人とくるまのテクノロジー展 2023

小野測器、電動車のベンチマーキングデータ販売開始 第1弾レポートはBYD「ATTO3」

2023年5月24日~26日 開催

入場無料(登録制)

自動計測制御システム「FAMS-R6」

 神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」が5月24日~26日の会期で行なわれた。入場料は無料(登録制)。

 小野測器はセンシング、計測、制御、データ処理、精密機構の各技術などで生産現場のニーズに応えるさまざまなソリューションを提供する企業。会場では「xEV開発を支える計測ソリューション」をテーマに自動計測制御システム「FAMS-R6」、レーザー面内速度計「LV-7200」、無線計測システム「WT-1100」「WV-1100」、音響振動解析システム「DS-5000」「O-Solution」といった最新の計測機器などを展示する。

 また、パシフィコ横浜での展示と並行してヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルではより詳しい製品紹介を行なう「Technical Review 2023」(事前登録制)も開催し、そちらの会場も多くの人でにぎわっていた。

レーザー面内速度計「LV-7200」
音響振動解析システム「DS-5000」
AD/ADASを安全に評価するシミュレーションベンチ「ADAS-VRS」。実車を用いたRC-S(HILベンチ)にカメラ、ミリ波模擬のソリューションを連携させた同社の実験棟の事例を展示している(ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル会場)

 また、これから提供するものとして、電動車のベンチマーキングレポートの販売開始をアナウンスした。これは小野測器が持つ計測器やラボなどを用い、多数の試験を行なって車両データを取得し、それを試験項目ごとにレポートとして販売するというもの。試験項目はJARI城里テストコースで行なう「モーター・インバーター振動」「モーター・インバーター音」「パワーユニットマウント振動」「車室内騒音」「伝達系振動特性」「サスペンション・タイヤ振動」「警音器」「走行抵抗」と、小野測器のラボで実施する「電費・航続距離」「出力特性」「パワーユニット効率」「出力制限特性」「駆動力特性」「チップアウト特性」「回生特性」「タイヤ転がり抵抗」。このほかにも要望に応じた評価条件での測定や、指定車両での試験も可能だという。

 こうしたレポートは秘匿性の高い情報となるが、今回用意されたレポートは誰でも購入できる(と言ってもティア1サプライヤーなどが主なターゲット)もので、リーズナブルな価格での提供を目指している。

 なお、第1弾のレポートはBYD「元PLUS(日本名:ATTO3)」で、性能レポートを6月上旬に、NVレポートを7月上旬に、熱マネジメントレポートを年内にリリースすることがアナウンスされている。その後はアジア(特に中国)の電動車を中心に年2台から4台のペースでリリースしていくという。

電動車のベンチマーキングデータ販売について
RC-S試験
環境CHDY試験
NV試験
テストコース試験
レポートメニュー

自動計測制御システム「FAMS-R6」

「FAMS-R6」の展示

 自動車メーカー各社は現在xEV、AD/ADASの車両開発に注力しており、開発リソースの不足が深刻化しているという。そのためモデルベース開発プロセスを採用し、リアルからバーチャルへの開発にシフトしつつある。

 その一方で、多様化するxEVの駆動システムを評価するには、これまでどおり台上試験機の活用が必要不可欠となっている。台上試験においては車載電子デバイスの増加に伴い、計測&管理するデータ量が増大。また台上試験に求められる機能も、多様化する開発課題に対応すべく日々変化しているのが現状だという。

 そこで同社が開発したのが、台上試験装置のプラットフォーム「FAMS-R5」の後継機種「FAMS-R6」だ。FAMS-R6ではさまざまな計測機器やシミュレーションソフトとつながり、計測値や大容量のデータのやりとりができるプラットフォームに進化したのが特徴。従来機種であるFAMS-R5のベース能力を大きく向上させ、最大5000chの計測を実現するとともに、高速通信ネットワークに対応し、API通信など外部連携の基盤を用意して、ツールとベンチの連携を強化した。また、使い勝手や省スペース・メンテナンス性を考慮した設計の計測盤で、ユーザーにやさしい試験環境を提供するとのこと。

無線計測システム「WT-1100」「WV-1100」

無線温度計測モジュール「WT-1100」(左)と電圧計測モジュール「WV-1100」

 2021年にリリースした無線温度計測モジュール「WT-1100」は、ワイヤレスの温度計測ツールとして空間の環境改善やエネルギーロス改善に活用されているもの。一方で実際の計測シーンでは温度以外にもさまざまなニーズがあり、例えばある空間の環境計測を行なう場合、温度だけでなく風速や湿度などのデータを収集すれば、空間の状況を包括的に把握することが可能になる。

 今回新たにラインアップした電圧計測モジュール「WV-1100」は電圧を計測し、無線通信でデータを送信できるもので、電圧出力型センサを接続すれば風速や湿度などさまざまな物理量を計測できる。狭い空間にも設置可能なコンパクトサイズ(54×30×13.4mm、約25g)で、WT-1100と併用することで電圧と温度の同時ワイヤレス計測を実現する。また、同時発売の電池モジュール「WC-0121」を使用すれば最長1500時間の連続計測が可能という。

編集部:小林 隆