レビュー

【タイヤレビュー】ダイナミックグリップスポーツタイヤ、ミシュラン「パイロット スポーツ 4」

レーシングタイヤ技術と直結

直感的な走りを楽しむ、ダイナミックグリップスポーツタイヤ

 ミシュランでは「走りを愉しみたい人向けのスポーツタイヤ」「くつろぎを味わいた人向けのコンフォートタイヤ」「安全性や安心感がほしい人のためのスタンダードタイヤ」という、大別して3つのシリーズをラインアップしており、どのシリーズもバランスのよさで定評がある。

 スポーツタイヤについても、高い限界性能を誇りながらも、相反する乗り心地や静粛性などの快適性を十分に持ち合わせており、その万能性には業界内でも「さすがはミシュラン」という声がよく聞かれたものだ。しかし、そのことがむしろ商品の性格を分かりづらくしている面があったと自己分析しているという。そんな話があるのかと驚いたのだが、上には上の悩みがあるということらしい。

 そこで、今回紹介するスポーツタイヤの最新モデル「パイロット スポーツ 4(PS4)」では、「直感的な走りを愉しむ、ダイナミックグリップスポーツタイヤ」という明快な開発コンセンプトを掲げた。快適性についてはさておいて、ドライビングを積極的に楽しみたいユーザーをターゲットに、スポーツタイヤとしての性能を極めることを是としているのが特徴だ。

 そのため、トレッドパターンには溝の割合を抑えることで、より広い接地面とグリップ力を得られるフォーミュラ E用のレースタイヤを応用したパターンを採用。さらに、ウェットグリップやコントロールおよび応答性を高めるためのさまざまな技術を盛り込んでいる。なお、PS4は「パイロット スポーツ 3(PS3)」の後継ではなく、サイズの設定はそれぞれで異なる。

 試乗したのはJARI(日本自動車研究所)の城里テストセンター。余談ながら、谷田部にあったころは筆者も毎月のように通っていたものだが、水戸の城里に移ってからJARIを訪れるのは初めてのことだ。

電気自動車(EV)のフォーミュラカーを使った世界シリーズ「FIA フォーミュラ E選手権」で使われるレース用タイヤの技術を応用して開発された、スポーツタイヤの最新モデル「パイロット スポーツ 4(PS4)」。サイドウォールにベルベット加工により生み出された独創的なデザインが与えられるのも特徴
シリカとの結合を高めたエラストマーを使用した新コンパウンドによってウェット路面でのグリップ力とブレーキング性能を向上させるとともに、進行方向に刻まれた4本のストレートグルーブによって縦方向の排水性を高め、さらに横方向の排水性を高める「アンチ・サーフ・システム」を採用。また、同社のハイパフォーマンスカー向けスポーツタイヤ「Pilot Super Sport(パイロット スーパースポーツ)」にも使われる、高強度で耐熱安定性に優れた「ハイブリッド・アラミド/ナイロンベルト」などの路面と密着する技術の採用によってコントロール性と応答性を高めた。これらにより、パイロット スポーツ 3比で最速ラップタイムを1.7%、平均ラップタイムを2.3%短縮することに成功している
試乗会で用意された車両

素直にヨーが立ち上がり、リアの揺り返しが小さい

 まずダイナミックハイスピードセッション。高速周回路で、高い速度域でのスタビリティ性能とレーンチェンジでの安定性を確認する。バックストレートの3カ所にパイロンでガイドされたレーンチェンジ区間が設けられており、100km/h、110km/h、120km/hと車速を上げて通過していく。

 車両はトヨタ自動車「クラウン」とレクサス「IS」。ステアリングのセンターと左右5度のところにテープでマーキングが施されてあり、5度以上を切ったときのレーンチェンジでのヨーの追従性=リニアリティを見て、車両の安定性を体感する。

 リニアリティが高いと適切なヨーが出て、車両が安定した状態でレーンチェンジできるのだが、わるいとヨーが出過ぎたり、収束が遅れたりして安定性が得られない。

 一般的には、たとえスポーツタイヤであっても切り始めがリニアでないとか、ステアリングを戻したときにリアにまだヨーが残っていて暴れるなど、大なり小なり走りが不安定になる。そして車速を高めていくほどにわるい部分が気になるものだ。

 ところがPS4は、操舵したときに応答遅れなく素直にヨーが立ち上がり、リアの揺り返しが非常に小さいことが印象的だった。まったく不安を感じさせない。120km/hまで車速を高めてもその印象が変わることはない。タイヤがいいとこんな走りができることに驚かされた。運転を交代して後席に乗ってみても、その差をより明確に体感できた。

 また、コースの他の場所ではスタビリティの高さを実感した。直進安定性が非常に高く、また中立からわずかに舵を与えたときの反応もとてもリニアであることが確認できた。意のままにクルマが動いてくれるから、走っていて気持ちがよい。

 マッチングとしては、もともとスポーティなISのほうがよい印象だが、リアサスがやや柔らかめなマイナーチェンジ前のクラウンのほうが、よりタイヤ換装による走りの上がり幅は大きいように感じられた。

拍子抜けしそうなほど自然で素直な走り

 続いてハンドリングセッション。一部をウェットとした、ジムカーナのようなコースに設定された旋回試験路でPS4を履くトヨタ「86」をドライブ。ここではステアリングレスポンスのよさと、ドライとウェットのハンドリングのよさを体感した。

 スラローム区間では応答遅れが小さいことに加えて、少ない操舵量でも曲がることが分かる。初期の応答が乏しいと舵を大きく切ってしまいがちになるところだが、PS4はそれがなく素直に曲がっていく。安定したグリップが得られないと電子制御デバイスの介入の仕方もギクシャクと心許なくなるものだが、PS4なら安心して効かせっぱなしで走ることができる。テールの流れ方に唐突感がなく、リカバリーするときのコントロール性もよい。

 ちなみに車両は最初期のA型の86である。A型というと走りがおぼつかない印象だったのはご存知のことと思うが、それがいわばタイヤだけで改良の進んだB型以降のような走り味に近づいていたわけだ。

 また、この日は何人かの参加者が交代で走り、見るからにタイヤが消耗しそうな感じだったにもかかわらず、PS4はあまり崩れていないことも確認できた。すなわちライフが長いのだ。これもまたスポーツタイヤに求められる重要な要素に違いない。

 最後に、アウディ「A4」で濡れた路面での急制動とスラロームを行ない、ウェットグリップとハンドリングのよさを体感した。ウェットでもグッと路面を捉える感覚があるだけでなく、スラロームでは後半にいくにつれて、クルマの動きが発散気味になっていくのはありがちなことだが、PS4なら最後までしっかり地に足のついた走りができる。これは応答性のよさと、リアのスタビリティの高さの表れにほかならない。

 どんなタイヤでも操縦安定性、とりわけヨーに関することは重要な要素だが、スポーツタイヤでは特に重要。その点でもPS4は申し分のない走りを披露してくれた。高い性能とともに、安定して意のままに操れる素直な操縦性を併せ持っている。そして今回、いくつかの競合する商品のある中で、PS4がもっとも理想に近いスポーツタイヤではないかと感じた次第である。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。