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マツダ、“華やかで上質”な特別仕様車「デミオ ノーブルクリムゾン」商品説明会

搭載する先進安全機能についても紹介

2017年11月9日 開催

商品改良が行なわれた「デミオ」

 マツダは11月9日、5ドアハッチバック「デミオ」の商品改良を実施。特別仕様車「Noble Crimson(ノーブルクリムゾン)」を発売した。それに伴い、同日にデミオの商品改良と安全思想についての説明会を開催した。

 デミオの商品改良については「マツダ、『デミオ』の『i-ACTIVSENSE』に『アドバンストSCBS』など追加」でお伝えしているのでそちらをご確認いただきたい。

撮影車両はどちらも特別仕様車となり、左は「XD Touring」をベースにした「XD ノーブルクリムゾン」、右は「13S Touring」をベースにした「13S ノーブルクリムゾン」
ボディカラーは専用色の「セラミックメタリック」
高輝度塗装が施されたホイールを装着
赤いシートが映えるインテリアは白を差し色に採用
最高出力68kW(92PS)/6000rpm、最大トルク121Nm(12.3kgm)/4000rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.3リッターエンジン
最高出力77kW(105PS)/4000rpm、最大トルク250Nm(25.5kgm)/1500-2500rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.5リッター直噴ディーゼルターボエンジン
i-ACTIVSENSEのセンサーやカメラ類。新しく360°ビューモニターをオプション設定した
「ハイ・ビーム・コントロール(HBC)」を全車標準装備
幅寄せをした状態
幅寄せをした状態の車両の360°ビューモニターの表示
後方に車両がある場合の360°ビューモニターの表示

品があり、華やかな世界観をインテリアで表現した「ノーブルクリムゾン」

 デミオの特別仕様車ノーブルクリムゾンについて、マツダ デザイン本部 プロダクションデザインスタジオ カラー&トリムデザイングループ デザイナー 寺島佑紀氏に話をうかがうことができた。

マツダ株式会社 デザイン本部 プロダクションデザインスタジオ カラー&トリムデザイングループ デザイナー 寺島佑紀氏

 今回の特別仕様車は、深い赤のシートを中心に白と合わせることで、ハイコントラストでありつつも、品があり華やかな世界観をインテリアで表現。モデル名となるノーブルは「品のある、品格のある」、クリムゾンは「紫がかった赤色」を示し、寺島氏は「品があって、華やかで、上質」と話した。

 シートにはファブリックを採用。背もたれ部分には同じ赤でも少しずつ違う色を用いて、織り物ならではの凹凸感と千鳥模様を表現。また、千鳥の柄はインパネの加飾に同じ柄を使用しており、傷を防止する“シボ”の役割とともに、遊び心を加え「日ごろの乗り降りの際などに所有欲をくすぐる工夫をしている」とのこと。

 寺島氏は、デザインをする上で心がけたこととして「引き算の美学を意識した」と述べ、「物や要素を減らすとコンパクトカーのデミオでは楽しさが失われてしまうので、引き算を色のまとまりで表現しました。ドアやインパネを白でくくり、シートは赤を採用して、色で明確なエリア分けをしています」と話した。

 また、「引き算の美学として、離れたところからでも統一感やまとまり感を表現したいという思いがあります。今回はシートの部分を遠くからも近くからも見てほしい。そして、近くで見たときには色が3種類もあって千鳥もあって、というふうに高品質だと感じてもらえると思います。さらによく見てもらうとインパネにも千鳥があったり、段階を踏んでより好きになってもらえるような工夫をデミオでは行なっています」と語った。

インテリアデザインにはこだわりが詰まっている
シートには3種類の生地を採用。艶感やより深い赤色を表現できるように工夫されている
インパネ加飾の千鳥模様は、光を当てると浮き出て見える
普段はCX-3のデザインを担当しているが、今回は同じセグメントのデミオの特別仕様車を手伝ったという。「シートとインパネの大胆な配色と繊細なデザインをぜひ見てください!」と話していた

コンパクトカーから3列シートの車両まで、先進安全技術を充実

 説明会では、マツダ 統合制御システム開発本部 主査 中島康宏氏がマツダの安全思想について説明。

マツダ株式会社 統合制御システム開発本部 主査 中島康宏氏

 中島氏は、マツダが8月に発表した2030年を見据えた技術開発の長期ビション「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」に触れ、社会に対する6つの課題の1つである「高齢ドライバーによる運転操作ミス」を取り上げ、「高齢者に安全なクルマはすべての人に対して安全なクルマになる」として、社会的な課題を解決した先に「クルマ社会として走る喜びをつうじた元気で笑顔のある社会が実現できると考えている」と話した。

「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」
「社会」の課題は6つ認識しているとのこと
「安心・安全なクルマと社会の実現により、すべての人がすべての地域で自由に移動し、心豊かに生活できる仕組みを創造し、築いていく」と中島氏は述べた

 続けて、課題の解決について「マツダは人間の能力、これをまだまだ引き出せていない、まだまだやるべきことがあると考えている。それが、人間中心の開発です」と述べ、「MAZDA PROACTIVE SAFETY」について説明。

 MAZDA PROACTIVE SAFETYは、認知・判断・操作の各ステップで適切に行動できる運転環境を整えることを基礎に、ドライバーのミスにも対応して事故被害を防止・軽減できるようにサポートする技術を開発・提供。さらに事故が起きた場合にも衝突時の乗員保護・歩行者保護を行ない、これら3つのステップで安全性を高める考え。

 中島氏は、MAZDA PROACTIVE SAFETYの基礎となる運転環境の領域のうち、ペダルレイアウトの例を紹介。「ペダルレイアウトはタイヤの位置と密接な関係があり、アクセル、ブレーキペダルとともに、タイヤに押されて車両の内側に配置される傾向がある。素早く確実な踏み替え操作を行なうには、かかとを軸に足を回すような操作を行なう必要があるが、その際にかかとの位置が車両の内側に行くと可動角が小さくなってしまう」。

「また、年齢とともに可動角が減っていき、高齢者の踏み間違え操作が起きやすい要因になっていると考えている。まずはタイヤの位置を前に出して、ペダルを適正な位置までボディ側に動かすことで、緊急時に高齢者でもブレーキペダルを踏み間違えることなく、適切な操作ができるようにしている」と話した。

 続けて、アクセルペダルについて「従来型の釣り式ペダルではアクセルペダルの操作とともに、かかとの位置が前に動いていく傾向がある。そうすると足首角が小さくなり、踏み換えしづらくなり足首を立てるような操作が難しくなってくる。足首角が小さくなると、関節を動かすときに大きな力を入れないと足首が持ち上がらず、足が持ち上がらなくなる」。

「これをオルガン式ペダルにすることでかかとの位置がずれなくなり、アクセルからブレーキへ踏み替えるときに余計な負担がかからず、より自然な踏み替えが可能となる。その結果、アクセルとブレーキの踏み間違えが少なくなると考えている」と説明した。

「MAZDA PROACTIVE SAFETY」として3段階で事故の削減を図るクルマ造りを行なっており、まずは人間の持つ能力を最大限に引き出してドライバーが自分自身で正しい認知、判断、操作ができるようにしていく運転環境をクルマ側で整える必要があるとしている
中島氏曰く「MAZDA PROACTIVE SAFETYで最も重要な運転環境の領域」として、ドライビングポジション、ペダルレイアウト、視界視認性、アクティブ・ドライビング・ディスプレイの中からペダルレイアウトの例を紹介
車両の基本骨格から見直しアクセルとブレーキのペダル位置を変更することで、踏み間違え操作が起きにくいペダルレイアウトにしている
アクセルペダルを従来型の釣り式ペダルではなく、オルガン式ペダルに変更して足への負担を減らし、アクセルとブレーキの踏み間違えを起きにくくしている

 また、MAZDA PROACTIVE SAFETYの2つ目の考えとなるアクティブセーフティとして、先進安全技術「i-ACTIVSENSE」を紹介。中島氏は「i-ACTIVSENSEは、人間の認知をサポートすることで運転する人が常に安全な状態でクルマを操ることを理想としている」と話し「さまざまな技術を研究し、日々進化させている」と述べた。

 マツダは、4月から主要6車種で「追突」「歩行者」「踏み間違え」「車線変更時の事故を削減する技術」を日本で標準装備化することに取り組み、8月に発表したアクセラの改良で宣言を達成。

 デミオでは、後方・側方の「ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)」や、後退時に近づいてくる車両を知らせる「リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)」、夜間の視界を広げる先進ヘッドライトの「ハイ・ビーム・コントロール(HBC)」「アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)」、車線の逸脱を知らせる「レーン・デパーチャー・ワーニング・システム(LDWS)」、前後の誤発進を抑制する「AT誤発進抑制制御」、前後で衝突時の被害を軽減する「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(ADVANCED SCBS)」「スマート・シティ・ブレーキ・サポート[後退時](SCBS-R)」を導入。

 この安全技術の拡充により、主要6車種全モデルが経済産業省や国土交通省などが推進する安全運転サポート車のうち、高齢運転者にとくに推奨する「セーフティ・サポートカーS(通称:サポカーS)」の「ワイド」に該当したと話した。

「i-ACTIVSENSE」は、前方の自動ブレーキだけではなく360度認知、全天候対応をふまえたセンシングデバイスの採用を強みとして、できる限りドライバーの見えないところへの配慮を行ない、実装に向けた技術開発と早期の市場導入を目指している
主要6車種で、モデルチェンジのタイミングに関わらず先進安全技術を標準装備化する取り組みを行ない、8月に発表したアクセラの改良で達成
「サポカーS・ワイド」に該当した主要6車種
2017年に標準化した4つの先進安全装備
先進安全技術を全車で搭載したマツダの主要6車種

 最後に、MAZDA PROACTIVE SAFETYの3つ目のパッシブセーフティについて、NASVA(自動車事故対策機構)が行なう自動車アセスメント「JNCAP」で、コンパクトカーであるデミオからSUVの「CX-5」まで、最高ランクのファイブスター賞を高い得点で獲得していると強調。「コンパクトカーのデミオからフラグシップモデルである3列シートの『CX-8』まで、充実した先進安全技術を届けることができるようになった」と締めくくった。

JNCAPの予防安全性能でも主要6車種はトップレベルの高い評価を獲得

“クラス概念を打ち破る”を志に進化するデミオ

 次に、マツダ 商品本部 主査 和田宜之氏がデミオの商品改良について説明。

マツダ株式会社 商品本部 主査 和田宜之氏

 デミオはマツダの国内販売の約4割を占める基幹車種で、購入するユーザー層は、初めてクルマを運転するユーザーから熟練のドライバーまで幅広いという。また、初めて買うクルマが新車のユーザーは、約半分を占める軽自動車に次いでデミオが属するセグメントとなり、その中でデミオは20%というシェアを獲得しているとのこと。

「デミオはマツダの中でもエントリーモデルを担っており、今回の商品改良は初めてクルマを購入するユーザーにも役立つのではないかと思っている。現在のモデルは2014年9月に投入して以来、マツダの人間中心の哲学に基づいて、ほぼ毎年少しずつ進化を重ね、今年4月から始めたi-ACTIVSENSEの標準化もデミオから行なった」と述べた。

デミオは1996年に初代モデルが登場。それ以降、一貫してコンパクトカーという概念にとらわれず“クラス概念を打ち破る”ということを志にして進化してきた
初めて買うクルマが新車となるユーザーのシェア率について
デミオの進化の歴史

 今回の改良について和田氏は「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030の考えに基づいたものとなり、社会の領域ではより安全に先進安全装備を拡充。また、より魅力的にデミオの特長・マツダの特長を深化させた」と話し、「安全の領域では、とくに認知領域についてを強化した」と説明。

 和田氏曰く「マツダが理想とする360度認知に近づく深化」として、対向車への眩しさを軽減しつつ夜間の視認性を大幅に向上させるHBCは、LEDヘッドライトだけでなく、ハロゲンヘッドライトも含めた全車に標準装備。さらに、低速や狭い場所での事故を防止する技術として、「360°ビューモニター」をオプション設定。

 和田氏は「駐車場でバックギヤに入れると、後方の映像だけでなく周囲の状況も確認できるため、より安全を確認しながらの駐車が可能。狭い道でのすれ違いの際は、サイドビューモードにするとフロントタイヤの左右が映し出されて安心できる。さらに、フロントビューとリアビューは広角の切り替えが付いているため、広角にすると左右それぞれ約25m、ほぼ180度を見渡すことができ、とくに運転の自信がない方におすすめ」と話した。

MAZDA PROACTIVE SAFETYのベース技術における、良好な運転環境について
認知領域についてはHBCと360°ビューモニターの2機能を追加
夜間の視界改善として、HBCを全車標準装備。アダプティブLEDヘッドライトをオプション設定
オプション設定となる360°ビューモニターは8月に改良を行なったアクセラから導入。購入ユーザーの半数以上が装着しているという
保険会社の調査によると、物損を含む事故の約35%が駐車場で起きているとのこと
360°ビューモニターの使用イメージ。駐車シーン
幅寄せシーン
見通しのわるいT字路

 アクティブセーフティについては、従来から設定されていたスマートシティブレーキサポートを歩行者を検知するシステムのADVANCED SCBSに向上させ、上限速度をこれまでの30km/hから80km/hに拡大。オプション設定となる「交通標識認識システム(TSR)」は、表示エリアと配置を考えドライバーが即座に認識できる分かりやすさにこだわった表示形式とした。

MAZDA PROACTIVE SAFETYにおけるアクティブセーフティの機能。ADVANCED SCBSと「交通標識認識システム(TSR)」の2機能を追加
標準装備となるADVANCED SCBSは、従来は車両のみを制御対象にしていたが、機能向上で歩行者も制御対象に加わった
オプション設定のTSRは、ドライバーの瞬読性を向上させている
安全運転サポート車(サポカー)についての説明も行なわれた

 和田氏はデミオのインテリアの特長について述べたのち、「ベースのラインアップと異なる世界観を実現する」という特別仕様車について、2016年に発売した「テイラードブラウン」を継続つつ「ノーブルクリムゾン」という新しい特別仕様車を設定したことに触れ、「女性のユーザーに好評だった『ミッドセンチュリー』の深化を目指し、深紅のシートが白い空間に映える新たなインテリアコーディネーションを実現した」と紹介した。

 また、ボディカラーにソウルレッドクリスタルメタリックを採用したことについては「デミオの造形美がより質感高く楽しめるのではないかと思っている」と話し、「このように、マツダの考え方に則っていろいろと進化をさせてまいりました。このクルマがお客様にとって、世界でもっとも輝くコンパクトカーになることを祈っております」と締めくくった。

デミオのインテリアは「New Style Collection」という考え方を採用
これまでデミオに設定されてきた特別仕様車4モデル
商品改良と同時に新しい特別仕様車「ノーブルクリムゾン」を設定
ノーブルクリムゾンのエクステリア
ノーブルクリムゾンのインテリア
CX-5以降導入を進めてきたソウルレッドクリスタルメタリックをボディカラーに採用