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【SUPER GT第7戦タイ】決勝記者会見レポート

2016年10月9日 開催

GT500クラスの優勝は19号車 WedsSport ADVAN RC F(関口雄飛/国本雄資組)。チーム、関口選手とも初優勝

「2016 AUTOBACS SUPER GT Round7 BURIRAM SUPER GT RACE」(以下、SUPER GT第7戦タイ)が10月8日~10月9日の2日間にわたって、タイ ブリーラム市内にあるチャン・インターナショナル・サーキットにおいて開催された。9日に行なわれた決勝レースでは、GT500クラスは19号車 WedsSport ADVAN RC F(関口雄飛/国本雄資組、YH)が、GT300クラスは25号車 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組、YH)がそれぞれ優勝したのは関連記事(「GT500は横浜ゴム装着の19号車 WedsSport ADVAN RC Fが、チーム、関口選手ともに初優勝」)のとおりだ。

 本レポートでは決勝レース後に行なわれた優勝会見と、GT500でチームとして初めて、そして今レースがデビューレースだった牧野任祐選手にとってデビューレースで2位表彰台獲得となった15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(武藤英紀/牧野任祐組、BS)の決勝後会見についてお伝えしていく。

プライベートチームがGT500で勝つということは本当にすごいこと

左からGT500で優勝した19号車 WedsSport ADVAN RC Fの関口雄飛選手、国本雄資選手、GT300で優勝した25号車 VivaC 86 MCの松井孝允選手、土屋武士選手

──各チームそれぞれ今日の1日を振り返ってほしい。

関口雄飛選手:午前中のフリー走行で走ってみると昨日とフィーリングが違っていた。それでチームと相談してセッティングを少し変えた。スタート前8分間走行ではトップタイムをマークして、自信をもって進められた。

 スタートして5周ぐらいしたら後ろを離すことができた。ギャップを大きければ大きくするほどチームも国本選手もミスをしなくなると思って、自分のスティントの終盤に燃料も軽くなっていたのでタイムを上げた。そうしたら、7コーナーでタイヤがバーストした。最終セクターだったので、そのままピットに入ることができたのはラッキーだった。それでもピットロードは若干攻めて被害を最小限に抑えることができた。

 国本選手に替わったあと、最初はギャップが減ったりして不安もあったけど、ギャップを見ながらタイヤマネジメントしてくれて、本当によかった。チームにとっても初表彰台が初優勝なので、チーム、ヨコハマタイヤ、ファンの皆様に感謝している、本当にありがとうございました。

国本雄資選手:まずチーム、TRD、ヨコハマタイヤに、いいクルマ、いいタイヤを作ってきてくれたことにお礼を言いたい。今週は走り始めから調子がよく、パフォーマンスが高くて、とても順調にレースをすることができた。交代前にはタイヤバースなどもあったが、大きなギャップがあり、2位に15秒近い差で受け取ることができた。その後2位がペナルティで交代したため、3位のチームが繰り上がったが、25秒違い差があったので、1~2秒遅くして走った。ギャップは使い切ってしまったし、不安もあったけど自分を見失わないように走った。優勝できたのは、みんなのおかげ。

GT500のスタートシーン。途中2位と3位が交代するシーンはあったが、ポールからスタートした19号車 WedsSport ADVAN RC Fが最後までリードを保ち優勝した

土屋武士選手:GT500で優勝したチームバンドウの2人にお祝いをいいたい。SUPER GTはちょっとやそっとでここに立てるような簡単なレースではない、それをプライベーターとしてGT500を走り優勝したことは本当にすごいことだ。

 うちのレースは正直嬉しいということもあるが、チャンピオンシップもかかっているので、昨日の松井選手の走りをデータで解析しそれを盗んだ部分もある。その結果自信をもって準備することができ、思ったようなレースになった。

 松井選手とマーテンボロー選手のレースになると思っていたが、燃料ポンプに息つきがあって、ガス欠なのかポンプの故障なのか分からなかったのだが、サブポンプに変えて様子を見ることにした。もちろんガス欠のリスクはあったが、チャンピオンシップがかかっていたので、リスクを取るべきだと思った。松井選手の走りがすごかったので、それが優勝につながったと思っておりうれしい。

松井孝允選手:今シーズン3回目のポールだったが、これまで勝てていなかったので、やっと勝てたなという気持ち。昨日の夜、クルマに関してはわがままを言って、メカニックが遅くまで作業をしてくれた。また、午前中のフリー走行で飛び出してしまったのをメカニックが頑張って修復してくれた。本当に感謝したい。また今回はタイでの開催だったが、日本からもすごく応援してもらい、このチームで勝てたことは本当にうれしい。マーテンボロー選手が追い上げてきたとき、クルマにトラブルを抱えていたが、無線でやりとりをしてコースにとどまることができたので、プッシュすることができて、勝つことができた。

GT300のスタートシーン。25号車 VivaC 86 MCはポールからスタートしたが、タイヤ無交換作戦のためか、途中順位に大きな変動があった。最後はしっかりと優勝という結果を獲得した

──チームバンドウの坂東監督が盛り上がっていたが、どんな言葉を交わしたのか?

国本選手:監督はものすごく盛り上がっていて、最後は泣いていたので僕たちもすごくうれしい。自分にとっても昨年苦しい思いをしていたので、このチームに来て今回勝ててすごくうれしい。

──松井選手はタイヤ無交換のタイヤを後半スティントでも走っていたが、どんなフィーリングだったのか?

松井選手:無交換でしたが、今回のヨコハマタイヤはタレもないいいタイヤだった。重たい状態から、軽い状態までタレることはなかった。それも優勝できた1つの要因だと思う。

──19号車のタイヤ交換はパンクにより行なわれた。ドライブしていた関口選手にとってはどんな状況だったのか? また、後半を担当する国本選手は同じような不安はあったのか?

関口選手:タイヤバーストが発生したのは燃料が軽くなってきてピットに入る5周前だった。タイヤを使い切ってから入ろうと思っていたので、攻め過ぎたというかやり過ぎた部分があったとは思う。ただ後半セクターだったので、救われた。

国本選手:あのバーストでギャップがなくなって、変えた直後はプッシュしていた。12号車にペナルティが出てギャップを抑えていても、それまで同じようなギャップで走ることができた。そこからはタイヤをケアするために、2~3秒落として走っていた。ヨコハマタイヤを信じて最後まで走りきることができた。

19号車 WedsSport ADVAN RC F
25号車 VivaC 86 MC

牧野選手のスティントは前半はGT300の処理に課題があったが、後半は想定以上の走り

15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTのドライバー、武藤英紀選手(右)と、牧野任祐選手(左)

 今回のレースで、ある意味優勝した2台以上に注目が集まっていたのが、15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(武藤英紀/牧野任祐組、BS)だ。今回同チームからデビューする牧野任祐選手(関連記事「GT500初レースでフロントローという鮮烈なデビューを果たした19歳の牧野任祐選手」)は、GT500のデビューレースで予選2位のタイムをマークし、決勝でも2位に入る活躍を見せた。その15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTの決勝後の記者会見の模様をお届けしたい。

15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT

道上龍監督:日曜日フリー走行での最初の30分は武藤選手に任せて決勝を見据えたセットを入念にやってもらった。その後、牧野選手にサーキットサファリの時間を乗ってもらった。正直牧野選手にはもっと乗ってほしかったが、昨年も土曜と日曜で路面の状況が大きく変わってそれに対応できないということもあったので、武藤選手にしっかりやってもらった。

 決勝前の8分間走行でも、武藤選手に聞くとまだまだな部分があったので、多少のアジャストをしたところ、結果的に決勝レースでのレースペースはよくなった。途中12号車に抜かれたりなど想定外のことはあったが、それぞれいい仕事ができたと思っている。

道上龍監督

──武藤選手のファーストスティントの感触を教えてほしい。

武藤英紀選手:8分間でバランスがよくなくて、決めあぐねていた部分があった。最終的にはエンジニアと道上監督で話し合ってこれで行こうというセットにした。レース序盤の数周はよかったのだが、かなりいっぱいいっぱいで、GT300との巡り合わせがわるく、12号車にて抜かれたりした部分はあったんだが、常にタイヤをいたわって走ることができた。タイヤはむしろ後半の方がいい状態で、自分のスティントの後半は速く走ることができた。

伊与木仁チーフエンジニア:抽選の結果、昨日武藤選手が予選でスピンしたタイヤを決勝タイヤに使わないといけなくなった。午前中にはそれが利用可能かどうかをチェックしたのだが、リスクはあるけど使用するにはオッケーだという結論になった。途中若干のバイブレーションを感じたりという部分はあったようだが、安定的にいけた。このサーキットはピットが狭く、近くのNSX勢同士で重なって斜め止めしないといけない場合も出てくるので、ほかのNSXが作業を終えるまでピット作業を引っ張ったことが功を奏したと考えている。

伊与木仁チーフエンジニア

──牧野選手のセカンドスティントについて教えてほしい

牧野任祐選手:朝にクルマのセットを変えて、よさそうに見えていた。クルマのフィーリングはわるくなかったのだが、自分のスティントの前半にGT300の交わし方がうまくいっていなくて、それが自分の課題だと思えた。

伊与木チーフエンジニア:冷えているタイヤで出て行って、前半のペースは決してわるかった訳ではないが、もう少し稼げる部分があると感じ、そこが課題と言える。後半に関しては我々がターゲットとしたタイム以上のタイムで走ることができていて、そこは評価できる。レースにタラレバは禁物だが、あと数周あれば……という思いはある。今回のヨコハマタイヤは高い性能を発揮していたが、19号車自身や24号車のパンクで分かるように高いリスクを負っていた。なので、牧野選手にはプッシュさせた。そうしたら「死ぬ気で頑張ります!」と言っていた。

牧野任祐選手:そんなこと言ってたか(笑)?

伊与木チーフエンジニア:メカニックが「牧野がもう伊与木さんを使った!」と大騒ぎしていた。というのもレース中に周回遅れの24号車が前に現われた時に「ラップダウンさせてくれるように言いに行ってください!」と無線で言ってた。普通の新人ドライバーなら、最初のレースでをチーフエンジニアには言える余裕はなので、メカニックが大ウケしていた。彼は大物になるだろう(笑)。

──武藤選手にとっての今回の2位の意味は?

武藤選手:牧野選手がデビューレースで2位表彰台というのは本当にすごいこと。自分にとっては、道上監督のチームに自分が移籍してきて、なかなか結果が出せなくてつらい部分があった。予選でうまくいくことがあっても、決勝で結果が残らないという状況が続いていたのだが、今回牧野選手という新しい相方を味方にすることができて、チームにとっても初めての表彰台を獲得することができたのはうれしいこと。

──次戦、および最終戦の2日連続開催となるツインリンクもてぎについては?

道上監督:牧野選手は速いということは聞いていましたが、走らせてみないと分からない部分がある。しかし、今回こうした結果を出せたので、次のもてぎのレースではもっと幅を持った戦略で臨むことができ、チームとしても集中してレースに臨むことができる。基本的に今の15号車は、ほかのNSXと比べてもクルマは決まっており、それなりのタイムを出せるレベルになっている。ぜひもてぎの2つのレースでも結果が残せるように頑張りたい。