イベントレポート 東京オートサロン 2025

1.5リッターV型12気筒のホンダミュージックが幕張に響く auto sport 60周年 & as-web 20周年記念でホンダF1を佐藤琢磨選手がデモラン

Honda RA272をデモランする佐藤琢磨選手

 東京オートサロン2025の2日目に実施されたのが、「auto sport 60周年 & as-web 20周年記念」と題して行なわれたホンダF1のデモラン。ドライバーに元F1ドライバーであり、世界三大レースのインディ500を2度制覇した佐藤琢磨選手を迎え、幕張メッセの特設コースを走行した。

 用意されたマシンは、1965年にホンダF1が初優勝した年のHonda RA272(1965年)と、第2期ホンダF1のマクラーレンHonda MP4/5(1989年)。RA272は12号車 ロニー・バックナム選手のマシンで、MP4/5は2号車 アラン・プロスト選手のマシン。ただ、佐藤琢磨選手によるとプロスト選手のマシンだが、スロットル関連はアイルトン・セナ選手用の柔らかいものに交換したマシンとのことで、セナ選手がコーナリング中に見せる独特のスロットルワークである「セナ足」がやりやすくなっているものだという。

1.5リッターV型12気筒のホンダミュージック、佐藤琢磨選手がRA272をデモラン

 このMP4/5はエンジン始動のみが行なわれ、デモランは告知どおりRA272で実施された。

 RA272は、ホンダが初めてF1参戦した翌年のマシンで、1.5リッターV型12気筒エンジンを搭載。バンク角もV型12気筒の理想値である60度のエンジンで、どこまでも伸ていくエンジン音は当時ホンダミュージックと呼ばれ、ホンダをF1シーンに印象づけた。ホンダの発表によると最高回転数は1万2000rpm。

 1965年の最終戦であるメキシコGPでリッチー・ギンサー選手が優勝し、ホンダとグッドイヤーに初優勝をもたらした。

 今回、 モータースポーツ誌「auto sport」が60周年、Webサイト「as-web」が20周年、ホンダF1初優勝から60年ということで、コラボイベントの開催につながった。

マクラーレンHonda MP4/5(1989年)とHonda RA272(1965年)
Honda RA272(1965年)
マクラーレンHonda MP4/5(1989年)

 土曜日は、ホンダミュージックとまで言われたエンジン音が聞けるとあってか、幕張メッセのデモラン会場には多くの人が集まった。

 佐藤琢磨選手は、集まった観客の「Start Your Engines」のかけ声でエンジンをスタート(後部からスタッフがスターターでスタート)。レーシングとも言われる空ぶかしを行ない、エンジンの回転数を徐々に上げていく。

 そのエンジン音は走り出す前から官能的なもので、今から60年前にホンダの技術者が成し遂げた偉業に思いをはせるに十分なもの。走り出す前から、このデモランの場に立ち会えたことに感謝するものだった。

 佐藤琢磨選手は幕張メッセの特設コースを結構なペースで2周し、観客の拍手に迎えられた。

 マシンから降り立った琢磨選手は、「めちゃくちゃ楽しかった、モナコっぽかった、すごい楽しかった」と興奮気味に語り、その後は琢磨選手らしく走りの分析に。

大勢の観客の前をホンダミュージックを奏でながら走行
RA272で走行する佐藤琢磨選手
走り終えスタッフと握手

 なんでもRA272は基本アンダーの特性ながら、エンジンが走っているようなマシンなので、運転次第でどのようにもなるという。アクセルを踏めばお尻が出るし、コンロール性に優れるという。

 走りながら最後の最後までマシンを仕上げていくインディ500優勝者だからこそできる技かもしれないが、いつまでも楽しげにRA272を語り続ける琢磨選手の様子からは、このデモランが本当に特別なものだったことが分かる。

 オートサロンにはクルマ好きのいろいろな楽しみがあるが、このコラボデモランはその中でも特別な時間であったのは間違いない。

編集部:谷川 潔
Photo:高橋 学