写真で見る

写真で見る スズキ「アルト」

撮影車両はX。ボディーカラーは新色の「ピュアレッド」でオプションの2トーンバックドア仕様

 軽自動車の代名詞とも言えるスズキ「アルト」。過去に「アルト ワークス」のような“異端児”ともいえるモデルをラインアップしたことがあったものの、ベースモデルは1979年のデビュー以来、一貫して実用車のポジションを守ってきた。今回デビューした8代目もこれまでの思想を継承。新開発プラットフォームをはじめ新技術や機能を採用することで、軽セダンの新たな領域を目指したチャレンジを行っている。

 新たに採用したプラットフォームは、軽さと高剛性を追求しているのが特長だ。アンダーボディーは構造や部品配置を全面刷新することで軽量化を実現するとともに、ねじり剛性、曲げ剛性とも約30%向上。サスペンションについても一部車種のリアにトーションビーム式を採用したほか、ストロークの拡大や高剛性化などにより、操縦性や乗り心地の向上を実現している。これらプラットフォームの変更をはじめ高張力鋼板の採用拡大、内外装パーツ、シート、エンジンなど細部まで徹底的に見直された結果、7代目アルトエコより約60kgという大幅な軽量化を達成している。

 エンジンは直列3気筒DOHC 0.66リッター12バルブの「R06A」を採用。同ユニットは「ワゴンR」などにも搭載されている、いわば同社の軽自動車用標準エンジンといえるものだが、圧縮比を11.5まで高めたほか吸気ポートおよびピストン上部形状を変更するなど、熱効率を向上するためのチューニングが施された最新版となる。トランスミッションは燃費性能を向上した改良版CVTのほか、「5速AGS(Auto Gear Shift)」、5速MTと3種類を用意。5速AGSは先だってモデルチェンジを行った軽トラック「キャリィ」にすでに搭載されているが、同社の軽乗用車では初採用となる。このトランスミッションは、5速MTをベースにクラッチとシフト操作を自動で行う電動油圧式アクチュエーターを採用したもので、少しだけ試乗させて貰ったところシフトチェンジはなめらかで素早くフィーリングは良好。これなら5速MTをラインアップせずCVTと5速AGSだけでよいのでは? と尋ねてみたところ、5速MT車は高齢者を中心に根強い需要があり、あえて残してあるとのこと。駆動方式は2WD(FF)とフルタイム4WDが用意される。

 スペックは最高出力36kW(49PS)/6500rpm、最大トルク58Nm(5.9kgm)/4000rpm。CVT車とセダンの5速AGS車には吸排気ともに可変バルブタイミング(VVT)を備えたハイスペックバージョンを搭載しており、こちらは最高出力38kW(52PS)/6500rpm、最大トルク63Nm(6.4kgm)/4000rpmとなっている。また、同時発売とはならなかったが、ターボユニットを搭載した「アルトターボRS」の発売もアナウンスされており、より刺激的なスペックが期待できそうだ。

 気になるのは燃費だが、軽量化をはじめエンジンおよびトランスミッションの高効率化といったベーシックな部分のブラッシュアップに加え、スズキ独自のブレーキ回生システム「エネチャージ」を採用。より高効率な「Sエネチャージ」ではないものの、もっとも燃費のよいセダン(2WD/CVT)ではガソリン車トップとなる37.0km/Lを実現している。

 ラインアップはセダンが「F」「L」「S」「X」の4タイプで、トランスミッションはFが5速MT&5速AGS、それ以外はCVT、駆動方式は2WDと4WDの選択が可能。また、バンモデルとなる「VP」も用意されており、こちらは5速AGS車が2WD&4WD、5速MT車は2WDのみとなる。

 価格はセダンが84万7000円~122万9040円、バンが69万6600円~88万5600円。エコカー減税はセダンの5速MT&4WD車以外と、バンの5速AGS&2WD車が100%免税、それ以外は取得税80%、重量税75%減税対象となる。

「美しい普通」をテーマにデザインされたエクステリア。7代目より全高を約50mm下げることでバランスのとれたプロポーションを実現。ホイールベースは2460mmと7代目より60mm拡大している
ヘッドライトはめがねをモチーフにした左右対称形状。スリット状の開口部を持つフロントグリルは左右非対称と個性的な顔付きになった
Xには衝突被害軽減ブレーキシステム「レーダーブレーキサポート」を標準装備。VP、Fの5速AGS車およびL、Sはオプション
リアウインドーがキックアップした独特な形状。ちょっと4代目「フロンテ」のような雰囲気
XのみLEDサイドターンランプ付ドアミラーが標準装備され、リモート格納機能もつく
電波式キーレスエントリーは全車標準装備。さらにXには携帯リモコンが付属しておりドアのリクエストスイッチによる施錠・解錠も可能
Xのみルーフ上にロッドアンテナを装備。それ以外のグレードはピラー部に付く
ガソリンは無鉛レギュラー仕様。タンク容量は27L
ヘッドライトの点灯パターン
リアコンビランプはバンパーに内蔵され、スマートなリアビューを演出
エンジンはスズキのスタンダードユニット「R06A」。エキゾーストマニホールド一体型シリンダーヘッドの採用などによりコンパクト化が図られている
L、S、Xグレードにはアイドリングストップやブレーキによる発電を行い燃費を低減するエネチャージを採用
助手席下にエネチャージ用リチウムイオンバッテリーを搭載している
Xは15インチアルミホイールを標準装備。タイヤはブリヂストン「エコピア EP150」でサイズは165/55 R15。そのほかのグレードは145/80 R13
15インチタイヤの空気圧は240kPa
2WD車のリアサスペンションはトーションビーム式で、Xは前後スタビライザーも装備。4WD車は従来と変わらずI.T.L式
アンダーボディーはなめらかな形状かつ骨格部を連続化することで軽量化と剛性の向上を両立
インテリアはブラックとホワイトの2トーンカラーとすることで明るくクリーンなイメージ
ステアリングはシルバー加飾によりラグジュアリーな雰囲気
シフトレバーはインパネに配置
ペダルは吊り下げ式のシンプルな形状
メーターパネルはヘッドライトと共通のテイスト。中央部のランプは走行状態によって変化
セダンにはAM/FMラジオ付CDプレーヤーが標準装備される。スピーカーはフロントに2つ。オプションの「オーディオ交換ガーニッシュ」により180mm幅にも200mm幅にも対応
フルオートエアコンはXだけの装備で、外気温計も付く
キーレスプッシュスタートシステムはXのみの装備。その横にはアイドリングストップやESPなどのスイッチがある
L、S、Xには運転席シートヒーターがつく。4WD車の場合、助手席シートヒーターも標準となる
5速AGS車とCVT車にはフロントシートの間にコンソールドリンクホルダーを用意。ペットボトルはもちろん紙パックも収まる形状となっている
グローブボックスはさすがに小さめ
SとXのサンバイザー裏にはチケットホルダー付のバニティミラーがある
フロントシートはヘッドレスト一体タイプ。高張力鋼板の採用により軽量化が図られている
白いパイピングとドット柄模様の表皮を採用
助手席シートバックには耐荷重4kgのショッピングフックを用意
運転席ドアトリム。下部には地図などを納められるポケットも
ホワイトカラーのアームレストにはパワーウインドーやドアミラーのスイッチを配置
室内長は145mm、前後乗員間距離が85mm拡大。ハイトワゴンに負けないリラックスできる空間を実現している
リアドアトリム。こちらも小ぶりながらアームレストが付く。リアスピーカーはオプションで装着には専用ハーネスが必要になる
サイドブレーキ後方にはリアシート用のドリンクホルダーがある
リアシートは可倒式。完全にフラットとはならないものの、大型の荷物も十分に積み込める
ラゲッジ下に15.5Lの容量を持つアンダーボックスを装備。カサなど70cmクラスの長尺物を収納できるスペースも用意されている
Fグレードのステアリング。上級グレードのような加飾がなくシンプル
5速AGS車のシフトレバーはマニュアルポジションが付くとともにシフトブーツも装備。エアコンはマニュアルタイプ
FとLのリアシートはヘッドレストがないタイプ
5速MT車のシフトレバー。ドリンクホルダーは丸形が横並びに
5速AGS車やCVT車でシフトレバーのあった部分がポケットになる
ペダルレイアウトは当然3ペダル
バンのシート表皮。パイピングがなくなり表皮も異なる
リアシートは直立。その分ラゲッジスペースはかなり広くリアシート折り畳み時はフラットにもなる
バンのみスペアタイヤを装備

(安田 剛/Photo:安田 剛)