まるも亜希子の「寄り道日和」

雨の日にホッと感じた新型アコードの試乗会

決死の覚悟で外に出て、一瞬でパチリ。あまりエクステリアをじっくりと眺めることはできませんでしたが、フロントにはシャッターグリルが付いていたり、さりげなくエアインテークがあったりと、機能美もしっかり取り入れたデザインなのがいいですね

 せっかく大好きなアコードの新型に試乗できる日だというのに、なんでこんなに大雨なの〜! と朝から泣きたい気分で出かけた箱根・芦ノ湖。いやホント、土砂降りという言葉がピッタリな降り具合で、高速道路は川みたいになっているところがあるし、一般道におりたら道の半分くらいが冠水しそうなところがあったりして、無事に試乗会場までたどり着けるのだろうかと心配になってしまいました。

 と言いつつ、実は私は昔から、雨の日の試乗がそんなに大嫌いというほどではないのです。それは、晴れてる日にドライ路面で試乗したらすごくいいクルマだと思っていたのに、その後にあらためて雨の日に乗ったら「なんじゃこりゃ」とガッカリしたクルマがいくつかあったから。

 たとえば雨の音が室内に不快に響いてくるとか、路面からのシャーッという水はね音がうるさいとか、ワイパーの動きや拭き取り範囲がおかしいとか(昔は無理やり右ハンドルにしていて、ワイパーだけ左ハンドル用のままだった輸入車まであったほど)。雨粒でバックモニターがほとんど見えなくなってしまう車種もあったし、リアゲートを閉めようとしたらザーッとルーフにたまった水が腕に落ちてきて、ずぶ濡れになった車種もありました。

 だから、記事を書くために試乗できる時間や場所はものすごく限られているので、本当は晴れてる日も雨の日もどちらも試乗してから書く方がいいけどそうもいかないことが多く、だったらネガな部分が出やすい雨の日に試乗した方が、よりそのクルマの本当の姿が垣間見えるのかもしれないな、という気がしています。

本来なら、新型アコードの向こうには芦ノ湖の絶景が広がって……いるように展示されていたはずなのですが、特設テントの外にも出られないほどの大雨でこんなかわいそうな写真に(笑)。前日までは晴れていたんですけどねぇ。でもこのルーフラインがとても美しくて好きです

 その考え方からすると、とっても「試乗日和」なときに乗ることができた新型アコード。結論から言っちゃうと、すっごくいいクルマだと感じました。

 ザーッとものすごい雨の中を駐車場まで歩いて行って、ドアを開けて運転席に座り、ドアを閉めたらスッと雨の音がやんで、どこか遠くの方で雨音がささやいているくらいの静かな室内。ここでまず、ホッとしたんですよね。私はこういうクルマがすごく好きです。緊張しっぱなしの仕事が終わり、家に帰るときに運転席に座った瞬間からすでに“おうちモード”に切り替えて、リラックスして帰路に着くことができるじゃないですか。2010年から12年間にわたって乗っていたCR-Zも、そういうクルマでした。

国内向けのホンダ車として初めて、Googleが搭載された新型アコード。音声操作では試しに「右のエアコンだけ2度上げて」とお願いしてみましたが、快く聞いてくれました(笑)。やっぱり便利ですね

 そしてEVモードを優先的に使って走ってくれる、最新のe:HEVがさらになめらかで軽やかで、大雨の中でも爽快のひとこと。山道での挙動も常に安定していて、思い通りにハンドル操作ができるのです。

 これは新開発された「モーションマネジメントシステム」の恩恵も大きいと思います。従来からホンダ車に搭載されていたアジャイルハンドリングシステムをさらに進化させたもので、新たに前荷重制御の技術を加えて、この日みたいな雨の滑りやすい路面や、カーブなどでの思い通りの運転をサポートしてくれるものです。

 高速道路でも、運転したり後席に座ったりして体感しましたが、乗り心地がいいことにも感心。とくにCOMFORTモードは後席でぐっすり眠れます(笑)。逆に、SPORTモードだったらもう少し硬めでヤンチャな走りができるようにしてもよいかも? と思うほどでした。

 あえて注文をつけるとすれば、アコードワゴンを出してほしいなというところ。いや、世界的にもトレンドとなっているアコードクロスオーバーが出てもいいんじゃないでしょうか? クラウンクロスオーバーも売れてることですし。いっそのことアコードカブリオレ、アコードクーペ、アコードスポーツ、アコードTYPE Rもつくっちゃいませんか。TOKYO AUTO SALONで飾ってあった、ホンダアクセスのリアウイングが装着されたアコードもすごくカッコよかったので、今後の展開に期待しています!

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。