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トヨタ、スポーツカーシリーズ「GR」発表会
GAZOOはトヨタの壁をぶち破る変革に向けたチャレンジ精神
2017年9月20日 10:50
- 2017年9月19日 開催
トヨタ自動車は9月19日、スポーツカーシリーズとして新たに「GR」シリーズを投入すると発表。同日開催した発表会では今後発売予定のモデルを含めた9車種11モデルを公開。豊田章男社長は「トヨタでも面白いクルマを作れることを示すのがGAZOO」とその意気込みを示した。
「GR」シリーズのモデル体系は、エンジン内部にもチューニングを施した数量限定販売の「GRMN」を頂点に、GRMNのエッセンスを注ぎ込んだという量販スポーツモデルの「GR」、ミニバンなどのモデルでも気軽にスポーツドライブを楽しめる「GR SPORT」を設定。
9月19日に発売する「GR」シリーズの第1弾として、「ヴィッツ」に「GR」を設定。「ヴィッツ」「プリウス PHV」「ハリアー」「マークX」「ヴォクシー」「ノア」に「GR SPORT」を設定する。
今後「ヴィッツ」に「GRMN」を、「86」に「GR」を、「アクア」「プリウスα」に「GR SPORT」を追加。ヴィッツ GRMNは2018年春ごろ、86“GR”、アクア“GR SPORT”、プリウスα“GR SPORT”は今冬発売予定。
また、カスタマイズを楽しめるアフターパーツ「GR PARTS」も設定。走りの機能を追求するパーツとして将来的には機能系アイテムも導入する計画。さらに、「GR」シリーズの投入に合わせて、2017年度中に「GRコンサルタント」と呼ぶ専任スタッフの配置などが行なわれる「GRガレージ」39店舗をオープンさせる計画だ。
高品質で低価格なスポーツカーを提供したいという思いを実現
発表会では、GAZOO Racing Company Presidentの友山茂樹氏が登壇。2017年4月に新設されたカンパニー「GAZOO Racing Company」の役割や、GRシリーズ導入の狙いを話した。
GAZOO Racing Companyの事業領域は、「モータースポーツ活動」「GRブランド商品」「マーケティング」「販売店拠点」と、トヨタがワークスとして参戦する世界選手権のWECやWRCなどのレース活動から、レースの知見を生かして開発するクルマ作りまで広い領域をカバーして、一連の活動を通じて持続可能なモータースポーツ活動を目指すという。
GAZOO Racing Companyのミッションについて、友山氏は「レース活動で得た知見を活かした世界に通用するスポーツカーを商品として提供して、新たな顧客を開拓するとともに収益に貢献すること。開発から生産、販売まで一貫して担当する最小のカンパニーを具現化し、新しい仕事のやり方に果敢に挑戦してトヨタの変革をも促すこと。それらの事業活動を通じて、景気に影響されない永続的なモータースポーツ活動を可能にすること」と紹介。
今回導入される「GR」シリーズについて、友山氏は「ひと目で走りを感じさせるエクステリア、質の高いインテリアなどに加えて、GAZOO Racingのマスタードライバーが味付けした気持ちのいい乗り味は、まるで運転がうまくなったような意のままに走る喜びを提供します。その走りを支える車体にはあらゆる部分に高剛性チューニングを施しました。高剛性なクルマはムダな揺れが少なく軽快なハンドリング、疲れないロングドライブを可能にします。GRシリーズは完成車に後から手を加えるのでなく、生産工程の中にGR専用のチューニング行程を組み込み、生産ラインで車体内部から剛性を強化するファクトリーチューニングを施し、高品質で低価格なスポーツカーを提供したいという我々の思いを実現しています」と説明した。
豊田社長が目指したレースの舞台から生み出されるクルマ作りを具現化
同発表会では、そもそもGAZOO Racingに採用されている「GAZOO」の起源について友山氏が解説。GAZOOには、豊田社長が行なった仕事の改革や、レースを舞台に生み出されるクルマ作りを具現化する、挑戦の道のりが語られた。
友山氏は「そもそもGAZOOとは、20年前に当時の豊田課長と有志のメンバーで開発した中古車画像システムです。豊田は、販売店のバックヤードにトヨタ生産方式を導入して顧客満足を高めようと販売店の物流関係に着手しました。そういう中で生まれたのが中古車画像システムです。販売店の下取り車を展示を待たずにすぐに画像で紹介するシステムで、展示に至るまでの業務改善を行なうことで、再販までのリードタイムを短縮するという、当時としては画期的な取り組みでした」と話した。
続けて「ところがインターネットも普及していない時代でしたので、画像でクルマの商売ができるわけがない、モノを売る販売店にメーカーの改善は通用しないのではと猛反発にあいました。そこでこのシステムはトヨタブランドを名乗ることができず画像システムの“画像=GAZOO”を取ってGAZOOと名乗りました。それがGAZOOの起源です」と紹介した。
友山氏は「11年前、GAZOOの挑戦がクルマづくりに波及したのがGAZOO Racingです。当時トヨタのモータースポーツ活動はF1に代表されるトヨタ・レーシングでした。しかし、モータースポーツを人材を鍛え、クルマを鍛え、いいクルマ作りの基盤に据えるべきだと考えた豊田は、自らそれを具現化しようと有志の社員たちとニュル24時間レースに挑戦しました。それはゲリラ的な活動でしたのでトヨタ・レーシングと名乗ることは許されず、豊田はここでもチーム名にGAZOOを名乗らせ、自らもモリゾウと名乗りました」と明かした。
友山氏は「GAZOO Racingは十分な予算もなく中古のアルテッツァを改造して、ドライバーも半数は社員、メカニックは全員社員。今思うと2台とも完走したのは、豊田とその同士達の情熱と意地が起こした奇跡です。このようにGAZOOの根底にあるのは、トヨタが作ったトヨタの壁をぶち破るという、変革に向けたチャレンジ精神にほかならない」と説明した。
トークショーにサプライズ登場した豊田章男社長は「この10年間(GAZOO Racingを)よく支えてくれたと思います。(この活動の)原点は、やはり悔しかったから。ニュル24時間レースに参加した時に、ほかの会社はこのあと2~3年後に出すクルマで、他社のクルマとバトルをしながら開発をしている。それをトヨタは中古車で買えるようなクルマでしか参戦できない。しかも、当時はトヨタさえ名乗ることができない、GAZOOとモリゾウというのが自分の居場所だった」と、当時の心境について述べるとともに、「GR」シリーズを含めたGAZOO Racing Companyの活動について、豊田氏は「道との関わりやクルマの味付け、そういったことは戦いのなかから生まれてくるということを、このカンパニーにはこだわりを持ってほしい」と期待感を示した。