東京モーターショー2013

東京モーターショー2013の2輪車をピックアップ。カワサキ、ヤマハ編

東京ビッグサイト

カワサキ:東6ホール

ヤマハ:西1ホール 1階

会期:11月20日~12月1日(一般公開日:11月23日~12月1日、プレビューナイト:11月22日17時30分~)

 11月20日から開幕した「東京モーターショー2013」。4輪車、2輪車の最新モデルが集結する2年に一度の一大イベントとなっているが、ここでは国内大手2輪車メーカーのうち川崎重工業とヤマハ発動機の展示内容をお届けする。

未来を感じさせる変形可能な3輪電動ビークルを展示したカワサキ

電動3輪ビークルの「J」

 最も突き抜けたコンセプトモデルを展示しているのがカワサキだろう。電動3輪ビークルの「J」と呼ばれる車両は、ホイールベースが長く、地を這うがごとく異常に低い車高になっている。前輪が2本、後輪が1本のスリーホイーラーで、タイヤはホワイトとグレーに塗り分けられ、車体はカワサキのコーポレートカラーであるグリーンがあしらわれている。動力は大容量ニッケル水素電池「GIGACELL」を採用したモーター。展示物はモックアップのため動かないが、走行中に変形してスポーティな走りを楽しめる低い重心の「スポーツモード」と、2本の前輪を左右に開いて車高を上げ、リラックスした体勢で乗れる「コンフォートモード」の2パターンに自由に切り替えられるという。

低い重心の「スポーツモード」
リラックスした体勢で乗れる「コンフォートモード」

 一見するだけで未来を予感させるわくわくするような乗り物だが、カワサキによれば、これは単に「やろうと思えばこういうことができる、ということのアピール」だという。他社が電動2輪車などエコに関わる製品展開を進めている中、カワサキだけが「何もやっていないのではないか」と思われがちであることから、今回のコンセプトモデルを出展したとのこと。同社としては市販はまったく考えておらず、むしろ今の時点では「50~60km程度の航続距離しか達成できないのであれば、やりたくない」としている。

 「今までエンジンだったものを単純にモーターにしました」というだけでは、趣味性の高い乗り物であるバイクのユーザーには刺さらないだろうと考えているようだ。実際のところ「J」は、保安部品が装着されていないこともあるが、車幅や車高が可変であり、現行の道路交通法上は公道走行が許されないため、この形を現実のものとするには課題が多そうだ。

前輪は2本。コンフォートモード時はここが左右に広がる
後輪
大容量ニッケル水素電池の「GIGACELL」を車両中央に搭載
ハンドルも個性的
1人乗りシートとなっている

 その他、アウトローな雰囲気をイメージした新しい「Z1000」も展示されている。リッターエンジンを搭載し街乗りに特化したというこの「Z1000」は、LEDヘッドライトを採用するなど昨今の流行を取り入れながらも、あえて無骨でワイルドな味付けを施すために、後輪出力をスイッチで変更できるパワーモードや、スリップを抑制するトラクションコントロールといった電子制御をあえて装備していないのが特徴だ。

アウトローなイメージの新しい「Z1000」

 また、クラシカルなスタイルの250ccバイク「ESTRELLA(エストレア)」のニューモデルも登場した。カワサキは、この「ESTRELLA」や「W800」、「Z250」をはじめとする気軽に乗りやすい「ファミリーブランド」のバイクの重要性を追求していきたいとしており、「ESTRELLA」については多数のメーカーオプションを設定して一層販売に力を入れていく方針だ。たとえば高速道路のクルージングに適した大型のウィンドスクリーンや、カフェレーサー風のカウル、長距離ツーリング時に便利な厚みのあるシートや大容量サイドパニアなど、「ESTRELLA」に簡単に取り付けてカスタマイズを楽しみつつ、ユーザーの用途に合わせられるさまざまな製品を発売していくという。

カスタマイズを気軽に楽しめる「ESTRELLA」
こちらはスタンダードモデル
オプションのウインドスクリーンを取り付けたパターン
オプションのカフェレーサー風カウルを取り付けたパターン

ヤマハはクォータースポーツ「R25」が目玉。電動スポーツの「PES1」「PED1」も出展

 2輪車メーカーであるヤマハ発動機は、まさかの「MOTIV(モティフ)」という4輪自動車の公開で度肝を抜いたが、もちろん2輪車のラインアップも盛りだくさんだ。まず、「YZF-R1」「YZF-R6」といったスーパースポーツの系譜を受け継ぐ「R25」を初公開。新開発の直列2気筒249ccエンジンは、高回転域でのパワフルな走りを追求しているという。

 250ccクラスのスポーツモデルは、すでに他の国内3メーカーが数年前から順次投入しており、ヤマハが最後発。そのため、スペック、価格のバランスを取りつつ、「ハンドリング、基本的な走行性能を煮詰め、走りの面で(他社250ccバイクに)負けないよう、多くのユーザーが満足いくようなモデルに仕上げた」としている。2014年に市販化を予定しているが、展示車両はあくまでも試作車。保安部品もなく、マフラーも社外品が装着されている。市販化の際にはこれらが改められるほか、前傾過ぎるハンドルポジションも街乗りなどを考慮して調整される予定とのこと。

クォータースポーツの「R25」。試作品のため、市販時には装備が変わるはずだ

 電動バイク2モデルも参考出展。「日常の足ではなく、スポーツを楽しめる」モデルの提案として、ロードモデルの「PES1」、オフロードモデルの「PED1」という2車種で展開する。50cc相当以上の出力を誇るモノコック構造の「ヤマハ・スマートパワー・モジュール」は、同じものを2車種で共用。「PES1」は、通常のバイクであれば燃料タンクになっている部分が空洞になっており、シートの後部も大きく口を開けているような形状になっているのが特徴的。車両重量100kg以下というスペックと合わせ、電動バイクであることを強くイメージさせる。「PED1」は想定車両重量が85kg以下と軽い。これらは2年後をめどに商品化を進める計画だ。

ロードモデルの「PES1」(手前)と、オフロードモデルの「PED1」(奥)
PES1
PED1

 「TRICITY Concept」は、欧州で人気の高いスリーホイーラー。前輪が2本、後輪が1本となっているこのスタイルは、イタリアのピアジオが「MP3」というモデルで先鞭を付け、他のメーカーからもいくつかのモデルが発売されているが、いずれも比較的排気量が大きく、値段も高額。それに対し「TRICITY Concept」は125ccと小排気量で、車重も150kg以下と軽量・コンパクト。市販時の価格も40万円以下とかなり安価になる。開発者によれば、「安心感、スポーティさを前面に出し、ひらひらと思いのままに操れる実感が得られるはず。特にフロントのグリップ感にこだわった」と話し、「2輪に乗っていた人はもちろん、2輪に興味のなかった人も取り込みたい」としている。2014年の発売を目指している。

3輪コミューターの「TRICITY Concept」。インナーパネルの青が映える

 すでに発売しているクルーザーモデル「BOLT」のカスタマイズコンセプトとして出展されていたのが、「BOLT Cafe」。元のクルーザーから大きくシルエットの変わったカフェレーサースタイルが魅力だ。「BOLT Cafe」はあくまでも「BOLTがカスタマイズしやすいバイクであることをアピールするため」に企画されたモデル。市販化の予定はないが、実際にはハンドル、シート、シートカウル、シートレール、リアサスペンションなどを変更するだけで似たシルエットになるとのことで、「10~15万円ほどで同様のカフェレーサースタイルにできるのではないか」とのことだった。

クルーザーモデルをカスタマイズした「BOLT Cafe」
こちらはスタンダードの「BOLT」
ヤマハのMotoGPマシンも展示され、自由にまたがれる

 YPJ-01(イプシロン プロジェクト ゼロワン)は、20周年を迎えた電動アシスト自転車「PAS(パス)」の次なる20年を見据えて作られたモデル。最小・最軽量クラスのドライブユニット&バッテリーにスポーティで美しい車体を組み合わせた。スマートフォンと車体情報を連動させたサービス機能も備える。

YPJ-01

 VIKING FI 4×4 EPSは、すでに北米で販売している4輪車。686ccの単気筒エンジンを備え、サスストロークは220mm。フロントタイヤはAT25 x 8-12、リアタイヤはAT25 x 10-12で、2WD、4WD、4WD直結の3つの駆動システムを切り替え可能。

VIKING FI 4×4 EPS

 そのほか、ヤマハブースには4輪車参入を意識した「MOTIV(モティフ)」が展示されている。モティフに関しては、別記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/2013tokyo/20131120_624508.html)を参照していただきたい。

MOTIV(モティフ)

Photo:安田 剛

日沼諭史