人とくるまのテクノロジー展 2023

ジヤトコ、15インチノートPC同等サイズの「超小型e-Axle」や「変速機能付きe-Axle」を初公開

2023年5月24日~26日 開催

入場無料(登録制)

ジヤトコが開発した超小型e-Axle。15インチノートPCと同等サイズという

 5月24日~26日の期間、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催されている「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」(主催:公益社団法人自動車技術会)からジヤトコブースの模様をお伝えする。

 ジヤトコは、人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMAにて、代表取締役社長兼CEOの佐藤朋由氏によるプレスブリーフィングを実施。また、同社ブースでは研究開発中の電動車両用駆動ユニット「e-Axle」を初公開。さらに、クルマ以外のモビリティへの取り組みの展示を行なった。

ジヤトコ株式会社 代表取締役社長兼CEOの佐藤朋由氏

 佐藤氏はまず「前身会社である日本自動変速機からスタートして、これまで1億2500万台以上の自動車用オートマチックトランスミッションを世に送り出してきました。CVTに関しては10年以上にわたりNo.1メーカーであり続けています。しかし、事業を取り巻く外部環境は大きく変化しております。サスティナビリティへの意識が高くなり、環境社会課題の解決に向けて企業の役割は多様化しております。また、事業環境が激しく変化し将来の見通しも難しくなってきております。そんななかジヤトコは昨年“技術と情熱でモビリティの可能性を広げる”というコーポレートパーパスを掲げました。モビリティに新しい価値を提供することで社会を豊かにする。これを私たちの使命としました」とジヤトコの紹介を行なった。

 そして「ものづくり企業であるジヤトコは、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーに対して大きな責任があると思っております。まずは最重要課題であるこれらの実現に向けて電動パワートレーン事業へと軸足を持ってきます。さらにはあらゆるモビリティへドライブユニットを供給する企業へと変化していきます」と新しい方向性を示した。

ジヤトコの歴史や業績について
状況の変化について

 続けて「AT、CVTの生産を通して設計と加工の技術を磨いてきました。さらには、高品質な製品を量産し、グローバルで安定的に供給ができる体制を持っております。そして、製品開発における大きな強みは、クルマのシステムを理解しているということです。ユニット、コンポーネントの設計、製造に加え、常に自動車メーカーとともに車両システムを開発してきました。こうしたことから私たちはクルマ全体を把握しております。車両の制御、通信まで踏み込んで動力制御、また静粛性などにも対応し、提案することができます。そして2030年には電動パワートレーンの生産台数を500万台にする目標を立てています。その目標を達成のため、今年の4月にはeパワートレーン事業推進部門を設立しました。また、新たに開発センターを立ち上げるなど、電動パワートレーンの設計、開発能力を高めております。そしてグローバルでの競争力を高めるため、大量生産を主としたこれまでの体制を見直し、生産量の変動や機種の増加にも柔軟に対応できるよう生産方式を検討しています」と語った。

ジヤトコのコアコンピテンシー

 佐藤社長が次に取り上げたのは開発中の新製品について。「電動化が加速するなかEV(電気自動車)は、小型車、中型車のセグメントから、コンパクトカー、軽自動車、そして高性能車やピックアップトラックへと広まっていきます。そこで本日初めて公開するのは研究開発中の超小型eアクスルと大型ピックアップトラックなどに使用できる変速機能付きeアクスルです。まず、超小型アクスルからご説明します。軽自動車への搭載を想定したこのモデルは、15インチのノートパソコンに隠れるほど超小型なサイズでありながら、最大出力は60kWで、軽自動車からコンパクトカーまでカバーします。このサイズを実現するには、モーターやインバーターの小型化だけではなく、高効率のギヤやそれを保持するケースを含めた加工技術が重要なカギを握っております。次にご紹介するのはピックアップトラックなど大型車への搭載を想定した変速機能付きのeアクスルです。こちらは通常走行様の2段変速に加え、牽引や登坂用のスーパーローギヤといった合計3段変速のを有しています。変速機を使うことでモーターのサイズアップを抑え、小型化とコスト削減に貢献します」と説明した。

電動化への取り組み
日産自動車用に開発した次世代電動パワートレーン「X-in-1」は、モーターやインバータなどを統合して1つのユニットにする技術
超小型eアクスル
ピックアップトラック用の変速機能付きeアクスル
試作品。変速部の構造はまだ非公開とのこと

 そして「電動化は私たちに新しいビジネスチャンスをもたらします。電動パワートレーンの技術や仕組みを、クルマ以外のモビリティに生かすことができます。その1つが電動アシスト付き自転車のユニットです。すでにいくつかの自転車メーカーと話を進めております。そして試作品に対しては高い評価をいただいております。こちらではドライブユニットだけでなくバッテリ残量や航続距離のモニタリング、アシスト量の変更などができるスマホアプリの開発も行なっております。また、移乗機構付きのクルマ椅子の開発も行なっております。こちらはロボット制御技術を用いたことで介助が必要な人であっても、介助者なしでベッドから立ち上がれるようにするものです」と電動パワートレーン開発をきっかけに新たなジャンルへの進出を行なっていることも明かした。

Eバイク用の変速機構入りドライブユニットを組んだミニベロ
リアハブ一体式。今後はさらに小型化されるという
アシスト設定などできるスマホアプリも開発中
移乗機構付きのクルマ椅子

 佐藤氏が最後に紹介したのは「ナセル」といわれる風力発電用増速機だ。佐藤氏からは「ナセルは翼の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する部品で、これを当社で開発したギヤを組み合わせたものを提案したところ、風力発電に携わってきた関係者の方から“風車が回る音が全くしない。とても不思議な感覚だ”と言われております。このことから当社の技術は風力発電の分野にも寄与できるのではないかと期待しています。ジヤトコはあらゆるモビリティにユニットを提供し、社会課題の解決にチャレンジしていきます。社会から信頼される企業としてカーボンニュートラルの達成はもちろん、さまざまなニーズに応え、持続可能な社会の実現に貢献していきますと」結んだ。

風力発電機用「ナセル」も紹介
ジヤトコの目指す姿
ジヤトコの未来を語った代表取締役社長兼CEOの佐藤朋由氏
深田昌之