レビュー
【ナビレビュー】パナソニック「ゴリラ CN-GP747VD」
ゴリラ史上最強モデル。圏央道延伸対応など最新地図を搭載し、「みちびき」「グロナス」対応の高精度&高機能PND
(2014/7/24 14:11)
一時期はカーナビ界の一大勢力となったPND(Portable Navigation Device)。装着がカンタンなことはもちろん、それが故に複数のクルマへの載せ替えが可能、なおかつ価格もDINスペースに装着する据え置き型に比べると遙かに安価。地図データがCD-ROMやDVDに収録されていた時はどうしても分厚くなってしまうことからブレイク! とまではいかなかったけれど、SDカードに変わってからはスマートなフォルムに変身。据え置き型に比べると我慢を強いられていた自車位置精度も、GPSに加えジャイロセンサーを内蔵することなどにより実用的なレベルに。カンタン、安い、便利とくれば「そりゃ、売れるよね」ってアイテムになり、ナビメーカー各社から相次いで新製品がリリースされることになった。
が、盛り上がりつつあるところにスマートフォンが登場。基本が電話なだけにデバイス自体の価格を考える必要がない上に無料の地図サービスがあり、通信を使った最新データの検索が可能、持ち歩いてどこでも利用可能などなど、普段それほどカーナビを必要としないライトユーザーを中心として一気にユーザーを奪われることになった。かくして、多くのメーカーはPNDから撤退。まさに地滑り的大敗を喫したわけだ。
これでPND市場は消滅か、と思いきや意外や意外。出荷台数ベースで見ると、実はそれほど減っていないという。これはスマホを持たない層が含まれるのはもちろん、地図や施設のデータをローカルに持っていること、豊富なデータを利用しての案内の分かりやすさ、精度の高さからくる安心感というカーナビならではのポイントが重視されたため、といえそうだ。
前置きが長くなってしまったけれど、そんなPND市場で注目したいのが「ゴリラ」ブランドを擁するパナソニック。多くのメーカーが撤退してしまった後も、定期的に新製品を投入している。
2014年モデルはゴリラシリーズに4機種をリリース。7V型モニター採用&「ドライブカメラ」内蔵のフラグシップモデル「CN-GP747VD」、ドライブカメラレスの上位機種「CN-GP745VD」、同ベースモデル「CN-GP740D」、そして5V型モニターとなる「CN-GP540D」だ。
今回のレビューは最上位機種で「Gorilla EYE(ゴリラ アイ)」の愛称が付けられたCN-GP747VDをお届けする。
「みちびき」も「グロナス」もあるんだよ
CN-GP747VDの特長はPNDとしては大きな7V型VGAモニター採用していること。2DIN一体型モデルと同じサイズのため、ダッシュボードに設置しても見やすく、またタッチパネルを使った操作も楽チン。また、16GBのSSDを内蔵することにより実現した豊富なデータによる分かりやすい案内、800MHzの高速CPU&DDR3メモリの採用などによる快適な操作性など、フラグシップモデルらしいパフォーマンスを手に入れている。
とまぁ、カタログ的な説明だとこんな感じになる。で、これを踏まえた上で2014年モデルならではのウリといえるのが自車位置精度の向上だ。カーナビの場合、自車位置を測位するための基準としてアメリカの打ち上げたGPS衛星を使うのが一般的。複数のGPS衛星から電波を受信することでほぼ十分な精度を得ることができるものの、ビル街や高架下など受信が制限されてしまう場所では、十分な数の衛星をキャッチできなくなってしまう。
そんな弱点をカバーするための機能と言えるのがトリプル衛星受信だ。チカラワザって言えばそのとおりだけど、単純に衛星の数が増えればキャッチできる電波も増える(可能性がある)ってコト。2014年モデルではGPSに加え2つの衛星に対応していて、1つは国産の準天頂衛星「みちびき」、もう1つが新たに対応となったロシアが運用する「グロナス」。前者は日本の真上を通る軌道を回っているため、ビル街だったり山間部だったりと周囲が開けていない場所でも電波をキャッチできるのがウリ。ただ、現状では1基のみしか打ち上げられておらず、受信できる時間が1日8時間程度と限られるのが難点。後者は24基の衛星により地球全体をカバーするものだけに、電波を受信できる可能性はグッと高くなる。信頼性という面で多少不安が残らなくもないけれど……。それはさておき、この新ゴリラではGPS+みちびき+グロナスの中から、受信状況のよい電波を選択して使っているとのこと。時間帯や場所にもよるとはいえ、31+1+24と倍近い衛星を捉えられるようになったのだから、受信精度の向上にも期待できるってワケだ。
また、それでも衛星の電波を受けられない場合には「Gジャイロ」と呼ばれる機能が威力を発揮する。これはゴリラシリーズの上位モデルではずっと使われてきており上下、左右、加速度と3タイプのセンサーを使った自立後方ユニット。衛星からの電波が受けられないトンネル内などでも自車位置測位が可能になるのだ。
実際、街中を中心に走りつつ画面上の表示を眺めていると、ほとんどの時間においてGPSだけでなくグロナスも使っている様子。その一方、“みちびき”は南北方向に移動している時は受信していることが多いかな、って印象だ。
で、肝心な精度だ。結論から言ってしまえば複数衛星受信+Gジャイロの威力は、据え置き型ナビに相当に近いレベルだ。これは誇張やお世辞なんかでは決してなく、ダッシュボード上に置くだけのPNDとしてはズバ抜けたパフォーマンスを持っていると言っていい。例えば普通のPNDでは迷ってしまいがちな高架下の交差点といったシチュエーションでも、自車位置はまったくブレずにビタっと安定、動き出すと同時に画面上の自車位置マークがスッと追従してくれるのは見ていて気持ちがイイほど。起動時の測位時間を早める「クイックGPS」が搭載されているため、エンジン始動後すぐに自車位置を正確に示してくれるのも嬉しい。
さすがに地下駐車場では若干残念なコトになってしまうものの、実はこのモデルにはまだ隠し球があったりする。現状では発売予定(2014年冬)レベルではあるもののクルマのOBD2コネクタからCANデータを取得し、Bluetoothで送受信を行うオプションが接続可能となっている。そうなれば車速パルスと同様の信号を取得でき地下駐車場のような場所でももはや万全、測位精度に関しては据え置き型ナビとまったく同等と言える(ハズ)。また、燃費や水温といったデータ表示にも対応予定とのことで、発売されるのがかなり楽しみ。据え置き型ナビにもぜひ展開してほしいオプションだ。
カメラ内蔵って、ほんと便利
もう1つの大きな特長となるのが、本体背面に装着できるドライブカメラだ。2013年モデル「CN-GP737VD」から採用されたモノで、本体は50cm角程度の小さな箱形。専用USBケーブルでナビと接続することで、エンジン始動に連動して自動的に録画を開始、クルマ前方の風景を常時録画することが可能になる。録画用のメディアはマイクロSDカードで、カメラ側に専用スロットを用意。付属の8GBカードの場合、高画質モード(1280×720ドット、27fps)なら約2時間、標準モード(640×368ドット、13.5fps)では約14時間の映像を記録することができる。容量が一杯になると古い映像から上書きされていくけれど、急加速や急減速時の映像はイベント録画として保存されるほか、手動で記録を残しておくこともできる。また、撮影した映像はH.264 AVIファイルとなるため、パソコンにコピーしたり、記録として残しておくのもカンタンだ。
要はドライブレコーダー的な機能だけれど、カーナビ一体型とすることで電源や装着場所の確保に悩む必要がなくなるのは大きなメリット。また、ナビで再生する際には同時にマップを表示することができるため、どこの映像なのかがひと目で分かるのも便利だ。
実際の映像は掲載した動画をチェックしてもらえば分かるように、高画質モードとはいえそれほど鮮明とは言えない品質。とはいえ、映像作品を作るための素材ってワケではないし、周囲の状況は十分に確認できるから、実用的にはまったく問題ないレベルだ。ただ、ダッシュボードにゴリラ本体をキチンと固定しておかないと、掲載した動画のようにブレブレで気持ちわるい映像になってしまうので注意が必要になる(すまぬ)。
本記事の掲載後、同社から「貸し出した付属カメラに不具合があった」との連絡をいただいた。そこで別の機材を用意していただき再度チェックして見ると、当初掲載していた映像で顕著だったピンの甘さがなくなり格段にシャープかつ鮮明になった。新たに掲載している映像ではあえて他車のナンバーが見えずらいものをチョイスしているけれど、ごく普通の距離に居るクルマなら十分に数字が判別できるレベル。このぐらいの解像度があれば自撮りの車載動画なんかに使っても満足できるハズだ。
ちなみに前回書き漏らしてしまったのでちょっと補足。常時録画のデータは1分で自動的に分割され、カードの容量があるうちは順次新しいファイルが作られていく。高画質モードの場合、1ファイルは70MB弱になる。
本機はカメラなしの「CN-GP745VD」と比べて実売価格で約1万円高。この差をどう考えるかってコトになるけれど、後からドラレコを付けるつもりがあるなら、ナビ精度への影響などを考えてもこっちを選んでおいた方が安心。コードをはわせたりする必要がないから取り付けがラクだし、見た目にスッキリしているのもポイントが高い。
また、さすがに内蔵ではなくオプションとなるもののバックカメラも接続可能。ミニバンやSUVのような後方確認がしづらいクルマのユーザーには、それはとってもうれしいなって部分だろう。
ゴリラ史上最強モデル
ナビの基本部分はこれまでのゴリラを受け継いだもの。ゼンリン製の地図をベースにしたマップ画面は、7V型VGAモニターとの組み合わせで分かりやすく、ボタンが大きく表示されるため操作もしやすい。同社の据え置き型ナビストラーダRシリーズのようなフリック、2点タッチなどには対応していないものの、処理速度が速いためサクサクと操作できるのはマル。
表示面では7:3分割の2画面表示のほか鳥瞰表示(3D)が可能で、文字サイズやボタンサイズの変更にも対応。ボタン表示を消して広い範囲を見ることができる「フルスクリーンマップ」、必要な時だけワンプッシュで表示できカスタマイズ可能なランチャーメニューを備えるなど、使い勝手も十分に考えられている。
16GBのSSDを採用することで情報も豊富に収録されている。住所約3690万件、電話番号が約3210万件といった検索データはもちろん、方面看板約3万940件、リアル3D交差点拡大図約5780枚など多彩。観光ガイド「るるぶ」のスポット情報も約100冊分となる全国約3万3700件が用意されており、スタンドアローンで使えるカーナビとしては十分以上と言える内容を持っている。
なんて書くと「スマホと違ってデータは古くなる一方じゃん」なんて言われてしまいそうだけど、そこも実はぬかりない。
まず、道路情報に関しては6月28日に開通する圏央道 相模原愛川IC(インターチェンジ)~高尾山IC間開通など最新データが収録されているほか、2017年11月30日までは無料更新が可能。データは1年に6回配信される予定で、市街詳細地図を除く道路データ、音声案内、案内画像などが更新される。方法はパソコンでデータをダウンロード、SDカードでゴリラにコピーするってパターン。2014年から2017年にかけては圏央道、新東名、首都高を中心に道路事情を一変させる可能性がある開通区間が多いだけに、これは嬉しい対応と言える。
道路はそれでイイとしても「スポットは? スポットはどうなの?」ってギモンもあるだろう。そこに関しても実は対応方法がある。Androidスマホを持っている必要があるけれど、専用アプリ「おでかけナビサポート ここいこ♪」を使うのだ。このアプリはもうすでに据え置き型ナビで利用されていて「るるぶDATA」「ぐるなび」「Yahoo! JAPAN」のデータからスポットが検索でき、Bluetoothでそのデータをカーナビに転送できるスグレモノ。なかでも特に便利なのが「予約」機能。食事中などに次のスポットを検索、予約しておけば、クルマに乗った時に自動的にそのスポットを目的地として設定できてしまう。エンジンをかけてナビを操作して目的地を探して設定して~、とかメンドウな作業をする必要がないのでとってもスマートなのです!
このほか実際に試すことはできなかったが、走ったルートのGPSデータをKMLファイルもしくはNMEAファイルに記録する「GPSログ機能」、写真に記録されている「ジオタグ」を使って目的地設定が可能な「画像目的地設定機能」など、マニア(?)にはたまらない機能も。使い込み度が高そうな感じだ。
もう都市部の道路も怖くない
ルート探索は「自動」をベースに最大「有料優先」「一般優先」「eco」「距離優先」の5ルートから選択できる。細街路の探索ができたり、時間規制に対応していたりと、スペック的には全く文句ナシ。試用期間中、取材であちこち出かける際に使ってみたけれど、ほぼ自動にしておけばOKって感じ。探索速度も「爆速」とまではいかないものの、速いといっていいレベル。快適に使うことができた。
一般道での案内は交差点拡大図がメイン。デフォルメされた拡大図を使ったシンプルな内容ながら、道路状況を確認できるのはもちろん、交差点名やレーンガイドも表示するなど十分な情報量を持っている。一部交差点には実写ベースのイラストを使った案内も用意されており、ナビ専用機ならではの、分かりやすく安心感の高い案内を受けることができる。
高速道路に関しても同様。ジャンクションやインターでは拡大図が表示されるし、2画面で文字情報を同時表示することもできる。都市高速入口には専用のイラストを使った案内も用意されているなど、まったく不足を感じることはない。
これら豊富な案内に加えてFM-VICSも内蔵。渋滞情報を地図上に表示することもできるから、渋滞中もさほどイライラせずに済む。
実際に案内を受けて走って感じるのは、豊富な情報が生きるのも精度の高さあってこそ、という部分。特に都市部では1つ交差点がズレると右折禁止とかオーバーパスになっているとか、ひどい目に会うこともある。その点、このモデルならかなり安心して走ることができるのだ。
あえて控えめ!? なAV機能
ワンセグチューナーを内蔵するほか、SDカードを介して音楽(MP3/WMA)や動画(MP4)、画像(JPG)データの再生に対応する。データに関しては本体SSDの専用領域にコピーすることで、SDカードなしでも利用することができる。ただ、音声に関しては本体スピーカーからしか出力できないのがちょっと残念。一応、ヘッドホン出力端子は用意されているものの、せっかくだからFMトランスミッターを内蔵するとか、Bluetoothを使ったストリーミング再生に対応するとか、そんなことができたりするとよいなぁなんて思ってしまった。ついでに言えば、ハンズフリー機能もなし。Bluetoothを標準搭載しているんだからすぐにでもできそうだけれど、そこまでするなら据え置き型のストラーダ買ってね、ってことだろう。まぁ、そりゃそーかも。
そのほか、今回は試すことができなかったが「Gアプリ」と呼ばれる専用の無料アプリも用意されている。スマホと違って通信手段を持たないため、パソコンでダウンロードして本体にコピーすることで利用できる。用意されているのは「ジオタグ変換」「地点登録用KML変換」といったナビで使えるアプリのほか、「計算機」「地下鉄路線図」といった実用的なモノ、「四字熟語パズル」「道路標識クイズ」といったエンタメ系のモノなど現状7種類。必要に応じてインストールして使いたい。
最後に残った高機能PND
カーナビメーカーが次々とPND市場から撤退していく中、しっかりと新製品がリリースされ続けているゴリラシリーズ。新製品を出すからには新しい機能を追加しなきゃ、なんてジレンマを抱えつつもしっかりと進化を続けている。特に2014年モデルで嬉しいのは基本部分である精度の向上にコダワっているところ。ガラパゴスだの言われようが、あくまでもカーナビである以上、この部分がキチンとしているのはかなりポイントが高い。もちろん、スマホにはマネのできない部分と言うこともあり、差別化にあたっても重要だ。
そんな精度の高さが生み出す安心感をサポートするのが、16GBのSSDを生かした豊富な情報、そしてストレスを感じない操作感のよさ。これら専用機ならではの持ち味を生かしつつ、足りない部分はスマホアプリ「ここいこ♪」や無料のデータ更新で補っている。
価格はオープンプライス、発表当初の店頭予想価格は7万円前後となっていたが、現在ではそれより安価に売られていることが多い。ナビ性能はほぼ死角のないモデルのため、PNDを使い続けているユーザーはもちろん、スマホで十分と思っていたり、古い据え置き型ナビのリプレイスに悩んでいるなんてユーザーも、ぜひ一度使ってみてほしいモデルだ。
【訂正】記事初出時に掲載した映像は貸出機材に問題があるものとの連絡があり、新たに製品版の機材における録画映像を掲載した