F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

番外編:富士スピードウェイをF1が走った! 国内初のハースF1旧車テストに潜入してきました

 HaasのTPC(旧車テスト)が8月6日~7日の2日間、富士スピードウェイで開催されました。

 このTPCというのは、近年のさまざまな要因でF1のテストの回数が制限されている中で、主に若手のF1を目指すドライバーによるテストの場として、年間1チーム20日の制限の中でチームあたり1台、走行距離は無制限として行なわれます。

 使用できるマシンは3シーズン前の車両に限定されるので、今回は2023年のVF-23を使ってテストすることになりました。

 タイヤは、このプログラムのために作られたピレリタイヤで、アカデミータイヤと呼ばれています。ですから、本番のレースで使うタイヤとは全く別物。アタックラップのタイムやロングランでのペース自体のタイムはあくまでも参考にしかなりません。

 これは、通常のレースタイヤと全く別のタイヤとして仕立てることにより、本番のレースのデータ取りにならないようにするための措置です。

 今回はハースがトヨタとコラボレーションした中で実現したテストとなりました。

 1日目は平川選手が乗りました。

 今年はハースのリザーブドライバーとして、WECと日程が重ならない限りF1に帯同しています。

 マクラーレン、アルピーヌのマシンでテストも済ませていて、トヨタ系ドライバーの中でいちばんF1に近い立ち位置にいます。

 最速タイムは1分18秒538。111周を予定通り走りました。

 2日目はスーパーフォーミュラ&SUPER GTチャンピオンの坪井選手が乗りました。国内で最速ドライバーということになります。僕は、坪井選手と面識がなく、撮影したのも今回が初めてでした。

 坪井選手はF1初走行の前に緊張した雰囲気でした。最初のピットアウトは少々ぎこちなさを感じて、チャンピオンでもこうなってしまうんだな~って思いました。

 でも、それ以降は快調に周回を重ねていました。

 2日目の方が雲が多く、午前中にはときどき雨がポツポツ降るような天気。でも気温が低くて、タイムを出しやすい状況。実況放送も、お客さんもコースレコードを期待します。17年ぶりのF1走行ですからね。

 コースレコードは2008年の日本GP、マッサ選手の1分17秒287。

 坪井選手は何度かアタックして1分17秒470。周回数は108周。0.2秒足りなくて更新ならずでした。

 冒頭で書いたように、タイヤの種類が違うし、マシンのエアロパッケージもこの場所、気温などにベストなものではなかったので参考にしかなりませんが、イベントとしての盛り上がりはその現場にいて感じましたし、楽しめました。

 小松代表は、今回のTPCを本当に楽しみにしていました。

 TOYOTA GAZOO Racingとのコラボレーションでハースにできることが多くなったわけですが、その1つにTPCがあります。

 今シーズン前には、このTPCでレギュラードライバーのオコン選手とベアマン選手がハースに乗ってテストできましたし、日本で初めてTPCを実現できて、日本チャンピオンの坪井選手がF1に乗るというプログラムを実現できました。

 ハースとTGRの提携で、さまざまな作業を進めている中心人物は小松さんとTGRの加地さんになります。

 今回のFSWでのTPCの目的は、平川選手と坪井選手のテストはもちろんですが、日本のファンに向けて、もっと気軽にF1を感じてもらいたいということでした。

 2日間で6200人の来場でした。皆さんご存じのように、日本GPを観戦するためには大金を用意しなければなりません。交通費、高いホテル代、観戦チケット。パドックには近づけもしない。

 それを今回は、1200円のサーキット入場料を払えば、ガレージ裏やピットビルディングの上、冷房の効いたVIP用の部屋、マシンの置いてあるガレージの2区画前を開放する、サイン会やトークイベントへの参加、グランドスタンドでも、どのコーナーでも自由自在の移動も可能。

 2日間で200周以上の走行を見れるという特別なイベントになりました。これをきっかけに、F1に興味を持ってくれる人が増えるといいですし、ハースファンも増えたのではないかと思います。

 もし今回の成功があって次の機会があるのであれば、もう少し観戦に快適な時期にして、事前の告知をもっと積極的にやる。

 F1の走らない時間に、SGTの同乗走行とかいかがですか?

 ガレージの解放ももっとたくさんしてほしいと思います。

 坪井選手の奥さま、斎藤愛未さんもレーシングドライバー。走行を終了したときの様子です。

 拍手拍手! 男たるもの、女子からの応援あって育つものですからね!

 初日、最初のガレージに行ったときに「熱田さん!」って声をかけられたのが、ウイリアムズの白幡メカでした。

 今は引退してフジテレビの解説をしているんだけれど、青いイメージしかなかったのでびっくり。でも終始楽しそうにアルバイトしていました。

 左は、アドバイザーをやっているブルツさん。2人とも、いい歳の取り方してますよね。

 2日目の14時過ぎにモリゾウさん登場! 今回のハースとの提携もモリゾウさんの希望でもあるのです。

 自らF1からの撤退を決めてトヨタ系のドライバーの目標が曖昧になってしまったことを、今取り戻しました。

 登場の直前、まわりのトヨタ関係者があたふたしている様子を見ても、もちろんトヨタ自動車の会長で、日本の自動車産業、経済界にとっても中心人物です。そんな重要人物が、心からクルマが好きでニュルブルクリンクのレースに実際に走ってみたり、忙しいスケジュールの中FSWまで来てハースのウエアで登場してみたり、小松さんやドライバーと超笑顔で接してみたりする様子を少し離れたところから見ると、いやこれは素晴らしいことではないかと思うのです。

 小松さんとモリゾウさんの話し合いで今後の何かいいことが起こるということを願います!

 大成功だった今回のTPC。これで、夏休みに入ります。

 オランダからの後半戦は、ハースにとってきちんとポイント獲得を目指すことになります! 楽しみにしています!

 今回も、たくさんの方に声がけいただきました! ありがとうございます!

 時間的に余裕があった方に写真を撮らせていただきました。お話をうかがうと、間近で見れるF1に皆さん感動している様子でした。

 今回はベルギーとハンガリーの連戦から火曜日の夜に帰国して、翌早朝に自宅を出発するという、なかなかハードな取材でした。

 1日目が終わって、御殿場のラーメン屋さんに行って食べた炒飯が超おいしくて最高でした! 日本は素晴らしい!

 今回のレンタカーはMAZDA2。ガソリン1.5リッター。

 気になったのは、エンジンとの相性なのか、ミッションの変速がギクシャクして気持ちよくない。ヤリスの方が全方位いいように感じました。

 デミオは好きだったんだけども……。

 初TPC、大成功だったのではないでしょうか!

 また、開催できるといいですね。そうなったら今回行けなかった方々、知らなかった方々、ぜひ行ってみてくださいね!

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。