まるも亜希子の「寄り道日和」

赤いアストンマーティンにうっとり

なんとなくグリーン系のカラーを想像していたのですが、登場したのは艶々の赤が素敵な新型ヴァンテージ。30mm拡幅したワイドボディに、新しいエンブレムや新デザインのヘッドライトがこれからのアストンマーティンを予感させてくれます

 会場が「倉庫」というところからして、なにやら映画「007」っぽい雰囲気を感じてドキドキしながら駆けつけた、アストンマーティンの新型ヴァンテージ発表会。裏口のような小さなドアから建物に入ると、クルマが収まりそうな大箱のエレベーターで6階へと運ばれ……。

 果たしてそこには、ユニオンジャックの布を被せられた低くワイドなシルエットが鎮座していたのでした。英国シルバーストーンで現地時間2月12日にお披露目されてから、明けて13日のジャパンプレミア。リージョナルプレジデント日本/韓国のグレゴリー氏がスピーチしたあと、ベールが取り払われて現れたのは、予想に反して真っ赤なボディカラーの新型ヴァンテージ! その艶やかでクールなことといったら、思わずうっとりしてしまったのでした。

なにやらあやしげな倉庫内で、ベールを脱ぐ瞬間を待つ新型ヴァンテージ。ユニオンジャックのベールというのがまた、素敵なんですよね。こういう演出はやっぱり、欧州の方々はセンスがあるなぁと感じます

 キャッチコピーは「For Real Drivers Only」ということで、限界まで走りを楽しみたい真のドライバーのために設計されたスポーツカー。そう聞くと、自分にはちょっと敷居が高いなぁと感じてしまう人もいるかもしれないんですが、私も以前はそうだったんです。2011年に、トヨタとの共同開発でiQの兄弟車となるアストンマーティン・シグネットが発売され、その国際試乗会でアストンマーティン本社のエンジニアやデザイナーの方々とお会いするまでは、私にはとてもとても雲の上のように縁遠いブランドだと感じていました。

シグネットの国際試乗会でのひとコマ。アストンマーティンのエンジニアがとっても丁寧に解説してくれたのを覚えています。インテリアにも相当のこだわりを持って作られたことが伝わってきました。今では販売されておらず、まだ街中でも見かけたことがないので超レアモデルかもしれないですね

 ところが、本社の方々は誰もが温かくフレンドリーで、英国紳士のお手本のようなスマートな方々ばかりですっかり感激。たまたま試乗会当日が私の誕生日だということを知って、即席でサプライズのお祝いまでしてくれたほど。それ以来、アストンマーティンの大ファンになった私です。

 当時の方々がこの新型ヴァンテージに携わっているのがどうかは分かりませんが、プレゼンテーションを聞いていて、ドライバーへの配慮や誠実さが滲み出ていると感じたところがたくさんありました。たとえば、今回の見どころの1つはさらにパワーアップしたパワートレーンなわけですが、それを操るドライバーが安心して走行できるように、デザインからシャシー性能、ドライブモードに至るまで妥協なく引き上げられていること。従来のドライブモードはスポーツ、スポーツプラス、トラックの3つだったのが、今回はウェットとインディビジュアルが追加されたというのも、ドライバーへの心遣いが感じられますね。

 お値段が2690万円というところは、わーっと耳を覆いたくなりますけれども(笑)、街中で走る姿が見られる日を楽しみにしたいと思います。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。