ニュース
【WEC 第7戦 富士】8号車 トヨタ TS050 ハイブリッドが優勝。赤旗2回、SC 2回、フルコースイエロー1回の大混乱レースを制す。2位もトヨタ
LMGTE Proは51号車 フェラーリ 488 GTEが優勝
2017年10月15日 17:23
- 2017年10月15日 決勝
2017 FIA 世界耐久選手権 第7戦 富士6時間耐久レース(以下、WEC富士)が、10月13日~15日の3日間にわたって静岡県駿東郡小山町の富士スピードウェイで開催された。10月15日11時にセーフティカー先導で始まったレースは、この日の朝から富士スピードウェイに降り続いた降雨および霧により、赤旗2回、セーフティカー6回、フルコースイエロー1回の荒れたレースになり、最終的には15時半にでた赤旗からレースが再開されることはなく、そのままレースは終了、成立となった。
優勝したのは予選3位からスタートした8号車 トヨタ TS050 - ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/アンソニー・デビットソン/中嶋一貴組)で雨の中ロングスティントで力強い走りを見せた中嶋一貴選手の活躍により逆転で優勝を果たした。2位は7号車 トヨタ TS050 - ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組)で、トヨタは昨年に引き続いての2連勝。LMP2は31号車 オレカ 07 - ギブソン(ジュリアン・キャナル/ニコラ・プロスト/ブルーノ・セナ組)が、LMGTE Proは51号車 フェラーリ 488 GTE(ジェームス・カラド/A.ピエール・グイディ組)が、LMGTE Amは54号車 フェラーリ 488 GTE(トーマス・フロール/フランチェスコ・カステラッチ/ミゲル・モリーナ組)がそれぞれ優勝した。
残り3時間で再びセーフティカー。解除後すぐに今度はLMP2カーのクラッシュでセーフティカー
11時からスタートしたレースは、スタートから3時間まで(関連記事:3時間経過。1回の赤旗、3回のセーフティカーと大荒れのレースで8号車トヨタ TS050 ハイブリッドがレースをリード)で、赤旗1回、セーフティカー3回という荒れたレースに。というのも、この日の富士スピードウェイは朝から降り続いた雨、そしてそれに伴う霧という天候で、何度か霧が酷くなって赤旗中断になったり、セーフティカー先導のレースになっていたのだ。
3時間が経過しても状況は変わらなかった。14時10分過ぎに、この日4回目のセーフティカーが出される。この直前にそれまでトップを走っていた8号車 トヨタ TS050 - ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/アンソニー・デビットソン/中嶋一貴組)がピットインし、3位に下がっていたが8号車トヨタは同一周回の1号車 ポルシェ 919 ハイブリッド(ニール・ジャニ/アンドレ・ロッテラー/ニック・タンディ組)、7号車 トヨタ TS050 - ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林 可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組)とはピットタイミングが大きく異なっており、実質のトップは8号車という状況に。しかも、このセーフティカー導入により、1号車と7号車との差をつめる(2台の真後ろにつけた)ことに成功したため、8号車が圧倒的に有利という状況ができ上がった。2号車ポルシェは依然として周回遅れになっており、LMP1のトップ争いは1号車ポルシェと2台のトヨタの間で争われるという構図が明白になってきた。
4回目のセーフティカーでは、ピット作業を巡るポルシェとトヨタの駆け引きもみられた。両チームともに準備ができていたのだが、いずれも相手が入ったらピットに入るという姿勢で、結局数周にわたり入るそぶりは見せるものの結局入らないという周回が続いた。こうしたレースだと、雨が強くなったりすると赤旗中断して再スタートせずそのままレース終了ということもあり得るので、トップを維持し続けることが大切なため両チームの駆け引きが続いたのだ。しかし、14時半には再スタートが切られ、結局どちらもピットに入ることなくレースが再開された(86周目)。
ところがレースが再開したその周のヘアピンで、13号車 オレカ 07 - ギブソン(マシアス・ベシェ/D・ハイネマイヤー・ハンソン/ネルソン・ピケ Jr.)が、別のLMP2カーと接触してアウト側のバリアに回転しながらクラッシュ。これにより再びセーフティカーが入り、今回のレースで5回目のセーフティカー先導のラップとなった(天候以外の理由でのセーフティカーは今回のレースでは初めての導入)。
セーフティカー解除直後にLMP2カーがクラッシュ、再びセーフティカー
13号車のクラッシュにより出されたセーフティカーの間に、クラッシュした車両の排除、コースの清掃などが行なわれた。93周目にレース再開、今回はストレートがイエローゾーンなどに設定されず、通常のスタートに。これで今回初めてレース再開時に1コーナーでレースをすることが可能になった。これでロペス選手が操る7号車トヨタが1号車ポルシェをオーバテイク。トップに浮上した。実はこの時、7号車トヨタと8号車トヨタが1号車をサンドイッチするような形になり、3台が1コーナーに並んで入るというすごいリスタートになっていた。結局7号車が1号車を抜き、8号車は1号車との接触をギリギリ回避し、その後のコーナーで1号車ポルシェをオーバテイクして、トヨタの1-2体制を構築した。
このレース再開で激しいレースになったのは、LMGTE。2位を走っていた92号車 ポルシェ 911 RSR(マイケル・クリステンセン/ケビン・エストレ組)に、ポイントリーダーの67号車 フォードGT(アンディ・プリオール/ハリー・ティンクネル組)が追突し、92号車はたまらずスピン。実は67号車フォードGTはペナルティなどもあり周回遅れになっていたのに、事故を起こしたため、再びペナルティかと思われたが、67号車フォードは次の周の1コーナーで、クラッシュしグラベルにはまってしまった。
このクラッシュしてグラベルに捕まった67号車を排除するため、フルコースイエロー(コース全域がスローゾーンに設定されること)が出され、全車スピードが強制的に落とされる状況に。このタイミングを利用して1位を走っていた7号車トヨタと3位を走っていた1号車ポルシェがピットインし、コース上のスピードが落ちているフルコースイエローの間にピットインしたことで、両車はフルコースイエロー終了後にはトップを走っている8号車との差を20秒に縮めることに成功した。
4時間半経過時で、濃霧により赤旗中断。そのままリスタートできずに終了
レース終盤の焦点は、ピットインシーケンスが異なっている8号車トヨタと、2位/3位につけている7号車トヨタと1号車ポルシェのどちらにとって有利な状況になるかということに移っていった。今回は多くのセーフティカーや赤旗、フルコースイエローなどが出されているため、どちらのピット戦略が有利なのかはまったく分からない状況。ここまでのところ、8号車トヨタ、2号車ポルシェは4時間半が経過している段階でピットに2回しか入っておらず、それを見ても燃費はとてもよいと考えられる状況だ。このため、残り1時間半のレースがこのようなペースで続く場合には、8号車は後1回の給油でピット、ほかの車両はもう1回となれば圧倒的に8号車が有利。その逆に、8号車は必ず1回は入らないといけないが、ほかの車両はもう給油しなくていいなら7号車トヨタと1号車ポルシェが有利という2つの展開が考えられた。この時点では両チームの燃費などは分からないため、最後の最後までどちらに転ぶのか読めない状況になりつつあった。
111周に6回目のセーフティカーが再び天候理由で出された。その前から1コーナー~3コーナーまではイエローフラッグが出されていたので、それがセーフティカーに変わったと考えられる。そのまま3周ほどセーフティカー先導で進んだところ、霧がさらに濃くなり、結局15時半前後の114周に今日2回目の赤旗が表示されレース中断となった。
この時点で総合・LMP1はリーダーが8号車トヨタ、2位に7号車トヨタ、3位に1号車ポルシェ、4位に2号車ポルシェとなり、LMP2が31号車 オレカ 07 - ギブソン(ジュリアン・キャナル/ニコラ・プロスト/ブルーノ・セナ組)が1位、LMGTE Proは51号車 フェラーリ 488 GTE(ジェームス・カラド/A.ピエール・グイディ組)が1位、LMGTE Amは54号車 フェラーリ 488 GTE(トーマス・フロール/フランチェスコ・カステラッチ/ミゲル・モリーナ組)が1位という順位になった。
赤旗から30分が経った16時になりレースが残り1時間を切っても、霧は深くレースは再開されなかった。仮にレースが残り数十分で再開されることになれば、リーダーの8号車は76周に最後にピットインしたあと一度もピットインしていなかったので、燃料補給のためのピットインをする必要があると考えられる。これに対して7号車トヨタと1号車ポルシェに関しては100周前後にピットインが済んでいるので、残り時間から考えれば、給油なしで終わることができる可能性が高い。従って、レースとしては再開されれば、7号車ないしは1号車が優勝という可能性が高まった。このため、焦点はレースが再開されるか否か、それ次第といった状況になりサーキットはレースダイレクターの判断を待つ状況になっていった。サーキット全体にいつ終わりと表示されるのかという雰囲気が漂い、1時間10分が経過した。
だが、中断から1時間10分経って、残り10分でレース再開というサプライズが用意されていた。残り10分でセーフティーカーで先導した後、残り数分の超スプリントレースが展開されることになったのだ。待っていたお客さんには嬉しいボーナスかと思われたが、なんとその後再び霧が落ちてきて、再開は中止。そのままレースは終了となった。
赤旗中断時の順位でレースは成立となった。総合優勝・LMP1優勝は8号車 トヨタ TS050 - ハイブリッド、2位は7号車 トヨタ TS050 - ハイブリッド、3位に1号車 ポルシェ 919 ハイブリッド、4位に2号車 ポルシェ 919 ハイブリッドとなった。LMP2の優勝は31号車 オレカ 07 - ギブソン、LMGTE Proの優勝は51号車 フェラーリ 488 GTE、LMGTE Amの優勝はは54号車 フェラーリ 488 GTEとなった。
LMPクラス結果(暫定)
総合順位 | クラス | クラス順位 | 車番 | 車両 | ドライバー | タイヤ | 周回 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | LMP1 | 1位 | 8 | トヨタ TS050 - ハイブリッド | セバスチャン・ブエミ/アンソニー・デビットソン/中嶋一貴 | MI | 113 |
2 | LMP1 | 2位 | 7 | トヨタ TS050 - ハイブリッド | マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス | MI | 113 |
3 | LMP1 | 3位 | 1 | ポルシェ 919 ハイブリッド | ニール・ジャニ/アンドレ・ロッテラー/ニック・タンディ | MI | 113 |
4 | LMP1 | 4位 | 2 | ポルシェ 919 ハイブリッド | ティモ・ベルンハルト/アール・バンバー/ブレンドン・ハートレー | MI | 112 |
5 | LMP2 | 1位 | 31 | オレカ 07 - ギブソン | ジュリアン・キャナル/ニコラ・プロスト/ブルーノ・セナ | DL | 110 |
6 | LMP2 | 2位 | 36 | オレカ 07 - ギブソン | ニコラ・ラピエール/グスターボ・メネーゼス/アンドレ・ネグラォン | DL | 110 |
7 | LMP2 | 3位 | 38 | オレカ 07 - ギブソン | ホーピン・タン/オリバー・ジャービス/トーマス・ローラン | DL | 110 |
LMGTEクラス結果(暫定)
総合順位 | クラス | クラス順位 | 車番 | 車両 | ドライバー | タイヤ | 周回 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | LMGTE Pro | 1位 | 51 | フェラーリ 488 GTE | ジェームス・カラド/A.ピエール・グイディ | MI | 109 |
12 | LMGTE Pro | 2位 | 91 | ポルシェ 911 RSR | リヒャルト・リエツ/フレデリック・マコヴィッキィ | MI | 109 |
14 | LMGTE Pro | 3位 | 92 | ポルシェ 911 RSR | マイケル・クリステンセン/ケビン・エストレ | MI | 109 |
15 | LMGTE Pro | 4位 | 66 | フォードGT | テファン・ミュッケ/オリビエ・プラ組 | MI | 109 |
16 | LMGTE Pro | 5位 | 71 | フェラーリ 488 GTE | ダビデ・リゴン/サム・バード | MI | 109 |
17 | LMGTE Pro | 6位 | 95 | アストンマーティン ヴァンテージ | ニッキ・ティーム/マルコ・ソーレンセン | DL | 109 |
18 | LMGTE Pro | 7位 | 97 | アストンマーティン ヴァンテージ | ダレン・ターナー/ジョナサン・アダム | DL | 108 |
19 | LMGTE Am | 1位 | 54 | フェラーリ 488 GTE | トーマス・フロール/フランチェスコ・カステラッチ/ミゲル・モリーナ | MI | 107 |
LMP1クラストップ3記者会見
セバスチャン・ブエミ選手:非常に難しいコンディションだった。でも13年の時のようにずっとセーフティカーの後ろでパレードするだけでなく、スタートを切ったことはいい判断だったと思うし、その後状況が変わるごとにセーフティカーやフルコースイエローなどで対応したのもいい判断だったと思う。今日のレースは僕の後を担当した一貴が本当によいレースをしてくれた、それに尽きると思う。
中嶋一貴選手:(長い時間ドライブしていたねと聞かれて)確かにずっとコックピットにはいたけど、赤旗などで待ってる時間がすごく長かった。最後は僕たちにとって赤旗終了になってラッキーだったけど、勝つには運も必要と言うことだと思う。ウェットでのドライビングは決して楽ではなったし、他とは違う戦略だったけど、いいペースで走ることができた。1-2フィニッシュはチームにとっては最高の結果だ。(最後リスタートするのかわからない状況が続いたことを聞かれて)ちょっとだけナーバスになっていたけど、最後は僕たちにとって本当にいい結果になった。
アンソニー・デビッドソン選手:(司会が今日は結果的に走っていないデビッドソン選手を飛ばそうとして次に行きかけたことに対して)正直に言えば、今日は何もしてないから言うことがないよ(笑)。こんなタフなコンディションで一貴が本当にいい仕事をしたと思う。こんなにずっと待つだけのレースは本当に初めてだったよ、次もこんなに楽に勝てるといいのだけど(笑)。
小林可夢偉選手:チームと8号車のクルーにはおめでとうを言いたい。今週末は本当に出だしがよくなくて大変だったけど、昨日の夜にセッティングを変更して大分改善された。スタートのコンディションは簡単ではなかったけど、セーフティカースタートなどの手順はよかったと思う。ただ、アンドレとちょっと当たったりしてポジションを失ったけど、チームメイトが挽回してくれて最終的に2位になったのは嬉しい。ここはホームレースだし、最後まで応援してくれたファンにも感謝したい。ここでレースができてうれしいよ。
ホセ・マリア・ロペス選手:チームと8号車のみんなにおめでとうを言いたいね。特に一貴は本当にいい仕事をしたと思うよ。僕たちはFP3でうまくいかなくて、昨日の夜にセッティングを変えたのがよかった。レースではアップ&ダウンはあったけど、リカバリーすることができたと思う。途中ピットストップ時にステアリングを交換したけど、それを除けばよかったよ。ポルシェはリスタートの時が厳しいみたいで、その間にリードを築くことができた。ここはチームの本拠地だし、チームが勝てて本当によかった。
マイク・コンウェイ選手:(赤旗前の少し走っただけなので)今日はアンソニーと一緒でそんなに言うことはないんだ(笑)。でも自分のスティントになると、すぐ後ろにポルシェがいて、抜かれないようにして走った。チームが望むような結果をもたらすことができたんじゃないかな。
アンドレ・ロッテラー選手:とってもトリッキーな状況だった。最初は接触もあったりしたけど、僕たちが抱えていた問題はタイヤチョイスだった。タイヤがなかなか暖まらなくて、徐々にキャッチアップすることはできたんだけど、セーフティカーが入るとより難しくなってしまった。その反面トヨタはそんなことがないみたいだったので差がでたんだ。最後は近づけたのはよかったけど、オーバテイクはできないままレースが終わったしまった。今日は僕たちの日ではなかったということだ。
ニール・ジャニ選手:トヨタにおめでとうといいたいね。このレースは戦略を競うレースになったけど、トヨタに比べて僕たちのそれはあまりよくなかったみたいだ。特にリスタートの時が問題だった。コンディションがずっとあんなだったけど、セーフティカーやフルコースイエローを出すタイミングの判断は正しかったと思う。本当は最後にもう一度レースしたかったけど、表彰台は獲れたのでよかった。
ニック・タンディ選手:このレースは本当にチャレンジングだったし、アップ&ダウンのレースだった。僕らは正しい戦略を実行していて最後に報われると思ったんだけど、そうはならなかった。特に速度が遅い時のタイヤがつらかったし。それでも表彰台を獲れたのはよかったと思っている。