まるも亜希子の「寄り道日和」

家族みんなで本格的シミュレータを体験してきた話

eモータースポーツ界の第一人者である武藤壮汰選手に、シートポジションから手取り足取り教わる、贅沢な娘。少し前にグランツーリスモにハマり、「こういうのやってみたかった!」とノリノリでした

 港区南麻布という都心の一等地で、なにやらアツいタイムアタックが繰り広げられているという!? にわかには信じがたい情報をキャッチしたわが家。これは真相を突き止めねばならぬと、親子3人、普通のファミリーを装って潜入したのであった! ワクワク。

 な〜んて、こないだ映画を観たばかりの大人気「SPY×FAMILY」風に語ってみましたが(笑)、なんのこっちゃない、これはブリヂストンが2023年7月に開講した、eモータースポーツの体験型プログラム「ブリヂストン eモータースポーツ インスティテュート」のこと。1月28日に、「REVSPEED」とのコラボ企画が行なわれ、ピストン西沢アニキがナビゲーターを務めるJ-WAVEの「BRIDGESTONE DRIVE TO THE FUTURE」でその模様をお届けするとのことで、夫の橋本洋平がメインで参加し、私と娘もオマケで飛び入り参加させてもらっちゃいました。

2023年7月に開講した「ブリヂストン eモータースポーツ インスティテュート」の体験イベントに参加してきました。この日のMCはJ-WAVEの番組「BRIDGESTONE DRIVE TO THE FUTURE」ナビゲーターとしてもおなじみ、ピストン西沢さん。

 会場に入るとそこには、総額500万円以上と噂される本格的なシミュレータがズラリ! 3面のディスプレイはとっても鮮やかで、シートにはアクチュエータと呼ぶそうなんですが、クルマでいうところのダンパーみたいなモノが装着されていて、動きに合わせて振動が伝わってくるのだとか。

 そしてこのプログラムの最大の魅力は、国内トップカテゴリーやeモータースポーツで世界的に活躍するドライバーが、講師としてマンツーマンでドライビングのアドバイスをしてくれること。この日は、アジア人で唯一「Williams Esports」に所属し、プロシリーズ「SUZUKA E-SPORTS CHALLENGE RACE」の初代チャンピオンという筋金入りのプロ、武藤壮汰選手をはじめ、2022年にスーパー耐久ST-2クラスでランキング1位を獲得した荒川麟選手、グランツーリスモSPORTでトップレベルの成績を収めている樺木大河選手が担当してくれました。

 今回、練習するのはイタリアのヴァレルンガサーキット。マシンはGT86で、荒川選手がサラッとアタックしたタイムの59秒台、ピストン西沢アニキの1分1秒台がひとまず目標タイムということに。「もし今日、終了時間までに59秒台出した人がいたら、お好きなポテンザのタイヤ1台分、プレゼントするぜ!」な〜んて太っ腹な発言が飛び出し、「よっしゃ、タイヤはもらったも同然だわ」なんて、がぜん盛り上がる私たち(笑)。まだまだ、eモータースポーツの奥深さを分かってなかったんですね、ぜんぜん。

 夫よりもやる気満々の娘は、贅沢にも武藤選手にシートやステアリングの位置を調整してもらい、約70分の練習がスタート。「最初のセッティングがタイムにも響きます」とのことで、武藤選手もいつも丁寧に微調整をしてシート合わせをしているそう。娘の身長がまだ138cmなので足がペダルに届くのかどうか心配でしたが、背中にクッションを入れてもらってしっかり届いていたので、小柄な人でも大丈夫ですね。武藤選手がeモータースポーツを始めたのが16歳だったそうなので、8歳の娘が今から特訓すれば上手になるかも? なんて夢が広がります。

 夫の方は、荒川選手にアドバイスをもらいながら、のっけから真剣モード。すでに1分2秒台を叩き出していますが、そこから1秒を削るのがかなり大変みたいです。すぐ横で講師が見ていて、「そこはブレーキを抜いた後にステアリング操作をしてしまっているので、もっとかぶせ気味でいって大丈夫です」なんて感じで、タイムリーに教えてもらえるのがいいですよね。最終的に、1分1秒台には届いたようですが、59秒台はさすが、プロの技によるものなのだと見せつけられました。

夫は荒川選手につきっきりでみっちりとアドバイスをもらい、1分1秒まで詰めてきましたが、額には汗が。ちゃんとステアリングやペダルの重さがあるので、いいトレーニングになっているようです

 荒川選手に、「リアルでサーキットを走るのと、eモータースポーツのいちばんの違いはどこですか?」と質問すると、やはりリアルのようにGがないので、視覚からより多くの情報を得て、その処理をして操作しなければいけないところだそう。視覚からの情報だけで、車両やタイヤの状態がどうなのか、どう操作すればいいのかを瞬時に判断する能力が求められるところが難しいと言っていました。確かに!

 私はシミュレータに弱くてすぐ酔ってしまうので、5周走るのが限界(笑)。ブーツを履いてきてしまったのも失敗で、タイムは1分9秒台とまったく振るわず、プロってすごいなぁとひたすら感心していたのでした。娘はだんだん疲れてきて、コースアウトして壁に刺さったり、逆走したりしてましたが、これってリアルだったら命がいくつあっても足りないですよね。命の危険がない状態で、モータースポーツに触れてもらえるのは親としてありがたいことです。「楽しい! もっとやりたい!」と名残惜しい感じの娘でした。

 プログラムは、最後に3周の模擬レースをやって、盛り上がったところで終了。またやりたいとクセになる人も多いのではないでしょうか。通常は受講料1万円で、Webサイトからの予約で参加することができますので、気になる人はチェックしてみてくださいね。

 最後に、ブリヂストンがなぜこのようなeモータースポーツの体験プログラムを始めたのか、気になりますよね。モータースポーツ企画推進部の山本さんに聞いてみたんです。「eモータースポーツって、タイヤついてないですけど……」というと、「それ社内でもけっこう言われたんです(笑)。でも、モータースポーツ自体を持続させていくには、もうそういうことを言ってる場合ではなくて、もっと広い視野でモータースポーツに触れてもらう機会を作って、モータースポーツファンを増やし、モータースポーツ文化の発展を支えていかないと、という気持ちなんです」とのこと。確かにそうですよね。

 今後は、ドライビングをスキルアップしたいという人はもちろん、そうではなくて運転が苦手な人や、キッズ向けなども企画していきたいとのことでした。初級、中級、上級と3つのコースがありますが、基本的にはひとりひとりのスキルに合わせた、きめ細かなレッスンをしてくれるのがこの「ブリヂストン eモータースポーツ インスティテュート」の魅力。都心の一等地で、習い事感覚でサーキットを攻めるって、いいですね。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。