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バイアス、ラジアル、エアレスの違いを示す、ミシュランの小型建設機械用タイヤデモンストレーション

バイアスは一体、ラジアル分離運動

2018年4月18日 開催

ミシュランのエアレスタイヤ「トゥイール(TWEEL)」を装着したスキッドステアローダー

 日本ミシュランタイヤは4月18日、バイアスタイヤ、ラジアルタイヤ、エアレスタイヤのそれぞれの特性を紹介する小型建設機械用タイヤデモンストレーションを開催した。

 会場となったオオノ開発 フレップとうおん(愛媛県東温市)には業界関係者を招待。デモンストレーションには本国フランスのテストチームから3名のインストラクターが来日して、国内市場ではバイアスタイヤが主流という小型建設機械用タイヤにおいて、同社が展開する小型建設機械用ラジアルタイヤやエアレスタイヤのメリットを示した。

フランスのテストチームから3名のインストラクターが参加

3名のインストラクターによるデモンストレーション

手前がバイアスタイヤを装着、奥側の車両がミシュランのラジアルタイヤを装着

 午前中のプログラムでは、バイアスタイヤとラジアルタイヤを装着したホイールローダー(コマツ WA100)が用意され、タイヤの構造の違いによる牽引力の比較、積載リフトアップ時の車両安定性、丸太を乗り越えるときの安定性を比較するテストが行なわれた。

 3台の車両をけん引ロープでつないで先頭車両が牽引する最初のテストでは、バイアスタイヤを装着したホイールローダーは、「タイヤが地面に食い込む」「トラクションが抜ける」の繰り返しで一定のトラクションを得るのが難しいのか、車体が上下に跳ねるような挙動が発生していた。それに対してラジアルタイヤでは、タイヤが空転はするものの、地面にタイヤを地面に食い込ませながら車体は安定して前進した。

牽引力テスト
牽引力テスト

 続いて行なわれたのは、バケットに岩を積載してリフトアップし、車体を揺さぶって車両の安定性をみるテスト。バイアスタイヤは車体の傾きとタイヤのたわみが同期すると、タイヤの接地面が浮き上がりそうになるのに対して、ラジアルタイヤでは一定の接地面を確保しているように見えた。

積載リフトアップ時の車両安定性
積載リフトアップ時の車両安定性

 丸太を乗り越えるときの安定性を比較するテストでは、バイアスタイヤではボールがバウンドするように車体が上下動していたのに対して、ラジアルタイヤでは丸太の凹凸を吸収して車体を安定させていた。

丸太を乗り越えるテスト
ラジアルタイヤで丸太を乗り越えるテスト
バイアスタイヤで丸太を乗り越えるテスト

 テスト後にバイアスタイヤとラジアルタイヤのそれぞれの外観を見ると、バイアスタイヤではトレッド面が山なりになっているのに対して、ラジアルタイヤは乗用車のようにフラットなトレッド面であるのことが分かる。これにより、バイアスタイヤでは舗装路面での稼働が多い車両になるとトレッド面の中央部分から摩耗していくという。

トレッド面の中央が盛り上がっているバイアスタイヤ
トレッド面がフラットなラジアルタイヤ
デモンストレーションの概要
日本ミシュランタイヤ株式会社 B2B OHT テクニカルマネージャー 廣石譲治氏(右)がテストの解説を行なった

ラジアルタイヤとバイアスタイヤの違い

日本ミシュランタイヤ株式会社 B2Bタイヤ事業部 建設機械・農業機械担当 セールス&マーケティング マネージャー 佐野恒彦氏

 こうしたバイアスタイヤとラジアルタイヤの違いについて、日本ミシュランタイヤ B2Bタイヤ事業部 建設機械・農業機械担当 セールス&マーケティング マネージャー 佐野恒彦氏が解説した。

バイアスタイヤの構造
ラジアルタイヤの構造

 バイアスタイヤとラジアルタイヤの違いについて、バイアスタイヤのカーカス(胴体)は斜め(バイアス)に交差する繊維によって構成される一体化構造であり、一体化運動するものと解説した。一方、ラジアルタイヤのカーカスは放射状(ラジアル)にスチール等のコードが配置されるとともにトレッド部にベルトを配した構造を採用。サイドウォールとトレッド面がそれぞれ独立した動きをする分離独立運動するものと説明した。

ラジアルタイヤとバイアスタイヤのタイヤの動き方

 荷重でタイヤがたわむと、バイアスタイヤでは一体化運動により接地面もたわんで接地面が不安定になるのに対して、ラジアルタイヤではサイドウォールとトレッドの分離独立運動により均一で安定した接地面を確保できるという。

 佐野氏は「タイヤに荷重がかかると、ラジアルタイヤではトレッドの接地面が縦に伸びるのに対して、バイアスタイヤではタイヤ全体が変形してトレッドの接地面も変形してしまい、センター部分に偏摩耗が発生してしまうことがタイヤの構造として確認できます」と話した。

ラジアルタイヤを数多く展開する
9月より販売開始する小型ホイールローダー用のオールシーズンタイヤ「クロスグリップ」を展示。サイズは440/80 R24(16.9R24互換)、価格はオープンプライス
9月発売の小型ホイールローダー用のオールシーズンタイヤ「クロスグリップ」についてのスライド

ミシュランのエアレスタイヤ「トゥイール」に試乗した

スキッドステアローダー用エアレスタイヤ「MICHELIN X TWEEL SSL」

 午後のプログラムでは、ミシュランのエアレスタイヤ「トゥイール(TWEEL)」の体験試乗会も用意されていた。構造の異なる3種類のタイヤ、バイアス、ラジアル、エアレスタイヤを装着したスキッドステアローダーでインストラクターがデモを行なった後、参加者も実際に走行体験することができた。

インストラクターによる3種類のタイヤ(エアレス、ラジアル、バイアスタイヤ)の比較
インストラクターによる3種類のタイヤ(エアレス、ラジアル、バイアスタイヤ)の比較

 トゥイールは、米国・カナダで2012年から販売を開始しているスキッドステアローダー用のエアレスタイヤで、ミシュランが2005年に発表したタイヤとホイールを一体化させるコンセプトを製品化したもの。2019年より日本市場に導入され、日本では初めてのエアレスタイヤの製品化になるという。

 トレッド面にスチールベルト構造「Shear Bearm」を採用するトゥイールでは、高強度ポリ樹脂スポークが荷重を支え、衝撃を吸収する。タイヤに空気が入っていないのでパンクすることなく、高強度ポリ樹脂スポークが衝撃を吸収して乗員の快適性を確保するという。

 また、主に建設、道路舗装工事、農業などの作業現場で活用するスキッドステアローダー用のエアレスタイヤとして、このトゥイールは方向指定のないトレッドデザインを採用することで前進後退で同じようなトラクションを確保。複数回のリトレッドを可能にするアンダートレッド構造とした。

 今回の試乗コースは、旋回性、岩場の走行、登坂性能、丸太越えを試せるものとなっていたが、実際にエアレスタイヤ「トゥイール」を装着した車両に試乗してみると、一番印象に残ったのは、岩場を走行した際の違いだった。

スキッドステアローダーのバケットを岩で満載にして試乗した

 スキッドステアローダーはバケットに小さい岩を満載した状態となっており、バイアスタイヤではタイヤの反発力によりふらふらと車体が揺さぶられるのに対して、トゥイールでは岩場の凸凹をタイヤが吸収して、路面をしっかりグリップしている感覚が得られた。そして、車体のふらつきもなく安定して走行することができた。

ミシュランのエアレスタイヤ「トゥイール」の体験試乗
スキッドステアローダー用エアレスタイヤ「MICHELIN X TWEEL SSL」
ミシュランのラジアルタイヤ
他社ブランドのバイアスタイヤ
試乗した車両とコースの解説
日本ミシュランタイヤ株式会社 B2Bタイヤ事業部 執行役員 高橋敬明氏

 日本ミシュランタイヤ B2Bタイヤ事業部 執行役員 高橋敬明氏は、現在日本国内のスキッドステアローダーでは主にバイアスタイヤが使用されており、スキッドステアローダーによる作業は旋回の頻度が激しくタイヤの減りが早いことが現場の悩みとして聞かれることを紹介。

 エアレスタイヤのトゥイールについては、空気充填や空気圧管理の必要がない「ノー・メンテナンス」、クッション性の向上や長寿命といった「ノー・コンプロマイズ」、パンクレスによる生産性の向上「ノー・ダウンタイム」という3つのキーワードを示して、従来の空気入りバイアスタイヤと比較して寿命が大幅に伸びることで経済的メリットがあることを示した。

スキッドステアローダー用エアレスタイヤ「MICHELIN X TWEEL SSL」についてのスライド

建設機械用タイヤにラジアルタイヤ、エアレスタイヤの提案

日本ミシュランタイヤ株式会社 代表取締役社長 ポール・ペリニオ氏

 今回のデモンストレーションについて、日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長 ポール・ペリニオ氏は「ミシュランは1946年に世界で初めてラジアルタイヤを開発して特許を取得しました。その3年後に販売を開始して、1952年にはトラック用タイヤにもラジアル技術を応用して、1959年には建設機械用ラジアルタイヤを販売し、いずれも世界初のことでした」と、ラジアルタイヤの先駆者であることを強調。

 続けて、「誕生から70年以上、このラジアルタイヤはあらゆるモビリティに大きな影響を与えてきたことはご存知のところ。日本では人手不足、働き方改革は、社会的な課題となっています。人手不足は悪化し、約4割の業種で人手不足の度合い示す指標は過去最悪。建設、農業、運輸といった産業も深刻な状況に至っており、今後高齢化によりこの傾向はさらに進むと予想されてます。小型建設機械用車両で多く使用されているバイアスタイヤとラジアルタイヤの違いを体感していただき、タイヤの構造の違いによる生産性、オペレーターへの負担軽減など、1つのソリューションとしてラジアルタイヤを選択する可能性を検討していただきたい」とその狙いを述べた。

 また、ペリニオ氏は9月から販売を開始する新製品のラジアルタイヤ「クロスグリップ」についても触れ、「クロスグリップは、1年を通してオンロードで稼働する建設機械をターゲットに開発されました。最近では大雪に見舞われることも少なくありません、低温でも柔軟性を失いにくいコンパウンドを採用して、都市型土木除雪車両へ提案したい」とし、2019年に日本導入するエアレスタイヤの「トゥイール」については「エアレスタイヤはミシュランが2005年に発表したタイヤとホイールを一体化させるコンセプトタイヤを製品化したもの。タイヤに空気が入っていないのでパンクする心配がありません。ラジアルタイヤ、エアレスタイヤといったミシュランのイノベーションを示すもの」と位置付けた。