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【WTCC日本ラウンド】フリー走行ではホンダのエース、ノルベルト・ミケルズ選手が地元でトップタイム。ボルボが僅差で2位に続く
29日の決勝はレース1が14時15分から、レース2が15時30分から
2017年10月28日 21:56
- 2017年10月28日~29日 開催
「2017 FIA 世界ツーリングカー選手権シリーズ JVCKENWOOD 日本ラウンド」(以下WTCC 日本ラウンド)が、台風の影響により貨物の搬送などに遅延が生じたため、10月29日に予選、決勝が行なわれるという異例のワンデーレースとして開催される(本来は28日にフリー走行と予選、29日に決勝レースというスケジュールだった)。10月28日にはフリー走行1回目(FP1)、ピットウォークなどが開催された。
フリー走行1回目でトップタイムをマークしたのは、ポイントリーダーを追いかけるホンダ陣営のエース、ノルベルト・ミケルズ選手(5号車 Honda Civic WTCC)。2番手にはボルボ陣営のニッキー・キャッツバーグ選手(63号車 Volvo S60 WTCC)で、3番手には地元凱旋レースとなる道上龍選手(34号車 Honda Civic WTCC)が入った。ポイントリーダーのテッド・ビョーク選手(63号車 Volvo S60 WTCC)は9位。
雨の中のフリー走行でトップタイムをマークしたのはホンダのエース・ミケルズ選手
15時15分より行なわれたフリー走行1回目でトップタイムをマークしたのは、ホンダのエース、ノルベルト・ミケルズ選手(5号車 Honda Civic WTCC)だ。
サマーブレイクに入る前までポイントリーダーだった、ティアゴ・モンテイロ選手が9月にバルセロナサーキットでテスト走行時に発生したクラッシュの影響で療養を余儀なくされており、今回のツインリンクもてぎのレースも欠場。そのモンテイロ選手に次いでポイントを獲得しているミケルズ選手が、今やホンダのエースとして今年のドライバーチャンピオンを狙う存在として浮上してきている。
ただ、状況は複雑になっており、このツインリンクもてぎ戦が開催されている中で、フリー走行終了後にFIAから前戦中国ラウンドのホンダ勢に失格という裁定が下された。それによればホンダの3台(前戦走ったガブリエル・タルクィーニ選手、ミケルズ選手、道上龍選手)は、フューエルインジェクターのシールが適切ではなかったとされており、前回の中国戦でのポイントがすべて剥奪となってしまったのだ。ホンダ側も抗議などはせず受け入れており、前戦中国の結果はこれで確定。
これにより、ポイントリーダーのテッド・ビョーク選手(63号車 Volvo S60 WTCC)とのポイント差はさらに開くことになり、ホンダのミケルズ選手が逆転でタイトルを獲得するには、残り3レースですべて勝たなければならない状況になっている。
そうした状況もあってか、ミケルズ選手はFP1の序盤から気迫の走りを見せており、セッションのほとんどの時間でタイムシートのトップのポジションを保持した。実は今回ホンダ勢、特にミケルズ選手と道上龍選手(34号車 Honda Civic WTCC)は車両を新しくしているのだが、中国からの車両などの到着が遅れたため、その新車両を組み上げる時間が極端に限られており、15時15分からのFP1の直前になってもまだ組み立てている状況で、ミケルズ選手の車両が組み上がったのはFP1の直前。道上選手の車両はFP1が始まっても調整が行なわれており、数分してからようやく出て行けるような状況だった。
そのような厳しい状況の中で、ミケルズ選手はずっとトップタイムを維持し、最後にニッキー・キャッツバーグ選手(63号車 Volvo S60 WTCC)がタイムを逆転しても、すぐにタイムを更新してFP1のトップタイムをマークするなど気迫の走りを披露した。また、道上選手も調整すらままならない車両ながら3位のタイムをマークしており、ホンダの地元となるツインリンクもてぎで気を吐いている。
ただし、道上選手は中国ラウンドまで使っていたエンジンが貨物の遅延で届かないというトラブルに見舞われており、その結果エンジン交換をしなければならないため、明日のレース1(予選10位までのリバースグリッドのレース)では最後尾スタートが決定している。明日の予選は是が非でも予選上位を狙わなければいけない状況で、明日の予選での奮闘に期待が集まる。モンテイロ選手の代理となったエステバン・グリエリ選手(86号車 Honda Civic WTCC)は5番手タイム。
そのホンダのライバルとなるボルボ勢は、キャッツバーグ選手が2位、ネストール・ジロラミ選手(61号車 Volvo S60 WTCC)が7位、ポイントリーダーのビョーク選手が9位となっており、ボルボ陣営としては明日の予選でポイントリーダーのビョーク選手の巻き返しに期待して、ミケルズ選手の逆襲を封じ込めたいところだ。
マニファクチャラー以外のWTCCトロフィーの最上位はロブ・ハフ選手(12号車 Citroen C-Elysee WTCC)の4位、2番手はヤン・アーチャー(68号車 Lada Vesta WTCC)の6位となっている。
フリー走行1回目の結果
順位 | 車番 | ドライバー | カテゴリー | 車両 | ベストタイム | 周回数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 5 | ノルベルト・ミケルズ | M | Honda Civic WTCC | 2:08.363 | 15 |
2 | 63 | ニッキー・キャッツバーグ | M | Volvo S60 WTCC | 2:08.663 | 13 |
3 | 34 | 道上龍 | M | Honda Civic WTCC | 2:08.927 | 13 |
4 | 12 | ロブ・ハフ | T | Citroen C-Elysee WTCC | 2:09.291 | 18 |
5 | 86 | エステバン・グリエリ | M | Honda Civic WTCC | 2:09.389 | 15 |
6 | 68 | ヤン・アーチャー | T | Lada Vesta WTCC | 2:09.767 | 18 |
7 | 61 | ネストール・ジロラミ | M | Volvo S60 WTCC | 2:09.993 | 14 |
8 | 9 | トム・コロネル | T | Chevrolet RML Cruze TC1 | 2:10.045 | 16 |
9 | 62 | テッド・ビョーク | M | Volvo S60 WTCC | 2:10.167 | 13 |
10 | 3 | トム・チルトン | T | Citroen C-Elysee WTCC | 2:10.584 | 12 |
11 | 24 | ケビン・グレイソン | T | Lada Vesta WTCC | 2:10.656 | 17 |
12 | 27 | ジョン・フィリッピ | T | Citroen C-Elysee WTCC | 2:10.725 | 15 |
13 | 25 | メディ・ベナーニ | T | Citroen C-Elysee WTCC | 2:11.612 | 16 |
14 | 11 | クリス・リチャード | T | Chevrolet RML Cruze TC1 | 2:12.475 | 15 |
15 | 26 | フィリペ・デ・ソウザ | T | Lada Vesta WTCC | 2:15.017 | 11 |
16 | 99 | ダニエル・ナジ | T | Honda Civic WTCC | 2:15.201 | 15 |
17 | 66 | ゾルト・デビッド・サーボ | T | Honda Civic WTCC | - | 0 |
(Mはマニファクチャラー、Tはトロフィー)
シビック特別展などシビック一色なサーキット
前出のとおり、今回のレースは前戦中国ラウンドからの荷物の到着が大幅に遅れたため、異例の予選・決勝ワンデー開催となっている。28日にはフリー走行1回目が行なわれたほか、ピットウォークや各種の展示などが行なわれた。
グランドスタンド裏に設置されたシビック特別展示では、かつてのシビックベースのレーシングカーが3台展示された。1台目はホンダ社内クラブであるチームヤマトが作成したYAMATO CIVICで、かつて富士スピードウェイで行なわれていたGCの前座レースだったマイナーツーリングで1981年と1983年にチャンピオンに輝いた車両。ベース車両は1972年7月に発表され、その後ホンダ不朽の名車になった初代シビックだ。
2台目はギャザス・シビックで、1997年に販売開始されたシビック タイプR(EK9)がベースになっている、スーパー耐久向けの車両。ホンダの純正部品を販売するホンダアクセスのロゴがかなり懐かしく感じる。
3台目はJTCC(全日本ツーリングカー選手権)ディビジョン3の1987年チャンピオン車両となる無限MOTULシビック。こちらは1984年10月に発表されたワンダーシビックがベース車両。
また、ホンダブースでは今年販売が開始されたシビック TYPE Rが展示されている。展示されているのは3色(ホワイト、レッド、ブルー)の車両で、実際に車両に乗ってみたりして感触を確かめることが可能になっている。シビック TYPE Rは実際には4色展開(ホワイト、ブラック、レッド、ブルー)なので、ブラックは展示されていないがそれ以外の3色は実際に確認したりできる。シビック TYPE Rが気になっている読者であれば、その感触を確かめるいいチャンスになるかもしれない。
なお、今回筆者はホンダのご厚意により、シビック TYPE Rをホンダのワークスドライバーがレーシングコースで走らせるのに同乗体験する機会を得た。今回運転していただいたのは、今回モンテイロ選手の代役としてホンダワークスドライバーに抜擢されたエステバン・グリエリ選手。フリー走行を終えたばかりで疲れているはずだが、非常にフレンドリーにシビック TYPE Rの特徴を説明しながらコースを1周してくれた。
まずビックリしたのはそのブレーキングだ。普段自分が運転しているクルマだったら、これは止まれないだろうというスピードからブレーキングしても、グリエリ選手がドライブするシビック TYPE Rはなんの問題もなくぴったり止まってぐいぐい曲がっていくのだ、しかも雨なのに! いやはやレーシングドライバーという職業は、頭のネジが3~4本はぶっ飛んでないとできないなと、よく分かったというのが正直なところだ。
コーナー毎にびびっている筆者が面白がったのか、グリエリ選手は裏ストレート手前のシケインでコースを飛び出すギリギリまでいって、「おーとっとと」(もちろん英語で)とさらに筆者をびびらせる作戦に。こちらが固まっていると大笑いして、そのまま裏ストレートの加速へ。何度も言うが、雨が降っててウェット路面なのに、ふとメーターに目をやると180km/hを越えていたのを見て、筆者の頭の中は「早く早く、ピットに戻って、戻って」ともうそれだけがぐるぐるしていたのだった……。
走行を終えピットに戻ってきた筆者は、グリエリ選手に「明日いい結果を」と言うのが精一杯で、フラフラしながらクルマを降りたのだった。クルマもスゴイし、レーシングドライバーもすごいんだなと、それが偽らざる筆者の感想だ。
29日は9時40分から予選が行なわれ、午後に2回の決勝レース(レース1が14時15分~、レース2が15時30分~)が予定されている。また12時40分からはピットウォークも予定されており、ドライバーのサイン会なども行なわれているので、ドライバーに会ってみたいという人は予選に間に合うようにサーキットに来て、お昼からのピットウォークに参加するスケジュールをおすすめしたい。テレビ中継は、BS放送のJ SPORTS3で予選は9時30分~、決勝は14時~放送予定となっている。