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F1ドライバー ジェンソン・バトン選手、最後の鈴鹿1000kmに向けSUPER GT 500マシンを初ドライブ

鈴鹿サーキットで行なわれているSUPER GTのタイヤテストに登場!!

2017年6月6日 開催

ジェンソン・バトン選手とタッグを組む、武藤英紀選手(左)と中嶋大祐選手(右)

 F1ドライバーとしてチャンピオン経験もあるマクラーレン・ホンダのジェンソン・バトン選手は6月6日、鈴鹿サーキットで行なわれているSUPER GTのタイヤテストに参加し、GT500クラスの16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT(横浜ゴム)のステアリングを初めて握った。

 バトン選手は、MOTUL MUGEN NSX-GTの3人目のドライバーとしてチームに加わり、8月26日~27日に開催される「2017年 AUTOBACS SUPER GT Round6 第46回インターナショナル SUZUKA 1000km“SUZUKA 1000km THE FINAL”」(以下SUZUKA 1000km)に参戦することを表明したばかり。

 今回のタイヤテストでは、6日の午前に30分間、午後に75分間走行してマシンへの習熟を図った。また、午前の走行終了後に記者会見を開き、初めて乗るマシンの感触や参戦する予定のSUZUKA 1000kmに向けた思いを語った。

チームスタッフと会話するバトン選手
ピットでの様子
初めてのGT500に乗り込み、ピットアウトしていく
ピットアウト後、鈴鹿のホームストレートを駆け抜けて行った
バトン選手による午後の走行
バトン選手のMOTUL MUGEN NSX-GTは、テストに参加したGT500クラスの8台中、トップから2.326秒遅れの7番手タイム。トップタイムをマークしたのは23号車MOTUL AUTECH GT-R(ミシュラン)だった

ジェンソン・バトン選手のコメント

ジェンソン・バトン選手

 鈴鹿では、1995年のカートから2011年の(F1での)優勝まで、たくさんの素敵な思い出があり、ここに戻ってふたたび日本のファンの皆さんに会えるのは光栄です。(本田技研 モータースポーツ部 部長の)山本氏には、SUPER GTに乗る機会を与えていただいたことに感謝しています。

 SUPER GTについては、自分自身も長年注目していましたし、参戦している友人などからも本当にファンタスティックなレースカテゴリーであると聞いています。F1で見られないような多数のオーバーテイクなど、エキサイティングなファイトが見られるレースでもあります。自分にとってこれが初めての屋根付き、左ハンドルのレースカーになりますが、そういうチャレンジはもちろんのこと、日本のファンの皆さんやホンダのファンの方々の前でレースすることにワクワクしています。

 (初めてGT500で鈴鹿を走行した印象は)とてもいい。10、11ラップを走っただけでまだ足りないですし、レースカーにはそれぞれ違いがあって、クルマに慣れるのには時間がかかります。でもすごく楽しい。10ラップほど走ったこの短い時間で、チームや他のドライバーとどうクルマを改善するか、どう前進していけるかを見て、コンペティティブなものになりそうだと感じました。

 まだ会って2時間ですが、同じマシンに乗る2人のチームメイトとはどういうクルマか、どんなクルマにしていきたいかも話し合えている。チームももちろん素晴らしいし、やらなければいけない仕事はあるけれど、もうSUZUKA 1000kmの本番が待ち遠しく思っています。

 カリフォルニアでは(36号車 au TOM'S LC500の)ジェームス・ロシターと同じフィットネスプログラムで会って、SUPER GTについて追い抜きの多い、エキサイティングでチャレンジングなレースだという話を聞いていました。彼は別のチームでタイヤも異なるので、詳しい情報をもらえることはないだろうけれど、一緒のフィールドで走ることができるのを楽しみにしています。

 (GT500のマシンやタイヤのフィーリングについて)F1はタイヤウォーマーがありますが、SUPER GTでは(ウォーマーがないこともあり)最初の3コーナー、4コーナーまでは滑っています。ピットレーンの出口でもアクセルを踏み込むとホイールスピンする状況で、自分としては慣れていない経験です。8月の気温や路面温度は今とはまったく違うだろうけれど、SUPER GTといえばタイヤの戦い。F1では2007年以来タイヤテストがないので、久しぶりの体験です。

 楽しんで乗れましたが、GT500はダウンフォースが強く、非常に速い。GTシリーズのなかではSUPER GTが世界で1番だと感じました。コーナースピードが速いこともあって、“小さなF1”に乗っているような感覚です。クルマのバランスについてはおおよそ分かってきたので、何を増やし、何を減らすかといった意見を今日明日チームと話し合って、より戦闘力の高いクルマづくりに貢献できればと考えています。

 SUZUKA 1000kmの後の予定はありません。その後も何らかの形でレースに参戦するだろうと思いますが、今はSUZUKA 1000kmに集中しています。SUPER GT以外にも興味のあるレースはたくさんありますので、2018年はまたレースに戻ることになるでしょう。

 (ファンに向けたメッセージとして)モータースポーツにとってファンは欠かせない大切な人たち、ファンがあっての我々です。SUZUKA 1000kmではそんな沢山のファンの皆さんと素晴らしい時間を過ごせることを楽しみにしていますし、鈴鹿は特別な場所とも聞いていますから、ぜひ皆さんに来ていただきたいです。

 SUPER GTの雰囲気と素晴らしい週末(を迎えるであろうこと)には、僕自身もエキサイトしています。F1ドライバーとして長年チャンピオンシップを戦ってきたわけですが、8月のレースは楽しむために来るのではなく、何をなせるかを見せるために来たいと思っています。

本田技研工業 モータースポーツ部 部長 山本雅史氏のコメント

本田技研工業株式会社 モータースポーツ部 部長 山本雅史氏

 2016年のF1(日本GPの)レースウィークに、東京でマクラーレンのスタッフと食事をした。そのなかで日本のモータースポーツの話が出て、ジェンソンが「GT500って面白そうだよね」という話をしていたこともあって、Honda Racing THANKS DAY 2016のイベント時に「NSX CONCEPT-GT」に乗っていただいた。そこで思っていた通りにNSXが面白い(と言うので)、じゃあSUZUKA 1000kmにもし興味があるなら乗ってみる? という会話がもともとのスタート。お酒の席で(笑)。

 F1チャンピオンであるジェンソンの経験をSUPER GTに入れ込みたい、というホンダとしての考えもあり、ジェンソンのマネージャーや我々スタッフなどとディスカッションして契約に至り、SUZUKA 1000kmに出ていただけることになりました。

 16号車の武藤選手、中嶋選手も非常に優秀なドライバーではありますが、(バトン選手が)F1ワールドチャンピオンということもあり、昨日シート合わせをしただけでもいろいろと気付くポイントが出てきていた。1周目からトップスピードに近いペースで走れる能力の高さもある。これからシーズン後半。ワールドクラスの選手が経験したことをGT500にフィードバックしていき、長い目線で来シーズンに向けて16号車をより強くしていきたい。

 SUPER GTにF1のワールドチャンピオンが出場するのは初めてかもしれない。これはすごいことだと思うし、酒の席で出たような話に対して「乗るよ」と言ってくれたのも嬉しいし、ジェンソンにはすごく感謝しています。

チーム監督 手塚長孝氏のコメント

チーム監督 手塚長孝氏

 この話が決まってまずびっくり。ワールドクラスのドライバーなので、チームにとってはプレッシャーですね。乗ってもらったのはまだわずか10周ですけど、チームにおいて新しく得るものがありました。タイヤもNSX-GTとのマッチングなど分からないことに対して、他の2選手とは違う視点から情報を伝えたくれたことに対してはいいことだなあと思っていますし、チームとしても新しい方向にもっていかなくちゃ、というところで、すごくありがたかった。さすがワールドクラスと思いましたね。

 (SUZUKA 1000kmの決勝レースにおいてドライバー3人、2ローテーションで考えた際の)6スティントのなかで(ジェンソンに)どこを乗ってもらうかは、まだこれから(決めること)。天候などの状況に応じて組み立てていかなければなりません。(今回はレースではなくテストのため)まだ実際の台数よりは少ないですが、GT300をオーバーテイクしていくのは難しい部分だと思う。しっかり乗っていただいて、いろいろ習得していただき、我々に新しい発見を伝えていただいて、それを戦略に活かしていきたいですね。

バトン選手と山本氏、手塚氏が並んで記念撮影