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【GTC Japan 2016】自動運転とGPGPU。東京大学 加藤真平准教授のセッション

加藤氏「自動運転をどのように使うのかがビジネス上の差別化になる」

2016年10月5日 開催

講演を行なった東京大学 大学院 情報理工学系研究科 准教授の加藤真平氏

 NVIDIAが10月5日に開催した「GTC Japan 2016」。自動車領域のセッションでは東京大学 大学院 情報理工学系研究科 准教授(ティアフォー 取締役)の加藤真平氏が、「自動運転とGPGPU」と題して完全自動運転の研究開発用として公開しているオープンソース ソフトウェア「Autoware」などについて話した。

「自動運転とGPGPU」と題したセッション

 AutowareはLinuxとROSをベースに、市街地一般道における完全自動運転に必要となる認知、判断、操作の機能を備えた自動運転システム用オープンソースソフトウェア。名古屋大学、長崎大学、産総研による共同成果の一部として、自動運転の研究開発用途に無償で公開されている。

自動運転の研究開発用途に無償で公開されているAutoware

 講演ではまず、加藤氏が「いつまでも実証実験をしているわけにはいかない」と現時点での自動運転に対する考えを述べるとともに、実証実験の次の段階として50~60km/hで自動運転する乗り物をライドシェアや高齢者の多い交通不便地域におけるモビリティサービスとして活用できないか、といった観点で活動を進めていることを明かした。さらに、そういった活動をグローバル展開するにあたってはプラットフォームをオープン化することで立ち上げの時間を節約してもらい、より多くの人に自動運転に参入してもらう狙いがあることを示した。

GPU性能の将来予測

 今回のテーマになっているGPUに関して、加藤氏は「今のGPUの性能はひと昔前のスパコンとほぼ同じ性能で、この十数年で大きな進化を遂げている。将来的にはワンチップ化され、人工知能を1つの出口にして人間に近い認識機能で自動運転するシステムが実現できるかもしれない」との見方を示した。

CPUとGPUの比較映像

 また、実際にGPUをどのように自動運転に活用しているかについて、画像認識の処理に活用していることを紹介、「CPUで1秒ぐらい処理にかかるものが、GPUを使うことで10~20倍以上速く処理をでき、実際のサービスで想定しているスピード感で実験することができる」と話し、「製品のロードマップがあることで、我々も研究を進めるうえで安心感がある」との感想を話した。

 画像認識の活用方法に関しては、信号の認識については3D地図との組み合わせで信号のあるポイントだけ抽出することや、画像で認識したクルマに対して車両の向きに合わせた物理法則を条件付けるなど、効率的な処理方法を紹介した。

ディープラーニングについて紹介するスライド

 一方、ディープラーニングの活用について加藤氏は「例えば(障害物となる)前走車に対して、ブレーキをかけて止めるのか、ブレーキを使わずによけて通過するのか、この判断は非常に難しい」と話し、これら複雑な状況の判断を求められる場合に向けて、現在は自動車教習所の教官によるたくさんの走行データを集めるなど、ディープラーニングを活用しているという。

加藤氏が取締役を務めるベンチャー企業「ティアフォー」

 最後に加藤氏は「自動運転は技術的には皆が同じことをやって、同じようなものができあがる。自動運転をどのように使うのかがビジネス上の差別化になる」との考えを示してセッションを締めくくった。

セッション会場は満席で立ち見をする人も