ニュース

マツダ、ロードスターアンバサダーの山本修弘氏が初代「NAロードスター」のレストアについて説明

ドアやボンネット交換を含めた全塗装込みで基本メニューは250万円

2017年12月13日 受付開始

レストアを行なった初代「ロードスター」

 マツダは、12月13日に受け付けを開始した初代「ロードスター」(NA型)のレストアサービスについて、同社のロードスターアンバサダーである山本修弘氏が説明を行ない、このレストアにかける意気込みを語った。

パーツを外した全塗装込みで基本メニューは250万円

 今回開始したレストアは、NAロードスターでも対象車が限られている。1989年9月の登場から1993年7月ごろまで生産された1.6リッターエンジンを搭載するNA6C型で、現在ナンバーが付いており、フレームに損傷や錆、溶接跡などがなく、改造などが施されてないことなどの条件がある。

 グレードも限定車を除き、標準車、スペシャルパッケージ、Vスペシャル、Jリミテッドのみ。適用となるボディカラーは量産当時と同じ7色。

 ガラスやパーツを外し、「フタ物」とされるドアやボンネットなどを新品交換しての全塗装と復刻ソフトトップへの張替、ランプ、ワイパー交換などを含んだ基本メニューで250万円。さらに、エンジンオーバーホールなどの5つのメニューが用意され、すべてセットにした場合、合計で485万円となっている。

基本メニュー(ボディ&エクステリア)250万円

・車両診断
・全塗装
・フタ物新品交換
・ランプ/ワイパー等交換
・復刻ソフトトップへ張替
・小ダメージの板金処理

オプションメニューA(インテリア)70万円

・インパネ/トリム類
・シート表皮張替
・カーペット交換

オプションメニューB(エンジン&パワートレイン)80万円

・エンジンOH
・吸排気部品交換
・冷却系部品交換
・トランスミッション交換
・ドライブシャフト交換
・デフ調整

オプションメニューC(シャシー&サスペンション)40万円

・サスペンション交換
・ブッシュ類交換
・ベアリング類交換
・ブレーキ部品交換

オプションメニューD(エアコン)25万円

・エアコン関連部品(一部リビルト品使用)

オプションメニューE(アルミホイール&タイヤ)20万円

・復刻アルミホイール
・復刻タイヤ(1台分)

フルレストア(基本メニュー+全オプションメニュー)485万円

・ボディ&エクステリア
・インテリア
・エンジン&パワートレイン
・シャシー&サスペンション
・エアコン
・アルミホイール&タイヤ

 申し込みには事前にWebサイトから申し込み後、実車を指定場所(最寄りのディーラーなど)に持ち込み、車両の状態確認をしてもらう。この時点でフレームの変形や加工などを詳しく審査し、その後、マツダR&Dセンター横浜や広島に実車を持ち込み、レストア作業を受けることになる。

 期間は車両の持ち込みから完成させて引き渡しまで約2カ月間かかる。作業は広島のマツダE&Tで行ない、同社の熟練スタッフが行なう。途中、申し込み者の特典としてレストア作業行程の見学も行なえる。レストア作業は同時に行なうことができず1台の作業となるため、2018年中に作業できる台数は10台にも満たないものとなる。

 レストアを実施する車両にはそれぞれに差があるため、レストア作業中に問題点を発見した場合などは、ユーザーと逐一連絡を取りながら進める。ただし、フレームの問題などは、受け入れた後で問題とならないように事前の車両状態確認でしっかり確認しておくという。

 なお、レストア費用の支払いだが、現在のところマツダとロードスターユーザーの契約となるため、作業前に3割ほどの前金と引き渡し前に残金を銀行振込で行なう方式となる。現金払いやクレジットは対応できない。

 今回のレストア作業開始に合わせ、マツダはテュフ ラインランド ジャパンのクラシックカーガレージ認証を取得。正規のメニューに沿ってレストアが実施された車両には適合証明書が与えられる。

ソフトトップも新品に
リアスクリーンもクリアに
新品のリアスクリーン
運転席を見ても経年を感じない
フルレストアではシート表皮を張り替える
シフトレバーも新しい。オーディオはレス仕様
ステアリングホイールの表皮も新しくなっており、スレやテカリは皆無
ペダル部分も新しい
ドアは交換し、ドアの隙間なども設計値になっているか計測して納車される
エンジンルームを見れば新車のよう
ボディと同時に塗装するため、エンジンルーム内の塗装も輝いている
シャシー&サスペンション交換を選ぶとブレーキのほとんどが新しくなり、マスターバックも新品に。ホース類も新品
水まわりも新しくなっている
下まわりも新しくなる。ブッシュ類だけでなくサスペンションの大部分が交換され、黒光りしている
こちらはVスペシャルのレストア実施車
ナルディ製のウッドステアリング
ホーンボタンもピカピカだ
ナルディ製のシフトノブ
サイドブレーキレバーとともに輝いている
復刻したブリヂストン「SF-325」185/60 R14のタイヤ。ホイールも復刻した新しいものを装着。タイヤとセットでオプションメニューとなっている
タンの内装もきれいさを取り戻している

「NAを乗り続けるお客様と強い絆を構築」

マツダ株式会社 ロードスターアンバサダー 山本修弘氏

 Web受付開始の翌日となる12月14日には、神奈川県横浜市神奈川区のマツダR&Dセンター横浜において、ロードスターアンバサダーの山本修弘氏が説明を行なった。

 今回のレストア事業を開始するにあたって4つの志を掲げ、「お客様のニーズ・声に応えてサービスパーツ供給を維持し、NAを乗り続けるお客様と強い絆を構築したい」「初代ロードスター(NA)を長期間保有し続けたい名車として位置づけ、車文化への貢献・ブランド構築の一環としていく」「オリジナル部品で、かつマツダがレストアすることにより、信頼性の高いレストアサービスを提供し、市場のShop様とは違う価値を提供していく」「市場のShop様にも純正部品を供給可能とし、良好な関係構築を目指していく」とした。

 これまで、2016年8月のオートモービルカウンシルでレストアやパーツ供給検討開始を公表したあと、2016年10月~2017年3月にかけてレストアトライアル2号車を製作して作業行程の確認などを行なったほか、2017年3月にロードスタークラブ会長や主要ショップと情報交換を行なった。さらに2017年は5月~10月にかけて全国で6カ所のロードスタークラブイベントに参加し、レストア車の展示やユーザーアンケートを取り、レストアメニューについて意見を求めた。

 ユーザーや販売店向けの活動と同時に、2016年3月からテュフ ラインランド ジャパンによるレストアビジネスに関するコンサルティングを受け、クラシックカーガレージ認可取得を進めていた。

 また、費用については他メーカーのレストア事例や、ロードスター専門ショップの事例を参考にしたほか、先行してレストアを実施したなかで決められたもの。山本氏によれば今後も継続していくためには赤字にできないという。また、作業台数が限られる点についても、まずは実際に作業を担当するマツダE&Tの現在のスタッフ数や設備の範囲内で開始するためだという。

当初は車種を限定した点に理解を求める

 説明を行なった山本氏からは終始、このレストア事業を大事に育てたいという意気込みが感じられ、その一方で、当初は車種や状態を限定することについて理解を求めた。

 まず、レストアの対象は日本仕様に限定し、初期の1.6リッターエンジンを搭載するNA6C型のみ。後半で投入された1.8リッターエンジンのNA8型は仕様が多く、パーツの調達が現時点では困難なため対象外とした。

 対象車両についても車検が有効な状態に限定し、フレームに大きな錆や変形、加工がないこと。改造などが施されてないことが条件となる。車検切れで保管していたようなクルマは、車検を取得してからの受け付けとなる。また、Web申込後の車両状態確認の場では、専門の職人が車両の状態を隅々までチェック。塗装の膜厚計測も実施するため、見た目には分からないほど修復が施されていたとしても条件に合わない車両を判別できるとしている。

 このようにクルマを選別する点についても山本氏は「程度のいいクルマからやりたい。難しいクルマは、力がついてからやる」とし、理解を求めた。まずは初めてのレストアということもあり、確実にレストア作業を実施するため、あえて受け入れの敷居を上げているという。

基本メニューで250万円、フルレストアで485万円

 レストアのメニューについてさらに詳しく説明すると、基本メニューが250万円。この金額には復刻した幌をはじめ、現時点で新品パーツが供給できるフタ物となるドア、ボンネット、トランクなどを新品に交換、ガラスやエンジンなどを外して行なう全塗装も含まれ、消耗品となるウォーターホースや燃料ホース、消耗品やボルト・ナット類を新品に交換する。

 塗装については、NA6C型にあった7色を油性塗料で忠実に再現する。量産時の塗装行程に追加してクリア層の塗布と磨きの行程を入れることで、新車時よりもより輝きを増したものになるという。エンジンルームについてもパーツを外して塗装するため、エンジンのレストアメニューを組み合わせれば、ボンネットを開けた光景がより新車に近いものとなる。

 レストア作業が済むと新車同様の完成検査が行なわれ、図面や規格と照らし合わせてアライメント調整、水漏れ検査も実施する。ユーザーには認定証やレストア行程を詳細に記した記録も渡される。最後には山本氏もチェックに加わるという。

 オプションメニューではエンジンから足まわりまで5つのメニューが用意される。「エンジン&パワートレイン」のオプションBではエンジンオーバーホールとともにトランスミッションもまるごと新品に交換する。ただし、トランスミッションはシンクロが変更されたNB型のものになる。

 オプションメニューの金額はそれぞれのオプション金額を見れば、作業量や交換パーツに対して安価に感じられる部分もある。これは、基本メニューで車両を徹底的に分解する作業が行なわれるので、同時作業だと工賃が安くなるため。もちろんのことながらオプションメニューだけの作業は受け付けていない。

 なお、レストアメニューは今回は原則として用意されたメニューのみ。ただし、メニュー内で新品交換としているパーツを新品交換した直後であったり、特別に思い入れのある場所や使い込んだ内装の「傷」を残したいなど事情があったりする場合は、対応することも可能だという。

 また、原則として車両の元の状態に戻すレストアとなるが、ボディは外板交換やパーツを外して剥離後の全塗装となるため色替えは可能。元々標準車だったものをVスペシャル仕様に変更している車両などの受け入れや作業は「相談」。内装色の変更はパーツがすべて揃うわけではないからだという。

メインはパーツ供給、「まとめ買いはご遠慮を」

 レストア事業も注目されるが、今回の取り組みのメインはパーツの再供給を行ない、マツダ販売店や部品販売会社から供給すること。特徴的に取り上げられているパーツは、幌、復刻タイヤ、Vスペシャルに装備されたナルディ製のウッドステアリング、シフトノブ。そのほかにも細かなパーツも含めて約150点を2018年1月から販売開始する。

 幌については当時のドイツ製ビニール生地は現在入手不可。そのため、全く同じ素材ではないものの同等素材をアメリカから調達、当時と同じ広島の縫製工場で熟練職人が縫い上げているという。また、イタリア製のリアスクリーンは当時と同じものを採用した。

 復刻するブリヂストン「SF-325」185/60 R14サイズのタイヤも発売当時のトレッドパターンや側面デザインを再現。乗り味もマツダの三次自動車試験場で作り込みが行なわれたもの。レストア実施車だけでは出荷本数は少なくなるため、NA型ロードスターのユーザーは、タイヤ交換時には装着を検討してもらいたいとのことだ。

 供給パーツについては、ユーザーやショップからの意見で優先順位をつけて再供給を進めているとのこと。なかにはサイドウィンドウのプラスチック製のガイドなど、非常に細かなパーツだが、気持ちよく乗る上で不可欠なパーツも含んでいる。

 レストアは国内仕様を国内で受け付けることに限っているが、パーツ再供給は世界共通で、海外からのオーダーも受け付ける。山本氏は、どれくらい売れるか分からないとしながらも、幌など生産能力に限りのあるものもあり「買い占めしないでください」とコメントしている。

幌であるソフトトップは生産数に限りがあるため、くれぐれも「買い占めしないでください」とのこと

NA型ロードスターの残存数は2万2770台

 山本氏は今後の見込みとして、NA型のロードスターは2017年時点で2万2770台登録されており、国内に十数万台販売された実績からすると残存率は高い。そのため、今後もNAロードスターに乗り続けるために、需要があると見込んでいる。

 インタビューは12月13日のレストアのWeb受付開始翌日の14日に行なったが、すでに十数件の申し込みがあったという。

走行10万kmオーバーのクルマをレストア

 今回、マツダR&Dセンター横浜ではレストアを行なったロードスターも展示された。どちらもフルレストアを行なっており、新車時の輝きを取り戻していた。内装を細かく見ればわずかに経年を感じさせる部分が残っているものの、全体の印象としては新しい状態を取り戻している。下まわりを見ても汚れは全くなく黒光りしている。

クラシックレッドのロードスターの走行距離は18万5422km
Vスペシャルのロードスターは13万6467km

 そして、展示された2台の走行距離を見るとどちらも10万kmを軽く超えている。エンジンまではかけることはできなかったが、山本氏によればエンジン音も静かになり、軽く回るように変化したとのことだ。

オーディオについては残念ながら復刻に至らず
スピーカーも同じものは復刻できなかったという