CES 2017

日産 ゴーンCEO、「CES 2017」基調講演でNASAの技術をベースに開発した自動運転車管理技術「シームレス・オートノマス・モビリティ」概要公開

DeNAと無人運転車の実証実験も開始

2017年1月5日(現地時間)発表

ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタイリティ」の達成を最終目標と定めた「ニッサン・インテリジェント・モビリティ」について語る、日産自動車株式会社 CEO カルロス・ゴーン氏

 日産自動車は1月5日(現地時間)、「CES 2017」で同社CEOのカルロス・ゴーン氏が基調講演を実施。そのなかで無人運転車の開発を目的とした実証実験をディー・エヌ・エー(DeNA)とともに2017年から開始することを明かした。

 無人運転車の実証実験は、ルノー・日産アライアンスの取り組みの一環として実施されるもので、第1フェーズとして2017年から日本の国家戦略特区にて無人運転技術の開発に集中的に取り組む。2020年までには、首都圏にてモビリティ・サービスでの技術活用の検証を含んだ実証実験を行なう計画としている。

 実証実験で、ルノー・日産はクルマづくりのノウハウと自動運転の最新技術を盛り込んだ電気自動車ベースのプロトタイプを提供。一方、DeNAはモビリティ・サービス提供のための情報技術(IT)システムの構築を担当し、オンラインおよびモバイルユーザー体験用の技術を提供する。

 ルノー・日産とDeNAは、実証実験の遂行や関連する組織能力開発に向けて必要となる投資を積極的に行なっていき、2020年までの4年間、実際の走行環境での実証を重ねて関連技術を継続的に改善・強化していくことで、大きな進歩を見込む。

 基調講演で無人運転車までのロードマップを説明した日産自動車 専務執行役員の浅見孝雄氏は「DeNAとのパートナーシップによるテストは今年から開始します。無人自動車の実証実験を日本で実施して、2020年には商業ユースやモビリティサービスとして展開し、東京の都会でテストを行ない無人自動車を社会の中に入れていきます」と示した。

日産自動車 専務執行役員の浅見孝雄氏は、完全自動運転に向けた4つのステージを説明

 また、ルノー・日産の自動運転車の実用化戦略は4つのステージがあるとし「ステージ1」として高速道路における同一車線の自動運転技術で、2016年8月に日産「セレナ」に自動運転技術「プロパイロット」を搭載することで実現させたとしている。

「ステージ2」として自動での車線変更が可能となる高速道路における複数レーンの自動運転で2018年までに実用化予定。「ステージ3」として市街地の自動運転で2020年までの実現を見込む。さらに「ステージ4」として無人運転を可能にする完全自動運転を最終段階と位置付けている。

 基調講演では「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタイリティ」の達成を最終目標と定めた「ニッサン・インテリジェント・モビリティ」が紹介され、クルマがエネルギーをどのように使い、どのように走り、そして社会とどのようにつながっていくのか、という3つの領域における日産の指針が示された。

NASAの技術をベースに日産が開発した「シームレス・オートノマス・モビリティ」

「シームレス・オートノマス・モビリティ」を発表する、NISSAN RESARCH CENTER所長 Dr.Maarten Sierhuis氏

 基調講演では、NASAの技術をベースに日産が開発した自動運転車管理技術「Seamless Autonomouse Mobility(シームレス・オートノマス・モビリティ)」(以下、SAM[サム])をNISSAN RESARCH CENTER所長 Dr.Maarten Sierhuis氏によって披露。Sierhuis氏はNASAから日産に転職した人物で、SAMの開発を担当している。Sierhuis氏によると、クルマで移動する際には、路上の障害や事故など不測の事態に直面したとき、例えば追越禁止車線を越えて反対車線に一旦出て戻る必要があるが、人間にはそれを判断できても、交通法規を完全に守るように走行する自動運転車にはそのような柔軟な判断ができないという。SAMは有人のオペレーションセンターを用意することで、オペレーションセンターにいるオペレーターが、自動運転車からの情報を元に経路を判断する。

 その情報は、SAMに対応するすべての自動運転車に共有され、同様の障害の解決や人工知能の学習に役立てていく。NASAのオペレーションセンターが、月や火星に送った無人のローバー(探査車)をコントロールする技術や知見が活かされているシステムになる。

[CES 2017]NISSAN Keynote Seamless Autonomouse Mobility

 確かに人工知能を搭載した自動運転車が賢くなれば、どんな不測の事態にもいずれは対処できるようになるだろう。ただ、その前には不測の事態の洗い出しが必要で、それには膨大な時間や手間がかかる。日産のSAMはNASAの技術を活かすことで、自動運転車を実社会に投入できるようにするもので、自動運転車を実際に市販するという強い決意の表われとなる。

 CES会期中には、日産ブースとシリコンバレーをつなぎ、SAMが現実社会において、どのような役割を果たすのか知ることができるライブデモが行なわれる。

 そのほか、新型「リーフ」は自動運転技術「プロパイロット」を搭載して近い将来市場に投入されることや、マイクロソフトとの提携によるコネクテッド・カーの開発における1つの例として車載用パーソナルアシスタント「Cortana(コルタナ)」など、「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタイリティ」に向けた取り組みについて説明がされた。

マイクロソフトと協業して車載用パーソナルアシスタント「Cortana」を搭載する

 基調講演の締めくくりに、ゴーン氏は「ゼロエミッション、死亡事故ゼロは、私たちだけではなく皆さんと一緒に実現するもの。交通インフラのストレスやエネルギーを抑えるには、都市計画と一緒にならなければならない。我々の素晴らしいテクノロジーは何十億人に影響をあたえるもの、皆さまの声をお聞きしたい」と話した。

基調講演会場に展示された車両
日産ブースに展示されたリーフ