イベントレポート

ダイハツブースでは“これまで”と“これから”の車両を展示 「ダイハツ号」「シャレード」から「ビジョン コペン」「ユニフォーム カーゴ」など

一般公開日:2023年10月28日~11月5日

入場料:1500円~4000円

軽乗用BEVのオサンポ

 10月25日に「ジャパンモビリティショー2023」が東京都江東区にある東京ビッグサイトで開幕した。本稿では東展示場棟1階 1~3ホールにあるダイハツ工業ブースを紹介する(ブース番号EP01)。

 ダイハツブースでは創業以来持ち続けてきた「お客さまに寄り添い、暮らしを豊かにする」という思いをテーマとしている。そのテーマを具体化するためにメインステージにエポックメイクな歴代ダイハツ車を展示。そしてブース正面はコンセプトカーを置くことで、「お客さまに寄り添い、暮らしを豊かにする」という気持ちを過去から未来へと続く流れとして表現しているということだ。

ダイハツブースは東展示場棟1階 1~3ホールにある(ブース番号EP01)
歴代のダイハツ車のなかでもエポックメイクな車両が並べられたステージ
ステージ上の車両。1931年式のダイハツ号
1957年式の軽3輪トラックのミゼット
1977年式シャレード。ダイハツが初めて日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したクルマ
1980年登場のミラ
1999年に登場したアトレー電気自動車
2002年登場のコペン

 ステージ上の「これまで」を語るクルマのほかに、ブースには「これから」を示す5台のコンセプトカーが出展されていたのでそれらを紹介していこう。

 まずはダイハツの軽オープンカーの初代コペンをイメージさせるスタイルを持った「VISION COPEN(ビジョン コペン)」。開発のテーマは「走る喜びに寄り添うカタチ」というもので、求めたのはコペンの気軽さはそのままに、走る喜びや楽しさを追求したクルマとのこと。

 事前の発表ではエンジンはCN燃料(カーボンニュートラル・フューエル)を利用する1.3リッターエンジンとなっていたが、どんなエンジンを積むべきかはまだまだ検討とのことなので今回はエンジンの公開はない。また、トランスミッションも展示車はATを搭載しているが暫定的なもので、今後はMTの搭載も検討していくとのことだった。

 サスペンションも検討中だが、ダイハツが取り組んでいるモータースポーツ活動から得られた知見を取り入れ、ビジョン コペンにふさわしい足まわりにしていくとのこと。

 エクステリアは初代コペンを彷彿させるスタイルで、コペンでも採用されている電動開閉式ルーフ「アクティブトップ」を装備するが、可動ギミックは変更されているという話だ。

 デザイン面では軽自動車枠が取り払われたことで、初代コペンでは抑えていた部分を伸び伸びとデザイン。幅が広がったことでフロントフェイスは「初代っぽい」イメージながら「大人っぽさ」が出た。さらにフェンダーの張り出しが設けられるようになったことで力強さも生まれた。

市販化を期待する声も多いビジョン コペン。登録車、FRという新しい枠組みのコペンがユーザーにどう捉えられるかを知るための展示でもある

 続いてはオープンカーの「OSANPO(オサンポ)」だ。オサンポはオープンエアの心地よさを散歩に出かけるような手軽さで楽しめ、日常にスローな価値を生み出すことを求めた軽乗用BEV(バッテリ電気自動車)。

 軽自動車BEVというとバッテリ容量などの制約で行動範囲や走行性能が限られるが、オサンポはそれらを逆手に取って小さいBEVだからこそ「近い距離をゆっくり走る」というカーライフを提案するものだ。自転車でいうとロードバイクによるサイクリングではなくて、ミニベロ(小径車)でのポタリング的なのんびりとした移動のイメージ。

 そんなユルさを生み出すために、SUV的にリフトアップされた車高とすることで視線を上げて見晴らしをよくする。そしてオープンカーということで開放感が得られるというもの。シート自体も体を固定するような形状ではなくてある程度ゆったり座れるようになっている。

 クルマが楽しいと思うのはそのクルマに乗ることで得られる「気持ちよさ」があるからだが、このオサンポのような「ユルさ」を求めている人もいるだろう。

オープンエアと高めの視線。そして静かで滑らかな走り。従来のクルマとは違う価値観を感じるコンセプトカーが「OSANPO(オサンポ)」だ
オサンポのインテリア。ドアに肘をかけるようなドライビングスタイルも取りやすいという
お散歩クルマということでペットボトルや折りたたみ傘などを置くためのトレイが設けられている

「クルマと人の関係の再定義」がテーマの「meMO(ミーモ)」。こちらはライフステージに合わせ、スタイルや楽しみ方を変えることができる軽乗用BEVだ。

 乗る人ごとに使いやすいクルマとするため、クルマをつくり方から変え、モジュール化した内外装部品の構造になっているのが特徴。交換できる部位についてはサイズや固定法などを一般公開することで、パーツメーカーによるアフターパーツだけでなく、自分の手でカスタマイズしてみたいというユーザーも参加しやすいようにしている。

 例えばドアの内張は同サイズのパネルを3枚はめ込んでいるが、このパネルの位置を変えるだけでも個性が出せる。また、パネルに着色したりイラストを描いたりするのもいいし、小さい子供がいるのならパネルの表面にホワイトボード材を張るなりしてお絵かきが楽しめるようにするのも楽しいだろう。

 さらに内外装にはめ込むパーツは、手に入れやすくなっている3Dプリンターでパーツを自作するという提案もあった。これは個人では難しいかもしれないが、販売店が機材を導入してくれればクルマの購入後のユーザーとのコミュニケーションも幅広くなるのでは、という考えだ。

サイドのモールははめ込み式で容易に交換ができる。モールにはめ込んであるブロック状のパーツも付け替えができる
ミーモのインテリア
リアシート
ドアの内張は同サイズのパネルを合わせていて、色を変えたり位置を変えることができる。このアイデアはすぐに市販車に活かせそうだ
ブースでは実際に3Dプリンターでパーツを作っていた。個人では持てなくても販売店が持っているとユーザーと新しいコミュニケーションを取ることができる。ダイハツはユーザーとのつながりを大事にするメーカーなので、その点での発展も期待したコンセプトカーだ
複雑な機構になる現代のクルマは「難しさを簡単そうにみせる」ようなインテリアデザインになることが多いというが、とくに女性はそういった作りに対しては不安を持つという。そこで今回の軽自動車コンセプトカーは余分な作りを省いたデザインと共通のものとしたという

「UNIFORM CARGO(ユニフォーム カーゴ)」は、第一に考えられたのが「働く道具として使いやすいこと」。これは使ってみて勝手がいいということだけでなく「パッと見ただけで使い方が分かる」ということも含めたもの。そこでデザインは機能を素直に表すものとした。頑丈そうな黒いフレームを入れて、そこに白い壁を合わせた使いやすそうな倉庫のような見せ方としているのが特徴。

 また、ドアハンドルやスライドドアのハンドルは業務用の冷蔵庫などをイメージさせるデザインとすることで道具感を出している。また、スライドドアのレールも黒くするのが一般的だが、ここも道具らしくあえて金属地のままとした。

 運転席まわりのデザインは今回のコンセプトカー共通のシンプルなのものだが、ユニフォーム カーゴも後述するトラックもドアが大きく開くような作りとしていた。

 ダイハツが発売しているハイゼットなどは荷室が広いぶん、運転席と助手席の足下にしわ寄せがきているが、ドアはヒンジの位置の都合で完全に開いても足を真横に抜くのは無理なのだ。そこでユニフォーム カーゴもトラックもドアヒンジ位置を変えることでドアが大きく開くようにしたということだった。

 というように、BEVであり車体デザインも先進的で目新しいものが出てくるかと思いきや、働くクルマとしていますぐ市販車にも取り入れていいような実用的なアイデアが盛り込まれたコンセプトカーだったが、使い勝手の向上こそ働くクルマの進化。地味に思えたかもしれないがこれも興味深いものだった。

ユニフォーム カーゴ
黒くて頑丈そうな柱に無機質の白い壁といった倉庫のようなイメージを抱かせるデザイン
ユニフォーム カーゴの運転席
ドアの開きを大きくするのは乗り降りしやすくするためだけでなく、足下にたまった土汚れなどを吐き出しやすくするためでもあるとのことだった
カーゴルーム。ロングホイールベース化により積載量が多い
2列目シートは畳むと床に収まる
冷蔵庫のハンドルをイメージしたというドアハンドル。スライドレールも道具っぽくするため金属地としている

「UNIFORM TRUCK(ユニフォーム トラック)」は軽トラックということで、大事にしたのは小回りがきくこと。そのためユニフォーム カーゴよりショートホイールベースとし、細い道での取り回しのよさを実現している。

 そして、農家の方が収穫物を販売するための未来の「Nibako」を装備。こちらは使いやすく、清掃しやすいフラットで凹凸の少ない荷室となっている。

「UNIFORM TRUCK(ユニフォーム トラック)」と未来のNibakoの組み合わせ
軽トラックなのでショートホイールベースとしている
ユニフォーム トラックの前席
深田昌之