まるも亜希子の「寄り道日和」

新型「スペーシア」で強く印象に残った「マルチユースフラップ」

先代のデザインモチーフは「スーツケース」でしたが、新型スペーシアのデザインモチーフはもっと大きくタフな「コンテナ」に変化。ボクシーでフレンドリーなのに、どこかタフさと上質感があって、とてもいいデザインだと思います。チーフエンジニアの鈴木猛介さんは、難しいことをやさしく分かりやすくお話ししてくれるので、とても頼りにしています

 いよいよ、2023年最後のコラムとなりました。長いトンネルのようだったコロナ禍から抜けだし、少しずつ日常を取り戻しながら走ってきた1年でしたよね。コロナ前に戻ったものもあれば、違う形態に変化したものもあり、苦い経験をしたことが学びとなって新しいものが生まれたり。それらをもう一度、自分になじませていくのが大変でもあり、面白くもあった1年だったなと思います。

 自動車業界も、新たに登場したクルマには少なからず、コロナ禍の影響が反映されていると感じるモデルもありました。やっぱり大きいのは、当たり前にずっとあると思っていたもの、いつでもできると思っていたことが、突然そうではなくなるのだと思い知ったことで、今この時の幸せを存分に味わい尽くそう、思い立ったらすぐに行動に移そう、という気持ちに多くの人がシフトしたことでしょうか。

 そして、ドライブに関していえば、車内で過ごす時間が増えたことで、もっと快適な車内を提供しようと試行錯誤し、新たな提案をした新型車がちらほらと見られたこと。その1台として強く印象に残っているのが、スズキの新型スペーシアです。鈴木猛介チーフエンジニアにいろいろとお話を伺ったところ、ライバルに対して新型スペーシアのウリはずばり、後席の快適性ですと断言。その言葉どおり、ほかでは見たことのない、3通りの役割で乗る人や使う人を快適にしてくれる「マルチユースフラップ」が新装備された後席はお見事だと思いました。

 3通りとは、停車中にリラックスするためのオットマン、走行中に身体の揺れを抑えて安定させてくれるレッグサポート、座面に置いた荷物が滑り落ちるのを防ぐ落下防止ストッパー。私はとくに、荷物の落下防止ストッパーが自分の愛車にも欲しいくらい、響いてしまいました。

2023年、とってもインパクトが大きかったのが、こちらの新型スペーシアの後席についている「マルチユースフラップ」。これは荷物の落下防止ストッパーとしての使用例です

 普段は急ブレーキを踏まないように気をつけて運転していますが、万が一の時にはやはり、踏まざるを得ないこともあります。そんな時に、座面に置いてあったバッグや買い物袋がザバーっと前に転がってしまったら大変。実は試乗中に、自分のバッグを後席に置いて、安全に配慮しながら何度か強めのブレーキを踏んでみたのですが、このストッパーがあるだけで落ちることがなかったので感心。きっとエンジニアの人たちは、さまざまな荷物で検証したのではないでしょうか。

 また、新型スペーシアでは折りたたみ式のパーソナルテーブルも、後席の人が使いやすいようにリニューアル。なんと、タブレットを立てかけてもズリズリと倒れてこないように、ここにもストッパーがついているのです。カップホルダーの穴は不思議な形状だなぁと思っていたら、500mLの紙パック飲料から細いマイボトル、乳幼児用マグまで使えるように。娘がまだ小さいころは、出かけた先で停車し、後席で授乳したり離乳食をあげたりすることが多かったので、このテーブルはとってもいいなと思いました。これも、コロナ禍によって食べ物をテイクアウトして車内で食べたり、子供の習い事の待ち時間に大勢が集まる見学ルームにいるよりも、車内で過ごすことが多くなったりと、環境や考え方の変化によって、後席の重要性がアップしてきたことの表れでしょう。

芸が細かいというか、配慮に頭が下がるというか、こちらも感心したのが新型スペーシアの折りたたみ式パーソナルテーブル。確かに、休憩時間にタブレットを立てかけることができるのは、子育て中から仕事中まですごく助かるんですよね

 さて、2024年はどんなことが起こり、どんなクルマが登場するのか。今から楽しみにしたいと思います。皆さま、1年おつきあいくださってありがとうございました! どうぞよいお年をお迎えくださいね。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。