作するマルチファンクションステアリングステアリングホイール右のスイッチでは、音量や携帯電話の操作を行う
ステアリング左奥のウインカー・ワイパー関連のレバーとクルーズコントロールのレバー電動チルト&テレスコピックステアリングの操作レバーステアリング右奥にシフトレバーを備える
インストゥルメントパネル中央にはオーディオなどの操作系がまとめられている下段の空調関係のコントロール部。左右独立での温度調整も可能センターコンソールのCOMANDコントローラー。HDDナビゲーションやオーディオなどを操作する

 

運転席。標準はファブリック+人工皮革だが、撮影車はシートヒーター付きの本革シートを装備ドアはブラック&ホワイトの大胆なカラーリングサイドシルのプレート
ドアの内側にパワーシートの操作スイッチを装備しているウインドー操作やミラーのコントローラーはドアのアームレストに装備ドア内側の物入れ。その前方にリアゲートオープナーを備える
電動ランバーサポートはシートサイドで調整するちょっとしたものを入れておけるアンダーシートボックスセンターコンソール脇に設けられたネット
自動防眩のルームミラー。運転席側のドアミラーも自動防眩天井のルームライトと各スイッチ類センターコンソール部。光沢のパネルで被われている
フタを開けるとドリンクホルダー、灰皿、シガーソケットが現われる前席のアームレスト。たっぷりした大きさアームレストは中央で分かれて開く
助手席側のグローブボックス。アクセサリーソケットやオーディオのコネクターも内蔵するリアシート。可倒式とは思えないほどゆったりしている後席のドア。操作系はごくシンプル
リアシートのアームレストを引き出した状態アームレストにはカップホルダーが内蔵されているさらに上部を開けると小物入れが用意されている
リアシート用の空調。下部には灰皿とアクセサリーソケットドア側のアームレストのウィンドースイッチ後席ドアの小物入れ。赤い警告灯も備える

 

円形の5連メーター。中央にはマルチファンクションディスプレイを装備する燃費と想定可能走行距離の表示カーナビと連動する目的地方向の表示
マルチファンクションディスプレイの表示内容の選択速度、走行履歴、ナビゲーション、オーディオの各種表示電話状態、アシスト情報、メンテナンス、設定の各種表示
カーナビの表示。大きなひさしがあり、見やすいメニュー、目的地設定、オーディオ、ラジオなどの表示電話、日時設定、画面設定、地図切り替えなどの表示

 

(西尾 淳(WINDY Co.) / Photo:礒村浩一)
2010年 5月 27日