イベントレポート

タクシーのシェア乗り「NearMe」が賞金1000万円獲得 スタートアップ企業のピッチコンテストでグランプリ決定

2023年11月4日 開催

受賞した3社、グランプリはNearMeのCEO、髙原幸一郎氏(中央)、部門賞はGlobal Mobility Service 代表取締役社長 CEOの中島徳至氏(左)とZip Infrastructure 代表取締役の須知高匡氏(右)

「ジャパンモビリティショー2023」(東京ビッグサイト:会期10月26日~11月5日)では、西展示棟1Fにスタートアップが集結、さまざまな展示を行なっていたが、11月4日は「Japan Future Session(ジャパン フューチャー セッション)」において、スタートアップ15社が登場してピッチのコンテスト「Startup Future Factory Business Pitch Contest & Award」が行われた。

グランプリはタクシーのシェア乗りの「NearMe」

「Startup Future Factory Business Pitch Contest & Award」を開催

「ピッチ」と呼ばれる短時間に内容を凝縮したプレゼンテーションによって内容を競うもので、登場する15社はこれまでに審査に勝ち残ったスタートアップ。ベンチャーキャピタルのパートナーやモビリティ企業から経営幹部の合計9名が審査員をつとめ、グランプリを受賞すると賞金1000万円を獲得する。

3つの部門から各5社、合計15社かピッチで競い合う

 決勝審査に挑むのは3つの部門それぞれ5社。コンテンストでは3つの部門から部門賞が選出され、さらにその中からグランプリを選ばれる。

 賞金1000万円のグランプリを獲得したのは、「EXCITEMENT × Mobility 未来の感動」部門から送迎サービスとしてタクシーをシェアする株式会社NearMe。

 賞金100万円の部門賞として「LIFE × Mobility 未来の暮らし」からGlobal Mobility Service 株式会社、「INFRASTRUCTURE × Mobility 未来の社会基盤」からZip Infrastructure 株式会社。

司会はフリーアナウンサーの平井理央氏

タクシーのシェア乗りで第4の公共交通機関を目指すNearMe

 グランプリは、「EXCITEMENT × Mobility 未来の感動」部門からタクシーのシェア乗りで第4の公共交通機関を目指すとしたNearMe。CEOの髙原幸一郎氏が説明した。

 タクシーのドライバー不足も叫ばれる一方、ほとんど乗客が1人しか運んでいない実態がある。そこで、移動の質と量のどちらも充実させてすぐできることはタクシーのシェア乗り。NearMeは、タクシー会社と利用者をつなぐ両サイドのマッチングプラットホームで事業展開して収益を得ている。

 メインは羽田空港に1980円で行けるサービスで、事前に予約を受け付けて複数の予約からAIでグループ化、前日までにピックアップの時間を知らせて当日はバンに乗り、空港にドアツードアで行けるサービスになるという。数兆円のターゲットがある市場で、すでに50万人が利用するまで成長。さらにゴルフ場、観光、日常の移動に横展開する。

 審査員からの質疑応答では、展開先として、認知のため旅行会社との提携や、システムを自治体向けにMaaSのような形態のプロダクトとして提供も開始しているという。また、NearMeの強みは「テクノロジーだけだと新しい乗り方っていうのは定着しないので、われわれは、テクノロジー×サービスのデザイン、この2つが掛け合ったことで、ここまで成長できてるんじゃないかなと思う」とした。

NearMeのCEO、髙原幸一郎氏
タクシーのシェア乗りで第4の公共交通機関を目指す
スマートフォンで予約
他のサービス等との相関図

従来の与信に通らない人にモビリティを与えるGlobal Mobility Service

「LIFE × Mobility 未来の暮らし」部門の部門賞を獲得したのはGlobal Mobility Service。代表取締役社長 CEOの中島徳至氏が登壇しピッチを行なった。同社は独自の技術で返済能力があるにも関わらず従来のローンの与信には通らない人に対して、ローンやリースでクルマを提供する。同社が掲げる「真面目に働く人が正しく評価される仕組み」の創造となる。

 仕組みとしては、同社のMCCSという機器によって車両の始動の遠隔制御を可能とし、滞納があれば安全に遠隔起動制御を行うことで、滞納を管理することができるというもの。世界では10億人、日本において1年間で200万人が与信が与えられないファイナンスギャップを埋め、クルマが売れ、配送業ならドライバーも豊かになっていく。さらに新車への代替が進めばCO2削減にもつながる。

 質疑応答では、MCCSの可能性として、クルマの利用を把握できるため、例えば配送業なら走行状態から次のファイナンスのきっかけを提供することができるなど、金融データと車両データを分析して提供することも次のビジネスモデルとして検討していることが紹介された。

Global Mobility Service 代表取締役社長 CEOの中島徳至氏
日本において1年間で200万人が与信が与えられない
車両の始動制御を担保に滞納をなくす仕組み

都市型自走式ロープウェイを提供するZip Infrastructure

 「INFRASTRUCTURE × Mobility 未来の社会基盤」の部門賞を獲得したのはZip Infrastructure。代表取締役の須知高匡氏が、渋滞による経済損失をなくすために都市型自走式ロープウェイの「Zipper」が導入型と利用者の両方の希望を満たす交通システムだとして説明を行なった。Zipperは既存のロープウェイに対して、自走式とすることでロープとゴンドラが独立、カーブや分岐を自由自在に設けることができるというシステム。

 渋滞による経済損失は日本とASEAN上位5か国で年間7.5兆円にのぼるとし、バスや鉄道ではないZipperは、建設コストが低く、定時制が高いシステムだという。今後の導入の可能性として、上野動物園のモノレール代替システムがいちばん可能性が高い案件だとしている。

 質疑応答では、須知氏が宇宙エレベーターの研究をしていた経歴が注目され、宇宙エレベーターが100年先の技術であるのに対してZipperはそのスピンオフ技術だとした。また、事業の実現難易度については、50年以上前にエンジン式の自走ロープウェイが認可された実績があることから、自走式ロープウェイの認可が得やすいというメリットが説明された。

Zip Infrastructure 代表取締役の須知高匡氏
導入型と利用者の希望を両方を満たす交通システムがない
自走式ならカーブや分岐を自由自在に設けることができる

そのほかのEXCITEMENT × Mobility 未来の感動 部門の最終審査出場者

株式会社 アラカン
 自動車フリマサービス「カババ」は、個人売買をプロが仲介することで整備や保証などを充実させるサービス。マージンを減らして中古車の価値が上がり、買い替えしやすくなる。

アラカンの自動車フリマサービス「カババ」

株式会社 電知
 先進的な電池診断サービスとして、電池に関するAIとIoT機器を一貫して提供、システムデザインも行なう。中古車オークション運営会社や、リース会社などがターゲット

電知の電池診断サービス

株式会社 JOYCLE
小型アップサイクルプラントでゴミを処理する。産業廃棄物分野は経済インパクトが大きく、特に廃棄物管理コストが高い病院から普及させる。

JOYCLEは、小型アップサイクルプラントでゴミを処理するシステムを作成

SORA Technology 株式会社
エアモビリティ活用が前提となった社会を見据え、ドローンでマラリア媒介の水たまりを発見し、薬剤コストや人件費を抑えていく。

SORA Technologyは、ドローンで水たまりを発見、マラリアを媒介することを防ぐ

そのほかのEXCITEMENT × Mobility 未来の感動 部門の最終審査出場者

akippa 株式会社
空きスペースでパーキングサービスを提供、場所さえあればスマホひとつで駐車場運営ができる。大きな需要がある場所での提供以外に、小学校の授業参観日で駐車場が必要というような重要にも応えられる。

akippaは、空きスペースでパーキングサービスを提供

Carstay 株式会社
キャンピングカーシェアリング事業や車両製造を行なう。キャンピングカーを観光消費額の増加から防災インフラの拡充まで実現している。製造からレンタル、販売まで一気通貫で提供。

Carstayは、キャンピングカーシェアやキャンピングカー製造を行なう

Landit 株式会社
駐停車をデジタル化しているスタートアップ。駐車場の貸し借りには多くの無駄が発生するなか、圧倒的なデータベースで時期をマッチングしていく。建設や物流に大きなニーズがある。

Landitは駐停車をデジタル化して駐車場を増やしマッチングも行なう

Pathfinder 株式会社
片道のレンタカーを提供。交通手段として自由な寄り道ができるクルマで片道を使い、帰りは飛行機や新幹線の利用を想定。従来のレンタカー会社の乗り捨てサービスより安く提供、トータルの車両台数を減らし資源を減らす。

Pathfinderは片道のレンタカーサービスを提供、片道利用ニーズと移動させたいクルマをマッチング

そのほかのINFRASTRUCTURE × Mobility 未来の社会基盤 部門の最終審査出場者

インパクトサークル 株式会社
貧困問題をインパクトファイナンス事業で解決。配送業界の人手不足が深刻化するなか、モビリティによって貧困を脱出することを案件とし、インパクト投資が循環するようなプラットフォーム作りをする。

インパクトサークルは、貧困問題をインパクト投資で解決させるプラットフォームを作る

株式会社 パワーウェーブ
道路のワイヤレス給電で、停止中ではなくて走行中の給電を可能とするシステムを提供、テストコースではEVにバッテリーを搭載せずに走行し、実用化のレベルまできている。

パワーウェーブはEVに対して、道路上に埋め込んだシステムから走行中充電をする

株式会社 Spectee
危機情報の収集・可視化・予測。Spectee Proが危機発生すぐに信頼性の高い情報を収集、発生から1分で災害がどこでおきて、どうなるか、害状況を見える化していく。

Specteeは災害時にあらゆるネット情報を駆使して危機情報の収集・可視化と予測を行なう

株式会社 ゼロボード
ESGデータの可視化を通じて持続可能な社会を作っていく。「脱炭素=儲かる」モデルを日本で作り、世界をリードしていく。

ゼロボードはESGデータの可視化を行なっていき、持続可能な社会を作っていく

僅差で難しい審査だった

 15社のピッチが行なわれたあと、すぐ審査に入り、グランプリと部門賞が決定した。

 グランプリを獲得したNearMeのCEO、髙原幸一郎氏は「まさか自分が選ばれるとは思っていなかった」とコメント、今回のピッチコンテストの紹介ビデオでグランプリ確率を「200パーセント」と発言していたこともあり「200パーセントって言ってしまったが、それが結果として表れてうれしい」と述べた。

グランプリは賞金1000万円を獲得、同時に次回のジャパンモビリティショーの出展権利が与えられる

 一方、審査員から難しい審査だったと講評が聞かれ、日本自動車工業会 副会長でヤマハ発動機 代表取締役社長の日髙祥博氏は「今回は僅差のなかで、議論してNearMeに決めた」と述べ、接戦であったことが語られた。

審査員の日本自動車工業会 副会長 日髙祥博氏

 日髙氏は受賞した3社以外についても「ぜひ、もっともっと日本を元気にしていただきたいと思う」と激励の言葉を述べ、ピッチコンテストは終了した。

審査員の方々
正田拓也