まるも亜希子の「寄り道日和」

日本初開催「フォーミュラE」観戦してきました

グランドスタンドからフォーミュラEのマシンまでは、この近さ。これは決勝レースのスタート直後をうつしたものですが、一瞬で目の前を通過していくので動画じゃないとスマホでその姿をまともにとらえることはできないほどでした。ポールポジションからスタートした日産のローランド選手でしたが、あわや2番手のマセラティ、ギュンター選手に抜かれそうになり、のっけからヒヤヒヤのレースとなりました

 東京・台場にて日本で初めて開催された、電気自動車のF1ともいえる「フォーミュラE」を現地で体感してきました! 小池百合子都知事によれば、約5年にわたって粘り強く交渉と調整を重ね、ようやく実現したというから嬉しいことですね。

 しかもこれは単なるモータースポーツという枠を超えて、東京都が近い将来に「ゼロエミッション都市」を実現するぞという、大きな意気込みのもとに開催された「E-Tokyo Festival2024」というイベントの中のコンテンツという位置付け。そのため、日本チームとして唯一フォーミュラEに参戦している日産だけでなく、スズキ、ホンダ、マツダ、ミツビシ、カワサキ、トヨタ車体といった日本を代表する四輪・二輪メーカーがズラリとパートナーとして名を連ねているわけです。なので、レースはワンデイなのですが、3月30日〜31日の2日間にわたって、次世代モビリティやモータースポーツに触れることができるゾーン、マルシェにキッチンカーといった暮らしにリンクするゾーン、絵本の中に入り込んだみたいに家族みんなで楽しみながら、最新のZEVの魅力がわかるゾーンなど、趣向を凝らしたコンテンツがたくさんありました。

まるでアニメや絵本の中に入り込んだようなストーリーの移り変わりとともに、いろんなZEVが展示されていて触れることができる、ウォークスルー型の展示が「ZEV CITY WALK」。ワイルドなエクストレイルが大人気でした

 メイン会場は、東京モーターショー改めジャパンモビリティショーが開催されたのと同じ、東京ビッグサイト。中央エントランスから入場したあと、普段はプレス駐車場として使われていたりすることが多い、海沿いにある広大な敷地を目指します。そこが、ピットエリアであり、メインストレートであり、グランドスタンドとして変貌を遂げていました。これまで、北海道のラリー競技などを取材して、街中を競技車両が走る光景というのは見慣れていたつもりだったのですが、やはり自分が住む街であり、普段からよく訪れている場所がサーキットになっている光景というのは、ひと味ちがう興奮がありました。

 といっても、私の席があったグランドスタンドから路面に見えるのは駐車場の白線枠だけだったので、なんとなく公道レース感というのは予想より薄かったのですが、目の前に設置されていたスクリーンでほかの区間を見ていると、路面に「止まれ」の文字が大写しになったり、日本の道路っぽさが出ていて面白かったですね。背景の首都高は普通にトラックや乗用車が走っていて、ある人にとってはいつもの日常でも、そのすぐ下では1秒を削る壮絶な闘いが繰り広げられているのだという、非日常感があるのも不思議な感覚でした。

 で、実はですね。フォーミュラEは2014年にスタートして、その当時は佐藤琢磨さんが参戦したり、目新しいこともあってマメにレース結果を追っかけていた私。まだバッテリが1レース持たなくて、途中でマシンを乗り換えるという斬新なところや、モーターのヒュンヒュンという音がけっこう迫力があるというところに驚いたりしていたのです。でも翌年に子どもが生まれ、それどころではなくなってしまって、最近はめっきりノーマークとなっていました。今回、観戦できることになって一夜漬けの試験勉強のように情報をチェックしてきたものの、どのチームにどんなドライバーがいて、どんな特色があるのかという深いところまでは追い付かないまま、当日を迎えてしまったのです。

 なので、もしかしたら楽しめないかも……と心配しながら迎えた決勝レース。F1のように爆音でもないし、眠くなってしまったらどうしよう? なんて不安も正直なところあったのです。ところが予選では、初のホームレースとなった日産チームのオリバー・ローランド選手が、接戦の末にポールポジションを獲得! 日産に初勝利をもたらすか? とまぁ、これ以上ないくらいのお膳立て。なんとか逃げ切ってポール・トゥ・ウィンをと願ったものの、スタート直後の1コーナーでいきなり抜かれそうになるなど、そう簡単にはいかないと悟ってついつい前のめりになっていきました。

 レースの肝となるのは、サッカーでいうロスタイムのような感じで最後に数周がプラスされることがある中、バッテリをどう効率よく使うかのマネージメント。全車に合計8分間、パワーアップする代わりにレコードラインから外れたところを通過しなければならない「アタックモード」が課せられており、その使いどころも明暗を分けるポイントです。バッテリ残量が1%でも違えば、多いマシンはまだオーバーテイクのチャンスがあるということで、気がつけば最後の最後までハラハラドキドキ、まったく飽きることなく楽しい観戦となりました。

 もちろん、「レース」だけを目当てに来た人たちにとっては、サポートレースもないし、フォーミュラEのレースそのものも短いし、物足りないところもあったかもしれないと思います。エキシビジョンランでリーフNISMO RCなどが走りましたが、せっかくならそちらもワンメイクレースをやったら盛り上がったんじゃないかな? 電動カートレースがあってもよかったかも? なんて思いました。でも、まだようやく実現したばかりの初回です。来年も再来年も開催できるように、そしてもっともっとたくさんの人が来てくれるように、魅了アップを図っていってくれたらいいですね。

ZEV FUN ZONEではさまざまな次世代モビリティに試乗できるようになっており、私も初めて実物を見たのがこの「Poimo(ポイモ)」。動く椅子なんですが、空気圧で膨らむ風船構造になっていて、普段は小さく畳んでおけて、必要な時だけふくらまして使うという発想が素晴らしい!
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。