レビュー
【ナビレビュー】パナソニック「ストラーダ 美優Navi CN-RX01WD」
Blu-ray再生対応の新ストラーダ フラグシップ
(2014/11/28 21:50)
カーナビ黎明期からずっと市販向けモデルをリリースしているパナソニック。これまでに多くのカーナビをリリースしてきているが、現在の市販ラインアップは2つのブランドに分けられている。1つは2DIN一体型ナビに付けられる「ストラーダ」、もう1つが三洋電機の流れを汲むPND(Portable Navigation Device)タイプの「ゴリラ」だ。厳密に言うとポータブルトラベルナビゲーション「旅ナビ」もあるけれど、クルマ向けではないのでと言い訳しつつ除外。
で、この2ブランド。同じパナソニックの製品とはいえ生い立ちが異なることもあって、地図のデータベースからしてベツモノ。2013年に発売されたストラーダ「CN-R500/300」系モデルがトヨタマップマスター製をメインとしたものだったのに対し、ゴリラはゼンリン製のデータを採用していた。細かく言い出すと「CN-Z500D」では、これまた違うデータを使ってたりしてちょっとヤヤコシイのだけれど、要は2DIN一体型とPNDでは全く異なる商品だったってことだ。
エンジン一新! Blu-ray再生対応の新ストラーダ
2DIN一体型ナビ「ストラーダ」の2014年モデルとなるのが「RX/RS」シリーズだ。Blu-rayに対応することで美しい映像が楽しめ、後席に乗せた子供をナビ画面でチェックできるカメラ付リアモニターに対応。“美”しくて“優”しい「美優(びゆう)ナビ」の愛称が与えられている。
カンタンにラインアップを説明しておくと、RX系モデルがBlu-ray対応、RS系は従来どおりDVD対応となる。それぞれ2DINとワイド2DINモデルが用意されるため、商品名的には順に「CN-RX01D」「CN-RX01WD」「CN-RS01D」「CN-RS01WD」といった感じ。カメラ付リアモニターにはすべてのモデルが対応するものの、Blu-ray対応は「RX」系のみとなるため、「RS」系は正確には「優ナビ」となるのかも!?
そんな冗談はさておき、まずはスペックを見てみたい。今回のデモカーに装着されていた「CN-RX01WD」は、ワイド2DINサイズの本体に静電式タッチパネルの7型ワイドVGA(800×480ドット)ディスプレイを搭載。地図データは16GBのSDカードに収録され、別途エンタメ用SDカードスロットも用意される。前述したようにBlu-rayディスクの再生が可能なほかスマホ連携対応、フルセグ地デジ、Bluetoothなどが標準なほか、オプションのケーブルによりiPhone接続にも対応するなど、ほぼフルスペックと言っていい内容だ。
ハードウェア的には2013年モデルの「CN-R500D」に準じており、ディスプレイも同じものとのこと。なので、オプションとして用意されているFID(フロントインフォディスプレイ)「CY-DF100D」 も接続可能だ。ただし、まったく同じというワケではなく、準天頂衛星「みちびき」受信に対応した一方で、3Dジャイロやアプローチセンサーが非搭載となるなど、細かい部分では変更が加えられている。また、「RS」系はタッチパネルが感圧式になるなど、これまたスペックが異なっていることにも注意が必要だ。
カーナビ面での大きな特長となるのがエンジンを一新したことだ。長々と前置きをしたので賢明な方なら気がついていると思うけれど、ゴリラと同じエンジンを採用したのだ。そのためナビまわりは操作性を含めて大きく変わっているものの、AV系とナビ系のメニューを一画面で表示する「ツートップメニュー」や、自分好みにルート探索や地図表示などをカスタマイズできる「ストラーダチューン」なんかは従来どおり用意されるなど、旧モデルから乗り換えたユーザーでもそれほど違和感なく使えるように仕上げられている。このあたりはパナソニックらしい配慮と言えそうだ。
美しく優しいナビゲーション
新ストラーダの大きなトピックとなるのがBlu-rayディスクプレーヤーを内蔵したこと。美優ナビの“美”に当る部分だけれどもこれは市販ナビ初となる快挙なのだ。これによりBlu-rayの映像ソフトはもちろん、Blu-rayレコーダーなどで録画したディスクの再生も可能だ。新たに車載用のプレーヤーを開発したことにより実現したとのことで、ようやくDVDの呪縛から逃れることができるようになったワケだ。とはいえ、内蔵ディスプレイの解像度はワイドVGAとDVDでも十分なスペックしかない。そこで効いてくるのがHDMIの出力端子。
映像信号は480i、1080i、480p、720p、1080p、音声信号はリニアPCMとBitstreemに対応しているため、リアモニターとして液晶テレビやPCモニター(音は出ないけどクルマのスピーカーを使えば問題なし!)などを用意して接続すればBlu-rayならではの美しい映像を楽しむことが可能なのだ。小さいサイズのフルHDモニターがほとんど存在しないためコンパクトカーには無理があるものの、ミニバンやキャンピングカーのユーザーにはかなり魅力的なのではなかろうか。
次に“優”の部分。ここで一番大きいのが、オプションとして用意されているカメラ付リアモニター「CA-RMC900D」(2014年冬発売予定)の存在。モニターとしては9インチWSVGA(1024×576ドット)でHDMI入力を備えるというスペック。面白いのが名前からも分かるようにカメラを内蔵しているところで、モニターにナビで再生したBlu-rayの映像を出したままナビの画面にはカメラ映像を表示する、なんてことができる。つまり後席に座らせた子供の様子を、いちいち振り返ることなく安全に確認できるのだ。カメラの性能的には30万画素程度に思えるが、映像を見る限り必要にして十分な性能。小さな子供と出かけることが多いファミリーユーザーには嬉しい機能だろう。
スマホ連携もパワーアップ
Rシリーズから搭載された「DriveP@ss(ドライブパス)」に対応している。ドライブパスは各種アプリをまとめるランチャー的なモノで、AndroidとiPhone用がリリースされており、BluetoothおよびHDMIケーブルなどを使って接続することで利用できる。R500を紹介した時には「Yahoo! ニュース」「Music Player」「Title Finder」の3タイトルのみだったけれど、140チャンネルのラジオ視聴ができる「リスラジ」、YouTubeの動画を見ることができる「Let's Do-ga」、スマホ内の動画を再生できる「Video Player」(Androidのみ)、Facebookにログインできる「FBconnect」とアプリが充実してきた。スマホ内にある音楽や動画、映像といったソースをそのまま再生できるのはお手軽かつ便利だ。また、HDMI(MHL)接続によるミラーリングにも対応しているから、ドライブパスアプリがないソースでもとりあえず再生することは可能。ナビ画面で操作ができないなど制約はあるものの、お気に入りのアプリがあるならそちらを使うこともできるワケだ。
「おでかけナビサポート ここいこ♪」も便利な機能だ。それ自体はスマホのアプリのためカーナビ内のデータに依存せず、「るるぶDATA」を元にした観光スポット検索、「ぐるなび」を使ったグルメスポット検索、「Yahoo! JAPAN」を使ったキーワード/住所/電話番号検索、近くのおすすめスポットを紹介してくれる「寄り道コンシェルジュ」などのメニューを使ってスポットを探し出すことが可能だ。見つけたスポットはBluetoothを使ってカーナビに転送、目的地として設定できる。要はクラウドデータのため、カーナビに収録されていない新しい施設なんかも参照元にデータがあればOK。予約機能を使って食事や休憩中に探しておけば、クルマに乗った時に自動転送までできてしまう。一連の流れはホントにスマートで便利なのでぜひ使って欲しいところ。「ここいこ♪」自体も着々とバージョンアップが進み、スマホ内にある位置情報付の写真から目的地を設定できるようになるなど、より使い勝手がよくなっている。
順番が前後してしまったけれど新たに搭載された音声認識機能にも触れておこう。最近のカーナビではほぼ標準といえるクラウドによる音声認識を使った対話型システムで、Bluetooth接続したスマホを使って専用サーバにアクセスすることで実現している。完全な自然対話型ではなくジャンルと住所、地名などのキーワードから目的地を検索するもので、例えば「お腹が空いた」と発話すると近くの食事ができる場所を探してくれるといった感じ。認識率は相当に高く実用性は十分といえるものの、クラウド型の宿命で認識~検索~目的地設定と、すべてを行うにはそれなりに時間が掛かってしまう。せっかちなタイプなら「ここいこ♪」を使ったほうがストレスを感じないはずだ。
ゴリラのよいところを継承しつつストラーダ流にブラッシュアップ
カーナビ部分は地図データがゼンリン製になったことで、従来のストラーダシリーズとは大きく変わった。ボタン配置や機能が若干異なるものの、以前、レビューをお届けした2014年春モデルのゴリラ「CN-GP747VD」(http://car.watch.impress.co.jp/docs/review/20140724_659326.html)とほぼ同じと言っていい。
とはいえ、ストラーダブランドのモデルゆえ、ブラッシュアップも行われている。前述した2トップメニューの採用だけでなく、操作性も大きく変わっている。従来のストラーダRシリーズのようなフリックによる地図スクロールをはじめ、ダブルタップや2点タッチ、ピンチインやピンチアウトによる地図の詳細、広域切り替えが可能になった。本体をキッチリ固定できる2DIN一体型ならではの機能とも言え、ゴリラならではのサクサク感にストラーダの操作感がプラスされたことで、気持ちよくナビを操作することが可能だ。
ルート、ガイダンス(案内)、マップと3つのメニューが用意されたストラーダチューンも搭載。地図まわりでは地図色が4パターンに変更可能なほか、文字サイズが2種類、自車アイコンが色や大きさ違いなど10種類から選択できる。変更可能な項目がひとまとめにされているため「この機能ってどこで変えるんだっけ?」なんて悩まずにすむのは嬉しい。
検索関連のメニューは名称、住所、電話番号、周辺施設、ジャンルなど豊富に用意されている。恒例の羽田空港もそのまま検索できるし、駐車場や施設の出入口を収録するなど、ゼンリンならではの充実したデータもかゆいところに手が届く感じで便利だ。
ルート探索は「おまかせ」が基本。目的地設定時のメニューで「複数探索」を選ぶことで「有料優先」「一般優先」「eco」「距離優先」の5ルートが同時に探索できる。今回は時間が短かったためあまり多くのルートを確かめることができなかったものの、印象的には春モデルのゴリラと大差なく「おまかせ」を選んでおけばほぼOKな印象。「ルートチューン」を使って設定を詰めていけばより自分好みなルートに持って行けるハズだ。
地図更新は1年間に6回行われる「部分更新」が3年間と、2016年または2017年度版の全地図更新どちらか1回が無料。部分更新では市街地地図が更新対象とはならないものの道路地図をはじめ案内画面、音声案内、地点検索の各データはちゃんと更新される。ピンポイントで「その場所」って場合以外は、3年間ほぼ最新の地図が使えると思っていい。
安心、安全な道案内を実現
案内面での新機能となるのが「安心運転サポート」。これは一時停止や制限速度といった道路標識情報などを画面上に大きく表示することでドライバーに注意を促すもの。さすがに試すことはできなかったけれど、大幅に制限速度を超過している場合に画面と音声で警告してくれる機能も付いている。初めての場所はもちろん、よく走っている道路でもついうっかりってことはありがちだけれども、ナビがそれを防いでくれるわけだ。
この表示は地図画面に大きく表示されるため、事前にディスプレイされた機械でデモを見た際には「鬱陶しいかも」と感じたものの、走行中は画面を注視しているわけではないので意外と気にならなかった。逆に「ここ何キロ制限?」なんて気にすることがなくなり安心して走ることができたほどだ。クルマであちこちに出かける機会が多いなら、なかなかに嬉しく実用的な機能と言える。それでも不要と思うならストラーダチューンを使えばいい。「しない」「案内中」「常時」の3パターンから案内頻度を選ぶことができるので、必要に応じて切り替えるといいだろう。
一般道での案内はディフォルメされた拡大図による2画面表示がメインとなる。ちょっとランドマーク表示が小さいのが気になるものの、距離やレーンガイドも表示されるなど必要十分といった内容。約1800交差点と場所が限られてしまうものの「リアル3D交差点拡大図」は、実写をベースにしたイラストによる表示。スマホでも同様の表示を行うアプリがあるけれど、こちらは7インチと画面が大きいこともあってわかりやすさ満点だ。
高速道路ではJCT(ジャンクション)やIC(インターチェンジ)でディフォルメした拡大図により案内を行う。2画面で地図と同時に文字情報を表示することもでき、距離や到着予想時間をひと目でチェックできるほかSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)では施設内のテナントなどが分かるアイコンも用意されている。そのほか都市高速入口には専用のイラストを使った案内もあり、普段はあまり高速道路を走らないなんて人でも安心して走ることができるハズだ。
FM-VICSを内蔵しているため渋滞情報を地図上に表示することが可能だ。この状態でも十分に便利と言えるけれど、オプションの新型DSRC車載器「CY-DSR140D」を接続すれば、もっと多くの情報を得ることが可能になる。高速道路上にあるITSスポットを通過することで最大1000kmの広域渋滞情報を受信でき、それを元にした渋滞回避ルートを自動で探索してくれるのだ。FM-VICSだけだと自車位置周辺だけなので「出発してすぐは渋滞を避けられたけれど遠くの目的地付近が渋滞していた」なんてことが多々あるけれど、DSRC車載器があればそんな残念な事態を避けることができそうだ。
また、光ビーコン受信機も内蔵しているため、一般道でも情報の受信が可能なのもありがたい。また、渋滞情報の受信だけでなくETC車載器の機能も持っていることに加え、2016年から導入が予定されている経路別料金制度などに対応する「ETC2.0」をいち早くサポート。新制度のメリットをすぐに受けることが可能なのだ(ただし、再セットアップが必要になる)。ストラーダをフルに活用するなら必須のオプションと言っていい。
と、まぁ案内面に関してはまったく不安を感じさせないレベルにある本機なのだけれど、ちょっと残念なのが自車位置精度だ。もちろん、普通に走っているだけなら少しの問題もなく、専用機らしい安定した測位をしてくれる。住宅地に多い細街路やGPSや「みちびき」からの電波を受信しにくいビル街などでもキチンと自車位置を示してくれ、どこに居るのか分からなくなったり、自車位置がズレて曲がる場所を悩んだり、なんて不安を感じることはないといっていい。ただ、高さ方向のデータを持っていないため、一般道と高速道路が並行しているようなシチュエーションではどちらを走っているかをナビが判断できないのだ。「道路切替」という機能が用意されているので実用面で問題はないといえるものの、精度こそ専用機ならではのアドバンテージと考えればこのあたりの対応も望みたい。
2DIN一体型ナビらしい豊富なAV機能を用意
Blu-ray対応が大きなトピックと言えるが、そのほかの面でも充実した内容となっている。フルセグ地デジのほかBluetoothを使ったストリーミング再生、SDカードやUSBメモリーに記録した音楽や動画、写真の再生、SDメモリーカードへのCDリッピングと、標準で多くのソースに対応。オプションのUSB接続ケーブルを用意すればiPhone接続も可能だ。さらに前述したようにスマホ接続もできるのだから、普通のユーザーならもうお腹いっぱいって感じなハズ。
オーディオ調整機能も豊富だ。音のプロによるサウンドチューニングが手軽に楽しめる「音の匠」をリニューアルしたほか、イコライザーやDSPなどを搭載。カタログなどでは大きく謳っていないもののスピーカーとサブウーファーの音が出るタイミングを変えることが可能な「スピーカーディレイ」機能も用意。自分で数字を入力していく必要があるモノの、タイムアライメント的なセッティングが可能になるなどコダワリ派にも満足できる内容だ。
高いエンタメ力と安心感はファミリー層にもお勧め
ストラーダブランドを牽引する新たなフラグシップとなるRX/RSシリーズ。カーナビまわりを一新したことでイメージは大きく変わったもののナビ機能やAV機能、使い勝手など全方位で高得点を狙う方向性はそのまま。ただ、明確なメッセージとして感じられるのは、ファミリー層を重視したという点だ。カメラ付リアモニターやBlu-rayへの対応をはじめ、安心運転サポートなどナビ機能についても、そこを狙ったものだろう。
とはいえ、ニッチではあるもののナビ好きな層に訴える機能もキチンと用意されている。ストラーダチューンでのカスタマイズやスマホ連携、オーディオで言えばスピーカーディレイなど、使い込めば応えてくれるだけの器量もキチンと持ち合わせているのだ。オプションもDSRC車載器をはじめリアビューカメラ、FID(フロントインフォディスプレイ)など豊富に用意。ステップアップが可能となっている。
カーナビビギナーからファミリー、そしてナビ好きまでカバーする懐の深さ。それこそ新しいストラーダの持ち味と言えそうだ。