イベントレポート

【東京モーターショー 2019】日立AMS、新型「i-MMD用モーター」や「800Vインバータ」など電動化先進技術を惜しみなく展示

2019年10月25日~11月4日 一般公開日

日立オートモティブシステムズのブースには本田技研工業向け「i-MMD用モーター」が。11月からの出荷を予定する

 10月23日、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で「第46回 東京モーターショー 2019」が開幕した。10月25日~11月4日が一般公開日となる。

 東京ビッグサイト 西4ホール(W4205)でブースを構える日立オートモティブシステムズのテーマは「Moving Forward! 持続可能な社会に向けてイノベーションを加速する」で、大きく電動車システム、自動運転システム、先進システム技術、VRシアターの4コーナーに分かれて展示されている。

 10月24日に行なわれたプレスカンファレンスでは、日立オートモティブシステムズ エグゼクティブオフィサー CTO 兼技術開発統括本部長 山足公也氏が登壇し、同社事業内容の解説を行なった。

日立オートモティブシステムズ株式会社 エグゼクティブオフィサー CTO 兼技術開発統括本部長 山足公也氏
クルマ社会の課題と日立オートモティブシステムズのソリューション
パワートレーン、ADAS、シャシーの事業を展開
モーターとインバータ
エンジンのパワートレーンシステム
先進運転支援システムのADAS
自動での車両運動を支えるシャシーシステム

 日立製作所はIT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5つのセクターで事業を展開しているが、日立オートモティブシステムズは、生活に密着したクルマの進化を支える事業として、ライフセクター内で9%を占める主力事業となっているという。

 環境問題や高齢化、交通渋滞などクルマ社会における課題解決のカギは、電動化、自動運転、コネクテッド。これらのソリューションを搭載した次世代モビリティの実現に向け進んでいく。4月にはハード高機能化に欠かせないソフトウェア開発を専門に行なう、ソフトウェア事業部を設立。パワートレーン、ADAS、シャシーの事業を展開し、さらにイノベーションを加速させていく。

 電動パワートレーンでは、モーターやインバータを展開。エンジンでは、インジェクターや電動バルブタイミングコントローラーなどにより高効率で低燃費なシステムにしていく。ADAS(先進運転支援システム)、自動運転の認知をするステレオカメラや判断を担う自動運転ECUを進化させることで、安全・安心な自動運転実現を目指している。

 加えて山足氏は「日立グループなら、部品、システムの双方で、インフラや安全なセキュリティを含め、ワンストップで提供できる」とその強みを語るとともに、ADAS-ECUをはじめ、スズキの「エブリイ」や「キャリイ」などに搭載される夜間の歩行者検知機能を支えるステレオカメラ、スズキ「スペーシア」に搭載されるネットワークの信頼性を高めるゲートウェイ、メルセデス・ベンツ 「ML450ハイブリッド」のモーター、アウディ初の量産EV「e-tron」に搭載されているインバータがあると、これまでの採用実績も紹介。現在のメーカーのクルマになくてはならない製品を作っているのが、日立オートモティブシステムズであることがよく分かる。

これまでの採用実績例

新開発の日立オートモティブ電動機システムズ製モーター

 このコーナーでは、新しい日立オートモティブ電動機システムズ製の電動車両向けモーターが必見。

 日立オートモティブ電動機システムズは、2017年に本田技術工業と設立した電動車両、モーター事業の合弁会社。日立製作所の創業製品であるモーター技術と約90年に渡る自動車機器事業で得た技術に加え、自動車メーカーの知見を取り入れ開発した。2019年にグローバル技術センターを設置し、中国で2020年内に、米国では2022年に生産を開始する予定となっている。

 展示されているモーターのシステム電圧は650Vで、最大出力135kW、最大トルク315Nm、最高回転数は1万3000rpm。展示では「ホンダ向けi-MMD用モーター」と書かれている。「i-MMD」は2モーターのハイブリッドシステムで、11月からの出荷を予定している。

 また、高電圧高出力インバータも展示。大容量のバッテリに、より短時間で素早く充電できるように開発された製品だ。パワー半導体の実装技術を新開発し、高い冷却性能を実現しつつ高耐圧化。従来製品比で2倍の高電圧で2.7倍の高出力密度化を実現しており、800V対応の高電圧・高出力インバータを世界に先駆け量産化に成功した製品となる。相実効電流が670A2s/380A(出力94.3kVA/L)の「インバーター600」と、335A2.5s/190A(出力62.3kVA/L)となる「インバーター300」2台が展示されていた。

 横の解説パネル内映像をよく見ると、興味深い分布巻き制作の様子が映っているのでチェックしてみてほしい。ほかにも、開発中のAI搭載が可能な自動運転ECUも展示されている。

分布巻きの特徴を活かし、コイルを2スロットから4スロットに分散させてトルクリップルを減らしている。分布巻きはトルク密度が高い
ホンダ向けi-MMD用モーターのスペック表
1世代前になるxEV用モーター
こちらも分布巻きだがコイルは2スロット
大型SUV向けモーター
こちらは集中巻き。スペース効率に優れる
自動運転用ECU
高電圧高出力インバータ。インバーター600とインバーター300の2台を展示
インバーター600は一部カットされ内部が見える。パワーモジュールが見える
パワーモジュール。右が新製品で左が従来型
AC/DC変換で半導体がとても高熱になるので冷却が重要。背面にもフィンが付く

実物大車体模型で解説する「自動運転システム」

 自動運転システムのコーナーでは、ほぼ実物大の車体模型の上で自動運転システムで使われる製品が、実際に装着される場所をイメージして展示されている。ステレオカメラ、電動パワーステアリング、電動パーキングブレーキ、セミアクティブダンパー、自動運転ECU、高精度地図ユニット、ADAS ECU、セントラルゲートウェイなど、自動運転に使われる主要製品がもれなく展示されている。

 映像でも解説があり、例えば道路のバンプや穴を見つけて、自動でサスペンションを制御してショックを和らげる様子や、雪道で滑り出しを感知して自動運転を行なう様子などを見ることができる。

自動運転システムの製品を、実物大の車体模型の上で実際に装着されるイメージで展示
自動運転ECU。上部が廃熱に適したデザイン。よく見ると日立の「H」型
ステレオカメラ。小型化された新モデル
中距離ミリ波レーダー
高精度地図ユニット
先進運転支援ECU
セントラルゲートウェイ
ベルト駆動式電動パワーステアリング
制御バルブ内蔵型モノチューブ・セミアクティブダンパー。右に電動パーキングブレーキ
アルミ製キャリパー
バンプを見つけて、自動でショックを和らげる
自動制御を使わない場合(左)と使った場合(右)。ショックが軽減されている
雪上での自動運転の映像

走行性能を最大化する「電動車システム」

 電動車システムのコーナーでは、安全環境性能と走行性能を最大化させるシステムを紹介。電動システム技術とエンジンシステム技術の双方を展示。xEVインバータとxEVモーター、可変圧縮比制御システム、電動バルブタイミングコントロールなどが展示されている。エンジンも電動化の影響を大きく受け低燃費なシステムに進化している。

 なお、xEVとはバッテリで動作するいわゆるEVのBEV、ハイブリッドのHEV、プラグインハイブリッドのPHEV、燃料電池自動車のFCEVとFCVを総称する時に使われる用語だ。

電動車システムの展示。こちらは装着イメージではない
xEVインバータとxEVモーター
エンジンシステム技術はエンジンの模型に装着されている

自動運転技術をVRで体感できる「VRシアター」

 突発的な状況変化による姿勢の乱れを制御するコントローラとシャシーによる連携技術など、自動運転技術を8人乗りのシアターで走行体験できる。VRゴーグルだけでなく椅子も振動するので、道路状況が伝わってくる。臨場感が高く、山道や雪道を本当にドライブしているかのように感じた。ぜひ体感してもらいたいが、酔いやすい人はムリをしない方がいいレベル。同じ映像は前方に通常モニターを使って常時表示されているので、解説はそちらでも見ることができる。

VRシアターで自動運転技術を体験
8人乗り。椅子からも振動をリアルに感じる
このような映像で自動危険回避などを体験できる
カンファレンス後に日立オートモティブシステムズ 山足CTOにブースで詳細な解説をしてもらった

村上俊一