ニュース

【2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ】気象衛星「ひまわり8号」や準天頂衛星「みちびき」などの衛星データを活用する88号車 工学院大学

濱根洋人准教授に聞く

2017年10月8日~15日 開催

88号車 工学院大学「Wing」

 10月8日からスタートする「2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」。前々日となる6日は車検などが行なわれているほか、一般公道での試走、ダーウィン郊外のヒドゥンバレー レースウェイでのサーキット走行、8の字走行確認などが行なわれている。

サーキット試走が行なわれていたダーウィン郊外のヒドゥンバレー レースウェイ

 チャレンジャークラスに挑戦する88号車 工学院大学も、6日はヒドゥンバレー レースウェイでのサーキット走行を実施。サーキット走行を準備中にチーム監督の工学院大学 工学部 機械システム工学科 濱根洋人准教授を訪ねた。

工学院大学 工学部 機械システム工学科 濱根洋人准教授。現地は暑く、結構虫に刺されてしまったとのこと

 濱根准教授によると、工学院大学ソーラーチームはソーラーカーに加え6台のサポートカーを用意。このサポートカーには、どんな場所からも通信できるインマルサット通信システムを搭載。日射計を搭載し、ソーラーカーの発電量を予測するほか、風力・気温・気圧などを同時に計測できる環境センサーを搭載し、サポートカーの走行時の影響を取り除いた状態で表示できるようになっている。これらにより現地の状況を把握するとともに、工学院大学 八王子キャンパスにおいて気象衛星「ひまわり8号」の高解像度データから雲の動きを予測、その予測データを解析し現地のサポートカーに送ることで、サポートカーがソーラーカーのドライバーに走行指示を出しているという。

 工学院大学の八王子キャンパスにおいてひまわり8号の高解像度データを解析するのは、高解像度データの取得がオーストラリア現地では大変なため。回線が細い(回線容量が小さい)ので、データ取得に時間がかかり、結果的に解析時間が減ってしまう。必要なのは雲の位置や動きなどの情報なので、解析されたデータを八王子から送ってもらうことで、効率化を図っている。

 レースの走行戦略は事前にシミュレーションを終えているのとのことで、ソーラーカーレースという自然を相手にするレースだけに、当日の天気、今後の予測などのデータを元に事前シミュレーションとの差分を計算。その差分でレースシミュレーションを補正していくという。

工学院大学チームのサポートカー。6台のサポートカーを運用する
サポートカーの屋根に付けられている「SAFARI」。これでGPSデータや、準天頂衛星「みちびき」のデータ、インマルサットとの通信などを行なう
インマルサットの通信モジュール
環境センサーからの風力や圧力は、このように車内のPCで確認できる
PCの画面。風向などが示されている。クルマの移動時も、移動データを補正し、正しい風力・風向が表示される。右の丸いのは日射計
サポートカーの屋根上に高く掲げられた環境センサー

 スタート2日前の準備状態を聞いたところ、「順調に進んでいる」とのこと。8の字コースを18秒以内で走る試験にも合格し、ヒドゥンバレー レースウェイでの走行試験を実施していた。

 初めて工学院大学のソーラーカー「Wing」が走るところを見たが、直線スピードは100km/h近辺が出ているように見えた。ソーラーカーはEVであるためエンジンの排気音もせず、また空力がよいためかとくに目立った風切り音もない。静かに目の前を高速で通り過ぎていくソーラーカーという乗り物の未来感(もしくは違和感)を強く感じだ。

ピットからコースへと向かう88号車 工学院大学「Wing」
88号車 工学院大学「Wing」
コース上を試走。速度は不明だが、見た目で100km/h程度は出ているように思えた

 今後のスケジュールとしては、7日にヒドゥンバレー レースウェイでスタート順を決める予選が行なわれ、8日に決勝スタートとなる。濱根洋人准教授は、ヒドゥンバレー レースウェイでスタート順を決める予選については「あまり無理をしない」と語り、8日の決勝スタート後、初期から順位を一気に上げていく戦略だという。88号車 工学院大学の戦いに注目したい。