人とくるまのテクノロジー展 2023

アンシス、ADAS/自動運転開発などSDVを見据えた最新シミュレーション環境を紹介

2023年5月24日~26日 開催

入場無料(登録制)

左から、Ansys プリンシパルアプリケーションエンジニア トゥシャ・サムバラン氏、アンシス・ジャパン株式会社 マーケティング部部長 柴田克久氏、技術部テクニカルアカウントマネージャ 下村将基氏

 アンシス・ジャパンは、横浜市のパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」(主催:公益社団法人自動車技術会)において、同社シミュレーション技術に関わる各ソリューションのブース展示を行なうとともに、パシフィコ横浜ノースにおいて記者説明会を開催した。

アンシスのシミュレーション環境で、試験速度が1000倍に向上も

 記者説明会では、アンシス・ジャパンの技術部テクニカルアカウントマネージャの下村将基氏が最新のADAS/自動運転(AD)シミュレーション検証環境の紹介として、現在のADAS/自動運転の課題や、アンシスのシミュレーションの特徴について説明した。

アンシス・ジャパン株式会社 技術部テクニカルアカウントマネージャ 下村将基氏

 まず、ADASと自動運転の課題として、センサーモジュールの設計とプラットフォームの統合、安全性とソフトウェア、センサー認識など、試験や安全認証には80億マイルの実路試験が必要になるとした。そこで、アンシスのソリューションを使ってシミュレーション環境を構築することで、試験速度が1000倍に向上し、自動運転車の開発速度が50%向上するという。

 アンシスのADAS/ADは割り切った開発戦略をとり、ドライビングシミュレータはもたず、先行しているツール群との連携でドライビングシミュレーション環境を構築しているとし、その理由として、すでにユーザー側が持つデータがあり、そこに新しいソリューションを提供するよりも、センサーのシミュレーションに特化している。

 また、ADAS/ADの分野でアンシスのユーザーでもっとも進んでいるのがメルセデス・ベンツ、BMWで、中国も先行している。それらの会社からなぜアンシスが選ばれたのかは、コンピューティングにおける精度、効率、自動化の仕組みづくりが、アンシスが非常にうまくいっているところ、そして、ツールを持っているベンダーが多く、アンシスはツールチェーンとなっていて、ワンストップオペレーションができるところに大きな強みがあるとした。

 下村氏は上海モーターショーを見た日本の完成車メーカー関係者から、日本の現状を心配する声が聞かれたことを紹介、そこで、日本が世界に一石を投じるチャンスがあるのがSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の領域だと指摘、ここでいかにシフトレフトできるかが重要とした。

 さらに、CAE解析やシミュレーションによってできることとできないこともあるが、日本のメーカーはできることが大量にあるのになかなか一歩先に踏み出さないことを指摘、その理由として「他社がやってないから」というところが気になっているとした。

 その一方で、日本の自動車業界では「もう一回再起したいと思っている方がすごく多いと思う」とし、そのために必要なことは「まず机上で検証をやってみる。その仕組み作りを定着させること」とシミュレーションの重要性を指摘して説明をまとめた。

電動パワートレーン開発にMBSEを導入する際のアンシスの役割

 続いて、Ansysのプリンシパルアプリケーションエンジニアのトゥシャ・サムバラン氏がMBSE主導の電動パワートレインの開発について説明した。

Ansys プリンシパルアプリケーションエンジニア トゥシャ・サムバラン氏

 シミュレーションのソリューションには、さまざまは標準基準があり、バッテリーの熱管理、信頼性、モーターの設計、その開発、パワーエレクトロニクス、デザイン、EMI EMCまで、ソフトウェアの観点からもさまざまな形での機能、安全性ということを担保するためにシミュレーションが行なわれているという。

 そのなかでユーザーの声として「車体車両パフォーマンス予測、それにあたってのコンポーネント部品をどう選択をしたらいいか、それを全体のワークプランにどう取り込んでデザインしていかなければならないのか。さらに、例えば電気自動車の寿命がどれぐらいあるのかを予測、耐久性をどう考えたらかいいのか」という疑問があるとした。

 サムバラン氏は「一番大きな取り組みがソフトウェアとハードウェアのインテグレーションという点」と指摘、そしてそれが、製品の開発にどのような資産をもたらすのかという点がOEMの方々が気にしているところだとした。

 そこで、MBSEというアプローチがあり、アンシスでは重要と考えているとした。MBSEを主体としたワークフローというのは、実際の車両レベルでの要件事項や制約事項、そのパラメーター、そしてその下流ダウンストリームにあり、検証、モデル、これらをすべて有効的に繋げていくことができる手法とした。

 さらにサムバラン氏は物理的なテストや、機械学習を一緒にすることで、最終的に開発時間は縮小されて、開発コストは低減されるということとまとめ、アンシスでは、さまざまな領域で支援できるサービスとソフトウェアを提供しているとした。

各ソリューションを展示したアンシスブース

 展示では、電気自動車の設計や開発、自動運転や先進運転支援システムをはじめ、アンシスの各ソリューションを展示した。

アンシス・ジャパンはブースでも各ソリューションを展示した
正田拓也