ニュース
「NSX GT3」を道上龍選手&大津弘樹選手が富士でシェイクダウン
Modulo Drago CORSEのSUPER GT GT300参戦車両
2018年2月1日 15:13
- 2018年1月31日 開催
ホンダ車純正用品の開発、生産、販売を行なうホンダアクセスがスポンサードする「Modulo Drago CORSE(モデューロ・ドラゴ・コルセ)」チームが1月31日、2018年シーズンから新しくSUPER GT GT300クラスにチャレンジする新型車両「NSX-GT3」のシェイクダウン走行を行なった。
Modulo Drago CORSEチームは、2016年までホンダアクセスがサポートしてGT500に参戦していた道上龍監督が率いたDrago CORSEチームが母体になっており、2017年は現役ドライバーに復帰してWTCCに参戦していた道上龍選手自身がドライバーを務め、ホンダ期待の若手ドライバーとなる大津弘樹選手がパートナーとなってGT300に参戦することになる。
その車両として利用するのが今シーズンから導入されるNSX GT3で、2017年秋に発表されたFIA-GT3の規格に準じたレーシングカーとなる。今シーズンは、今回紹介するModulo Drago CORSEとCarGuy Racing(横溝直輝選手/アフィック・ヤジド選手)の2チームがNSX GT3を導入してSUPER GT GT300に挑むことになる。すでにCarGuy Racingは2017年のうちにシェイクダウンを終えているが、今回のModulo Drago CORSEのシェイクダウンはそれに次いでNSX GT3の国内走行となった。
前夜の降雪の影響でピットロードは凍結したままで、パドックからスタートするという異例のテストに
テストが行なわれた1月31日、富士スピードウェイがある小山町は夜半に雪が降ったこともあり、富士山は綺麗に雪化粧していたものの、富士スピードウェイのコースやピットロードなどには雪が残り、一部凍結しているというレーシングカーが走行するには最悪のコンディションになってしまっていた(言うまでもないと思うが、レーシング用のスタッドレスタイヤなど存在しないからだ)。このため午前中に予定されていた走行はキャンセルになり、午後に予定されていた30分の2回にかける結果になった。
13時40分から予定されていた2回目の走行は、サーキット側が凍結していた路面に水(お湯?)をかけるなどの作業を行なってくれた結果解決し、レーシングコースは問題なく走行できるようになった。しかし、ピットビルで日陰になってしまうピットロードは凍結したままで、結局はピットロードは走行せず、ピットロードの出口までパドックを走行してコースに入るというあまり見たことのない光景で、Modulo Drago CORSEのNSX GT3がコースインしていくことになった。現状ではスポンサーになるホンダアクセスやケンウッドのロゴなどが貼られているだけの段階で、カーボンが剥き出しという無塗装状態だった。
しかし、チーム関係者と思われる方が、何度もマスキングテープなどで位置取りをしていたので、実際のデビューまでにはきちんとしたスポンサーカラーに塗られることになるのではないだろうか。ホンダアクセスがメインスポンサーとしてついていた2015~2016年のGT500でのDrago Modulo Honda RacingのNSX CONCEPT-GTは白、赤、黒の3色だったが、果たしてModulo Drago CORSEのNSX GT3はどんなカラーになるのか、そこも今後の注目ポイントになりそうだ。
Modulo Drago CORSEチームが利用するNSX GT3は、ホンダが販売している高級スポーツカーとなる「NSX」をベースにして開発されたFIA-GT3規定のレーシングカー。ホンダと、WTCCでホンダのワークスカーを走らせていたJ.A.S Motorsportが共同開発した車両で、すでに北米のIMSA Weathertech Sports Car選手権とPirelli World Challengeシリーズに参戦し、2017年には2勝をあげている。価格は46万5000ユーロ(1ユーロ=135円換算で6277万5000円)という価格設定であることなどが明らかにされている(日本ではM-TECから販売、サービスが行なわれる)。
搭載されているエンジンはホンダアメリカ製のV型6気筒 3.5リッターツインターボで、XTRAC製6速セミオートマチックトランスミッションが組み合わされている。なお、テスト時にはまだ現物が間に合っていないということで他社製のホイールが暫定的に利用されていたが、実際のレースではホンダアクセス製のホイールが利用される予定とのことだ。
前半30分を道上選手が、後半30分を大津選手が走行。初回としては順調な滑り出しと道上選手
前半となった30分の走行は、ベテランの道上龍選手がすべての時間を使って走行し、マシンの感触を確かめることになった。というのも、この日の富士スピードウェイは、最高気温でも6~7℃程度となっており、気温が低くレーシングカーを走らせるのにあまり適した状況ではなかったからだ。チームのメカニックによれば、NSX GT3のスペック上のエンジンをかける際の温度の下限は20℃ということで、チームでは加熱器などを使ってエンジンを20℃近くまで暖めてからエンジンをかけるなどの万全を期した取り組みを行なっていた。メカニックが手持ちのPCをイーサネットケーブルで車両と接続し、車両のECUから送られてくるデータを確認しながら整備を行なっていたのが印象的だった。
走行の30分前にはタイヤなどの装着が終わり、パドック裏にマシンが出されて、そこでエンジンが始動され、道上選手によりNSX GT3がコースインしていった。まずは1周のインストレーションラップを行なって1度パドック裏に戻り、タイヤを外して各部を確認してからもう1度コースイン。その後は連続周回に入り、マシンの感触を確認していった。
15時からの2回目の走行では、まずは道上選手が前半の30分で気になったところを調整して、それを確認した上で大津弘樹選手にバトンタッチ。GT300を走らせるのは今回が初めてという大津選手だが、道上選手のフィードバックを元に走らせ、降りた後に感じたことを道上選手に話したところ、同じような感想だったため一安心だったというルーキーらしいコメントだが、ルーキーにありがちな無理をしてマシンを壊したりということもなく、安定した走行でチームに貴重なデータを持ち帰っていた。大津選手が走ったセッションの後半には、ピットロード上の氷も溶けて、ピットロードが利用できるようになり、最後はピットロードに戻ってきてテストは終了となった。
なお、今回のテストはそもそもサーキットのピットロードが凍っているような状況でのテストになるため、タイム計測などにはほとんど意味がなく、チームとしてもタイムに関しては全くこだわっていない様子だった。今回のテストではまずは走らせること、そこに主眼が置かれており、その意味では初回のテストとしてはまずまずだったといえるのではないだろうか。
これで今回のシェイクダウン走行は終了。チームは2月3日に予定されている「“NSX GT3”2018 SUPER GT GT300クラス 参戦チーム発表会!」(別記事参照)に参加した後、開幕戦が行なわれるOKAYAMA国際サーキットで行なわれる予定のファン感謝デー&公式テスト(3月17日~18日)などのテストに臨む見通しだ。そこでは、他チームとも一緒に走らせることになるため、2018年から参戦となるNSX GT3がどの程度のパフォーマンスを有しているのか、明らかになっていきそうだ。
道上龍選手のコメント:テストが当初予定していた時期から雪の影響で1週間ずれてしまうことになったので、やっと走ることができたというのが正直な感想。今朝も雪が降ってどうなるのかというところはあったが、行かなくてやっぱり走れたとなるよりは、行ってみて走れる方にかけるのがいいと思ってやってきた。送られてきた車両をチームが調べてみると、新車なのに壊れている箇所があったり、日本の燃料にあっていないデータがあったりしたので、チームがそこはきちんと調節して走れるようにしてくれた。そうした準備をきちんとすることで、後にトラブルが起きるのを防ぐことができるので。クルマの印象としてはパワステがついているので、アシストしなくてもハンドルが軽く感じた。そのあたりのことをチームにフィードバックして徐々に調整していく必要がある。ただ、全体的には、今回のテストはほとんど変なトラブルがなく順調に走れた。
大津弘樹選手のコメント:GT300に乗るのは初めての経験になる。レースになったら経験したこともないことが多いので、1つひとつ吸収して早くトップ争いできるようにしていきたい。(テスト終了後に)これまで乗ってきたF3とは全く違う動きで、頭をリセットして走らせた。F3よりも加速感があって驚いた。クルマの動きは戸惑うことなく走らせることができた。TRCやABSにはすぐに慣れたが、ABSに関してはなければロックするので行き過ぎだと分かるが、ABSが入ることでそれが分かりにくくなる側面があって、そこはもう少し学ばないといけないと感じた。セッティングはまだまだ詰める必要があるが、初走行としてはわるくなかったと思う。(感想を聞かれて)ミラーが見にくく、レースになったときにGT500が来た時によけられるかなというのは感じた。シートポジションなどの問題があるので、シーズンインまでには対処したい。