F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第43回:2022年シーズンを振り返る

2022年のF1を振り返る。開幕戦 バーレーンGP

 みなさん、いかがお過ごしでしょうか? 寒いですね、雪がたくさん降っているニュースがあったりで心配です。

 僕は、東京での写真展が始まっていて、ギャラリーでみなさんと直接お話ができるので嬉しい毎日です。

 写真家という職業は、自分の写真に関してこのコラムのように発表はするけれど、見ていただいた方からの感想や疑問などをお聞きすることができないので、写真展を開催するということの理由の1つには、見ていただいてその感想を直接聞けるということが楽しみであるわけです。

 さて、今回はF1 2022シーズンを振り返りたいと思います。各GP1枚選んで書き進めたいと思います。


 まずは開幕戦のバーレーンGP。表彰式が終わってチームのホスピタリティー前で記念撮影。

 ルクレール選手が優勝、2位がサインツ選手というフェラーリ圧勝というレースでした、3位がハミルトン選手。

 レッドブルの2台は、なんとリタイヤ。フューエルポンプの不具合だったような気がします。なんだかホンダPUのせいじゃないかって話もありましたよね。

 この時は、今年は、久しぶりにフェラーリの年になるかもね?って思いましたよね。ハースのマグヌッセン選手が5位、角田選手が8位でした。

第2戦 サウジアラビアGP

 第2戦はサウジアラビア。

 なんと言っても、ミサイルがサーキットから数kmのところにある石油施設に着弾して火災になったということが、一番記憶に残っています。

 ただの火災ではなく、ミサイルが飛んで来るって事実に、平和の国の日本人としてはビックリ。もちろん、パドックにいる人みんなビックリ。レースが中止になるような雰囲気がプンプンでした。けど、やっぱりレースは普通に開催されました。

 そんな中、地元の人たちは「あ~~~またか」って感じで全然普通な感じ。そのギャップにビックリしてましたね、僕は。

 レースの方は、あまりよく覚えてませんが、フェルスタッペン選手が勝ったみたい。

第3戦 オーストラリアGP

 第3戦はオーストラリア、メルボルン。

 バーレーンとサウジアラビアが続いてからのオーストラリアだったので、気分的にとっても落ち着いていられたことを覚えています。中東ってやっぱり苦手……というか、普通って大事。

 勝ったのは、ルクレール選手、ペレス選手、ラッセル選手と続きます。フェルスタッペン選手はリタイヤ。

 このあたりでは、「今年はフェラーリだ、ルクレール選手がチャンピオンだなこれは」って、多くの人が思ってたんじゃないでしょうか?

第4戦 イタリア エミリア・ロマーニャGP

 第4戦はイタリアのイモラサーキット、エミリア・ロマーニャGP。

 コロナ禍からの回復で、どのサーキットもたくさんのお客さんが詰めかけていました。やっぱり、観客席にはお客さんがいっぱいいるという雰囲気がいいですよね。

 そしてイタリアのご飯がおいしいんだもの! レストランも通常の時間の営業に戻っていたし、サーキットで食べるランチもおいしかった。

 レースは、フェルスタッペン選手が、スプリントもレースも勝って反撃開始って感じ。

 ドライバーズポイントは、1位がルクレール選手が86、フェルスタッペン選手が59で、27ポイント差。

第5戦 マイアミGP

 第5戦は、マイアミGP。初開催。

 ラグビースタジアム周辺にコースを作るアメリカっぽいサーキット。

 とにかく暑かったという記憶。カメラがオーバーヒートして動かなくなっちゃったりした記憶もあり。写真を撮るという側から見れば、いけてないサーキットでしたね。

 フェルスタッペン選手の2連勝。

第6戦 スペインGP

 第6戦からはヨーロッパラウンドの始まりで、スペインGP。

 僕はマイマミから別の仕事でドイツに入ってからスペイン、モナコという4週間の旅に出ていたんです。だから、もうこの頃は、日本食が恋しくて仕方なかったかな。

 レースはフェルスタッペン選手、ペレス選手、ラッセル選手という順番。ルクレール選手はリタイヤしてしまい、ここでドライバーズランキングはフェルスタッペン選手が首位に立つ!

第7戦 モナコGP

 第7戦は、モナコGPです。

 写真を撮る立場から言わせていただければ、何回来てもモナコはパラダイスであります。でもまあ、昔に比べたら撮影ポイントは少なくなってしまいましたけどね……。

 レースはペレス選手がモナコ初優勝でした。

 そして、レース結果もさることながら、僕は4週間ぶりに大好きな日本へ帰国です!

 やっほ~って感じで羽田空港着。その日は、空港に到着した旅客の全員抗原検査の最終日でした。

 いつものように、待合室で自分の受付番号がモニターに出るのを待っていると……どんどんその番号だけ抜かされていきます……。

 なぬ?? なんだ?? やな感じ……待てと暮らせど自分の番号は忘れ去られたよう。

 すると、僕の番号が音声で呼び出されます。

「○○番のゲート前にあるカウンターまでお越しください」

 行ってみると、検査の結果陽性となりましたので、奥の待合室でお待ちくださいと係の女性。行ってみると、2~30人の人が間隔を空けて座っています。

 その時の僕の状態は、全然普通。待ち時間の間に、お弁当が配られて、うわ、うめ~~~って思いました。

 そして、2時間くらい待って。おじさん3人でハイエースに乗り込んで、銀座のホテルへ。隔離の部屋から一歩も出られず、15日間いました。

 最初の1週間くらいは、仕事もはかどるし、インターネットも完備、3食のご飯もおいしいし、TVもあるし、なんとなく快適かもなんて思っていたけれども、10日間くらいすると、なんとなく閉塞感もあるし、もちろん運動不足にもなるし、第一飽きるし、つらかったなあ……。

 コロナの症状は、少し熱が出て咳が少し出る程度……。あと1日到着が遅れれば、普通に家に帰れたとも思ったりしたけれど、奥さんに感染させずに済んだんだと思えば納得もしてますけどね。

 しんどかったなあ。

 まあ、ですからアゼルバイジャンGPは、隔離ホテルで見てました。残念な気持ちもありましたけど、どうしようもなかったので意外と平常心でした。

第9戦 カナダGP

 第9戦は、カナダGP。

 隔離で筋力が落ちているのを、ものすごく実感として分かりましたね……。大好きな雨が降ったので、気合いで写真を撮ってました!

 レースは、アゼルバイジャンに続いてフェルスタッペン選手の連勝です。

第10戦 イギリスGP

 第10戦はイギリスGP。

 レーススタートの多重クラッシュの影響で赤旗中断の間に、ピットに戻って選手の表情が多く撮れたのがよかったです。

 レースはサインツ選手の初優勝!

第11戦 オーストリアGP

 第11戦はオーストリアGP。

 レッドブルリンクは以前からオランダからフェルスタッペン選手の大応援団が集まります。

 オレンジ色の発煙筒が焚かれます。その量が年々増加するわけです。われらがヒーローを応援したいというオランダ人が増えますからね。

 まあ、その発煙筒の煙が多すぎればレースに支障をきたしますよね。当たり前ですけど、禁止されます。

 絵的には、ありがたいんですけどね、だから僕個人的には、残念です。

第12戦 フランスGP

 第12戦はフランスGP。ポールリカールサーキットです。

 テストコースとしても営業している、このコース特有の青と赤でペイントされたエスケープゾーンが特徴ですね。このサーキットでのフランスGPは、来季からのカレンダーからは外れています。

 写真的には、この色がどのコーナーも一緒で、最初の頃は面白かったけど、ちょっと飽きちゃったかな……。

第13戦 ハンガリーGP

 第13戦はハンガリーGP。このグランプリが終わると夏休み!

 だから、早く終わって早く帰りたかったという気持ちもなくはない……。

 レースはフェルスタッペン選手の勝利。選手権も2位のルクレール選手と80ポイントも差をつける。安定感と強さ、そして前半で出たようなマシントラブルもなくなり、強さが際立ってきていました。

第14戦 ベルギーGP

 第14戦はベルギーGP。

 大好きなオールジュの外側エリアが安全対策で大改修され、高速コーナーのアウト側のエスケープゾーンが大幅に増やされました。そのエリアが広がったということは、写真を撮るわれわれの仕事場にモロに影響するということ。

 上の写真でいうとマシンが走っている左側のバリアの切れ目がありますよね、そこから上のバリアの位置が奥に広がったんですね。

 2輪、4輪の多くの選手がここでケガをしたり亡くなってしまっています。安全性をもちろん高めるのは大賛成です。

 でも、その結果、大幅に撮れる写真迫力とかバリエーションが減りました……残念です……。

 致し方ないんですけどね。残念。

第15戦 オランダGP

 第15戦はオランダGP。

 このグランプリは、フェルスタッペン選手のためのレースと言ってもいいくらいです。

 2021年に続いて、2連勝。地元GPで勝つことが難しいということは、彼にとっては関係ないようです。

第16戦 イタリアGP

 第16戦はイタリアGP。

 予選でポールはルクレール選手。ティフォシの応援虚しく、レースではフェルスタッペン選手の優勝。

 レースペースの力強さと言ったら、完璧じゃないでしょうか、フェルスタッペン選手の強さが光る。

第17戦 シンガポールGP

 第17戦はシンガポールGP。

 ナイトレースならではの絵作りをしなければならないとすれば、1つは火花。なかなか難しい。

第18戦 日本GP

 第18戦は日本GP。

 雨が強すぎました……。寒かったですね、風も強くなってきてましたしね。

 雨宿りできなくて、長時間待っていた方の中には後日体調を崩してしまった人も多かったんじゃないでしょうか?

 交通機関の接続などで、仕方なくサーキットを出なくてはならなかった方も多かったですよね。レースが再開して、ホンダのホームグランプリでフェルスタッペン選手のチャンピオンが決まってよかったです。

 来年は、いい天気でレースを見ることができますよ~に!

第19戦 アメリカGP

 第19戦はアメリカGP。

 今年のCOTAサーキットは超満員! どでかい旗がハタハタとはためきます。

 アメリカ人は国旗大好き、それもデカければデカいほどいいらしい。ちょっと、日本人の感覚にはないことは確かです。

 だって、鈴鹿サーキットの1コーナーに日の丸のどでかいやつを立てようと誰もしないよね。だから、不思議な感じがいたします。

 そしてここで、30年ぶりにホンダPUがチャンピオンを獲得しました! ホンダのみんなの笑顔が素晴らしすぎでした!

 あのPUはレッドブル・パワートレインズのものでしょ!

 なんてのは、僕は気にしません! だって、ホンダが作ったPUなんだもの!

 しっかりと、今後のF1活動の指針を明確に示してくれる日が早くきてほしいものです。世界一過酷なF1の現場で、1等賞になるということの意味をきちんと理解して、大いに利用するべきだし、そのために多くのエンジニアの努力があったわけですからね!

第20戦 メキシコGP

 第20戦はメキシコGP。こちらも毎年のことながら、超満員のお客さん。

 いったん日本に帰って、次戦のブラジルGPをどうするかということになりました。

 日本からブラジルに行く予定にした報道関係者は僕1人です。治安のわるさは1等賞です。

 しかも果てしなく遠い。経費もかかる。

 いろいろ考えて、渡航を断念しました。

 そしたら、出発予定だった水曜日に発熱、寝込みました。行くのをやめて、気合いが抜けたから熱が出たのかなんなのかは、いまだに分かりません。

 行かなくて、ハースのポールポジションが撮れなかったのは残念です。

 でも、行く途中の機内で発熱してしまったらどうなっちゃったのかと思うと、行かなくてよかったような気もいたします。

第22戦 アブダビGP

 第22戦はアブダビGP。

 アブダビに到着する頃まで、咳が残っていました。お休みしたブラジルの時は、コロナだったのか風邪だったのかいまだに分かりません。

 アブダビでは、やっぱりベッテル選手の姿を撮らねばという気持ちも大きかったですね。

 写真は、最後のグリッドでマシンに乗り込む直前、フィジオの人とハグ。お疲れさまでした!

 そして、優勝のフェルスタッペン選手は15勝目という大記録を打ち立てて、終わってみれば、圧勝でした!


 という1年でしたね。

 みなさま、お正月の食べ過ぎとコロナやインフルエンザに気を付けながらお過ごしください。

 お時間あったら、1月28日まで写真展を開催していますので遊びに来てください! 僕も可能な限りギャラリーに在廊する予定ですので、来場の際はぜひ声がけください! お待ちしております。

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。