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10スピーカーで3列目シートでも音楽を楽しめる、新型「CX-8」の「ボーズ・サウンドシステム」を聞いてみた
ボーズサウンドを広く静かな室内空間で楽しむ
2018年1月9日 00:00
マツダが人気のSUV市場に新たに投入したのが新型車「CX-8」。3列シートで6人/7人乗り仕様とするため、日本のSUVの代表格となっている「CX-5」を一回り大きくしたボディサイズとロングホイールベースを持ち、トルクフルなSKYACTIV-2.2ディーゼルターボエンジンも改良。
そのインプレッションはすでに一般道、そして雪道を橋本洋平氏によってお届けしたとおりだ。
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本記事では、一部グレードにオプション設定されている「BOSE SOUND SYSTEM(ボーズ・サウンドシステム)」に注目。このボーズ・サウンドシステム装備車のサウンドインプレッションをお届けする。
10スピーカーのボーズ・サウンドシステム
すでに試乗なり、購入なりされた方は気がついていると思うが、マツダ CX-8は日本におけるマツダの最上位車種、ハイエンドSUVの領域を担当するため非常に静粛性の高いのが特徴となっている。一般的なガソリンエンジンのSUVと比較してももちろん、高トルクなディーゼルエンジン搭載車としては特筆すべき静粛性を備えている。それが簡単に分かるのが、3列目のシートに座ったときに、1列目のドライバーと会話がしやすいかどうか。静かな上に、音抜けのよい配置となっているためか、あまりこもり感や囲まれ感がない、3列目に引きこもって座りたいという人には向いていないが、そのような人は少数派かと思うので問題とはならないだろう。
このような3列シート車で難しいのが、クルマの楽しみとも言える音楽再生。単に音を鳴らすだけならどのようなオーディオシステムでも可能だが、1列目、2列目、3列目の人がすべて楽しめ、さらによい音で聞くとなると、膨大な手間と時間、そしてお金がかかるのは誰もが想像できるとおりだ。
マツダがSUVでも音楽を楽しみたいユーザーにオプションとして用意しているのが10スピーカーのボーズ・サウンドシステムになる。このボーズ・サウンドシステムは、マツダがクルマの開発時からオーディオメーカーであるボーズと一緒に作り込んできたもので、各座席での再生特性に配慮。1列目、2列目は当然のこととして、3列目でもきちんと音楽を楽しめるようになっているという。
スピーカー配置は、ダッシュボード中央に80mm中高音域スピーカー、左右Aピラーにネオジム ツイーター、左右フロントドアに165mmスピーカー、左右リアドアに130mmスピーカー、左右ラゲッジルーム用サイドトリムに60mm中高音域スピーカー、ラゲッジルーム下部のスペアタイヤボックスに130mmRichBassウーファー(内容量10.5L)となっている。左右のドアに各1個のスピーカーで基本的な音楽空間を作りだし、Aピラー下部のツイーターに加え、ダッシュボード中央とDピラー下部の中高音域スピーカーで音像定位をコントロール。10.5Lと大容量のウーファーボックスで全体の音の厚みをという意図が見える。
今回、ボーズ・サウンドシステムについて解説&試乗時に運転していただいたいのは、ボーズ・オートモーティブの中口豊氏。中口氏によると、やはり3列目の音の作り込みには留意したそうで、左右ラゲッジルーム用サイドトリムにある60mm中高音域スピーカー配置をこれまでのボーズ・サウンドシステムより引き下げているとのこと。これにより、3列目でもより音楽を楽しめるようになっているという。
これら10個のスピーカーをコントロールするのが、運転席シート下にあるBose 7 EQ チャンネルデジタルアンプになる。走行ノイズ補償システム「AUDIOPILOT」、ステレオ音源を5.1chサラウンド再生する「Centerpoint」を搭載し、これら特別な機能は、いずれもマツダコネクト内のサウンド設定からON/OFFが可能となっている。
3列目シートの音像定位を大幅に改善するCenterpoint
まずは、クルマを止めた状態での試聴から。ここでは、各シートでの音と、CenterpointのON/OFFによる違いを確認してみた。AUDIOPILOTは、走行時のノイズに対して音を改善する機能のため、別途走行試聴している。
最初はボーズの中口さんがデモデータを再生してくれたが、初めて聞く曲が多く、「確かにいい音だな」と思うものの、何と比較してよいか分からない。そこで、自分のiPhoneをUSB接続して、自分が普段チェックに使っている楽曲を再生することにした。
自分のiPhoneにストレージしている曲だが、最近はiPhoneが大容量になったこともあり、すべてロスレスのALAC(Apple Lossless Audio Codec)で音楽CDをリッピングしてある。リッピングもパイオニア製のBlu-rayドライブを使えばビットパーフェクトでデータ化可能で、後々の利用に便利だ。
音像や残響音のチェックに使っている楽曲は、The Beatles「Anthology 2 Disc1」に収録されているYesterdayで、これは冒頭にコードをチェックする音が流れ、その音がさまざまな形で床(?)から反射。シンプルなギターの旋律と、若々しいポール・マッカートニーの声が楽しめるというものだ。数多く録音されているYesterdayだが、個人的にこのバージョンが気に入っており、いつもこの曲から音の確認を始めている。
ボーズ・サウンドシステムを搭載したCX-8の音は、非常にS/Nがよく、音がクリアに立ち上がる。音質もボーズらしい中音域がしっかりしたもので、男性ボーカル、女性ボーカルともリッチに楽しめるものだ。それでいて、中音域のみ厚いのではなく、低域もしっかりした音で、高域も伸びやかな音で鳴っており、ウーファーの大容量化や、最新のシステムならではということを感じられる仕上がりだ。
1列目、2列目シートとも、しっかりした音像定位、質感のある音楽を楽しめるが、3列目シートになるとさすがにボーカルの定位が甘くなってくる。もちろん音はしっかり聞こえるのだが、音がふわふわと広がった感じになり、音楽をしっかり楽しむというより、その雰囲気を楽しむというものになってくる。
ところが、CenterpointをONにすると3列目でもボーカルがしっかりセンターに定位。雰囲気だけでなく、ボーカルの位置が定まることによって、楽器の位置関係もハッキリし楽曲としての楽しさが分かりやすくなってくる。CX-8は元々1列目と3列目で声の通りやすい空間設計がなされているが、その通り道をうまく使って構成されている。
ただ、このCenterpointは、楽曲を単純にサラウンド化するのではなく、それぞれの楽曲の構成を分析しつつ10スピーカーに振り分けを行なっているようだ。1列目のシートで聞いていると、ライブ感のある曲ではよりライブ感が増すように、ボーカル1本というタイトな曲ではよりタイト感が増すように働いているように聞こえる。3列目シートに人がいる状態ではCenterpointはONにしたほうがよいと言えるが、1列目のみや2列目の場合は好みに合わせて選択すればよいだろう。
AUDIOPILOTについては、中口氏にCX-8を運転していただき、助手席でその効果を確認してみることにした。AUDIOPILOTの仕組みは、車室内に設置されたマイクでノイズと鳴る音を拾い、そのノイズで影響を受ける部分を補正するなどして一定のバランスで音楽を楽しめるというもの。つまり車室内にノイズが侵入している環境で効果を発揮するもの。実際に一般道や高速道路を走りながら試聴してみたがCX-8は静粛性がよく、普通に走っている限りはON/OFFの違いが分からない。中口氏が「トンネル内などノイズが大きくなる場所が分かりやすい」と言うので、首都高速神奈川7号横浜北線(K7)方面へ。
このK7にある横浜北トンネルでウィンドウを下げ、車室内に盛大に騒音を入れた状態で試聴するとAUDIOPILOTのON/OFFで確かに変化が。AUDIOPILOTをONにした状態では、ノイズに対して聞き取りにくく鳴っていた部分が、OFFのときよりも若干聞きやすくなる。ただ、高速道路でウィンドウを下げるなど盛大にノイズが入っている状況でやっと違いが明確に分かるので、普段はさりげなく補正してくれる機能なのは間違いない。これだけさりげなければ、普段からONにしておいても楽曲の楽しみをジャマすることもない。
騒音に対して単純にボリュームを上げる機能はよく見かけるが、個人的にあの機能をONにして運転している場合、反応が敏感過ぎるものはワウフラッターの大きな音楽を聞いているようで不快なものが多い。それに比べボーズのAUDIOPILOTは、自動車メーカーと一体になって開発しているだけあって、判別するための極端な状況を作らない限り違いが分かりにくく、普段使いでも安心してONにできるものとなっていた。
往路(といっても横浜出発の新横浜辺りまで)はいろいろ機能を試すために使い、復路は先ほど紹介したAnthology 2のYesterdayや、女性ボーカルもの、J-POPもの、演歌などさまざまな音楽をかけることに注力。どの曲もボーズらしくボーカルのしっかりした再生が魅力的ながら、CX-8の室内空間があるせいか高音や低音域もとてもバランスよく再生されていた。Coplandの「市民のためのファンファーレ」のような極端な器楽曲でない限り、クラシック音楽を素直に楽しめるバランスで、今までのボーズサウンドよりも個人的には好ましいものだった。
この新型「CX-8」に用意された10スピーカーの「ボーズ・サウンドシステム」だが、冒頭に記したように、オプション設定となっている。その価格は、「CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)」と「CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ) Bose(R)サウンドシステム+10スピーカー」の価格差を見ると8万1000円。10万円以下でメーカーと共同開発された10スピーカーのオーディオシステムが用意されていることになる。CX-8購入の際に、これを付けないという選択肢もありだが、プレミアムなSUVにプレミアムサウンドが搭載される昨今の流れを見る限り、将来のリセールバリューにも効いてくる部分もあるだろう。なにより、これだけの音を手軽に手に入れられ、広くて静かな室内空間で楽しめるのはうれしいところ。ぜひ、ディーラーなどでボーズ・サウンドシステムを搭載したCX-8の試聴&試乗をしてみていただきたい。