特別企画
【特別企画】IR(統合型リゾート)を合い言葉に大きく変貌を遂げる街「マカオ」に行ってみた(前編)
マカオGPが開催される観光都市を紹介
(2015/1/8 00:00)
マカオと聞いて思い浮かべるモノはなんだろうか? おそらく“カジノ”というのが一般的な人の反応だと思う。ポルトガル統治時代(~1999年)から続くギャンブル可能なカジノホテルはマカオの代名詞ともなっており、多くの観光客がそれを目的に訪れているのは歴然たる事実だ。しかし、その風景も徐々に変わりつつある。かつてはカジノと呼ばれていたレジャービジネスは、現在はIR(Integrated Resort、統合型リゾートと訳される)という用語に変わり、カジノだけでなく、コンベンション(国際会議)、レストラン、アミューズメント施設、ホテルなどが一体となった観光施設へと変貌しつつある。
Car Watchの読者にとって、マカオは毎年11月に行われる「マカオGP」でおなじみの街だろう。例年11月の第3週に行われているマカオGPは、世界各国で行われているF3規定のジュニアフォーミュラの国際戦として知られており、F1で活躍しているドライバーの多くがマカオGPを経験しているほか、その優勝者のリストを見ても非常に豪華な顔ぶれが並ぶ。F1ファンにしてみれば、マカオGPを見れば将来のF1スターが分かるレースになっている。
今回、筆者は中華人民共和国 マカオ特別行政区 観光局のマカオ視察ツアーに参加する機会を得たので、その模様をお伝えしていきたい。
香港から日帰りで行く街だったマカオが宿泊型のリゾート都市に
マカオとは、中華人民共和国 マカオ特別行政区のことで、かつては租借地としてポルトガルが統治していたマカオ半島とコロアン島などから構成される地域のことを指している。現在も一国2制度の下で、中国本土とは別の政治形態で運営されている。例えば、中国本土からマカオへ中国国民が入国する際にはビザが必要になる。日本のパスポートを持っている旅行者は90日以内の滞在であれば必要ない。
そのマカオへの旅行は、日本人にとっては香港ほど手軽なものではなかったかもしれない。というのも、日本、特に東京から香港への直行便は毎日複数便が飛んでいるが、東京からマカオでは週4便、マカオ航空が飛ぶのみ。そのダイヤもどちらかといえばマカオから日本へ向かう観光客にとって便利なものとなっており、マカオから日本に向かう観光客の方が多いというのが現状だ。
となると、日本からの観光客は日本から香港へ飛んで、そこからフェリーでマカオに向かうというコースが一般的になる。実際、筆者も10年前に個人旅行で家族とマカオに行ったことがあるが、その時は香港がメインで、1日足を伸ばしてマカオに行くという旅程になった。必然的に香港のホテルに宿泊し、日帰りでマカオに行ったのだが、おそらくこれが多くの日本人観光客にとっての一般的なマカオ観光モデルだったといってよいだろう。
“だった”と書いたのは、それが今は大きく変わりつつあるからだ。元々マカオの観光というのは、ポルトガル統治時代の遺構を含めた各種の世界遺産を巡る観光と、マカオ半島側にあるカジノホテルにあるカジノへ行くというのが一般的なものだが、近年はドラスティックな変貌を遂げつつある。
かつてのマカオは、マカオ半島と呼ばれるダウンタウンがある中心部と、タイパ島、コロアン島という大きく2つの島から構成されていた。しかし、このタイパ島とコロアン島の間が埋め立てられ、コタイ地区という新しいエリアを創出。そこにIRと呼ばれる新しい形の総合リゾートが造成されているからだ。
コタイ地区に作られているのは“マカオ版ラスベガス”とでもいうべきものだ。進出しているのはLas Vegas Sandsに代表される米国ラスベガスに巨大なカジノホテルを持っている企業で、同社がマカオのコタイ地区で運営している「The Venetian Macao Resort Hotel」は、ラスベガスで運営している「The Venetian Las Vegas」と同様の意匠と巨大さを誇っており、内部にはラスベガス同様にショッピングモールも用意されている。ラスベガスのThe Venetianには、イタリアのベネチアをモチーフにした水路とゴンドラサービスがあるのだが、マカオのThe Venetianにもそれがきっちり用意されている。
こう書くと、中国でありがちな“物真似”と誤解されそうだが、そうではない。というのも、それらの意匠はきっちりとライセンスを受けて展開されているもの。物真似ではなく、ラスベガスをそっくりそのままマカオに持ってきたというのが正しい表現だろう。どちらかといえば、米国ロサンゼルスにしかなかったディズニーランドを、ディズニーと正式契約した上で「東京ディズニーランド」として運営する、そんなイメージで捉えるのが正しいといえる。
今回、筆者はコタイ地区のホテルに4泊したが、まさにラスベガスに宿泊しているのではないかと感じるほど快適に過ごすことができた。実は筆者は仕事(International CESの取材)でラスベガスに年に1度は宿泊するのだが、そうしたラスベガスのホテルと比べても快適だと感じることが多かった。コタイ地区のホテルはラスベガスのホテルと同じように、ホテルの中にカジノだけでなく、ショッピングモール、レストラン、劇場などがそろっており、すべてがホテルの中で完結している。ラスベガスと比較してあえて足りないところを挙げると、バフェ(日本でいうところのバイキング。数十ドルで食べ放題になるレストランのこと)ぐらいで、食べ放題ではなくとも美味しいレストランがいくつもあるので特に不便はないと感じた。
しかも、ラスベガスのカジノホテルは建設から数十年が経過している建物も多く、施設的には古さを隠せないものが多いのに対して、コタイ地区のカジノホテルはいずれもここ10年以内に建設されている。施設が新しいというのは宿泊する側にすれば嬉しい利点といえる。実際、ラスベガスのホテルはインターネット時代になる前から建っている建物がほとんどで、インターネット設備が後付けされているため、回線の速度が遅いなどあまり十分なサービスが提供されていない場合が多い。今回筆者が泊まったコタイ地区のホテルはいずれも高速なインターネットサービスが提供されているなど快適に利用できた。
このように、コンセプトはラスベガスに近いことは明白だが、完成度は本場よりも高い、そうしたカジノホテルがコタイ地区にはどんどん建設されている。マカオ観光局によれば、マカオ全体でのホテルの部屋数は2014年で2万8千室規模になっており、ほとんどが五つ星ホテルの部屋だという。さらに、2017年末にはそれが5万室にまで拡張される予定で、日々新しいホテルの建設が進められている。このように、ラスベガスのクオリティを持ち、それを超えるようなIRの街として変貌を遂げているというのがマカオの今なのだ。
香港国際空港でフェリーに乗り換えてマカオへ。預け入れ荷物はマカオでピックアップ
ラスベガスを超えるIRの街として変貌しつつあるマカオだが、前述のとおり、日本から行くには事実上香港経由になるのが現状だ。しかし、香港経由でも利便性は年々向上している。マカオに行ったことがある旅行者であれば、いったん香港に入国して、そこからフェリーを使ってマカオへ向かったのではないだろうか。それだと入国手続きが2回発生して面倒なため、まずは香港に入国して宿泊。空いた日を使って、日帰りでマカオとなり、マカオが第一目的地になりづらいことはすでに述べたとおりだ。
しかし、現在は大幅に改善されており、香港国際空港からマカオへ直接向かうフェリーを用意。それを利用すると、香港に入国しなくても直接マカオへ向かうことができる。今回は、香港を代表する航空会社であるキャセイパシフィック航空の羽田~香港便(CX543)を利用して香港に飛び、香港国際航空で香港のTurboJetが運営するフェリーに乗り換えてマカオに向かうことになった。羽田発が10時45分、香港着が現地時間15時過ぎというスケジュールだ。
まず、東京国際空港(羽田空港)のチェックイン時にマカオまで行くことを告げると、荷物タグを香港行きではなく、マカオ行きとしてつけてくれる。そのときに受けとる荷物の半券は、香港でTurbo Jetに乗り換える時にも見せる必要があるので、なくしたりしないように気をつけたい。香港国際空港ではあらかじめ予約しておいたTurbo Jetのカウンターへ行って、羽田空港でもらった半券を見せて搭乗チケットを受け取るだけでOKと非常に簡単だ。これで荷物はマカオのフェリーターミナルまで運ばれていくので、イチイチ香港で荷物をピックアップして再チェックインなどをする必要がないので楽だ。
フェリーに乗ってマカオに向かう際に注意したいのが防寒対策だ。Turbo Jetのフェリーは、60km/h程度と船としてはかなりの速度で航行するジェットフェリーなので客席は完全な密閉型なのだが、ご丁寧に冬でも冷房がガンガン効いているのだ。マカオは日本より南方だから寒くないだろうと、セーターをスーツケースの中に入れてしまっており、船内で凍える羽目になった。どうも中華圏の人達は、冷房を効かせて不快な思いをさせないというのがおもてなしだと思っている節があって、今回に限らず台湾やシンガポールでも冷房が効き過ぎというシーンにはよく遭遇する。このため、中華圏へ旅行する場合は、夏だろうが、冬だろうが1枚余計に持って行くと凍えないので覚えておこう。なお、香港国際空港からマカオまでは1時間程度。東京の自宅を朝8時に出て、マカオ到着は現地時間で18時(マカオと日本の時差は-1時間、マカオの方が1時間遅いので、日本時間では19時)となった。
なお、現在はフェリーだが、あと数年するとこのフェリーすら必要ではなくなる可能性が高い。というのも、中国政府は香港、マカオ、深セン、珠海という4つの地域を橋で結ぶ巨大プロジェクトを敢行しており、これが2016年末には完成して、香港国際空港からマカオまでクルマで行けるようになるからだ。現在はマカオ側の橋の人口島の建設などが進められており、完成すればフェリーを使わなくてもマカオへのアクセスが可能になる。
今は飛行機が香港に到着してからフェリーに乗り換えるまでに約2時間程度必要だが、バスになれば船と比べて便数を増やしやすいため待ち時間は数十分単位まで縮小されるだろうし、クルマであれば30分程度になると考えられている。日本からマカオがぐっと近くなるのだ。実際、今回フェリーから建設中の橋を見ることができた。フェリーはフェリーで趣があってよいのだが、移動時間が短縮されればそれだけマカオでほかのことができるだけに、旅行者としては喜ばしいことだ。新しい橋の完成に期待したい。
コタイ地区の5つ星ホテルは、すべてがそろって快適なステイに
今回の旅行で宿泊したのは、前出のコタイ地区にある2つのホテル。前半がホテルオークラマカオ、後半がSheraton Macao Hotel, Cotai Centralだ。
ホテルオークラマカオはいうまでもなく日本のホテルオークラが運営するホテルで、フロントには常時日本語ができるスタッフがおり、日本の観光客には安心できる“おもてなし”を提供してくれることが特徴だ。館内にはスポーツジムなどの欧米の宿泊者向けの施設のほか、和食レストランなども用意されており、日本のホテルオークラもそうだが"和の心を持って、欧米流のホテルサービスを提供する"というホテルになっている。
ちなみに、ホテルオークラマカオもIR地区にあるのでカジノもあるのかと誤解されるかもしれないが、実はホテルオークラマカオ内にはカジノはない。しかし、ホテルオークラマカオは香港のGalaxyグループというリゾート開発会社が開発したIRの敷地内にあり、Galaxyグループが運営するカジノと入り口でつながっている。カジノを運営するには政府のライセンスが必要になるため、こうした形になっていると考えられる。Galaxyグループの敷地内にあるホテルには、Galaxy自身のブランドのGalaxy Macau、Banyan Tree Macauもあり、いずれもカジノとは通路でつながっている。
なお、コタイ地区のIRのホテルでは、カジノの入り口には必ずセキュリティ担当者が立っており、法定年齢である21歳以上でなければカジノへの進入を許さないという仕組みが採られている。これは厳格に守られており、日本人女性に多い童顔の人は年齢に関わりなく止められるほどだ。カジノを利用しなくても近道のためにカジノエリアを抜けていきたいという時には、年齢を証明するモノ(海外ではパスポートだけだ)を必ず所持するようにしたい。
もう1つのSheraton Macao Hotel, Cotai Centralは、Cotai Centralという、前出のLas Vegas Sandsが持つIR施設の中にあるホテルだ。Cotai Centralには、Sheraton、Holiday-Inn、Conradという3つの欧米のホテルブランドが冠されたホテルが並んでおり、欧米の観光客を意識したブランディングや室内の作りなどになっている。従来のカジノホテルというと、なんとなくファミリー客には近寄りがたいというイメージがあったと思うが、近年ではどこのカジノホテルでもそうしたイメージからの脱却を狙っており、ファミリー客向けの取り組みを強めている。Cotai Centralも同様で、筆者が宿泊した期間はハリウッドの映画制作会社であるDreamWorksと提携しており、同社のアニメ映画であるマダガスカルやカンフー・パンダなどに登場するキャラクターが登場するパレード、カンフー・パンダをイメージしたファミリールームを提供するといったキャンペーンを行っていた。
いずれの部屋もできてから間もないこともあり、施設も非常に新しい。筆者1人で泊まるには豪勢に過ぎると感じたぐらいで、非常に快適なステイとなった。日本人旅行者としてとても嬉しいのは、どちらのホテルも深いバスタブが、しかもシャワールームから独立して用意されていることだ。欧米系のホテルの場合、バスタブはあっても非常に浅いバスタブで、日本人がゆっくり入るにはあまり適していないことが多い。また、バスタブとシャワーが一緒になっていることも多く、バスタブに長めにつかるというのは難しいケースもある。
しかし、今回泊まったホテルはどちらも深いバスタブが用意されており、それとは別にシャワールームが用意されていた。そのため、ゆっくりとバスタブにつかった後でシャワールームでシャワーを浴びる、あるいはその逆という過ごし方が可能だった。海外旅行となれば、時間を惜しんでアクティブにそこら中を歩き回ることになると思うので、夜になったらクタクタで、風呂ぐらいはゆっくり入りたいと思う人が多いだろう。そうしたニーズを満たしてくれるバスルームが用意されている点は非常に好感を持った。
さらに嬉しかったのは、ビジネスユーザーであってものびのびと機材を広げることができる十分な机のスペースが用意されていたこと。僚誌であるPC Watchをお読みの方ならご存じのように、筆者の普段の仕事は、世界中のIT関連のイベントを取材してそれを記事にすることだ。このため、米国、台湾、欧州といった日本以外のホテルに宿泊する機会は少なくない。そうした時に意外と困るのが、仕事に利用するPCなどの機材を広げるスペースだ。しかし、さすが5スターホテル。しっかりとワーキングスペースが用意されていたほか、電源の口もユニバーサル仕様になっており、コンセントの形が異なる日本の機器もそのまま利用できるようになっていた。
なお、マカオのコンセントはBF型と呼ばれる形状になっていることが多い。マカオに旅行する場合にはBF型を持って行くとよいだろう。電圧は220Vと日本の100Vに比べると高いので、100Vにしか対応していない機器は変圧器が必要になる。最近のIT機器(PCやスマートフォンのUSB充電器など)は、100-240V対応となっていることが多いので、ACアダプタなどの表記で100-240V対応と書かれている場合にはそのまま利用することができる。
今回、筆者はスケジュールの関係で、旅行をしながらPC Watchの記事を部屋で書くという状況になっていた。“宿題”を旅行までに終わらせることができなかった自分がわるいので文句はいえないのだが、部屋で即席のサテライトオフィスを作って快適に作業することができた。
なお、いずれのホテルも部屋で利用できたWi-Fiは、日本でいえば光回線並みの速度で、日本にある自宅のPCにVPN(Virtual Private Network)で接続してファイルのダウンロードを行ってみたら、3MB/秒(24Mbps)というかなり速いスピードで利用することができた。インターネット回線が高速だと、ちょっとした調べ物をするときでも素早く結果が表示されるし、何かをダウンロードしなければいけないときにも時間を節約できて効率はアップする。速いネット、これは期待していなかっただけに非常に嬉しい誤算だった。
筆者が今回初めてマカオのコタイ地区のホテルに泊まってみて感じたことは、ラスベガスのホテルとの“部屋の快適さ”の違いだ。すでに述べたとおり、ラスベガスのホテルには年に1回、International CES取材時に宿泊しているのだが、どこのホテルに泊まっても部屋の快適さはイマイチだ。ラスベガスのホテルはカジノに客を誘導するため、高級ホテルでも冷蔵庫がなかったりするなどわざと部屋を快適にしない。それはカジノの売り上げを上げるためだ。さらに、インターネットもわざと遅くしているのだという都市伝説があるほど劇的に遅い。
しかし、今回宿泊したマカオ/コタイ地区の2つのホテルではそういうことがなく、部屋は快適だしインターネットは速い。これでは「快適すぎて宿泊者がカジノに行かないのでは?」と心配になるほどだ。カップルや家族連れなど、カジノはちょっとでよいので、夜は豪華な部屋をじっくり堪能して昼間は観光を楽しみたいというニーズにも十分対応できるなと感じた。
コタイ地区のIRは、カジノのほかレストラン、ショッピング、ショーなど多彩なレジャーを用意
カップルや家族連れでも楽しめるというのは、何も部屋だけではない。コタイ地区にはさまざまなレジャーがそろっている。昼間はそうしたレジャーを楽しんだり、足を伸ばしてマカオ半島にある世界遺産を観光したりして、夜は豪華な部屋でゆっくりするという楽しみ方ができるのがコタイ地区のホテルのメリットだ。
1つめのレジャーとしては、大型ショッピングモールでのショッピングがあげられる。前出のThe Venetian Macao Resort Hotelは、ラスベガスのThe Venetian Las Vegasの有名なショッピングモール「GRAND CANAL SHOPPES」と同じ意匠のショッピングモールが用意されている。天井は空を模したスカイブルーで、各ショップの建物はベネチアを意識したデザインだ。ベネチアを意識した水路も用意されており、そこにはゴンドラが浮かび、実際に乗って楽しむことができるのもラスベガスと同様だ。ゴンドラでは舟漕ぎが歌うなど実にサービス満点で、乗らなくても外から見ているだけで十分に楽しめる。ショッピングモール全体が1つのアトラクションみたいなものなのだ。
もちろん、ショッピング自体も充実しており、CHANEL、Dior、FENDIといった一流ブランドだけでなく、日本のユニクロのようなファストファッションのブランドもあり、家電量販店、スマートフォンショップなど多種多彩なショップがそろっている。
なお、マカオの通貨はパタカ(2014年12月中旬で1パタカ=約15円)という独自の通貨で、日本では両替不可。現地に行ってから両替することになる。ただ、実際には香港ドル(こちらは日本で両替できる)がそのまま流通しており、100香港ドルまではほぼ等価で利用できる。それ以上の場合には若干レートが異なる。従って日本から両替して持って行くのであれば、香港ドルに両替していくと便利だろう。また、マカオは日本の消費税に相当する売上税的なモノがないので、表示されている価格がそのまま支払額となる。ブランド製品を買うには適した場所だろう。
旅行のもう1つの楽しみである食事に関しても充実している。コタイ地区のホテルには世界中から富裕層が集まってくるということもあり、ミシュランガイドで星がついているレストランがどんどん増えているという。今回はそんなレストランのいくつかで食事をする機会を得たが、ミシュランガイドで星がついているだけあって、フランス料理も中華も上品で美味しかった。ただ、自分の志向からすると豪華すぎるので、もっと気楽に食事したいという方は、無料のシャトルバスを利用してマカオ半島側に出かけるのがよいだろう。そこでは、ローカルのマカオ人が食するような中華やポルトガル料理などを安価に楽しむことができる。本格的な料理から地元のローカルフードまで楽しめるのも、マカオならではいえるだろう。
さらに、コタイ地区のホテルに併設されているシアターではショーも行われている。今回はThe City of Dreamsホテルの「The House of Dancing Water」(http://www.cityofdreamsmacau.com/jp/entertainment/the-house-of-dancing-water/)というプールを利用したショーを楽しんだ。本場ラスベガスのショーである「“O(オー)”」を監修した監督が作ったショーだけあって、90分の時間を飽きさせない、内容盛りだくさんのショーだった。今後はこうした本格的なショーも増えていく方向だといわれており、本場ラスベガスのように様々なショーを楽しむことができるようになるだろう。
なお、そうした有料のショーだけでなく、無料のアトラクションが用意されているのもコタイ地区のホテルの特徴となっている。例えば筆者が訪れた期間には、前出のThe Venetian Macaoではホテルの壁にさまざまな模様をプロジェクターで映し出す「プロジェクションマッピング」のショーを1時間ごとに行っており、同ホテルの宿泊者はもちろんこと、周辺のホテルに宿泊している宿泊者や、ショッピングモールに来た買い物客も楽しんでいた。こうした無料のショーも少なくないので、それを目当てに来ても十分楽しめるだろう。
観光に行くなら、スマートフォンやタブレットを片手に楽しむのが今流
観光旅行といえば、観光ガイドブックを片手に……というのがこれまでの日本における海外観光の常識だろう。海外で観光ガイドブックを持って観光している日本人観光客に出会うというのは、筆者も何度も経験している。しかし、近年ではそうした海外旅行の風景も徐々に変わりつつある。その最大の要因は、世界規模でのモバイルブロードバンドとスマートフォンの普及だ。海外旅行はスマートフォンやタブレットを片手に、という風景があたり前になりつつある。
筆者自身も観光旅行の際は観光ガイドブックを持ち歩いていたが、ここ数年はガイドブックをほとんど持って行かなくなった。ではどうしているのかといえば、現地についてからGoogleやBingなどの検索サイトを利用して行くべき場所を決めているのだ。
ネット回線の品質が不安でガイドブックが必要だと思ったときには、AmazonのKindleのような電子書籍サービスで観光ガイドブックの電子版を買い、それをスマートフォンなりタブレットなりにダウンロードして持って行くようにしている。ガイドブックではなく検索で情報を探すと便利なところは、現地でさっと検索して目的地を決め、気分のままに旅ができることだ。
このような旅のスタイルであるため、ビジネスにせよ観光にせよ、海外に行くときにはまずインターネットに接続する手段を確保することから始めている。海外でインターネットにつなぐ場合には、一般的に考えて次の3つの選択肢がある。
1 日本で回線契約のあるスマートフォンをローミングで利用する
2 日本の空港などでレンタルできるWi-Fiルーターを持って行く
3 現地でプリペイドSIMカードを購入してSIMフリーの端末に入れて利用する
それぞれのメリットとデメリット、コストを表にしてみると以下のようになる。
●海外でインターネットに接続する手段
ローミング | Wi-Fiルーターレンタル | プリペイドSIM購入 | |
---|---|---|---|
コスト | 2,000~3,000円/1日 | 1,000~1,500円/1日 | 1,500円~3,000円 |
5日間のコスト | 15,000円 | 6,000円程度 | 1,500円~3,000円 |
メリット | 簡単に使える | ローミングに比べて安い | 定額で安い |
デメリット | 高い | 使える量が明確ではない | 現地に行かないと買えなく、SIMフリーの端末を自分で用意する必要がある |
まず、日本の回線をローミングすると、使うデータ量(パケットという単位で示される)に応じて課金されるが、20万パケット(約24.4MB)までは1980円で、それを超えると2980円/1日という料金に固定される(NTTドコモでの契約の例)。なお、NTTドコモでは事前申し込みで使える「海外1dayパケ」というプランも用意している。マカオの場合は24時間で980円になるが、30MBというデータ量が1日の上限となっているのであまり便利ではない。普通の使い方をすると1日で30MBはすぐに超えるので、実質的に1日2980円だと思っていたほうがよい。なお、1日の定義は日本時間での0時~23時59分となる。現地時間ではないので注意が必要だ。
2つめの手段は、日本の業者からWi-Fiルーターをレンタルしていく方法で、最近は空港でピックアップできるものがほとんどだ。価格がローミングと比べて安価に設定されているのが特徴で、1000円~1500円/1日で利用できる。このほかに空港でのピックアップ代金などがかかる場合もあるが、ローミングと比べて安価に利用できる。
そして3つめの手段が、現地でプリペイドSIMカードという契約情報を記録したICカードを購入してデータ通信する方法だ。この3つめの手段の場合は上記2つと比べて安価になることが多く、コストパフォーマンスに優れた選択肢といえる。ただし、この場合はSIMロックと呼ばれる特定の事業者のSIMカードだけが使えるようにロックされていない、SIMフリーのスマートフォンやタブレットなどが必要になり、かつ現地でプリペイドのSIMカードを自力で調達することになる。SIMロックされていないスマートフォンやタブレットの入手方法だが、最近では家電量販店でSIMフリーとして売られているスマートフォンやタブレットが流通しており、それらを購入するか、例えばNTTドコモのAndroidスマートフォンでは、購入後にドコモショップに持って行き、3000円の手数料を払うことでSIMロックを解除することができる。
マカオの場合には、プリペイドSIMカードの入手は非常に簡単だ。フェリーで到着して入国し、荷物を受け取って外に出ると、到着客を待つエリアに置かれた複数の自動販売機で入手できる。データ通信1GB(約1000MB)でマカオ内であれば通話定額のプラン(1カ月有効)が100パタカ(約1500円)、1週間の期限はついているが7GBまでのデータ通信が可能で通話定額のプランが200パタカ(約3000円)で販売されていた。
筆者が購入したのは、「3」という通信キャリアの200パタカのプランだが、それは外でPCを接続することもあるためデータ容量が7GBあったほうがよいと判断したからだ。単にスマートフォンで使いたいだけであれば、1GBの100パタカのプランで十分だろう。なお、すでに述べたとおり、マカオではマカオの通貨であるパタカだけでなく、香港ドルも流通しており、両者はほぼ等価として利用することができる。このため、筆者はこの自販機で日本で両替してきた香港ドルを使い、SIMカードを購入することができた。
日本で携帯電話を契約する場合、身分証明書を用意するなどいろいろと面倒なことになるが、マカオではそうした手続きは一切必要ない。アクティベーションと呼ばれる開通作業はパッケージ内に書いてある電話番号に電話するだけで、それだけで利用できるようになる。ただ、今回は日本のNTTドコモのスマートフォンであるSC-01G(Samsung Galaxy Note Edge)を利用したのだが、APNと呼ばれるインターネットのアクセス情報は自分で入力しなければならなかった。このあたりの情報も買ったSIMカードのパッケージに書いてあったが、慣れないと戸惑うことも少なくないので、初めて海外でSIMカード購入にチャレンジするなら、必ずバックアップでローミングできるようにしておいたほうがよいだろう。ちなみに筆者のスタイルは、到着した初日はローミングを利用して、その後は現地のプリペイドSIMに移行するようにしている。
なお、現時点でマカオでは、LTE(Long Term Evolution)という最新の高速な通信方式は利用できず、3Gという1世代前の通信方式のみがサポートされている。ただし、3Gでも実行通信速度はかなり良好で、回線速度を計測するアプリケーションを利用してテストしてみると、下り5.76Mbps、上り1.62Mbpsの速度が出ていた。これだけの速度ならPCを接続しても十分に使えるポテンシャルがあるといえ、不満を感じることはないだろう。
マカオ・パスをゲットして、Googleマップを駆使してバスを利用した観光を楽しむ
さて、観光旅行といえば、メインイベントはやはり観光地を回ることだが、海外旅行も回数を重ねてくると、観光地を巡るだけでなく、現地の人が利用するような場所(例えば市場とかローカルのレストランなど)に行くと結構楽しいことに気付かされる。このため、筆者はそこに行くのが2回目以降だったり、1回目であっても日程に余裕がある場合には、できるだけ現地の人と同じような交通手段を利用して、現地の人が行くような場所に足を運ぶことにしている。
ただ、注意点としては、やはり外国は日本とは治安のよさがまったく違うので、治安の状況はインターネット検索で確認しておき、状況を確認してから行くようにしている。余談になるが、治安という意味ではマカオはまったく問題がないといえる。コタイ地区にせよ、マカオ半島側にせよ、カジノがあるという性質もあって治安の維持には万全の体制が取られている。夜に現地を歩き回ってみたが、女性が1人で出かけても安全だなぁと感じるぐらいだった(もちろん、完全ということはないので注意するに越したことはない、念のため)。
マカオのそうしたローカル観光だが、現時点ではマカオには鉄道がないので、マイカーを持たない観光客はタクシーかバスを利用することになる。なお、マカオでも現在鉄道が建設中で、2017年にはLRT(新交通システム)と呼ばれる無人型の鉄道の供用開始が計画されている。これが完成すれば、マカオ半島、タイパ、コタイ地区が鉄道で結ばれることになり、利便性が大幅に向上しそうだ。ただ、現時点では建設中に過ぎないので、現実的にはバスを利用して移動するのが日本で鉄道に乗る感覚に近そうだ。
そうしたバスはマカオの全域をくまなくカバーしている。料金は3.2パタカ~6.4パタカ(約50円~100円)と安価に設定されているが、コンビニエンスストアなどで販売されているマカオ・パスという非接触型のICカードを購入すると、2パタカ~(約30円~)に割引され、かつ一定条件下でバスを乗り継ぐと乗り換え扱いになるなどの優遇措置を受けることができる。コンビニエンスストアで130パタカ(30パタカがデポジット+100パタカ分がチャージ)で購入できるので、バスに乗る前に、まずこのマカオ・パスをゲットしておきたい。
バスの乗り方は日本と基本的に一緒。車両前側のドアから乗ってマカオ・パスか現金で料金を払い、降車時には降りる停留場に着く前に、日本と同じように降車ボタンを押すか、合図するためのストライプを引いたりして運転手に知らせる。合図の方法は乗ったバスによって異なるので、ほかの乗客の動作を見て確認しておくとよいだろう。
ただ、旅行者にとって問題なのは、どこで乗り、どこで降りるかということではないだろうか。ガイドブックにも完全なバスの路線図までは載っていない(網羅できないほど細かいのだが……)が、そういうときこそITの出番だ。Androidスマートフォンなら標準で導入されている(AppleのiPhoneでもダウンロードしてインストールできる)Googleマップを利用すれば、マカオでバスに乗り降りする停留所まで含めて経路検索できる。使い方は単純で、まず目的地(停留所である必要はなく、リアルな目的地)を入れて検索する。すると、検索結果の下の方に電車のアイコンが表示されるので、それを押すと現在地から目的地まで公共交通機関(この場合はバス)を利用した行き方が表示される。あとはその指示に従って停留所に行き、バスに乗ったら指示通りのところで降りるだけだ。さらに詳細表示にすれば、途中の停留所の一覧なども表示されるので、降りる停留所だけでなく、今どの停留所まで来ているのか確認できるので、いきなり降りる停留所になって慌てるということもない。
今回筆者はこの手を使って、マカオのバスを最大限活用することができた。慣れていない土地では誰にとっても公共交通機関を使うのは難しいもので、筆者もついついタクシーに頼って移動することが少なくなかったが、このGoogleマップを活用する手段を覚えてからは、むしろ積極的に公共交通機関を利用するようになっている。今回もこれを使い、タクシーは一切乗らずにバスだけでマカオのあちこちを訪れることができた。マカオに観光で行く機会があれば、まずはマカオ・パスをゲットし、それからGoogleマップを活用しながらバスで観光すると、機動力アップで効率よく観光することができるのではないだろうか。
前編として、筆者なりのマカオ観光紹介をしてみた。後編ではCar Watch的なマカオのメインイベントであるマカオGP観光ガイドをお届けする。