トピック

ホンダアクセスの新型ドライブレコーダー(2016年モデル)について開発陣に聞く

「ドライブレコーダーに求められる機能をちゃんとやる」

株式会社ホンダアクセス 開発部の斉藤愛歌氏(右)と下境啓介氏(左)

 ここ最近、クルマのアクセサリーとして人気が急上昇しているのが「ドライブレコーダー」だ。事故発生時に記録を残すという役割はもちろん、環境映像的にドライブの記録として使ったり、動画投稿サイトにアップしたりといった、今までとはちょっと違った側面での活用も増えてきた。

 カーナビやカーオーディオと違って装着がカンタン。加えて、購入者が増えたことで価格が下がり、1万円程度でも購入できるようになった。つまり「お試し感覚」で装着できるようになってきたことで、ドライブレコーダーの装着率が増えているわけだ。

 低価格化はユーザーにとって歓迎できる半面、品質面で“アヤシイ”商品も紛れ込んでくることも意味する。単純に記録として録画するだけならあまり気にしなくてもよいかもしれないけれど、ドライブレコーダーの本質は安心・安全のバックアップ。イザというときに「録画されてなかった」では済まされない。カーナビ以上に製品選びが大切なのだ。

 安心という意味でもっとも期待できるのが自動車メーカーの純正品だ。本田技研工業のクルマに向けて純正アクササリーをリリースするホンダアクセスでは、2016年モデルとして2タイプのドライブレコーダーを用意。その開発におけるコダワリなどについて、ホンダアクセス 開発部の斉藤愛歌氏、下境啓介氏、高松義人氏からお話しを伺った。

ユーザーの好みにあわせて2機種を用意

 ホンダアクセスでは、2008年に自動車メーカーの純正品として初めてドライブレコーダーを発売した。当時のモデルはETC車載器サイズの本体と別体式のカメラを組み合わせたもの。録画スイッチや映像コードはオプションで、約5万円と高価な商品であるうえに、別体式ということから取り付け費用も高額。画素数は27万画素しかなかった。

 2015年10月に発売された2タイプの2016年モデルは、どちらもカメラと本体をコンパクトにまとめた一体型。映像の確認や設定をホンダ純正品のギャザズナビで行なえる「ナビ連動タイプ/カメラ一体型」と、本体に液晶モニターまで一体化した「カメラ一体型/液晶モニター付」がラインアップされる。

ナビ連動タイプ/カメラ一体型

価格:2万7000円

ナビ連動タイプ/カメラ一体型の装着イメージ
ナビ連動タイプ/カメラ一体型
カメラ仕様カラーCMOSカメラ約92万画素
画角水平115°/垂直65°
フレームレート高画質モード/28FPS
標準モード/14FPS
記録方式MP4/JPEG
画像サイズHD 720P
常時記録時間(イベント保護分含む)高画質モード/約128分
標準モード/約925分
記録カードmicro SD(8GB付属)
カメラ一体型/液晶モニター付

価格:2万1384円

カメラ一体型/液晶モニター付の装着イメージ
カメラ一体型/液晶モニター付
カメラ仕様カラーCMOSカメラ約130万画素
画角水平110°/垂直73°
フレームレート標準モード/30FPS
長時間モード/15FPS
記録方式AVI
画像サイズHD 720P
常時記録時間(イベント保護分含む)標準モード/約200分
長時間モード/約400分
記録カードmicro SD(8GB付属)
「純正であることが一番のポイント」と斉藤愛歌氏

 2016年モデルについて斉藤氏は「純正品というところが一番のウリで、3年6万kmの保証が付きます。市販製品と比べていただくと、付けていただいた際の耐ノイズ性能、映像というところで、お客様の満足度アップを念頭に置いて開発しています」という。ナビ連動タイプは「ギャザズナビと連動させることによってステアリングリモコンでの手動記録ができたり、ナビのGPS情報を活用した位置情報の記録、記録した動画を地図と連動して再生できることが特長」とのこと。

株式会社ホンダアクセス 開発部 高松義人氏

 高松氏は以前のモデルについて「市販の製品と比べると高価で、またパソコンを使うことが前提ということもあって分かりづらいところがあった」と振り返る。そこで新機種の開発にあたっては「確認のしやすさ」を重視。そのアプローチとして「モニターを付けて安くするモデル」と「ナビと連動して今までより大きな映像を見ることができるモデル」の2種類をラインアップすることにしたという。

 この2モデルはスペック表を見比べると分かるように、レンズや記録方式などが微妙に異なっている。これはサプライヤーが異なることが要因だが、ホンダアクセスが画角や画質などの要件を決めているため、必要な性能は担保されているとのこと。また、「サプライヤーの資産を上手く使うことで価格を抑えることもできる」(高松氏)と、ユーザー側にもメリットがあるとした。

クルマの機能を損なわないことが重要

 斉藤氏の言葉にもあったように、メーカー純正であることの大きなメリットは3年6万km保証が受けられること。アフターマーケットの製品が通常1年保証であることを考えれば、その安心感は大きい。この点だけで見ても積極的に買いと言えるところだけれど、ことドライブレコーダーという商品に関してはもっと重要なポイントがある。

 それは「ほかの機器に対する干渉の有無」だ。見た目では分からないけれど、実はドライブレコーダーという商品は回路構成上かなり大きなノイズの発生源となっているのだ。その影響はラジオはもちろん、地デジ放送やひどい場合にはクルマの衝突被害軽減ブレーキのような安全装備にまで及ぶこともあるという。安全をバックアップするためのドライブレコーダーなのに、ほかの安全装備に悪影響を与えてしまうとなれば本末転倒になってしまう。

テストを担当した下境啓介氏

 商品のテストを担当した下境氏は、2016年モデルのドライブレコーダーを開発する上で「ここ(ノイズ対策)は苦労した部分です。ドライブレコーダーは輻射ノイズを出してしまうので、それを抑えるのが一番の目標だった」として、開発初期段階からノイズ対策に力を入れていたことを明かした。

 そこで開発では「市販のドライブレコーダーを集めてホンダ車に付け、ノイズの性能を確認しました。(その上で)どういったノイズ対策が行なわれているかを分析する」ということからスタート。そうした準備段階を経て設計が開始され、実際にはハーネスの部分にもシールド性能の高いものを採用したり、基板からもノイズが出てしまうのでシールドケースで覆ったり、回路の定数を変更するなどのチューニングによってノイズの発生を抑えたという。

 こうして完成した2016年モデルについて、下境氏は「現状発売されている市販品と比べると、ノイズ対策はそれより一歩進んでいる」「車両のいろいろなシステムと組み合わせた上でも、ノイズの影響が少ないというのがウリになるかなと」と語り胸を張る。斉藤氏は本体だけでなく「ホンダセンシングの有無によって取り付け位置を変えるといった対策もしている」と補足。ほかの機器に影響を与えないための配慮を十分に行なっているとした。

 加えて高松氏は「開発中のクルマでも確認ができるので、新車発売と同時にドライブレコーダーも適用しています」と、純正品ならではのアドバンテージをアピールする。実際にクルマが世に出てから適合を調べるのと、事前に調べておけるのでは後者に分があるのは明白だ。

車外の風景を確実に記録する

 もう1つ、ドライブレコーダーにとって重要なのが「映像を確実に記録する」ということだ。肝心なときにストップしていたのでは話にならない。

 下境氏は「純正品である以上、“クルマがどんな状況にあっても録画できること”が重要」として、特に厳しいのが温度への対応であるとした。ドライブレコーダーをはじめとする電子機器は低温には比較的強いもののの、高温には弱く、60℃あたりで根を上げてしまうパーツが少なくない。日本の場合、締め切った車内は真夏は言うまでもなく、初夏でも60℃を超えてしまうことが珍しくない。ドライブレコーダーの場合はフロントウィンドウの上部という、温度の影響を受けやすい位置に装着することになるのだから、しっかりとした対策が必要になるのは明白だ。

どちらの製品もレンズの角度を変更可能
カメラ一体型/液晶モニター付は背面のモニターで設定や映像を見ることができる

 だが、一部の市販品はこうした状況下で、アラートを出して録画がストップするのはまだよい方で、熱対策を重視していないモデルだと、真っ白い映像しか記録できていなかったり、そのまま録画を続けるうちに壊れてしまうケースもあるそうだ。「クルマが動き出して、車内でエアコンが効くようになれば動作するから大丈夫」という考え方もあるかもしれないけれど、映像の記録が必要な瞬間はいつ訪れるか分からない。スマホなら一時的に撮影できなくてもよいとも言えるが、ドライブレコーダーの場合は製品として失格だ。

 そのため、車内で使用する機器の場合、高温域でも動作する、俗に「車載スペック」と呼ばれるパーツを使用することになる。余談ではあるけれど、カーナビにもこうしたパーツが使われており、それが価格を押し上げたりスペックが限定されたりする要因にもなっている。

 それはさておき、今回の2モデルでも車載スペックのCMOSセンサーを採用しているという。また「筐体内に熱がこもらない構造にすることで、CMOSセンサーにダメージを与えない設計にしている」(下境氏)そうだ。その結果、炎天下に駐車していたあとでもすぐにキレイな映像を録画できるようになっているのだ。

 また、意外と盲点なのが映像を記録するカードだ。本体にはどちらも8GBのmicro SDカードが付属しているが、本体のスペック的にはSDHCまで対応しているため、より大容量のカードに交換したいと考えるユーザーも居るかもしれない。だが、付属品のカードは「温度範囲に適合して記録できるスペックのものを付属しています」(高松氏)、「書き込み回数の耐久テストもしています」(斉藤氏)というから、安心を重視するなら付属のカードを使いたい。万が一、なくしたり破損したりしたときでも補修部品として販売しているそうだ。

安心・安全を実現する数多くのプロセスを経て製品化

 ドライブレコーダーに詳しい読者なら、映像が720Pという点に不満を覚えるかもしれない。事実、最近ではフルHD対応の市販品が増えているし、なかにはそれ以上を誇るモデルも出てきている。この点について下境氏は「高画素数を謳っているモデルもあるが、画素数=画質ではない。アクセスとしては画質のよさを求めて開発した」と言う。一時期はデジカメなどでも大いに論争になったポイントだが、ホンダアクセスが重視したのは「どんな状況においても確実に映っていること」(高松氏)だ。そのため下境氏は、トンネルなどの暗い場所から急に明るい場所に出ると起きてしまう白飛びを抑制したり、夜間に対向車のヘッドライトでぼやけてしまうような状況でも、エッジがキレイになるようなチューニングをしたと、具体的にポイントを挙げて画質向上への取り組みを説明してくれた。

ナビ連動型の接続時は、画面下のメニューにアイコンが表示されて動作状況をチェック可能
ナビの情報メニューから映像の再生や設定が可能
自動録画では映像が1分ごとに1ファイル作成される
画質や音声録音の有無などを変更可能
イベント録画の感度(G)も設定変更できる
各機器の接続状態のチェックもカンタン

 それ以外にも、衝撃を受けたときに映像を記録する「イベント録画」がそれぞれの車種でキチンと動作するか、テストコースを走り込んで確認したり、アイドリングストップ機構への対応を確認するなど、安心・安全を実現するため数多くのプロセスを経て発売されたのがこの2モデルなのだ。「ドライブレコーダーが求められる機能をちゃんとやる」と言う高松氏の言葉どおり、安心して使えるモデルに仕上がっていると感じられた。

実際の画像と記録映像。撮影場所が地図上に表示されるほか、速度やG、日時なども記録できる

協力:株式会社ホンダアクセス