まるも亜希子の「寄り道日和」

新型「プレリュード」に試乗することができました

伊豆のクローズドコースで開催された試乗会で、その日対応してくださった開発チームの皆さんと記念にパチリ。中央がノーマルモデル、右がホンダアクセス、左が無限の純正アクセサリー装着モデルです

 ついに! ホンダのスペシャリティスポーツハイブリッド、新型プレリュードに試乗することができました! まだクローズドコースではあるものの、以前に研究所のテストコースで乗せてもらった外観がカモフラージュのプロトタイプとは違って、今回は全貌が明らかになった状態でドライブできるということで、すごく楽しみにしていたんです。

 気になっていた大きなポイントは2つ。まずは、今回の新型はプレリュードとして6代目にあたるわけですが、なんと事前にモビリティリゾートもてぎ内のショートコースにて、初代から5代目までの歴代プレリュードに試乗させていただく機会がありました。走りにこだわった初代の硬派な乗り味から、快適性をアップしたり、GTのような安定性を手に入れたり、デートカーと呼ばれたオシャレな雰囲気をまとったりと、その代ごとにしっかりとした個性があることを実感できた、とても貴重な体験でした。果たして新型プレリュードはどんな個性を手に入れているのか、興味津々だったのです。

初代から5代目までを一気乗りさせてもらい、歴代プレリュードそれぞれの個性を味わうことができました。6代目は電動化時代のホンダを牽引していくモデルとなるだけに、期待が高まります!

 2つめは、新型プレリュードが目指したという、グライダーで大空を滑空するような爽快な走りとはどんなものなのかというところ。エンジンなどの動力源なしで、浮遊して上昇気流をつかまえて大空を長時間飛ぶことができるという、グライダー。開発メンバーの多くは、実際にそんなグライダーに乗る機会を得て、気持ちよさをしっかり胸に刻んできたのだそう。それがいったいどんな要素として新型プレリュードに生かされているのか、気になっていたんです。

グライダーって、なんとなくのイメージしかなかったのですが、初めて近くで実物を見ることができ、こんなにタイトなんだ〜とビックリ。コクピットにも座らせてもらいました

 もうご存知の方も多いと思いますが、新型プレリュードにはこれからのホンダのハイブリッドカーの核となる新技術、「Honda S+ Shift」が搭載されていますよね。これはモーター駆動でありながら、まるで変速機があるかのような仮想の8段変速で緻密にエンジン回転数をコントロールし、アクティブサウンドコントロールによる迫力ある音の聴覚と、協調して俊敏に反応するメーターによる視覚と、乗る人の五感を刺激してクルマと一体となる走りを実現するという、壮大な技術です。

 テストコースで体感した時も、もちろん操作する楽しさや気持ちよさというのは実感できたのですが、今回、乗ってみると何もかもがさらにダイレクトで、自然で、エキサイティング。これは、乗る前にプレリュードのエクステリアデザインをしっかりと脳裏に焼き付けてからドライブしたというのが、実は大きく影響しているのではないかと思います。頭の中で新型プレリュードが走る姿を想像しながら、「私が操っているんだ」と確信して感じる加速Gやブリッピング音、手のひらに吸い付くようなステアリングフィールなどが、より楽しさ、気持ちよさを増幅させているのだと感じました。

新型プレリュードのグランドコンセプトは「UNLIMITED GLIDE」ということで、グライダーが滑空するような高揚感を生み出すエクステリアデザインをはじめ、Honda車初搭載の制御技術「Honda S+ Shift」を採用した爽快な走りがとても魅力的なモデルとなっています

 しかも、通常のドライブモードに「SPORT」「GT」「COMFORT」の3つがあり、そこに「Honda S+Shift」を組み合わせることで、同じ道を走ってもまた違った楽しさが感じられるという、細かなチューニングにも感心。シーンに合わせていろいろと試しながら、ここは「SPORT」と「S+Shift」がいいなとか、ここは「GT」がいいなとか、まだまだ試し足りないくらいでした。

 でも1つ気になったのは、仮想の変速機でここまで自然な気持ちよさを引き出すには、まずエンジニアの皆さんが「人はどこでどう気持ちよさやリニアさを実感するのか」を知らなければ、創り出すことはできないのではないかというところ。それはどうやってクリアしたのかと聞いてみると、北海道のテストコースに数えきれないほどのスポーツモデルを持ち込み、実際にみんなで地道に乗り比べて研究しながら、勘どころを突き詰め、新型プレリュードらしい走りを作り込んでいったということでした。こんなに先進的な技術なのに、開発中はなんとアナログな……(笑)。でも、エンジニアの皆さん自らが「これだ!」と体得できたからこそ、気持ちのいいクルマに仕上がったのだなと納得することができました。

 気になっていたポイントに対する私の実感は、1つめの個性に関しては新型プレリュードはなんといっても「自由」がキーワードでしょうか。気分や走るシーンに合わせて、欲しい走りを変幻自在に提供してくれるところは、新型ならではかなと思います。そして2つめに関しては、私はグライダーに乗ったことがないのでなんとなくではありますが、最後のカーブを抜けて直線へと入るところで感じた、路面と風とクルマと自分とが完全に溶け合って一体となるような爽快感。きっと、そんなところに通じているのではないかと思いました。

 あと最後に、新型プレリュードは4人乗りなので、念のため後席にも乗って試乗させてもらったんです。身長165cmの私だと、頭のすぐ横にCピラーが張り出しているので圧迫感はあるのですが、足下はちゃんとスペースがあります。次にクルマがどんな動きをするのか予想しやすいので、走行中は意外にもそれほど振り回される不快感もないんです。小学校高学年くらいまでの子どもだったら、あまり窮屈じゃなく過ごせるのではないかと思いましたが、もちろん後席に同乗者がいたら優しい運転をしてあげてほしいです。

 それにしても、次は一般道で試乗したらまた違った一面が見えてくるのかどうか? 引き続き楽しみな1台です!

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。