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【GTC Japan 2016】自動運転で地方におけるモビリティの救済を目指すSBドライブ

SBドライブ CEO 佐治友基氏がビジョンを説明するセッション

2016年10月5日 開催

SBドライブ 代表取締役社長 兼 CEO 佐治友基氏

 SBドライブは、ソフトバンクと先進モビリティの合弁企業として設立されたベンチャー企業だ。

 ソフトバンクは、傘下に携帯電話事業会社を持つ日本を代表する通信事業者の1つであり、先進モビリティは東京大学 生産技術研究所 次世代モビリティ研究センターの技術をもとに、自動運転技術を開発しているベンチャー企業。

 その両社によるジョイントベンチャーとなるSBドライブは、先進モビリティの自動運転技術をベースに、ソフトバンクの強みである携帯電話回線やIT技術を融合させて新しいモビリティサービスを実現しようとしている。

 SBドライブは今後そうした自動運転に、NVIDIAのGPUおよびDRIVE PX 2を利用する計画を持っており、NVIDIAが10月5日に東京都内で開催したGTC Japan 2016に参加し、同社のビジョンなどを説明するセッションを担当した。その後、同社 代表取締役社長 兼 CEO 佐治友基氏による報道関係者向けの質疑応答が行なわれたので、その模様をお届けしたい。

コストが課題になっている地方のモビリティを自動運転で救済していくSBドライブ

SBドライブのロゴ

 SBドライブの佐治氏によれば、同社はソフトバンクの社内ベンチャーを募集するコンペに佐治氏が応募し、自動運転を提案したところ採用されで始まったプロジェクトなのだという。2015年の社内コンペで選ばれ、ソフトバンクと、東大発のベンチャー企業として創業した先進モビリティとの合弁として2016年の4月に創業したとのこと。

 佐治氏は「現在、自動運転はGoogleやUberといったIT系の企業と、自動車メーカーの2つの勢力がそれぞれ実現を目指している。しかし、どちらの陣営も自動運転+サービスという形で実現しようという目標に違いはない。自動車メーカーが2020年代の実現を目指しているのに対して、IT系企業はもう少し早い実現を目指しており、サービスを先に開始して先行することでユーザーの囲い込みを目指している。弊社もいち早く自動運転実現を目指すことで、そうしたIT系の企業と競争していきたい」と述べ、ソフトバンクグループが持つIT技術や携帯電話事業とのシナジーを出しながら自動運転のビジネスに取り組んで行くとした。

SBドライブはレベル4の自動運転の実現を目指す
自動運転ではIT企業がサービス提供で先行している
IT企業も自動車メーカーも目指すところは同じ

 そうしたSBドライブのビジネスモデルについて佐治氏は「例えばバス事業の50~60%は人件費。1台のバスを運行するのに50万円が人件費だとしたら、弊社が提供する運行管理システムを導入して頂いて、浮いた人件費の一部をその運行システムに回してもらうなどが考えられる。ただ、現状では確固としたビジネスモデルがある訳ではなく、いろいろと種をまいてその中からよいものを選んでいけばいいと考えている」とする。このように、現状ではこれだというビジネスモデルがあるというよりは、様々な種まきをしている段階だと佐治氏は説明した。

今後は自動運転にNVIDIAのAI技術を導入し、ソフトバンクのビジネスとのシナジーも目指す

4つの地方自治体と協定を結んでいる

 そうしたSBドライブだが、すでにいくつかの自治体と協定を締結し、実際に実証実験を行なっているという。佐治氏によれば「福岡県北九州市とは地方都市モデルで、鳥取県八頭町とは中山間地域モデルで、長野県白馬村では観光地モデルで、静岡県浜松市では地方都市モデルで協定を締結している。今後はこのほかに離島モデル、被災地モデルの2つを加えて、5つのモデルで次世代のモビリティはカバーできると考えている」と述べ、今後協定を結ぶ地方自治体を増やして共同で実証実験を行なっていきたいと説明した。

 実証実験は先進モビリティの技術を利用して、中古のバスを自動運転車に改造する形で取り組んでいるとのこと。中古車を利用しているのはその方がコストが安くなるからで、そこにSBドライブが提供する運行システムを組み合わせてテストをしているという。そこには、ソフトバンクグループがヤフージャパンなどで取り組んできたクラウドの技術などを組み合わせてやっていきたいと佐治氏は説明した。

 こうした実証実験を今後も続け、2018~2019年に実際の運行にこぎ着けたいとSBドライブでは考えているとのことだった。

 なお、現在SBドライブが取り組んでいる自動運転はAIベースではないとのことだが、当然将来を見据えればAIの導入を考えているという。自動運転は認知、判断、操作という3つの段階があるが、AIの導入より、認知と判断に関しては格段に上がるものと見られている。

 実際、NVIDIAがトレーニングしたニューラルネットワーク「DRIVENET」を利用して、車両の検知性能を試したところ大きな効果があったという。

認知と判断にはAIが有効
ソフトバンクグループのビッグデータ、NVIDIAのGPUを利用したAIによる判断

 佐治氏によれば将来的にビッグデータとして活用したりと、ソフトバンクの本業であるITビジネスとの親和性は非常に高いと考えているとのこと。また、そうした自動運転技術の1ランクアップとしてNVIDIAのAI技術を、今後もっと検討していきたいとのことだった。